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s_aki01_1 | 東泉寺晶個別1 シーン1-1 スタート

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;背景(部室)
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というわけで、今日は東泉寺と一緒に西友から声優のレッスンを受ける日だ。

部員全員で行うボイストレーニングを終えたオレ達三人は、部室でやや緊張しながらレッスン開始の時を待っていた。まあ、東泉寺は緊張なんかしていないか。

<東泉寺 晶>
「レッスン楽しみだよ~。ナルコ、今日はよろしくね!」

<坂本 隼人>
「オーディションが近いのにわざわざ悪いな。今日は軽くでいいんで、オレと東泉寺に稽古をつけてくれ」

<西友 鳴歌>
「そ、そんな。こちらこそ、よろしくお願いします」

ちなみに、部室は西友、結城、カオルの3人が1日交代で使用することになったらしい。3人とも大きな声を出す練習が必要だから、狭い部室に三人じゃ他の声が邪魔になるからな。今日は西友の部室使用日というわけだ。

<西友 鳴歌>
「では、早速、練習を始めます」

そう言うと西友は足元に置いてあった紙袋から綺麗に製本されたB5サイズの台本2冊と、A4用紙を数枚綴じただけの薄い冊子を取り出した。

<西友 鳴歌>
「すいませんが、台本は2冊しかないので、1人はこのコピーで……」

<東泉寺 晶>
「あ~、アタシこのペラペラでいいよ! 今日の主役はハヤトンだからね!」

本当は声優の練習をしたいと言い出したのは東泉寺だけどな。

東泉寺は受け取った冊子を嬉しそうに眺めたあと、パラパラとめくりながらうんうんと頷いたりニヤニヤしたりしている。なんだか新しいおもちゃをもらった子供みたいだな。

<東泉寺 晶>
「タイトルは『ディザイア・トリガー』か~。 な~んかダッサいね。カタカナって。せめて英語で書けばいいのに。それでもいまいちだけど」

台本もらって第一声がそれか。プロの声優がそんなこと言ったらきっと問題になるだろうな。声優を目指すかもしれない人間がそれでいいのか? それに西友にも気を使ってやれ。ここはオレがフォローしとくか。

<西友 鳴歌>
「わ、わたしもそう思っていました。」

お前もか。では何も言うまい。

でも『ディザイア・トリガー』って確か……

<坂本 隼人>
「これって、西友がオーディションを受けるって言ってたやつだよな?」

西友はぎこちなくコクコクと頷いている。なるほど。だから製本した台本が2冊あるのか。この練習会の対価として、オレは週に1回だけ西友の練習に付き合うことを約束している。これは西友の特訓に付き合うオレ用の台本か。

しかもさっき台本を取り出した紙袋の中には台本らしきものがまだまだぎっしりつまっているんだが、それ全部に付き合うのか? ……見なかったことにしよう。

<西友 鳴歌>
「今日は、台本の211ページから、8ページほどのシーンを、読み合わせ……み、みんなで、実際に演じてみます」

言われたページを確認すると主要人物らしき3人のバトルシーンのようだ。男キャラ1人、女キャラ2人だからちょうどよさそうだな。

<西友 鳴歌>
「さ、坂本さんがアマデウス、東泉寺さんがティアナ、わたしが静恋(せれん)でいいですか?」

<東泉寺 晶>
「おっけ~。」

<坂本 隼人>
「うん。わかった。じゃあ、まず台本を覚えたほうがいいよな。演技は読みながらできるけど、話の流れを理解したほうがいいしな」

<西友 鳴歌>
「は、はい」

<坂本 隼人>
「じゃあ10分くらい時間をくれ。東泉寺もそれでいいか? もっと時間が必要か?」

<東泉寺 晶>
「余裕余裕! ちゃっちゃと覚えて早くやろうよ~」

早くやりたくてしょうがないって感じだな。そんなに楽しみなのか。

<坂本 隼人>
「よし、じゃあ今から10分な」

さてと。完全に暗記することよりも流れや人物の感情を理解することを重視して読んでいこう。

『ディザイア・トリガー』は隔離された学園が舞台の異能バトル物で、主人公アマデウスの一派と敵である学園内の浄化組織との戦いがメインらしい。

今回演じる場面はヒロインの音無静恋がトリガーという力を暴走させてしまい、欲望に囚われ人格が変わってしまうところから始まる。

アマデウスは暴走を止めようとするが、そこに敵であるティアナ・ヴァルハラ・フォン・ヴィッセンシャフトが現れ、静恋のトリガーを奪おうとする。

しかし静恋の力に圧倒され、ピンチに陥ったところを意外にもアマデウスが助けて……という流れだ。

なるほど。だいたい流れは掴んだし、セリフもなんとなくわかった。至るところから厨二臭がするが、バトル物のラノベだからそんなものだろう。

しかしこの台本、セリフの横に『ここで一瞬間をとる』とか『隠そうとしているけど、本当はとても苦しい』などの手書きの書き込みがびっしりしてあるな。

<坂本 隼人>
「なあ、これって西友が書いてくれたんだよな?」

<西友 鳴歌>
「は、はひっ。ご、ごめんなさい」

急に話しかけてびっくりさせてしまったか。

<坂本 隼人>
「いや、謝るとこじゃないだろ。この書き込み、かなり演技の助けになる」

<西友 鳴歌>
「あ、あくまで参考です。さ、坂本さんや東泉寺さんの解釈で演じてください」

そうこうしているうちにもう10分経つか。東泉寺は冊子を閉じて腕を天に伸ばすストレッチをしだした。

<東泉寺 晶>
「ナルコの書き込みのおかげでもう理解はバッチリだよ! そろそろやろうよ~」

<坂本 隼人>
「じゃあ、そろそろやるか。西友もいいか? いいならオレが開始の合図をするぞ」

西友は大きくコクりと頷くと二回深呼吸し、台本を構えた。東泉寺も冊子を手に持ち、いつでも来いという顔をしている。

<坂本 隼人>
「じゃ、いくぞ~。3・2・1・スタート!」

…………

<音無 静恋>
「はあ~~~~~~っ!!!!」

うおっ。いきなりスイッチ入ったな。さすが西友、いや、今は静恋と言っておこう。このオレ、アマデウスも全力で応えるか!

<アマデウス>
「これは……トリガーの暴走!? バカな、こんなに早く……」

<音無 静恋>
「はっ、あっ、アマデ、ウス……」

<アマデウス>
「静恋! オレの手を握れ! 今ならまだ間に合う!」

<音無 静恋>
「助け……て……アタシ……」

<アマデウス>
「しっかりしろ! 大丈夫だ! オレが……」

<音無 静恋>
「触るなっ! このエロガキ!」

<アマデウス>
「なっ! 静恋! オレだ! アマデウスだ!」

<音無 静恋>
「知ってるわよ……いつもいやらしい目でアタシを見ているアマデウス」

<アマデウス>
「いつもの憎まれ口……じゃあないようだな。人格の豹変……既にフェイズDか。くそっ、もうオレの力では……」

<音無 静恋>
「ああ……なんだかいい気分だわ。望めばなんでも手に入るような……アンタでもね……はあっ!」

<アマデウス>
「ぐおっ! バカな、呪文の詠唱なしに……」

<音無 静恋>
「ちょっとじっとしててね。アタシ喉が渇いたわ。トリガーが血を欲してるみたい。少しならいいわよね?」

<アマデウス>
「くっ! 予定は狂うが、ここは結界を……」

<ティアナ>
「そこまでだ小娘~~っ!」

<音無 静恋>
「!」

<ティアナ>
「クハハッ! その闘気、トリガーが完全に覚醒したようだな。手間が省けたわ。そのトリガー、このティアナ様がもらい受ける!」

<音無 静恋>
「ああ、いつものオバさんか」

<アマデウス>
「最悪のタイミングだな……ティアナ、今は退いてくれないか? もうお前では静恋に勝てない」

<ティアナ>
「ハッ。バカな事を言う。小娘のトリガーを手に入れる好機、逃してなるものか! アマデウス、キサマの相手は後でじっくりとしてやる」

<音無 静恋>
「オバさんは相変わらず空気が読めないね。でもそれも今日で終わると思えば気にならないわ。本当に強い者は穏やかな心を持つって本当なのね」

<ティアナ>
「ほざけ! 地獄に住む炎の魔人よ、われに力を捧げよ! アイネ・フォアーラードゥン・イム・デーモン・デア・フラム」

<ティアナ>
「さあ、我が下僕(しもべ)よ、あの小娘を焼き尽くすがいい! ファイエル!」

<音無 静恋>
「ふんっ。坊やは地獄に帰りなさい」

<ティアナ>
「なっ、攻撃が魔人ごと消されただと!? バ、バカな……」

<アマデウス>
「くっ、これ程とは……やはり次の攻撃の瞬間にやるしかない」

<音無 静恋>
「さあ、オバさんも地獄に送ってあげる。はあっ!」

<ティアナ>
「ひいっ! …………?」

<音無 静恋>
「……」

<アマデウス>
「はは……なんとか間に合ったな。しばらくは結界が持つはずだ。ティアナ、今のうちに逃げるんだ」

<ティアナ>
「な、何故我を庇った! キサマと我はお互い相容れぬ存在だろう!」

<アマデウス>
「オレは殺し合いがしたいんじゃない。ただ自由が欲しいだけなんだ。だから、お前も死なせたくないし、静恋にも人殺しなんかさせたくない」

<ティアナ>
「腑抜けたことを! ……!? キサマ、怪我をしているではないか! くっ、我を庇った時に……」

<アマデウス>
「心配してくれてるのか? こりゃ、雨でも降りそうだ。勘弁してくれよ」

<ティアナ>
「し、心配などっ! ……くっ、本当は我もキサマを……」

…………

ふうっ。だいたい山場は超えたな。あとはティアナが自分の服を破り、その布でアマデウスの太ももを止血してから意味深な約束を交わして終了だ。しかし、東泉寺も初めてにしてはなかなかうまいじゃないか。

<ティアナ>
「そ、そうだ! その怪我、我の魔法で治してやろう!」

あれ? ちょっとセリフが違うな。

ティアナ(東泉寺)の方をチラッと見ると、( ̄ー ̄)bグッ! と親指を立てるジェスチャーをしている。アドリブってことか? 調子に乗るのはいつものことだが……ちょっと様子を見るか。

<アマデウス>
「いや、しかしお前は回復魔法は使えないはず……」

<ティアナ>
「最近覚えたのだ……ぺ、ぺろぺろという魔法を」

<アマデウス>
「ぺろぺろ? ちょっと意味わからないんですけど……」

<ティアナ>
「こう……舌をうまく使って患部をぺろぺろと舐めるのだ」

<アマデウス>
「それ魔法違う! 舐めてるだけだから! 治んないから!」

<ティアナ>
「最近見たアニメでは、ぺろぺろで治療していたぞ?」

<アマデウス>
「アニメの影響受けすぎ! 前から思ってたけどお前のティアナ・ヴァルハラ・フォン・ヴィッセンシャフトっていう厨二臭い名前からしてアニメの影響受けすぎ!」

<ティアナ>
「なあ……ぺろぺろしていいか?」

<アマデウス>
「人の話聞いてる? それにオレの太ももドバッて血出てるから、ぺろぺろって言うよりビチャビチャッてなってドロドロ~~~~ってなるから!」

<音無 静恋>
「…………」

まずい。この流れはまずい。なんか静恋(西友)が軽蔑の目でこちらを見ている気がするし……そうだ! ここは静恋に流れを変えてもらおう!

オレは静恋にアイコンタクトを送った。静恋もオレの気持ちを察したらしく、コクコク頷いている。よし、まかせたぞ静恋!

<音無 静恋>
「はあ~~~~~~っ!!!!」

<アマデウス>
「し、しまった~~っ! バカやってるうちに結界が破られた!」

お膳立ては完璧だ! さあ静恋、キリッとした一言で流れを変えてくれ!

<音無 静恋>
「アタシがぺろぺろする」

キリッ!

<アマデウス>
「キリッ! じゃねえよ! 乗っかっちゃったよ! しまったこいつもアホだったぁ!結界の中でぺろぺろ言うタイミング図ってたぁ~」

<音無 静恋>
「まさか……このオバさんもあのアニメを見ていたとわね」

<アマデウス>
「社会問題! アニメの影響力怖っ! つーか何そのアニメ? ほんとにあるの? ぺろぺろするの? ちょっとオレも見たいんだけど。タイトル何?」

<音無 静恋>
「か、勘違いしないでよね! アンタのタメにぺろぺろするんじゃないんだからね! アタシがしたいだけなんだからね!」

<アマデウス>
「なんでデレた? タイミングおかしくね? そしてなんでお前ぺろぺろしたいんだよ! トリガーの設定とかおかしくなってるよ!」

<音無 静恋>
「ちょっとじっとしててね。アタシ喉が渇いたわ。トリガーが血を欲してるみたい。ぺろぺろしていいわよね?」

<アマデウス>
「デジャヴ! 序盤でそれ言ってたね、最後のぺろぺろ以外一緒だね! ここでまさかの伏線回収キタ━━! 設定変わってなかったんで、ギリギリセーフ!」

よかった、世界観は守られていたか……

<アマデウス>
「て、セーフなわけあるか! もうアウト! スリーアウト! 完全試合達成だよ!」

<ティアナ>
「では、勝利の記念に我がぺろぺろして……」

<アマデウス>
「負けてんだよ! ボッコボコにされてんだよ! つーかお前また入ってくんなよ! さっきから入るタイミング図ってたの知ってんだよ!」

<音無 静恋>
「こんなオバさんよりアタシにぺろぺろして欲しいよね?」

<ティアナ>
「女としての魅力が皆無の小娘より、我にぺろぺろされたいのだろう?」

もうだめだ。終わりが見えない。どうしてこうなった。何がいけなかった? 初めからぺろぺろを受け入れていれば、また違う未来があったのか?

いや、今からでも遅くはないんじゃないか? 想像してみるんだ、オレが二人にぺろぺろされている姿を。なんかこう……なんか、いいじゃないか。

そうだ、ぺろぺろしてもらえばいいんだ。全てを受け入れよう……オレの意識は今闇に飲まれようとしている。だが、ツッコミに疲れきった身体にはもう抗う力は残されていない。

姉さん、ごめん……こうしてオレは欲望のトリガーを引いた。

<アマデウス>
「よし! わかった! ぺろぺろしていいぞ! じゃあまずズボンを……」

<東泉寺 晶>
「うわっ、きも~っ。ハヤトンのえっちぃ~」

ここで素に戻るのかよ! 残念……いや、全然残念じゃないぞ。オレは早く終わらせたかったんだ。本当だ。

<坂本 隼人>
「え? 終わり? いや、エッチって言われても……流れの中で自然なセリフだったろう? なあ、西友」

そうだ、オレは悪くない! フォロー頼むぞ西友。

<西友 鳴歌>
「さ、坂本さんは、ドMな上に、え、エッチです……」

<坂本 隼人>
「だからなんで西友の中でオレはドM確定なんだよ! そんな風になじられても、全然ご褒美じゃないぞ! むしろ悲しいぞオレは」

ぺろぺろがおあずけな上に、罵倒されて……ぜ、全然嬉しくなんかないぞ!

<東泉寺 晶>
「アハハっ! 冗談だよハヤトン。そんなにムキになんないでよ~」

<坂本 隼人>
「冗談がキツいんだよ。まあ、わかってたけどな。西友も冗談だよな?」

<西友 鳴歌>
「じょ、冗談、ですわ」

目が泳いでるし、喋り方もおかしい。めちゃくちゃ動揺してるぞ。

<西友 鳴歌>
「そ、そういえばですわ、さ、坂本さんのアドリブ時のセリフは、口調や語尾が、ちょっと違ってましたわよ。あと、も、もっと痛みに耐えている感じを……」

<坂本 隼人>
「アドバイスしてごまかそうとしてるけど、今の西友の口調や語尾のほうがよっぽどおかしいぞ。『ですわ』って何だよ。いつからお嬢様キャラ?」

<西友 鳴歌>
「そ、そう、かしら? あ……きょ、今日はこれでおしまいですわ! ご、ご機嫌よう……」

西友はそう言うと、そそくさと台本を片付け、小走りに部室を出ていってしまった。

<東泉寺 晶>
「あら~、行っちゃったね」

<坂本 隼人>
「ああ……」

<東泉寺 晶>
「も~、ナルコにはハヤトンのツッコミがキツいんだよ。あと、面白かったからいいけど、今日のハヤトンのツッコミ全体的に長かったよ」

<坂本 隼人>
「うっせえ」

どうだ。短くしてやったぞ。これで満足か。毎回5パターンぐらい考えてたいへんなんだよ、とか、オレだって頑張ってるんだよ、とかは言わないでおいてやろう。

<東泉寺 晶>
「アハハっ! じゃ~アタシ達も帰ろっか?」

まあ、いろいろと大変だったが、とりあえずオレ達は戸締りをしてから部室を出た。


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s_aki01_2 | 東泉寺晶個別1 シーン1-2 スタート

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;背景(通学路 夕方)
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東泉寺とオレは家の方向が違うが、途中までは帰り道が一緒だ。そういえば東泉寺と二人っきりで一緒に帰るのは初めてだな。

だからと言って緊張なんかしていないぞ。オレだって女の子と一緒に帰るくらい……ここ最近はなかったか。

<坂本 隼人>
「ところで、今日はどうだった? これからも声優目指して練習してみるか?」

<東泉寺 晶>
「今日はと~っても楽しかったよ! でも、声優を目指すかどうかは……まだわかんないや」

<坂本 隼人>
「そうか? 初めてにしてはかなりうまかったと思ったんだけどな」

素人のオレが言うのもなんだが、実際うまかったと思う。脚本を読んで急に演技するなんて、なかなかできるもんじゃない。それにあのアドリブもいろんな意味で素人とは思えなかったぞ。

しかもアニメを見るようになったのは西友の影響だからここ最近みたいだし……こいつ天才か?

<東泉寺 晶>
「ん~、最近一人でテレビ見てる時に、ツッコんだり独り言つぶやいたりしてるから、それが練習になってたのかも」

<坂本 隼人>
「テレビとしゃべるって、お前は一人暮らしが長い寂しい独身のおっさんかよ」

<東泉寺 晶>
「おっさんじゃないやい! せめて一人暮らしのOLと言ってよ! まあ、一人で寂しいのは合ってるかもしれないけど……」

ん? なんか東泉寺のやつ若干テンション下がったな。

<坂本 隼人>
「寂しいって、でも家には親もいるんだろ?」

<東泉寺 晶>
「あ~、うちの両親仕事で忙しくていつも帰りが遅いんだよ。兄弟もいないし、おばあちゃんも死んじゃったし……」

まずい。重い話になってしまった。テンションどんどん下がってるし。

<坂本 隼人>
「わ、悪いこと聞いたな、すまん」

<東泉寺 晶>
「ううん。勝手にしゃべっただけだし……。でも、ハヤトンがかまってくれたら寂しくないかも……」

東泉寺がうるうるした目でこちらを見ている……そんな目で見られると弱いな。

<坂本 隼人>
「ま、まあ放課後とか暇な時は、いくらでもかまってやるよ」

<東泉寺 晶>
「ほんと? 約束だよ! ぜ~ったいだからね!」

ほっ。なんか元気出てきたみたいだ。よかった。

そうこうしているうちにもう交差点に差し掛かるな。帰り道が一緒なのはここまでだ。

<坂本 隼人>
「わかったよ。じゃ、またな」

<東泉寺 晶>
「は~い、じゃ、まったね~」

別れの挨拶をしたオレ達はお互いに背を向けてそれぞれの家路に向かう。

なんだかまた東泉寺のペースに乗せられて約束してしまったが、まあいいか。東泉寺と遊んでいると楽しいのは事実だしな。

なんとなく足を止めて振り返ってみると、小さな東泉寺がいつにもまして小さく遠くに見えた。

東泉寺が困っているとほっとけなかったり、多少のわがままは聞いてやれるのは、あいつが小さいからだろうか? 小さい子供や赤ちゃんと接している時と同じ感覚なのだろうか?

だとしたらあいつ得だな、なんてことを考えながら、オレは再び歩きだした。

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;個別1 END
;ジャンプ(s_aki02.ks)
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