6月;


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6-1、3日(HR)/教室


礼「えー、それでは皆さんの楽しみにしていた…テストの成績を返したいと思います。」

先生がそう言った途端に教室中からブーイングが聞こえ出す。

礼「はいはい、静かに!それじゃ名前を呼ぶから前にとりに来てください。…有栖川小兎!」
小「は、はい!」

名前を呼ぶから…と言っても、まあ呼ばれる順番は出席番号順になのだが。

小「うぅ~…はあ…」

出来が悪かったのだろうか、成績表を受け取り一瞬見た有栖川はタメ息を付きながら自分の席へと戻っていく。

小「…ちょっと、なに見てんのよ。」
主「べ、べっつにー…はは。」

成績表を受け取ったみんなの反応は、喜び、落胆と人それぞれだ。
俺はどうなんだろう…俺的には良く出来たと思うのだが…多分…。
う、うん、リヨさんにも勉強見てもらえたんだし…良い…はず、だよな…?

礼「○○●●!」
主「あ、はい!」

名前を呼ばれ成績表を取りに行く。
やっぱり結果を見るのは緊張するな…。
俺はゆっくりと成績表を開く。

!!!!!!!
やった!大分良い成績だぞ!

主「いよっしゃ!」

思いの他良い成績にガッツポーズをする。

礼「…以上です。成績の良かった人も悪かった人もいると思いますが、また次も頑張ってくださいね。」

―キーンコーンカーン

ちょうどそこでチャイムが鳴り、休み時間になった。
そうだ、成績のことリヨさんに伝えよう!
お世話になったし、お礼も兼ねて…

キョロキョロと周りを見渡してリヨさんを探すと、まだ自分の席についたままで成績表を見ていた。

主「リヨさん!」
リ「あ………。」

名前を呼び近づく。

主「有難う!」
リ「え、いえ…私は何も…」
主「こんな良い成績が取れたのもリヨさんのおかげだって!」
リ「そ、そんな…●●さんの実力ですよ…」
主「いやいや、俺普段こんな良い成績取れないもん。本当、リヨさんに頼んで正解だったよ!」
リ「えっと…」
主「本当に有難う!」
リ「いえ…お力になれたのなら…良かったです。」
主「なったなった!十分すぎるほどなった!…あ、リヨさんはどうだった?って、俺より全然良いんだろうけど…やっぱりまた1位?噂でリヨさん、ずっと1位だって聞いてるし…」
リ「私は…その…」

その時、少し離れたところでお喋りする声が聞こえた。

日「すごい!姉さん、1位とっちゃったの?」
暁「ふふ!」
日「姉さん頑張ってたもんなー…おめでとう。」
暁「ありがとう!」

会話内容に思わず振り向く。
日向くんと暁子ちゃんだ。
暁子ちゃんが1位だったって言うことは…

主「あ…」

またリヨさんに向き直すと、気まずそうに俯いていた。

主「あ、あの、ごめん…俺、一人で浮かれてて…!」
リ「いえ…成績が良いのは喜ぶべきことですし…」
主「や、でも…その、何て言うか…ごめん。」
リ「そんな…謝らないでください。」
主「でも、あれだよな…きっと、俺に教えてくれたりしてた所為で勉強時間減ったんだろうし…」
リ「いいえ、私の実力が足りなかった所為です…●●さんの気になさることではないですから…」
主「いや、リヨさんには実力あるよ!」
リ「本当に実力があれば、これくらいでは何ともありませんよ。」
主「でも………」
リ「少し、お手洗いに行ってきます。では…」
主「あ………」

行ってしまった。
なんで何も気付かずにあんな軽はずみな言動してしまったんだろう…
その後も上手くフォローできなかった自分が悔しい。



6-2、3日(昼休み)/掲示板


昼休みにはすでに掲示板に成績上位者の名前が張り出されていた。
この学校では各学年上位10位までの人が発表されることになっている。
掲示板の前は人でごった返していた。

2年の項目を見てみる。
やはりさっき教室でも聞いたように1位は暁子ちゃんだ。
リヨさんは…2位か…。

主「はあ…。」

俺にしてみれば2位でも全然凄いのだが、ずっとトップだった人からしてみればショックなのだろう…
思わずタメ息をはく俺の耳にやけに明るい声が聞こえてきた。

後輩「きゃー!すっごぉーい!生徒会長満点だってー!!」

まったく、人の気も知らずに…。
でも生徒会長…か…。

今年転入してきたばかりの俺はまだ生徒会長が誰なのか知らなかったりする。
ふと3年の項目を見てみた。

『1位 灰塚??  500点』

灰塚…?
そう言えば前にリヨさん、3年に姉がいるって言ってたよな…。
もしかして…

リ「あの、●●さん…」
主「ひっ!?」

考え込んでいると後ろから行き成り声が掛かった。
び、びっくりしたー…

まだドキドキいっている胸を押さえながら後ろを向いた。

リ「あ、あの…大丈夫ですか?」
主「何だ、リヨさんかぁ~…驚かさないでよ~…」
リ「す、すみません、そんなつもりではなく…」
主「あ、いや勝手にこっちが驚いただけだし…あ、で、どうしたの?何か用?」
リ「その…今朝のことで…あの、その…雰囲気を悪くしてしまい、申し訳ありませんでした…。」
主「え、あ!全然俺は気にしてないよ!!むしろ、俺の方こそ…」
リ「●●さんは少しも悪くありません。私が…」
主「あ、えっと………じゃあ、お相子ってことで…どうかな?」
リ「お相子…ですか?」
主「そ、お相子。どっちも悪くないってことで。」
リ「はあ…」
主「で、この話題終了。」
リ「……………。」
主「ね?」
リ「ふふ…そう、ですね…。」

その時リヨさんが一瞬だったけどはっきりと笑った。



6-3、3日(放課後)/教室


―キーンコーンカーン

今日も一日が終わり、各自帰宅したり部活に行ったりと思い思いの行動をとっている。

ち「うわっ、雨降ってるー!」

ふと垂髪の大声が聞こえてきて窓から外を見る。
確かに雨が降っていた。
しかも小降りではなく本格的に。
天気予報では今日の降水確率が午前30%、午後70%って言ってたもんな…
良かった、傘持ってきてて。

ち「うぅ~…何で雨なんて降るのよぉ~…!」
羽「お前傘持ってこなかったの?」
ち「だって朝晴れてたじゃないのー!…そりゃちょーっとは曇ってたけどさぁ…」
羽「いや、思いっきり曇ってただろ…。ったく、天気予報くらい見ろよ…午後から降水確率70%だったぞ?」
ち「嘘ぉ!?え、何?じゃみんな傘持ってきてるの!?」
羽「当然。なあ●●!」

主「え?」

聞こえてくる会話を適当に聞き流しつつ帰る準備をしていると行き成り話をふられた。

羽「傘、持ってきてるだろ?」
主「ああ、うん。ほら。」

答えながら鞄の中に入れてた折り畳み傘を見せた。

ち「なんて用意の良い…!」
羽「用意が良いんじゃなくて普通。」
ち「なによー、そんなの私が馬鹿みたいじゃない!」
羽「いやだって実際…なあ?」
主「うん。…あ、そう言えば今朝も垂髪、遅刻ぎりぎりだっただろ。」
ち「ぎくっ!」
羽「あー…、なるほど。天気に構ってる余裕なんてなかったってことですか。」
主「俺の予想だけどな。」
ち「あ、あははー…せ、正解…かなぁ?」
羽「俺に聞くな!」
主「それにしても雨ねぇ…そろそろ梅雨入りだもんな。」
羽「そうなったらまた毎日傘がいるわけか…めんどくせ。」
ち「て言うか私はこれからの心配より今日の心配しなくっちゃ!」

垂髪はそう言うと、クラス全員に向かって大声を上げた。

ち「ねーねー!誰か傘2本持ってないー!?」

一瞬静かになり、その後各々の答えが返ってくる…だが、その中に垂髪の望む答えはない。

ち「うぅ~…そんなぁ…」
羽「まあそんなに上手くいくわけないわな。」
主「傘置き場に残ってるの使っちゃえば?」
ち「ナイスアイディア!…あ、だけどまだビニール傘残ってるかなぁ…?普通の傘だと使うのにちょっと抵抗があるって言うかー…」
羽「まあ運しだいだな。」

リ「あの…」

その時小さな声が聞こえた。
振り向くとそこにはリヨさんがいた。

ち、羽「!?」
主「リヨさん、どうしたの?」
リ「あの、これ………」

リヨさんの差し出した手には折り畳み傘が握られていた。

主「傘…?」
リ「その…私、もう1本ありますので…」
主「えっと、それじゃこれ…垂髪に?」
リ「はい…」

リヨさんはゆっくりと頷く。

主「だってさ。良かったな、垂髪。」
ち「へ!?」

ただ呆然と俺とリヨさんのやりとりを見ていた垂髪が、話をふられてやっと反応する。
ちなみに羽生治はまだぽかんとしている。

リ「…どうぞ。」
ち「え、は、灰塚さん…いいの…?」
リ「どうぞ。」
ち「あ、あのー……えっと、どうも…ありがとう…」

垂髪は戸惑いながらも差し出された傘を受け取る。

リ「それでは…」
ち「あ…」

垂髪が傘を受け取ると、リヨさんはすぐに帰ってしまった。

羽「………まさかあの灰塚さんが、な…」
ち「……ね。…こりゃ雨が降るかもね…」
羽「…もう降ってるけどな…」

まるで二人は夢でも見ていたかのようだ。

主「二人とも…なんでそんなに驚いてんの?」
ち「だ、だってだって!あの灰塚さんがよ!?私初めてまともに話したかもしれない!」
羽「ああ、常に一人でいるし、こう言うことするタイプじゃないと思ってたし…」

俺にはよく分からないが、1年の頃からリヨさんを知ってる二人には驚くべきことらしい…。
確かに、あんまり…と言うか全然人付き合いは得意そうには見えないが、まさかここまでとは。
おそるべし、リヨさん…!



6-4、3日(帰宅中)/帰り道


結局あの後、垂髪や羽生治たちと30分ほど話し込んでしまい、学校を出る頃には生徒もまばらになっていた。
いつもは部活動をする生徒達で賑わっている校庭も、今日は雨の所為で静かだった。

人気のない道を一人歩く。

ん?あれ…

道の端っこで誰かがしゃがみこんでいるのが見えた。
傘のせいで顔は見えないが、うちの学校の制服を着ている。
気分でも悪くなったんだろうか…心配になりつつ近づいてみる。
こちらに気付いたのか、そのしゃがみ込んでいる人は顔を上げた。

リ「あ…●●さん…」
主「リヨさん!?」

そのしゃがみ込んでいたのはリヨさんだった。

主「どうしたの、こんなところで!俺よりも大分前に帰ったと思ってたんだけど…もしかして気分でも悪いの?」
リ「あ、いえ、私は別に…」

『ニャー』

その時、鳴き声がしたかと思うと、リヨさんの腕の中から何かが出てきた。

主「猫!?」
リ「あ、はい…」

リヨさんの腕の中には1匹の子猫がいた。
まだ生まれて数ヶ月くらいだろうか、大きな目でこちらを見つめてくる。
その可愛らしさに思わず顔がにやける。
リヨさんはその猫を抱いたまま立ち上がった。

主「あ、えっと、どうしたの、それ…」
リ「これです…」

目線を追っていくと、道端、リヨさんの足元に不自然に置かれたダンボール箱にたどり着いた。
中には雨でびしょびしょに濡れているがタオルがしかれてある。
これって…

主「捨て猫?」
リ「おそらく。」

『拾ってください』などの典型的なことは書かれていないが、ダンボールとその猫を見れば一目で捨て猫と分かる。
猫もダンボールの中にしかれたタオル同様ぐっしょりと濡れていた。
まだ小さい子猫だ、このまま放っておけば野良犬や烏の餌食になってしまうだろう。

主「…………」

こんなに小さくて可愛い子猫をゴミと同じように捨ててしまうなんて…世の中には酷いことをする人もいるもんだ。
それにしてもこの猫をどうにかしてやらなくちゃな…

主「うーん…………」
リ「で、飼おうと思うのですが。」
主「へ!?」

俺が頭の中で試行錯誤していた問題は、随分あっさりと解決された。
思わず声を上げてしまった俺を不思議そうにリヨさんが見つめる。

リ「…いけませんか?」
主「え、あ、いや!全然大丈夫!問題なし!」
リ「そうですか…」

リヨさんは愛おしそうに腕の中の猫を見つめる。
濡れた猫を抱いているせいでリヨさんの服も汚れてしまっていた。
そのまま二人で歩きながら喋る。

主「それにしても…リヨさんは優しいね。」
リ「え…?」
主「さっきだって傘…」
リ「い、いえ…あれは●●さんが困ってらしたようですし…!」

まあ実際困ってたのは俺じゃなくて垂髪だったんだけど。

主「リヨさんに飼ってもらえるならその猫も幸せだろうな。」
リ「そ、そんな…!」
主「はは、そんなに謙遜しなくても良いって!リヨさんは凄いよ!」
リ「ど、どうも…」

リヨさんは少し赤くなり俯いた。