子供達のためのおとぎ話


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お前には、空を飛ぶために両手をあきらめる覚悟があるか?
鳥はこの交換を承知したのだ。
                       ――― 「一千の問い」



泣きつかれた後の様な渇きが身体を支配していた。
心はこんなにも晴れやかなのに。
都合のいい事にすぐ側には川がある。
手でもって一掬い、二掬いと水を掬い取り喉を潤す。
一口、一口が身体に染みわたり美味しく感じ取れる。

こんなにも満たされていると実感したのはいつ以来だろうか。
遠くで落ちた雷が辺りを照らしだす。
それは祝福の様に川面にその姿を映し出し、自らの変化をはっきりと再確認させてくれた。

人には無い長く尖った耳。人には無い大きく透き通った翅。
それは人に在らざる異形。それはおとぎ話の住人。その姿はまさしくエルフそのものであった。

意識すらせずに自然と翅を広げた。
初めての行為にはどんなものだろうとぎこちなさが生まれるものだが、その行為にその様な不純物は見受けられない。

産まれたばかりの仔馬がすぐさま立ち上がり、歩きだすように。
産まれたばかりのエルフは空を舞うのだ。

ああ、なんていい気持ち!

踊るように楽しげに空を飛ぶ。矢のように鋭く空を飛ぶ。上下左右、あらゆる向きに飛び廻る。
風を切る感覚が心地よい。移り変わる景色は綺麗で愉快だ。
木々を見降ろすその飛行は、本来出来る筈の山をも見下ろすそれと比べて著しく制限された低い高度のものだったが、
それでも初めてのフライトとしては十分すぎる程に刺激的だ。

鳥たちと、翅をもったエルフだけに許された行為。
こんなにも楽しいことなんてない。
羽ばたき一つするたびに、身体中で風を受け止めるごとに、深く深く沁みいってくる。

あの村で何か楽しいことあったの?
空を飛ぶより楽しいこと 何かあったの?
楽しい事はいつでも、村の外にあった。特に、今この瞬間はとびきりだ!


『わたし愛されているの、神に愛される子は決して殺されたりはしないわ!』

私もなの!私もそうなのよ!
そう叫び返したかった言葉が思い返される。
こらえきれない笑みが自然と浮かんでくる。
幼い信仰があった。それは幼いゆえになによりも大事に温めてきた純粋無垢な憧れだった。

人間がエルフを傷つけられるわけがないんだ!

憧れだった存在そのものになっても、その想いに変わりは無い。
だからこそ、この特別な遊び場においても積極的に殺して回る気持ちはなかった。
大人たちは勝手に殺し合って数を減らして行くだろうし、最後の一人になるのは自分以外にありえない。

義務に追われて殺すのは大人の、人間の仕事だ。
妖精は、子供たちの憧れはもっと自由に生きていく。
飛びたい時に好きにこの空を飛びまわるし、殺したい時に好きに殺すのだ!

いまはただ、新しい玩具を与えられたばかりの子供のように夢中になって宙を舞う。



昔々で始まったおとぎ話は、めでたしめでたしで締めくくられる。
そんなことを無意識に、無自覚に、当然の事と信じて。
白紙の未来を楽しく塗り替えながら、おとぎ話そのものとなった少女は自由に今を謳歌する。
今までを捧げた少女はひたすらに、これからへの期待を胸に抱いていた。

【E-5/川辺/深夜】

【ロシーヌ@ベルセルク】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品、不明支給品(1~3)
[思考・状況]
基本行動方針: 楽しく自由に生きる
[参戦時期]: 捧げて、変わった直後からの参戦です。


014:jabberwock 投下順 016:星を知る者
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初登場 ロシーヌ 041:楽園の素敵な妖精と通りすがりのお侍の話
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