1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:29:46.67 ID:9lP01JRD0
俺の名前は須賀京太郎。
小学校中学校と野球をしてきたけど、なかなか結果が出なかった。
どこからも声が掛からず、仕方なくここ清澄高校に入学した――――

京太郎「日替わりのレディースランチはやっぱり美味いな」

同中の宮永咲にお願いしてレディースランチを注文してもらい、PSPでプロスピに興じながら優雅なランチをしていると――

咲「京ちゃん、野球やるんだ……」

京太郎「あれ? 咲も野球やるのか」

咲「うん……でも、親族での野球大会で散々な目にあったから……」

咲(だからもう野球はやらないんだ……)

咲(そうだ、高校では漫画研究会に入ろう)

咲(それで友達を作って、楽しいオタクライフを過ごすんだ!)

京太郎「ようし、じゃあ一緒に野球やろうぜ!」

京太郎「ちょうど部員も足りてなかったし!」

咲「え、ええ~~~~~!?」

京太郎「一緒に全国目指して頑張ろうな!!」

咲(漫画研究会に入りたかったでやんす……)

【6月14日(木)】

[部室]

京太郎「メンバーを連れてきたぞー!」

和「お客様……?」

咲「さっきの――」

京太郎「え、、おまえ和のコト知ってんの?」

和「先ほど橋のところで本を読んでいた方ですね……」

咲「ぅひっ、見られてたんですか……?」

咲(ま、マリみては、一般人の人に見られてもセーフだよね……?)

京太郎「和は去年の中学大会のベストナインなんだぜ」

優希「すごいじょ!」 ドーン

咲「いたた……」

優希「のどちゃんはホントにすごいんだじょ!」

優希「ベストナインってことは最強の中学生捕手だったわけで!」

マホ「左利きなのに、それを感じさせないほどのデータ野球の申し子って言われてるんですよー」

優希「しかも御両親は検事さんと弁護士さん」

優希「男子にもモテモテだじぇ」

京太郎「誰かさんとは大違いだな!」

咲「む」

5 :>>1、早速台詞をすっ飛ばすエラー:2012/06/14(木) 22:32:24.14 ID:9lP01JRD0

京太郎「そういえば、部長は?」

京太郎「咲に挨拶させようと思ったんだけど……」

まこ「デートしてから来るそうじゃ」

咲「あ、えっと……」

まこ「わしは野球部副部長染谷まこじゃ」

まこ「ポジションはセンターを守っちょる」

咲(先輩かぁ……)

咲(野球部の先輩って怖いイメージがあったけど、この人はそんなに怖くないかな……)

まこ「んでこっちが……」

優希「片岡優希! のどちゃんと同じ1年生の期待の星だじぇー!」

優希「のどちゃんと同じ中学校で、エースを務めてたんだじぇ!」

優希「のどちゃんとは夫婦の仲ってやつだな!」

優希「つまり私こそ清澄の最強投手というわけだじぇー!」

ムロ「毎回5回に捕まって炎上してましたけどね……」

6 :>>1、早速台詞をすっ飛ばすエラー:2012/06/14(木) 22:35:40.05 ID:9lP01JRD0

咲「ええっと……」

ムロ「ああ、私は室橋裕子といいます。ムロと呼んで下さい」

ムロ「それで、こっちが夢乃マホ」

マホ「よ、よろしくおねがいしみゃす!」

京太郎「あ、噛んだ」

ムロ「私がショートで、マホはセカンドを守ってるんですよ」

咲「そうなんですか……」

ムロ「ああ、敬語はいいですよ、私達後輩ですし」

咲「えっ?」

優希「野球部は人数が足りないから、同じく人数の足りない我が母校から人を借りてるんだじぇー」

咲「ええええーーー!?」 ドーン

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:38:40.35 ID:9lP01JRD0

優希「まあ、ムロマホコンビを入れても9人いないんだけどな!」

咲「そ、それはかなりの大問題なんじゃあ……」 タラリ

優希「まぁ、いざとなったらこっそり参加させても多分バレないじぇー」

ムロ「まぁ、練習試合くらいなら……」

優希「ダイジョブダイジョブ、公式大会も今は色々ザルだからなんとかなるじぇ」

優希「男女混合大会になったばかりで、色々てんやわんやだしなー」

咲(大会、出る気なんだ……)

優希「そういえば、えーっと……」

咲「あ、咲です。宮永咲」

優希「咲ちゃんはどこ守ってるんだー?」

咲「えっと、一応>>9を……」

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/14(木) 22:39:23.30 >ID:23M11HLj0
セカンド

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:42:20.65 ID:9lP01JRD0
咲「セカンドです」

マホ「が、がーん! かぶってます! マホ、レギュラー剥奪のピンチです!」

ムロ「いや、そもそも本来なら私達は高校野球はまだ参加出来ないんだってば」

優希「しかしまー、即答出来るってことは、一応そのポジションで定着してたってことかー」

京太郎「咲とマホちゃんのセカンド争いかぁ……どうなることやら……」

ムロ「何にせよ、これで8人。一歩大会に近付きましたね」

咲(まだ入るなんて言ってないんだけど……)

咲(でも、この調子じゃ、試合することなんて多分ないよね……)

咲(フリーバッティングの時の守備くらいなら、お手伝いした方がいいかな……)

咲(バッティングは嫌いだけど、守備自体は好きでも嫌いでもないし……)

咲(何より京ちゃんに嫌われたら、ご飯を食べる場所がいつもの河原かおトイレしかなくなっちゃうよ……)

咲(その河原も、野球部辞めたら原村さんから隠れるために使えなくなるかもしれないし……)

咲(あんまり無碍には辞められないよね……)

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:42:47.57 ID:9lP01JRD0

京太郎「でも、戦力になるとは思えないけどなー。咲は何やらせてもダメだからなァ」

京太郎「でもいないよりはマシか」

ムロ「まぁ、下手くそなのは私達も同じですしね」

優希「ま、守備なんてその内上手くなるじぇー」

優希「それに私が後ろにボールを飛ばさなきゃいいだけだしなっ」 ドヤッ

和(今までの投球内容でどこからその自信が湧いてくるんでしょうか……)

優希「そんなわけで大事なのはバッティング!」

優希「今から咲ちゃんのバッティングを見させてもらうじぇー!」

咲「えっ」

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:43:16.92 ID:9lP01JRD0
[グラウンド]

優希「勝負は3打席でいいなー?」

京太郎「見てるだけってのも暇だし、俺らも守備つくかー」

優希「咲ちゃんは素人っぽいし、多分そんなに打球も飛ばないだろーから……」

まこ「外野はなしでええかのう」

ムロ「一塁と三塁に染谷先輩と須賀先輩に入っていただいて……」

優希「投手は勿論この私だじぇー!」

咲(うぅっ……なんでこんなコトに……)


打 宮永(清澄高校)   VS   投 片岡(清澄高校)

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:44:22.15 ID:9lP01JRD0
和(優希は常にパワーピッチしかしませんからね……)

和(インコースを指定して体に当てでもしたら困りますし……)

和(打たれても宮永さんの打力を見るためと割りきって、ど真ん中を要求しましょう)

優希「喰らえ、必殺タコスボール!!」

咲(わあ、これ、ナックルだよね……?)

咲(すごいなあ、ナックルなんて投げられるんだ)

バシーン!

和「ストライクですね」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:44:43.48 ID:9lP01JRD0
咲「はい」

和(いきなりナックルだなんて……)

和(とりあえずストレートに対応できるか知りたいですし、今度こそストレートを……)

優希(むー……しょうがないじぇー。ここはのどちゃんを立てて……)

優希「せいや!」

咲(おっそ。しかもど真ん中……打ちごろだけど……)

バシーン!

和「……ストライク、です」

京太郎「おいおい、振らなきゃ当たらないぞ」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:45:19.96 ID:9lP01JRD0
優希「せいや!」

咲(京ちゃん、油断してる……)

咲(ファーストはキャッチングが求められるから、初心者じゃないナントカ先輩をファーストに置いたみたいだけど……)

咲(普段ライトを守っている京ちゃんにとって、サードはよく分からないはず)

咲(普段とはバッターボックスを見る角度も違ってるし……)

咲(それに、グラウンドも整備されてない……)

咲(ストレートの回転具合から見て……)

咲(そいっ……股間!)

カン

京太郎「お、当てたか……ひぎっ!?」 ドガッ

優希「うわっ金的」

マホ「い、痛そうですね……」

京太郎「イレギュラーバウンドぉぉ~~~……」

咲「えと……完全に打ち取られたあたりでしたけど……」

和「……記録は、エラーですね」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:45:59.55 ID:9lP01JRD0

バシーン!

和「ストライクです」

咲(京ちゃんはまだ股間が痛くて動きが悪い……)

咲(サードに打ったら内野安打になりかねないかな……)

咲(マホちゃんはさっきから誰かの真似なのか、変なシフトを敷いてる……)

咲(何か変な感じがするし、手を出すのは怖いかな……?)

咲(室橋さんは、高校生に比べたら見劣りするけど、中学生にしちゃしっかりと動けていた……)

咲(さっきも反応自体はよかったし……)

咲(……室橋さんとメガネの先輩だったら、室橋さんの方を贔屓したくなるかなあ)

咲(それに、メガネで顔を覆っている分、メガネ先輩の方がダメージは少ないよね……?)

咲(あの人の方が反応がいい分打球は強めになっちゃうけど……)
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:46:28.29 ID:9lP01JRD0
咲「えいっ」

カン

まこ「は?」

ドグシャアッ!

京太郎「が、顔面強襲……?」 ゾゾゾーッ

マホ「そ、そそそ染谷先輩大丈夫ですか!?」

まこ「な、なんとか……」

ムロ「は、鼻血出てますよ! ティッシュ取ってきます」 タッタッタッタッタ……

和(またエラー、ですか……)
23 :>>19 さるの存在を忘れていた。ペースを落とそう。:2012/06/14(木) 22:48:47.80 ID:9lP01JRD0
まこ「よし……ティッシュも詰めたし、再開といこうかのう」

咲「え、まだやるんですか」

まこ「当たり前じゃ。この丁度でへたっとったら広島じゃ生きていけんわ」

咲「でも、メガネ割れましたし……」

まこ「心配いらんよ。予備のメガネを持ってくるよう部長にメールしたき」

まこ「それに、迫る打球は目を細めれば見えるしのう」

咲「でも、危ないんじゃ……」

優希「ところがどっこい、染谷先輩はメガネを外すと守備が上手くなるんだじぇー」

まこ「視界がぼやけるおかげで、打者の動きが過去に見た近いデータとダブるんじゃ」

まこ「そいでそのデータにおける打球方向に予め移動することで鉄壁の守備を誇っとるんよ」

京太郎「つーわけで、次こそ頑張れよ、咲」

咲「う、うん……」

京太郎「もう当てるのは勘弁してくれよ?」

咲「わ、わかってるよ!」

優希「ま、このタコストレートの威力に負けて守備位置に打たされるのはしょうがないことではあるじぇ!」
25 :書き溜め部分のOP若干長いで:2012/06/14(木) 22:50:34.61 ID:9lP01JRD0

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

和「……またファールですね」

優希「むぅ、咲ちゃん意外に粘るじょ……」

咲(困ったなぁ。メガネ先輩が予想以上に鼻血を吹いたせいで、皆気合を入れ直しちゃったよ……)

咲(強襲の打球を意識してるし、エラーさせるのは難しいかなぁ……)

優希「今度こそ、うりゃあ!」

カン

まこ「見事に後ろに飛んでったのう」

ムロ「ファール、多いですね」

優希「ならば……くらえ、タコスボール3号!」

バシーン!

優希「咲ちゃん手が出なーい!」

優希「見逃し三振バッターアーウト!」

26 :安価まで気長に付き合ってくれるとこれ幸い:2012/06/14(木) 22:51:15.09 ID:9lP01JRD0
和「いえ、これは……」

和「ボール1個分外れています」

優希「え……」

和「ボール……」

咲「フォアボール、だよね」 ニッコリ

優希「ちぇー。不完全燃焼だじぇー」

京太郎「しっかし咲の打撃はパッとしませんなー」

優希「バットに当てることはできるみたいだけどねい」

和「…………」

咲「うん、全然打てなかったよー」

咲「最後のも打てそうになくて見送ったらたまたまボールになっただけだし……」

咲「優希ちゃんって凄いね」 ニッコリ

優希「ふっふっふ、私の凄さが分かったかー!」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:52:43.26 ID:9lP01JRD0

ポツ……ポツ……

ムロ「ん?」

ザーーーーーーーーーーーーーーー

和「……夕立きましたね」

まこ「のんきこいとらんと、ボール片付けてさっさと部室に避難じゃ!」

優希「やっぱり練習場はドームである必要があるじぇ……」

まこ「どこのブルジョワじゃ」

ムロ「でも、去年の代表校龍門渕高校は屋根付きって聞きましたよ」

優希「むう、うちも導入してもらうじぇ!」

まこ「アホなこと言うとらんと、さっさと拾う!」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:55:56.56 ID:9lP01JRD0
[部室]

ムロ「いやー、災難でしたね」

優希「のどちゃんスッケスケでセクシーだじょ」

京太郎「何だとお!?」

優希「馬鹿犬には見せてやらないじぇー!」

和「最低です……」

ガチャッ

久「いやー参った。いきなり降りだしてくるなんて。傘持ってきてないわー」

咲「えっ、生徒会長!?」

久「んー?」

久「この学校では生徒会長じゃなく学生議会長ね」

和「野球部のキャプテンなんですよ」
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 22:56:48.89 ID:9lP01JRD0
咲「何で野球部に……」

久「野球が好きだからに決まってるっしょ」

久「あなたが新入部員ね」

咲「ども……」

久「どう? とりあえず仮入部みたいな感じで体験してもらったと思うけど……」

久「人数足りないけど、正式に入部してくれる気になった?」

咲「え、えと……」

咲「す、少し考えさせて下さい……」

咲「あ、も、もう雨ですし、練習出来ないでしょうから、これで失礼しますね!」

ドヒューン!

京太郎「あ、おい咲、傘持ってなかっただろ、送って……って、もういねぇ」

優希「行っちゃったじぇー」

まこ「シャワー浴びていけばよかったのにのう」

和「嵐のような人でしたね……」
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:00:21.53 ID:9lP01JRD0
優希「しっかしのどちゃんのキャッチングは相変わらずすごいじぇー」

京太郎「へっぴり腰で危なっかしいスイングいっぱいされてたのに、優希のナックル全部キャッチするんだもんなぁ」

マホ「そのうえしっかりボールを見て球審まで務めるなんてさすがです!」

久「そういえば、あの娘のバッティングどうだったの?」

久「まこがメガネを壊されたってのはメールで聞いたけど」

まこ「快心の当たりってわけじゃなかったのに、どうも避けられなくてのう」

まこ「変なミートしとったから、おかしな回転かかっとったんじゃろう」

まこ「まさか打球が変化するとは……」

まこ「まぁ、メガネ代を盾にあの小娘を部員に出来ると思えば結果オーライじゃ」

ムロ「アクドイですね……」

優希「ピンチをチャンスに、染谷先輩はさすがだじぇー」

優希「情けない声を上げて蹲るだけの犬とは違うな!」

京太郎「う、うるせー!」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:01:00.91 ID:9lP01JRD0
京太郎「アソコへのダメージってのは、お前の想像よりもやばいもんなんだよ!」

久「ダメージ……?」

京太郎「あ、いや、その……」

優希「咲ちゃんの打球がイレギュラーバウンドして、犬の股間にダイレクトヒットしたんだじぇー」

久「…………それはまた運が無い」

久「それで、エラーでウヤムヤになった分は仕切りなおしたの?」

和「それが、時間がなくて……」

京太郎「結局タコス娘の自滅フォアボールで終わっちまったんだよな」

優希「うるへー!」

優希「仕方ないじぇー、あんだけファールで粘られたらコントロールも乱れるじょ!」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:01:45.23 ID:9lP01JRD0
久「……3打席勝負で、安打0、ね」

京太郎「まぁ、初心者ですしねぇ」

久「でも塁には必ず出てる」

まこ「……言われてみれば、おかしなことやっとる」

室橋「でも出塁率って、エラーで出ても下がりますよね」

優希「じゃあやっぱりそんなに大したことないじぇー」

久「それがホントに偶然なら、ね」

和「……意図してそれをやってのけたと言うんですか」

ムロ「確かにこのチームは守備が美味いとは言いがたいですけど……」

マホ「安打を打たずに出塁をするなんて……」

久「不可能ってかい……?」

久「でも」

久「圧倒的な力量差だったら?」

和「…………!!」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:06:12.71 ID:9lP01JRD0
久「もしも神がかり的バットコントロールを持ってして」

久「打球に回転を与えながら返すことでエラーを誘発しているとしたら……」

久「優希のコントロールの悪さを読んで、敢えてファールになる当たりを続けて四球を誘発したのだとしたら……」

ダッ!

タッタッタッタッタ

優希「のどちゃん!」

久「プッ」 ククク

京太郎「何笑ってるんスか気持ち悪い」

優希「キサマ会長になんてことを」

久「いや。あの子がうちの部に正式に入ってくれないかな――と思ってさ」

久「全国狙えるかもよ?」

京太郎「え」

優希「え」

京太郎(中学生を入れても8人しかいないのに……)
36 :>>34 能力とかいう便利な言葉で納得して頂きたい:2012/06/14(木) 23:07:13.25 ID:9lP01JRD0
[通学路]

和「宮永さんっ!」

和「0安打3出塁」

和「ワザとですか……?」

咲「……私が打つといつもあんな風になっちゃうんです」

和「な……」

和「なんでそんな打ち方……してるんですか……」

咲「……正月休みの身内野球大会で……」

咲「凡退したら仲間にタバコの火を押し付けられるから出塁することを覚えて――」

咲「安打を打ったら敵チームから後でシメられちゃうから打たないことを覚えました」

和「もう1回……もう1試合打ってくれませんか!」

咲「ごめんなさい」

咲「私は野球、それほど好きじゃないんです」

【6月15日(金)】

[図書館]

夕映「その本なら貸し出し中です」

咲「そうですか……」

久「何が貸し出し中だって?」

久「やァ」

咲「会長!」

久「どれ」

まこ「のぞくなよ……」

久「あーこの本か……」

夕映「なかなか人気で、この図書館でも向こう半年は予約で埋まってるです」

久「これなら私持ってるわよ。貸そっか?」

咲「いいんですかっ?」

久「そのかわり」 ニマー

久「宮永さんに一つお願いがあるの」

【6月16日(土)】

[公園]

咲「今日だけでいいんですね?」

久「うむ」

久「練習試合を申し込まれて受けたはいいけど、人数足りなくて困ってたのよね~」

咲(何で受けたんだろう……)

久「待ち人きたるー」

和「…………!」

咲「…………」 ハニカミ

乃枝「この度は、練習試合の申し入れを受けていただいてありがとうございます」

久「いえいえこっちこそ」

久「まさか人数足りてないのにオーケーしてくれるとは思わなかったわ」

乃枝「こちらとしても、新造な学校非公認チームですからね」

乃枝「相手は選んでられませんよ」

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:12:40.14 ID:9lP01JRD0
咲「この人達が今日の相手……」

久「そう。東邦星華高等女学院野球部――通称・櫻花會の方々よ」

記子「非公認ですけどねー」

ムロ「何でも、男子に負けない野球をするがモットーだそうですよ」

マホ「でも男性中心のチームには断られ続けたみたいで……」

京太郎「何だかんだで男女の身体能力さは大きいからなぁ」

晶子「私達は、殿方にだって負けません!」

久「……とまぁ、こうまで本気になってくれてるわけで」

久「こっちは外野2人シフトになるけど、手を抜く気はないから」

久「それに宮永さんは1番バッターにしてあるから、期待してるわよ!」

咲「え、えええ~~~~~~~~~?」 ガーン



清澄高校野球部   VS   櫻花會

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:14:45.97 ID:9lP01JRD0
プレイボール!

優希「フハハ! タコストレートできりきりまいまいだじぇ!!」

片岡投手、好調な立ち上がりを見せ、わずか12球で三者三振に仕留める。



打 宮永(清澄高校)   VS   投 小笠原(櫻花會)
          ノーアウトランナーなし
               1回裏
            清澄0-0櫻花



咲(うう、打順が来ちゃった……)

咲(相手のピッチャーはさっきなんか怒ってた人だし……)

咲(短気そうだから、ヒット打ったら怒られちゃうよね……)

咲(ここはカットばっかりして……勝手に四球を出してくれるのを待とう)

小梅(うわー……ただでさえ制球よくないのに、カットで疲れさせられるよぉ~~~……)



○打 宮永(清澄高校)   VS   投 小笠原(櫻花會)●
                  四球
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:15:44.84 ID:9lP01JRD0
乃枝「……いやー何というか……」

乃枝「まさかここまで弱いとは……」


櫻花會先発小笠原、立ち上がりを捕まり炎上。
先頭打者宮永に四球を与え、続く染谷・原村両選手にも安打を浴び早々に失点。
更に4番・竹井にレフトオーバーのスリーベースを打たれると、調子を崩したか5番・片岡に四球。
更に続く6番・須賀の肩口へ当ててしまい、満塁のピンチを招く。
7番・夢乃が貧打を発揮し捕手・鈴川のナイスフィールディングも手伝いホームゲッツー。
しかし続く8番・室橋相手に再び四球を与え、ツーアウトながら早々に打者一巡の憂き目にあった。



打 宮永(清澄高校)   VS   投 小笠原(櫻花會)
          ツーアウトランナー満塁
               1回裏
             清澄3-0櫻花



バシーン!

記子「またボール……」

咲(フォアボールで押し出しでいいか……)

咲(もいっこ、ボール……っと)

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:17:37.71 ID:9lP01JRD0

晶子「もう! なんなんですの!!」

咲(あ、でも、これ以上四球させるとあの人爆発しちゃうかも……)

咲(怒られるのは嫌だしなあ……)

咲(エラーを誘発する方向にしようかな……)

咲(フォアボールさせるよりは面倒なんだけど……)

咲(まぁでも、安打0を維持しながら出塁するためだもん、しょうがないよね)

咲(と、考えてたら投げられちゃった)

咲(まだ準備は不十分だから、ここはカットして……勝負は次かな)

カン

まこ「ファール、か……」

京太郎「3ボールからの糞ボールにそれってどうなん!?」

京太郎「素人にもほどがあるよっ」

和「……」
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:21:00.43 ID:9lP01JRD0
咲(でもそしたら他の人があのピッチャーさんに怒られそうだし……)

咲(あんまり、人が争ってるのは見たくないなぁ……)

咲(私のせいで、ってなると、尚更気分が悪いし……)

咲(そうだ。犠牲フライを打ち上げよう)

咲(それならチームの皆も文句はないだろうし、向こうもアウトカウントが増えるから怒らないよね)

咲(それに、部長さんのあの感じ――私の異質さに、気付いちゃってるかもしれないし)

咲(1塁を踏まずに戻れる犠牲フライが一番だよね)

咲(私の能力『打率0を維持しながらもチームに貢献』の全貌まではわかってないだろうし……)

咲(1塁を踏むっていう分かりやすいパフォーマンスがなくなったら、変な期待はなくなるよね……?)

咲(万が一にも落とされないように、ボールには回転をかけないように……)

咲(ライトの人は何かメモを取ってて試合に集中してないし)

咲(足が速かったセンターの娘は前進守備で最悪本塁アウトになるから……)

咲(深めに守ってるレフトの丁度真上に落ちるように……と)

咲(風に流されたり日光が邪魔にならないような角度と高さで……)

カン
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:22:57.24 ID:9lP01JRD0
 >>1(あ、しまった、打順調節の際にマホちゃんゲッツーとられてるじゃん)

 >>1(犠牲フライはなりたたないから、まこは本塁アウトということで……)
65 :まこじゃねえ、マホだ。落ち着け俺。:2012/06/14(木) 23:24:29.97 ID:9lP01JRD0
京太郎「あちゃー、レフトフライか……」 ユーターンッ

ムロ「……犠牲フライには余裕ですね」

鏡子「え? ええ?」 ヘディング

小梅「あ……」

京太郎「お、落としたァ!?」

咲(えええええええええ!?)

咲(何で!? どうして!? 無回転打球の捕球くらい幼稚園の頃叩き込まれるのが普通でしょ!?)

久「今度はエラー、か……」

まこ「無安打出塁記録、順調に更新中じゃのう」

鏡子「ぼ、ぼーる! ボールどこぉ」 アセアセ

まこ「……しかも相手の守備のおかげで本塁まで帰ってこれとるし」

久「さすがにこれは狙ってやったわけじゃないと思うけどね……」



○打 宮永(清澄高校)   VS   投 小笠原(櫻花會)●
              レフト桜見のエラー
               清澄8-0櫻花

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:27:02.97 ID:9lP01JRD0
晶子「ああ、もう! なんなんですの!」 ピュッ

まこ「うおお!?」

ガッ

京太郎「顔面!?」

久「いや、バットに当たったわ」


走者を一掃されるも心機一転とは行かず、ボールは2番・染谷の顔面へと向かう。
間一髪で染谷はこれを回避するも、運悪くボールはバットに直撃。
櫻花會の捕手・小梅がこれを掴み、長い攻撃が終わった。


優希「ふっはっは! このまま逃げ切ってやるじぇー!」


2回の表、攻撃が長すぎて集中力が切れたのか、ここに来て清澄のエース・片岡がど真ん中への失投。
櫻花會の4番・月映(巴)の一振りで櫻花會が一点を返す。
しかし片岡、なんとかここで立ち上がり、5番・月映(静)をわずか2球でショートゴロに抑える。
その後6番・鈴川を四球で歩かせてしまうも、7番・小笠原をゲッツーに仕留めた。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:27:43.87 ID:9lP01JRD0
咲「凄い……」

久「ま、和はウチの期待の星だからねぇ」


その裏、先頭打者原村がライト方向にホームランを放つと、流れは再び清澄に。
4番・竹井がセンター前に安打を放つと、5番片岡がライト前ツーベースで1点を追加。
6番須賀の打球はサード前内野安打となって、ランナー1・2塁のチャンス。
2点返せばコールド勝ちの清澄は、7番夢乃にバントをさせる。
夢乃のバントは拙かったが、櫻花會のバント対策が不十分だったこともあり、
打者はアウトになるもののワンナウト2・3塁の一打サヨナラのチャンス。
ゲッツーを狙ってか、8番室橋を敬遠し、今日安打のない1番・宮永との勝負に出た。


咲(どうしよう、ここで下手にエラーさせたらサヨナラになっちゃうよ……)

咲(決勝点をあげるなんて、怖くて出来ないし……)

咲(相手のピッチャーさんがさらにカッカしそうだけど、ここは四球を選んだ方がいいよね……)

久「なんて考えているんじゃないでしょうねぇ」

咲「へ?」

久「てなわけで、ターイム!」

久「宮永さん、野球は勝利を目指すものよ」

久「次は、打ってみなさい」

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:29:00.50 ID:9lP01JRD0
久「勝つための打球を打ってみなさい」

咲「わ……わかりました」

マホ「な――わかりましたって……」

まこ「確実に打てるっちゅーんか!!」

咲「勝つって……コールドってことですよね」

咲「でも――」

咲「さすがに前進守備してますし、ただのエラーで二人返すのは難しいですよ」

和(……どんな打者がどんな棒球を相手にしても、打率10割なんてことはない……)

和(それなのに、確実に打って、狙った通りの展開にさせるなんてことが……)

久「まぁ確かに、須賀君の足は速くはない……」

久「女子に比べたら速くても、走塁技術に無駄が多いし、“曲がる”時のロスは大きい……」

久「内野のエラーじゃ厳しいかもね」

咲「それじゃあやっぱり、確実に一人返した方が……」

久「そうね……じゃあ、こんなのはどうかしら」

久「えーっと、尾張さーん」

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:29:42.77 ID:9lP01JRD0

久「……って、ことでいいかしら」

記子「まぁ、別に構いませんけど……」

久「それじゃ、よろしく」

まこ「やれやれ、人使いが荒いのう」 タッタッタッタッタ

和「……」 タッタッタッタッタ

マホ「マホも行きます!」 タッタッタッタッタ

咲「あの、これは……?」

久「ん? ああ、選手交代」

久「外野を清澄の面々で固めてみたわ」

咲「へ?」

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:30:13.05 ID:9lP01JRD0
久「咲シフト、とでも呼ぼうかしら」

久「外野を、和とまことマホちゃんの三人だと思いなさい」

咲「でもあそこって、フェンスとして設定した白線の向こうじゃ……」

久「気にしない気にしない」

久「元から今回グラウンドにした面積は狭いんだし」

久「プロの球場だとあそこまで外野だったりするよの」

咲「そうなんですか……」

久「だから、そうね――ライトを守ってる和に対して打ち上げて、犠牲フライにしてみせなさい」

咲「なるほど……あそこに犠牲フライを打てたら勝てるんですね」

咲(確かに、あの距離なら返球は際どそうだし、仮に勝ってもクロスプレーで勝利を収めた京ちゃんの方が目立つかな?)

咲(京ちゃんも目立たせてあげたいし……頑張ってあそこまで打たなきゃ)

咲「大変そうだ……」
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:33:38.02 ID:9lP01JRD0
打 宮永(清澄高校)   VS   投 小笠原(櫻花會)
          ワンナウトランナー満塁
                2回裏
             清澄9-1櫻花


晶子「くっ……何を投げてもファールに……!」

咲「…………」

カン

咲「……今日はこれ、フルスイングでもいいんですよね」

小梅「え……?」

晶子「今度こそ、三振――!!」 ビュュッ

小梅(あ、いいコース……!)

咲「ツモ」

グワラガキーーーーーン

咲「私……柵越えしたの初めてだ……」 プルプル

咲「いつもは打ててもギリギリファールにしてたよ……」

久「…………」 ポカーン

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:34:16.44 ID:9lP01JRD0
優希「……って、咲ちゃん何戻って来てるんだじぇー」

久「そうよ、早く塁を回ってらっしゃい」

咲「え……」

咲「だって今回も犠牲フライじゃないですか」

京太郎「!?」

優希「はぃ? 何言ってますか咲ちゃんは……」

咲「ライトの原村さんに捕球されたから犠牲フライですよ」

咲「京ちゃんが帰ってきたから、勝てはしたみたいだけど……」

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:34:59.46 ID:9lP01JRD0

久「いやいや宮永さん」

久「私ゃ勝手にフェンス向こうに守備みたいに選手を配置させて下さいって尾張さんにお願いしただけで」

久「ホントに皆が守備してたわけじゃないのよ」

久「実際櫻花會の人達の外野はそのままだったわけだし」

咲「え」

咲「じゃあ」

優希「実際の成績はこんなだじょ」



○打 宮永(清澄高校)   VS   投 小笠原(櫻花會)●
         ライトスタンドに満塁ホームラン
            清澄13×-1櫻花



咲「じゃあ……」

久「あなたのグランドスラムよ」
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:35:42.69 ID:9lP01JRD0
京太郎「咲にも取り柄があったんだな」

まこ「しかもまーた毎回1塁踏んだりしょぉったなんて……」 ←戻ってきた

優希「すごいよ咲ちゃん」

久「そう。よくやったぞ」

咲「打ったー?」 ←ダイアモンドを回ってきた

咲(私が……ヒットを打った――――!!)

和「…………」

優希「のどちゃん?」

和「…………」 ダッ

タッタッタッタッタ

優希「またですかっ」

優希「……泣いてた?」

まこ「まさか」
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:36:42.33 ID:9lP01JRD0
久「そうそう宮永さん」

久「約束の本は部室にあるから」

久「暇な時の読書本棚があってね」

久「野球部に入れば読み放題!」

ムロ(そんな部室だから弱いんじゃないかなーこのガッコ……言わないけど)

咲「…………」

久「和が気になる?」

久「行ってらっしゃい」

久「本は泣いて逃げたりしないから」

咲「……!」 ダッ

タッタッタッタッタ

久「……さて、私達は櫻花會の皆さんにお礼の挨拶するわよー」

久「その後はみっちりミーティング!」
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:38:56.50 ID:9lP01JRD0
[通学路]

咲「原村さん!」

和「…………」

咲「私にとって、野球は体育会系ノリでいじめられるイヤな儀式にすぎませんでした」

咲「でも今日原村さんと打てて嬉しかった」

和「……なんだって勝てば嬉しいものですよ」

咲「ちがうよ」

咲「原村さんと一緒にホームランを打ったから!」

咲「家族の人がホームランを打った感じと違ってたし……」

咲「勿論、敵の人が打った時とも違って……」

咲「楽しかった!」

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:40:13.23 ID:9lP01JRD0
和「…………」

和「私は……悔しいです」

咲「……?」

和「私は、野球が好きです」

和「だから貴女にかなわないのではと一瞬でも思ってしまったことがとても悔しい」

和「野球を好きでもないあなたに……」

咲「…………!」

和「それに……」

和「手強い相手はたくさんいますよ……」

和「全国に」

咲「…………」
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:40:52.68 ID:9lP01JRD0
[自宅]

和『野球を好きでもないあなたに……』

咲「…………」

咲父「……珍しーじゃねーか、バットなんか出して」

咲「お父さん……おかえり」

咲父「売っちまうか、それ」

咲父「家族で白球打つことももーないだろ」

咲「…………」

咲「いや、まだ取っとこうよ。ねっ」

咲「おかーさん達戻ってくることもきっとあるよ」

咲父「フン……どーだか」

咲「…………」 ショボン

90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/14(木) 23:41:39.68 ID:9lP01JRD0
バサッ

咲「!」

咲「これ……光れ甲子園の星……?」

咲父「57ページ」

咲「…………」


[雑誌]

スキルの高さで男子を超えるスーパー女子!
全国高校野球選手権大会を男女混合にするに至らせた伝説の虎姫・宮永照選手を直撃!
何を思って女子野球部で甲子園に乗り込んで、如何にしてその頂点に君臨できたか――
本誌独占完全インタビュー!!


[自宅]

咲「お姉ちゃん――――」 ギュッ