5月;


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5-1、五月中旬(休み時間)/教室


―キーンコーンカーン。

チャイムが鳴り、授業が終わる。

礼「ではテスト範囲は以上です。各自よく勉強しておいてください。」

丁度今日の授業では今週末にある中間テストの範囲が発表された。
転入してきて始めてのテストだ。

主「はあ、テストか…。」

意外と広い範囲に憂鬱になる…。
勉強…しないとな…。

ふと前の席の羽生治と、羽生治と何か喋っている垂髪に目が行く。
そうだ…!

主「なあなあ、一緒に勉強やらない?分かんないとこ教えあったりとか効率よくー…」
ち「……………。」
羽「……………。」
主「……………?」

何だか2人は固まっている。

ち「…おーっと!垂髪さん、用事思い出しちゃったー!そんじゃねー!」
羽「あっ、ちょ、おい!」
主「垂髪!?」

垂髪は呼び止める間もなく行ってしまった…。

主「なあ、羽生治~…」
羽「いや、ちょっと待て、早まるな!…お前は俺が勉強できるように見えるか?」
主「全然。」
羽「だろう。」
主「だからお互い分からないとこ教えあって…」
羽「俺が貴様に教えることは何もない!」
主「は?」
羽「自慢じゃないが俺は直前までまったく勉強しない!それで徹夜で勉強、どころの話じゃなく前日は早くに就寝。当日になっていつもより早起きをし、山をかけて集中的に覚える!…で、テストが終わると綺麗さっぱり忘れる、と。」
主「はあ?」
羽「だから特別に俺が頭の良い奴教えてやるから、そいつらに聞きなさい!その方がお前のためだ!」
主「はあ…分かったよ…。」
羽「よしよし!…それで、だな。とりあえずこのクラスでの成績上位は、灰塚さんと日向くん、暁子ちゃんだ。」
主「あー…確かに頭良さそうだもんな。」
羽「今のところ実質1番頭が良いのは灰塚さんなんだが…まあ見ての通り無愛想、無口。それだったら人当たりの良い暁子ちゃんとか日向くんに聞くのが得策かとも思うがー…まあそれは自分で決めろ。」
主「なるほどね、了解。」
羽「うん、そしたらお礼として今日の昼、購買のパン1個奢りな!」
主「へ!?」
羽「いやー、これでお前のテスト勉強も上手くいくんだ!安いもんだろ?」
主「…………。」

…昼休みは何としてでも逃げ切らなければ。

それにしても灰塚さんに暁子ちゃん、日向くんか…。
誰に聞こうかな…。

  • リヨに聞く

うん、やっぱりここは灰塚さんに聞いてみよう。
一応、友達にもなれたんだし…大丈夫…だよな…?→5-2へ



  • 暁子に聞く→
  • 日向に聞く→



5-2、5月中旬(放課後)/教室


放課後、帰り支度をしているみんなの中に、一人ノートと教科書を広げている灰塚さんが目に入った。
まだ勉強してから帰るのだろうか…?
丁度今ならテスト勉強の件を言えそうだ。
俺は灰塚さんに近づいて声をかけた。

主「ねえ。」
リ「…………。」

…相当集中しているのか気づいていないのか、チラリともこちらを見てくれない。
も、もう少し大きな声で話しかけてみよう。

主「ねえ、あの…!」
リ「…………。」

ま、負けるもんか…!

主「あの、灰塚さん!」
リ「え!?」

やっと気づいたのか驚いたようにこちらを見上げた。

リ「私…ですか?」
主「そうそう…何回も呼んだんだけどね…。」
リ「…聞こえてはいたんですが…まさか私だとは思わなくて…。」
主「…なんか前にもこんなことあったような…。」

何はともあれ、本題に入ろう。

主「あの、さ…良かったら勉強教えてくれないかな…?テスト範囲のところなんだけど…?」
リ「え…?」

本当は教えあえたりしたらお互いに良いんだろうけど、俺が灰塚さんに教えられそうなところは何もないし…。

リ「……………。」
主「だめ…かな?」
リ「どうして…」
主「え?」
リ「どうして、私なんですか…?」

灰塚さんが不思議そうにこちらを見つめてくる。

主「え、いや…どうしてって…灰塚さんって頭良いらしいし、教え上手そうって言うかー…」
リ「…それなら、茨さんたちの方が…」
主「でも、一番成績良いのは灰塚さんらしいし…」
リ「……………。」
主「それにさ、一応友達だし…」
リ「友達………。」

…ってことで良いんだよな?…ちょっと自信なくしてきた…。

主「や、ダメだったら無理にとはー…」
リ「分かりました。」
主「え?」
リ「その代わり…茨さんたちほど上手に教えられるか分かりませんが…。」
主「いいの?」
リ「はい。」
主「よっしゃ!ありがとう!」

これでテストの方は何とかなりそうだ!
言っちゃ悪いが、やっぱり羽生治とかと勉強するより効率よさそうだし、ここは羽生治に感謝だな!
…今日は逃げ切ったが、やっぱり明日パン奢ってやろうかな。

リ「あと、それと…」
主「え?」

いろいろ考えていると、また灰塚さんが声をかけてきた。

リ「私を呼ぶときは…呼びかけるだけじゃなくて名前を呼んでください。」
主「名前を?」
リ「はい。でないと、分かりづらいです…。」
主「あ、そっか。ごめんね。」
リ「いえ。」

なるほど、だから声をかけてもあんまり反応がなかったんだ…。

リ「あ、その…できれば苗字じゃなく、下の名前で呼んでいただきたいのですが…。」
主「下の名前で?」
リ「はい、私の苗字はそう多くないですが、それでもたまにはいますし、3年に私の姉もいるのでその方が分かりやすいかと…。」
主「分かったよ、リヨさん!」
リ「あ…はい、その、それで…お願いします…。」

それから、しばらくの間分からないところなどを教えてもらったりしながら一緒に勉強した。

リ「それでは、今日のところはこれで終わりにしましょう。」

(校門)

主「今日はありがとう、助かったよ。」
リ「いえ、私は大体放課後は教室で勉強していますので…その…分からないところなどあったらいつでもいらしてください。」
主「本当に!?」
リ「はい。」
主「ありがとう!本当助かるよ!」
リ「いえ、お互い様ですし…それでは。」

軽くお辞儀をして帰っていくリヨさんを見送った。
どうも帰る方向は俺と反対らしい。

…しかしお互い様と言われても、俺は何にもしてない気が…。
今度何かお礼しなくちゃなあ…。

  • →5-3へ



・5-3、五月下旬(テスト)/教室


今日はついにテストの日だ。
この学校に来て初めてのテスト、緊張する…!

いや、勉強もちゃんとしたし、後は精一杯頑張るぞ!

(テスト中)

礼「よし、みんな問題用紙と解答用紙はそれぞれありますか?…よし、それじゃ始め!」


―キーンコーンカーン

礼「はい、やめー!…それじゃ後ろの人、集めてきてください。」

ふう…何とか終わった…。
でも俺にしてはよく出来た気がする!
うん、これもリヨさんのお蔭だな、きっと。
…よし、一言お礼を言っておこう。

(休み時間)

丁度リヨさんは席について自己採点だろうか…、問題用紙をじっと見つめていた。

主「リヨさん!」
リ「あ…どうかしましたか?」

俺が呼びかけると、リヨさんはそのままの姿勢で目線を上げた。

主「今回は俺の勉強見てもらって有難う。お蔭でよく出来たよ!」
リ「…まだテストも返って来てないのに気が早いんですね。」
主「いや、返ってきてなくても分かるよ!いつもよりすらすら解けたもん。」
リ「…そうですか。」
主「いや、本当に助かったよ!お礼に今度なんか奢るよ!」

ガタッとリヨさんが席を立つ。

主「リヨさん?」
リ「あ、いえ、お気を使わずに。…すみません、少しお手洗いに行かせてください。」
主「え、あ、ご、ごめんね!呼び止めて!」
リ「いえ…それでは少し失礼します。」

そう言うとリヨさんは教室から出て行った。