10月


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24、十月上旬(授業中)/教室


もうすっかり秋めいて肌寒くなったなあ、などと窓の外を眺めながらぼんやりと考えていた。

コツン。

いきなり俺の頭に何かが当たった。
机の上を見れば小さく折りたたまれた紙がある。手紙か…?
それが投げられたであろう方向を見れば羽生治がニヤニヤと笑っていた。
あいつの仕業か…。

やれやれ、などと思いつつその小さく折りたたまれた紙を開く。

『お前の大好きな上城について情報持ってきてやったぞ。ありがたく思え!てワケで放課後屋上な。』

…ああ、そう言えばそんな約束したっけな。
もうすっかり忘れてるかと思ってたのに。意外と几帳面なんだな。
それにしても情報ってなんだろう。

俺は少しドキドキしながら放課後を待った。

(放課後)

帰る準備をすませ屋上に行くと、すでに羽生治はいた。

羽「遅いっての。」
主「いや、お前が早いだけだろ。て言うか掃除当番さぼっただろ。」
羽「…それがものを教えていただく態度かねえ。」
主「!!!すいませんでしたーっ!」

土下座して見せると羽生治は笑いながら俺に座るように言った。

羽「まあ、心して聞きなさい。」
主「はい、なんでも仰ってください。」
羽「まず…上城は暁子ちゃんと幼馴染だってさ。」
主「え、そうなの?」
羽「そうそう、これは確かな情報だぞ。」
主「あー、でもそっか。だから仲が良いのか。」
羽「仲…良いか?」
主「え、良いんだろ?だって本人達も言ってたし。」
羽「ふーん?ま、それはどうでも良いんだよ。」
主「と、言うと?」
羽「もっと凄い情報がある。」
主「!!!」
羽「実はな…」
主「実は…?」

羽「担任の青木ってその二人の中学のときの家庭教師だったらしいぞ。」

主「え…」
羽「ホントだって、ホント!て言うか、だからあんな噂が立ったんじゃねえ?」
主「でもそれだったら暁子ちゃんだって何か噂立っても良さそうなもんじゃ…」
羽「前にも言ったじゃん、上城みたいなのはああ言う噂されそうなタイプなの!」
主「あー…。」
羽「それに暁子ちゃんてしっかりしてるし、逆に噂されにくそうなタイプだからなあ。」
主「……………。」
羽「ま、気にすんなって。前にも言ったけど、お前が来てからそんな噂もなくなったんだし。それに今先生やってるってことは家庭教師のバイトやったとしても不思議じゃないだろ?」
主「…うん。そう…だよな。」

…それでも気にするなと言われたって、気になるものは気になる。
この前白雪が先生のことを嫌いだと言ったことを思い出した。
もしかしたら、白雪が先生のことを嫌う理由は噂以外にもあるのかもしれないな…。

(帰り道)

今日は放課後羽生治と話をしていたせいか、いつもより帰りが遅くなってしまった。
途中までは羽生治と一緒だったが、ちょうどさっき交差点で別れた。
一人でとぼとぼと道を歩く。
つい最近までこの時間帯でも明るかったのに、今ではすっかり薄暗くなり少し肌寒い。
時が経つ早さをしみじみと感じる。
…そうか、俺がここへ引っ越してきてもう半年も過ぎたのか。

公園にさしかかった。
この公園では白雪がよく子供たちと遊んでいるのを見かけたっけ。
本人も子供と遊ぶのが好きらしく、とても楽しそうにしていたのを覚えている。
そう言えば俺が始めて白雪と出会ったのがこの公園だったな…。

キィ…キィ…

そんなことを思っているときだった。
ふと公園からブランコの揺れる音が聞こえた。

あれは…白雪だ。

白雪が一人ゆっくりとブランコをこいでいる。
いや、こいでいると言うよりもただ前後に揺らしているだけ、といった方が正しいな。
白雪はぼんやりとした表情でただただブランコに座り続けていた。

俺が近づいていくと、足音に気づいたのか白雪が顔を上げた。

白「●●くん…。」
主「よ。今日は白雪一人?」
白「さっきまでみんな一緒だったですよ…。でも暗くなってなっちゃったからみんな帰っちゃって…。」
主「ははは、そっか。…まあでもそんなもんか。あの子達まだ小学1、2年くらいだっけ?」
白「はい…。」
主「あの子達も俺らくらいの年齢だったらねぇ…えーっと後10年くらいか。」
白「10年…。」
主「ま、その頃には俺らもいい年なんだろうけどな。…でも、きっと10年なんて長いようで、経ってみるとあっという間なんだろうな。」
白「…………。」
主「だってさ、俺ついこの前まであの子達と同じぐらいだった気がするもん。」
白「あ、白雪も…です。」
主「やっぱり?…あ、でもさ、ついこの前まであの子達と同じぐらいだったって言うのとは違うのかな…なんて言うかさ、その時のことを思い出して、自分もこんなんだったなーって懐かしくなるって言うのかな、上手く言えないけど。」
白「………はい。」
主「でさ、なんだか無性にその頃に戻りたくなるの。」
白「戻る…ですか?」
主「うん、やっぱりあの頃とは俺自身も違えば周りも違うわけだし…絶対ありえないからこそ戻りたくなるって言うか…。」
白「…………。」
主「それに…これからもきっとどんどん変わってくだろうし。」
白「…空、もう、すっかり暗くなっちゃいましたね。」

気が付くと薄暗かった空は、もうすっかり暗くなっていた。
ブランコの隣に設置されてる外灯が俺たちを照らしている。

主「ホントだ…帰ろっか。送るよ。」
白「は、はいです…お願いします。」

俺たちはそう言って公園を後にした。

(公園から出る)

もうすっかり暗くなった道を他愛もない話をしながら白雪と歩く。
話に答えてくれてはいるが、白雪はどこか上の空のような感じがする。

そうこうしているうちに白雪の家に着いた。

主「それじゃ、また明日学校で。」

俺は簡単に挨拶をし、手を振って白雪の家を後にしようとした。

白「あ、あの●●くん!」

突然白雪に呼び止められた。

主「どうしたの?」
白「…やっぱり、何もかも昔のままでって有り得ないことなんでしょうか…。」
主「…そうだね…やっぱり無理だと思うよ。」
白「そう…ですか…。」

そのまま白雪は黙って俯いてしまった。

主「白雪…?」
白「…え、あ、なんでもないです!それじゃ、また明日です。」

そう言うと白雪は家の中へと入っていった。

主「昔のままで…か。」

脳裏に小さい頃の思い出がいろいろと蘇る。
確かに、いろいろと楽しかったな…。

肌寒い風が吹く夜の道、俺はいろいろと考えながら家路を歩いた。