4月;


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4-1、3日目(朝)/校門


今朝も校門は登校してきた生徒達で賑わっている。
転入して3日目、まだ見慣れぬ顔ばかりの中に見たことのある顔を見つけた。
灰塚さんだ。
俺は小走りで駆け寄って声をかけた。

主「おはよう!」
リ「…………。」

…あれ?
灰塚さんは足を止めることなく一瞬こちらをちらりと向くと、またすぐに前を向いて歩き出してしまった。

主「お…おはよう…」
リ「…………。」

俺もそのまま歩きながら、もう一度声をかけてみたが今度は振り向くこともなくそのまま歩いていく。
む…無視…?
俺、転校早々いじめにあってんのかな…。
…い、いやきっと聞こえなかっただけさ。
だって灰塚さん、昨日は丁寧に職員室まで案内もしてくれたし…。

そうこう思いながら足を進めていくうちに靴箱についた。
灰塚さんは足を止めて靴を脱ぎ始める。
今だ、もう一度…!

主「お、おはよう!」
リ「え………?」

ふう、やっと気づいたようだ。
良かった、反応があって…。

…………と、思ったらキョロキョロと周りを見回している。

主「あ、えっと、灰塚さん、おはよう…。」
リ「…え?…私…ですか?」
主「う、うん、一応さっきから何度か言ってたんだけど…。」
リ「すみません…、私だと思わなかったもので…その…。」
主「あ、いや、俺の声のかけ方が悪かったのかもしれないしー…」
リ「でも……。」
主「ホント気にしないで!それじゃ、改めておはよう。」
リ「あ…おはよう、ございます。」
主「うん。あ、そうそう。昨日は職員室までの案内有難う、助かったよ。」
リ「あ、いえ、クラスメイトとして当然のことをしたまでですので…では。」
主「え………?」

頭を下げるとそのまま灰塚さんはまた行ってしまった。
…と言ってもクラスが同じだから、必然的にまた俺が灰塚さんを追う形になる。

リ「…………。」
主「…………。」

一定の距離が保たれたまま進んでいく。

リ「……あの、まだ何か?」

ふと灰塚さんが足を止め、こちらを振り向いた。

主「あ、いや、何って言うかー…俺も灰塚さんと同じクラスだし、行く方向が一緒って言うかー…」
リ「あ…ですよね。」
主「…ですよ。」
リ「……………。」
主「……………。」

しばしの沈黙の後、灰塚さんはまた前を向いて教室へと足を進める。
俺もその後を追っていく。

主「あ、あの灰塚さん…!」
リ「……何度も呼ばずに用があるなら一度で済ましていただけませんか?」
主「ご、ごめん…。」

咄嗟に謝ってしまったが、実際俺が呼んだのは挨拶のときだけだったんだが…。

リ「…で、どうしたんですか?」
主「あ、いや、特に用ってワケじゃないんだけどー…、うん、せっかく同じクラスになったんだし、良かったら仲良くしてほしいなあー…と。」
リ「え?」
主「…あ、そうだ言い忘れてた。これからよろしく!」

握手を、と手を差し出す。

リ「…えっと…私が…ですか?」

…い…今更…。
何とも予想外の返事にがくりとくる。

主「…はあ……今、他に誰かいるかな?」
リ「………いませんね。」
主「でしょ。」
リ「はい。」
主「……………。」
リ「……………。」
主「あー…えーっと、だから…よろしく。」

もう一度ずいと手を出す。

リ「え、あ、えっと…その………こちらこそ、よろしくお願いします。」

灰塚さんは戸惑いながらも軽く手を握り返してくれた。
その瞬間、灰塚さんが少し笑った…と言うか、雰囲気が柔らかくなったような…気のせい…かな?
すぐに手は離れ、今はさっき通りの無表情なのだけども。

その後すぐに教室に付き、特にこれと言って会話はしないまま、それぞれ席に着いた。
それでも俺はまた一人友達が増えたことに小さな喜びを感じた。