食堂"

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**・1回目 小腹の空いた俺は食堂に向かうことにした。 5時間目の体育が陸上競技でハードだったせいだろうか、食べ物を催促するようにやたらお腹が鳴っている。 主「今日はがっつりカツ丼でも頼むかなー…」 広くて綺麗、その上安くて美味しいと評判の学校の食堂はやはり人気があり、いつも生徒たちで混雑している。 メニューも豊富で、いつもどれを頼むか悩むところだ。 主「おばちゃん、カツ丼と味噌汁お願い!」 羽「あ“?カツ丼と味噌汁??」 主「!!」 注文すると返事を返したのは、いつものおばちゃんではなく、なんと羽生治だった。 しかも、三角巾にエプロン姿で洗い場に立っている。 異様な光景だ。 主「…お前、何してんだ?」 羽「何って決まってんだろー、バイトだよ、バイト!」 自分の学校の食堂でバイトする奴なんて始めて見た。 それにしても、仁王立ちで接客する羽生治はなんとも食堂の雰囲気に似合わないと言うか何と言うか… その姿がおかしくて俺はついつい笑い出してしまった。 主「くくっ…」 羽「おまえ、笑ってるだろ…」 主「いやいや、そんな。似合ってるぜ、エプロン…ははっ!」 羽「…馬鹿にしてるだろ。…ったく、俺は飯代を浮かすためにこうして頑張ってるって言うのに!」 主「あー、なるほど。食堂のおばちゃんと仲良くなる作戦か…お前らしいな。」 羽「だろ?裏メニューやら、まかないやら、結構いろいろ食わせてもらえるんだぜ?おっと、注文通さないとな。」 羽生治は俺の注文のカツ丼と味噌汁の用意を手際よくし始める。 案外、なんでも器用にこなす羽生治ってすごいよな。 主「お前って、結構器用なんだな…」 羽「まあな、俺って、かなり万能だから。」 主「はは、そうかもな」 こうやって俺と会話しながらも、羽生治は手を休めることは無くカツ丼と味噌汁を作っていく。 美味そうな匂いを放つ、卵で閉じたカツが白米にのせられ、その上に三つ葉を散らす。 …なんか、いつもより美味そうじゃないか? 俺は出来上がった料理を見つめて、ごくりとのどを鳴らした。 羽「ほら、できたぜ。俺特製カツ丼と味噌汁。」 主「うわ、美味そう!すげえ…!」 俺が料理の腕前に感心していると、羽生治が手を俺の前に出してきた。 主「??」 羽「おまえ何ぽーっと料理見つめてんだよ…金だよ、金!ちゃんと払わないと食わせないぜ?」 主「あ、ああ。分かってるって。350円だろ。」 ポケットから財布を取り出し、金を払おうとする俺を羽生治の手が静止させる。 主「え、何?親友ってことでただでいいって?悪いなあ。」 羽「コラコラ、馬鹿言うなよ。この俺の特製カツ丼だぜ?350円はないだろー。ココはワンコインランチってことで500円でどうだ?」 主「お前…」 なるほど、そういうことか。 期待した俺が馬鹿だったよ…。 特製という理由でぼったくる気だ、コイツ…! 主「いや、特製とか頼んでないし」 羽「おいおい、そりゃないだろー」 主「俺は食堂のカツ丼を食べにきたんだし。じゃ、350円ココに置くぜ。」 羽「ちょ、ちょっと待てって…!コラ、○○ー!!!!」 厨房から身を乗り出し俺を呼ぶ羽生治を無視し、代金をカウンターに置くと料理の載ったトレーを持ってさっさとテーブルにつく。 羽生治には悪いが今月は金欠なので無駄な出費はしたくないのだ。 主「いただきます!…うーん、美味い!」 ジューシーなカツと炊きたてごはんが俺の胃袋を満たしていく。 すまんな、羽生治。だが500円はちょっとな… そう心の中で謝りつつ、俺は熱々のカツ丼と味噌汁を美味しく頂いた。 ---------------------------- **・2回目 放課後にもかかわらず、腹が減ったので食堂へ向かう俺。 毎度毎度、体育の授業の後の空腹感は耐え難いものだ。 さて、今日は何を食べて帰ろうか…やっぱり腹が減っているからココはがっつりいくかなー…。 注文口に立った俺は食堂のおばちゃんに声をかける。 主「おばちゃん、Aランチまだある?」 羽「………」 主「あの、すいません注文……って、羽生治!!お前またバイトしてるのか??」 羽「ああ?」 俺が声をかけたおばちゃんはエプロンと三角巾を纏った羽生治だった。 洗い物をしていて羽生治の顔が見えなかったので気が付かなかったが… そういえばこんなにデカイ食堂のおばちゃんはいないよな。 …にしてもこの感じの悪い接客態度で大丈夫なのだろうか? 客に向かって『ああ?』はないだろ… 羽「注文は?」 主「あ、えっとAランチ。」 羽「了解。オーダー、Aランチ、ワンお願いします!」 調理場の奥へ羽生治がオーダーを通す。 主「あれ、今日はお前作らないのか?」 羽「ん、今日は洗い場担当だからな。マジ手が荒れてめんどくせーんだよ。」 主「だからって、接客態度ちょっと悪くねえか?」 羽「ああ、今日はまだまかない貰ってないから腹へって死にそうなんだよ…く、胃が……」 主「羽生治…それは理由になってないぞ」 羽「ああ。」 そうこう話しているうちに調理場から声がかかる。 どうやらランチが出来上がったようだ。 羽生治がカウンターに料理を運んでくる。 羽「…ほらよ、……Aランチ、お待たせしました。」 主「お、サンキュー」 羽「っと、味噌汁付け忘れた…すまん、ちょっと待て。」 主「あ、ああ…」 なんだか空腹の羽生治の反応は鈍く、フラフラした足取りで味噌汁を用意していた。 その様子を見ていると、だんだん可哀想に思えてきた。 主「…羽生治、食うか?」 俺はそっとおかずの一つ、唐揚げの小鉢を羽生治の前に差し出した。 羽「お前…!!」 主「腹減ってるんだろ?」 羽「…いいのか?」 主「なんか目の前で俺だけ食べてるのもアレだし…」 羽「うぉー、お前イイヤツだな!!マジ感謝するわ!」 主「まぁ、困ったときはお互い助け合おうぜ?」 羽「ああ、だよな!じゃ、遠慮なく頂くぜ!!」 食物を前にした羽生治の目はイキイキしていた。 なんとも分かりやすい男である。 唐揚げをほお張る羽生治を見て思わず笑ってしまう。 羽「なんだよ、今更返せとか言うなよ?」 主「いや、違うって。それよりさっき、助け合いっていったよな?」 羽「ああ、困ったときは、ってな。」 主「そこで相談なんだが…」 羽「…?」 羽生治には悪いが、ココで助け合いの精神を十分に利用しておかない手は無い。 そう、明日〆切の実験結果のまとめレポート課題をひとりで終わらせるのは相当しんどいと思ってたところだ。 羽生治に手伝ってもらえば少しは早く終わるだろう。 主「なあ、明日〆切の課題あっただろ?ちょっと手伝ってくれないかと…」 羽「あー、あれか…」 主「終わらなさ無すぎて困ってんだよな…」 羽「…まぁ、しょーがねぇか。唐揚げの礼に手伝ってやるよ」 主「サンキュー!」 羽「じゃ、これ終わるまで待ってろな。」 主「了解。」 羽「じゃ、また後でな。」 一応空腹を満たされた羽生治の機嫌は良くなったようだ。 洗い場に戻って、ガシガシ皿洗いをこなしている。 よし、とりあえず助っ人を確保したからには、楽にレポートを仕上げれそうだ。 助け合い、いい言葉だぜ…! ---------------------------- **・3回目 さて、今日は何を食べようか…などとメニューを見ながら本気で迷う俺。 体育の授業後には必ず腹が減るものだ。 主「カレー…いや、グラタン、あ、ミートスパ…どれにしようか…」 羽「そりゃ、ココは牛卵とじ丼だろ。」 主「!」 食堂のカウンターで決めかねていると背後から羽生治が口を挟んできた。 どうやら今日は食堂でバイトはしてないらしい。 主「今日は働かないのか?」 羽「ん、ああ。さすがに毎週はな。それよりお前、ここの裏メニュー知ってるか?」 主「は?そんなものまであるのか??」 羽「ああ、食堂に詳しくならないと食べさせてはもらえない裏メニューだ。」 主「へぇー。」 相変わらずの情報収集能力というかなんというか。 ほんとコイツって、無駄に学院のコトについて詳しいんだよな。 羽「そうそう裏メニューには鯛茶漬けもあるんだぜ?しかもむちゃくちゃ旨いんだよなー…。あ、食ってみるか?」 主「マジか?ああ、食う食う!」 羽「よし、じゃちょっと待ってろよ。頼んでやるから。」 そういって羽生治は調理場の奥へと消えていく。 いやぁ、持つべきものは顔の広い友達だな。 と、お茶碗を二つ持った羽生治がこちらへ戻ってきた。 羽「待たせたな。ほらよ?」 主「おお…!うーん、いい香りだな!」 お椀を受け取った俺はその湯気と香りに刺激される。 学校の食堂でお茶漬けという不思議な取り合わせに若干おかしさを感じながら、俺たちは席についてお茶漬けを食い始める。 羽「くーっ、やっぱ、鯛はいいぜ!鯛は!!」 主「初めて食べたけど、すごく旨いなコレ…普段も出せばいいのに。」 羽「バカ、それじゃ希少価値がなくなるだろ?たまに食えるから旨いんだよなー。」 主「ああ、そっか。…にしてもありがとな!こんな美味いもの食わせてもらって。」 羽「どういたしまして。ま、美味いものは独り占めする気はないし。今度は他の裏メニューも食わせてやるよ。」 主「羽生治…お前今日妙に優しくないか?」 羽「はは、そんなことないって!」 笑いながら否定する羽生治にやっぱり何か違和感を覚える。 そう、今日の羽生治はいつもの三倍は俺に対して優しい気がするのは気のせいだろうか… うーん…これは裏で何かありそうだな。 主「やっぱりオマエ今日変じゃないか?」 羽「え、そうか??……」 主「…何かあるだろ?」 羽「何かか…そうだな~、しいていうなら、…明日までの英語の課題の翻訳写させてくれ!!」 …やっぱりそれか。 授業中に睡眠学習していれば終わって当然の課題も終わらないはずだ。 ま、でも、この前は俺の課題を手伝ってもらったワケだし、ここはお互い様だよな。 主「分かった。教室にノートあるから後で取りに行こう。」 羽「よっしゃ!マジ助かったぜ~」 主「困ったときはお互い様、だろ?」 羽「だよな!もし、今度なんかあったら俺に言えよ、手伝ってやるから!」 主「お、それは助かるな。」 羽「じゃ、腹も満たされたところで行くか?」 主「ああ。ご馳走様ー!」 俺たちは茶碗を片して、教室へと向かった。

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