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〈霊格〉の高い存在が現実界に顕現することは難しい。とくに異界から現実界へのアプローチは、現実界そのものが拒絶するため、非常に困難である。
だが現実界から異界へアプローチをかける場合は、異界からのアプローチに比べ、その困難さは比較的軽減される。
これは世界の構造上からくるものである。
現実界は異界を内包しているが、異界は現実界の一部に過ぎないためである。(あるいは異界は現実界の揺らぎにすぎないのかも知れない)
それでも異界の存在を現実界に顕現させるためには、莫大なエネルギーが必要となることには変わらない。
まず異界の存在は現実界での肉体を有していないため、仮そめの肉体を準備することから行わないといけない。
仮そめの肉体として「拠り代」と呼ばれるものを準備する。巨木や巨石、巫女など様々である。そのような「拠り代」に、異界の存在を憑依させ顕現化させるのだ。
あるいは「霊的物質」から異界の存在の肉体を一時的に構成して、顕現化させる場合もある。
主に前者の方法を「神降ろし」と呼び、後者の方法を「召喚」と呼ぶ。




4-1.古典的な顕現

「神降ろし」の場合、比較的少ない労力とエネルギーで済むが、できることが限られてくる。
「召喚」の場合は、「霊的物質」の準備から実際に召喚の儀式を執り行うまで、非常に高いコストと労力を要する。
しかし「神降ろし」とでは比較にならないほど、強烈な結果を残すことができる。
「霊的物質」の精製には生贄や時期、場所、時間帯など様々な要因が加味されるため、往々にして召喚儀式は壮大かつ繊細になり、そして失敗しやすいのだ。

どちらの場合でも異界の存在が同意しなければ呼び出すことは出来ない。
またちょっとした手違いにより、まったく別の存在を呼び出してしまったりする。




4-2.召喚プログラム

これら召喚儀式を一定条件に保ちつつ、かつ何度でも簡易に行うための試行錯誤は、古来より脈々と受け継がれてきた。
その中には、コンピュータ上にて儀式をシミュレーションするという手段も試されていた。
コンピュータそのものの高速化、大容量化に伴い、1980年代より、少しずつではあるがそういった成功事例が出始めてきた。

1969年ARPA-NETより始まったInternet(インターネット。以降ネット)が1990年代に急速な広がりを見せたことがそれに更なる拍車をかけた。
全世界的なネットを通じ、技術者たちが試行錯誤し、その結果を共有したことにより、更なる成功例が出てきたのだ。
そして20世紀最後にはついに禁断の扉を開くプログラムが完成し、ネットを通じて全世界に配布された。
それが召喚プログラムである。

だが、このプログラムにもいくつもの欠点が存在した。

1つ目は制御部分が極めて不安定であったこと。
このプログラムの暴走により、召喚者が殺されることなどしばしばあった。
最悪の場合、魔界とつながってしまうことすらあったのだ。
(一説によるとこのことがしばしば起こったため、原因で電脳界が生まれたのではないかと言われている。逆に電脳界ができたため、このような事故が頻繁に起こったのだという説もある)

2つ目は移植が極めて難しいというという点である。
そのプログラムの大半は汎用的な開発言語(人間が理解しやすい言語。高級言語とも呼ばれる)で書かれていたが、コア部分のほとんどがアセンブラ(コンピュータが理解できるマシン語に極めて近い記号のような言語。低級言語とも呼ばれる)にて書かれていた。
アセンブラはコンピュータ毎に異なるため、コンピュータの種類が変わるごとに、その部分を完全に作り直さなければならなかった。
(何故か汎用的な開発言語でコア部分を作っても一切動作しなかったと言う)

3つ目にその処理時間が上げられる。
〈霊格〉の低い超常体の召喚にはさほどの時間を必要としないのだが、〈霊格〉が高くなるにつれその処理時間は、指数関数的に長くなっていった。
またデータ量の肥大という影響もあった。
(最もデータ量に関しては大容量化のため大きな影響は出ていない)




4-3.Devine

21世紀に入り、革新的な言語と仮想環境が一夜の内に生まれた。
それが"Devine"と呼ばれるフリーの開発環境とコンパイラ(高級言語をマシン語に翻訳するソフト)、そしてその仮想実行環境の"D・V・M"である。

Devineはいくつもの開発言語と互換があるコンパイラー郡であり、またそれらコンパイルされた実行コードの総称でもある。
これは実際には存在していない仮想コンピュータ上で動くように設定された命令である。

一方D・V・MはDevineが動くための仮想コンピュータをシュミレーションするためのソフトだ。
D・V・Mには「疑似量子演算」という謎の機能が備わっており、数世代前のCPUでもかなりの演算速度を誇った。
難点はメモリーを多く消費することであるが、大容量化したコンピュータではさほどな問題とならなかった。

一夜の内に突如としてネット上に出現したこのDevineは、公開当時すでに主たるプラットフォーム用のD・V・Mが用意されていたという。
作成者は不明であるが、数週間のうちに次々と新しいプラットフォーム用のものが公開され、パソコンからスーパーコンピュータ、果ては携帯電話までサポートするという事態になった。

このDevineが優れている点は、膨大な計算を並列でこなすことを得意としており、各種シミュレーションを実行するには格好のプラットフォームであった。
気象予測に必要な大規模環境シミュレーションなども、スーパーコンピュータを使用せず、市販されているパソコンでも行える程の実力があった。

これに目をつけたのが先の召喚プログラムの技術者であった。
彼らは即座にDevine用の召喚プログラムに着手した。

そして彼らはひとつの重大な事実に行き当たった。
それは、D・V・Mの内部に召喚用コアと同等の機能を発見したのだ。
しかもそれこそD・V・Mのコアモジュールであったのだ。
これにより彼らは短時間でDevine用召喚プログラムを完成させることができた。
その後、いくつもの亜種が生まれ、洗練されていったのは言うまでもない。

だが、いまだ不安定という部分が完全には解消されていない。
ネットではおそらく召喚プログラム自体が、使用者を選ぶのではないかとまことしやかに語られている。