こどものからだ 現状報告


日本の子どものからだがおかしいといわれてほぼ40年、既にそれが当たり前になってしまいました。

それでも高齢者の話を聞く機会がある人達は、子供は毎日外で遊ぶものであるということを知っているかもしれませんが、多くの人は週に1回程度の運動で十分であると考えているようです。



子どもの成人病が話題になり、生活習慣病と名称変更して20年以上経ち、女子中学・高校生の体力低下が相当ひどい状況になっているといわれながらも相変わらず運動不足と減量が話題になるだけで大きく変化していません。体力低下がすすみ、減量ばかりに関心を持つことで、少しばかりの運動をしても成果が出てこない状況です。


 平成23年には、北海道の女子中学生の体力は47位、男子が45位、小学生男子は42位、女子は41位と報告されました。恐らくこのまま成長していくのでしょう。30年前の子どもたちが今中高年で、これまでにない病に倒れる状況をみながら、この人達の老後はどうなるのか。またそれよりも体力低下している今の子ども達の未来はどうなるのか。そのように考えているうちにそれ以上に大変な状況が報告され、北海道もいよいよ体力づくりと学習能力向上に励まなくてはならないと動き始めました。しかし焼け石に水状態からの向上は、子供の成長に追いつきません。一時も早く子どものからだづくりに大人が燃えなくてはならないと考え、老骨鞭打ちながら退職教員達とその指導に頑張っています。

 北海道では「11歳児が日本一の肥満」であるというショッキングな報道が耳新しいのですが、翌年は12歳児も肥満、27年には17歳までの各年齢肥満傾向と報道されました。あれから数年後の今どのように変化しているのでしょうか。
 1歳の幼児から運動不足であるといわれる現状からすれば、継続的な運動不足が高学年に、そしてとうとう高校年齢(思春期全て)に現れているものと考えられます。
 令和元年、年末の 新聞で、全国的な子どもの体力低下を受けてスポーツ省が動くと報告されました。北海道は中学女子が最下位でした。これは前から続いています。これまで何度も聞いたことです。

 現場で子どもの運動(あそび)を38年(令和2年度)指導してきた私が考えるに、体育・スポーツの世界が少しは参加種目や参加者数が変化したかもしれませんが、動かない、動けない子ども達にとってはほとんど変化も成果も見えないように思います。

 キッズクラブにおいて、保護者が接する子育ての態度に心配事が増えていきます。僅か2・3歳の子に週に1回程度でも運動すればよいと考えている保護者が多いことに驚きを感じながら、体力低下は更に進むのではないかと心配になります。こんな運動を毎日しなければ、或いは午前午後の2回位動かなければ満足しない幼児期の遊びの重要性を知らない親たちが増えています。

 私たちの長い経験から、3年生から肥満傾向が出ています。4年生でその傾向が強くなると「動きたくない」「動けない」「運動が苦手」となり、運動が上手にならないことでますます興味を失い、動くことから遠ざかっていきます。
 従って高学年では、動き不足が考えられる肥満傾向かやせぎすの二極化している様子が見えます。学校医から肥満傾向が伝えられ、食事については栄養士から指導が広がっていますが、動き不足の補い方がまだ遅れているのが現状です。その間に、子どもはどんどん成長していきます。
 特に女子の不活発さを見ると、元気よく活動する子としない子の差が大きく広がるのも高学年にいくにしたがって広がるように見えます。やせの糖尿病が増加しており、その治療法は肥満による糖尿病治療とは異なりこれからその対策に乗り出す状況です。
 痩せているから大丈夫などとは言えなくなりました。動き不足、不規則な生活習慣によることは間違いないと思います。

 私達は、縦断的に、継続的に子どもの様子を見ながら活動していますが、子どもの動き不足は危機的状況であると考えています。週に1度の活動では補えないほどの動き不足なのです。大きな声を張り上げ、喧嘩をしながらも楽しそうに遊び、仲良く家路を急ぐ子どもの様子を見るとほろりとしてしまいます。子どもは遊びで育ち、人間関係を学び成長していく様子がよく見えます。

しかし一方で、別の問題が起こっていることも知っていただきたいと思います。

 週1回といえども低年齢からの偏ったスポーツ活動にあおられ、運動不足を気にする保護者は、子どもが好きな運動クラブに入ることを喜んでいるという状況をつくってきています。


私達は、子どもは自由に、のびのびと運動を楽しんでもらいたいと考えており、運動クラブでの指示通りの運動活動だけでは、生涯継続して運動を楽しむようにならないのではないかと案じています。このような時代の現状と経験から、こどものからだつくりを研究し、ワークショップを行っています。


 33年前に教員退職者が集まり、日本の子どものからだがおかしいといわれる中、}何とかして現場と手をつなぎ子どものからだづくりを応援しようと始めました。当初は土曜日も休みがなく、日曜日に校庭を借りて行い、やがて月二回の土曜休日を利用し、更に毎週土曜日に活動できるようになりました。札幌市内20校の小学校から始まりましたが、既に学校によっては、つまり校長・教頭先生の考え方一つで実施できたり、できなかったり、うまく機能していた学校が突然出来なくなったりと苦労が続き、徐々に開催校が減少していきました。それに伴い、子どもの体力低下はどんどん進み、参加する子どもが減少していきました。

 その経緯をみると、運動嫌いよりも子どもの習い事が増え、日常生活での運動も不足し、ますます動きが鈍いからだへと変化していきました。そんな中でも、継続できるところでは指導者側も子どもから学ぶことが多く、体力低下の中でのからだづくりをどのように進めていくべきか考えさせられました。僅かの活動で、昔の子どものように元気になる様子を見ると、何とかこの活動が広がらないものかと思います。

 子どもは楽しくなければなかなか動きませんし、やめてしまいます。楽しみながら体力がつき、子どもの心も育てられるものをと工夫しながら進めています。令和2年で子どものからだづくり塾は38周年です。更なる発展のため、子どものからだづくりは日本の急務と考え頑張ろうと思っています。

 遠足の翌日、野球部やサッカー部の子どもたちが筋肉痛になり、疲れたと言う報告を受け養護教諭が愕然としたと聞きました。日頃運動をしているようでも、基本的な歩きや生活に要する動きづくりが出来ていないことがわかります。中学生になると、野球部は上半身、サッカー部は下半身が発達している事が目に見えてきます。昔は小さい時から偏った運動をしませんでしたので、中学生からスポーツによるからだの偏りは見えませんでした。

 スポーツをしている子どもの方が、男の子でも内股、猫背、腰猫背、足を引きずって歩く、しかも歩き方が悪く速度が遅いなどが目立ちます。スポーツに耐えられるだけのからだをつくってからスポーツをする、或いはからだをつくりながらスポーツをするようにしなければ、スポーツすることによって偏った姿勢が身につき、傷害を招くことにもなりかねません。実際に子どものスポーツによる怪我が増えていると整形外科医が述べています。
 子どもはいろいろなスポーツ的活動で、楽しみながら体力をつけ、仲間と上手に人間関係を作ることを学びます。水を得た魚のごとく暴れまわる明るい子供達の声を聞きながら、今の子ども達はやるべきこと、やらねばならないこと、やりたい事が多くて大変です。束の間を利用し、大騒ぎをして楽しんで遊んでいる姿を見ながら現代っ子がかわいそうになります。
 出来るだけ遊べる環境、自由に動ける環境をつくってあげるのは大人の責任だと思います。}

布上恭子/ライフスタイル研究所






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最終更新:2020年02月01日 14:45
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