戦火を交えて


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始めその男はなにも持たなかった。

生まれ落ちた時母は既に躯(むくろ)であり、狂女に拾われとある傭兵団に身を寄せることになる。
養父は剣の手解きだけはしたが、与えたのは愛情と呼ぶには酷薄すぎるものでしかなく、
死体より産まれし不吉の子として、団員達からも決して歓迎されているとは言えない中で、
義父を父と呼び掛けることもできぬ、孤独な少年時代を送った。

やがてそこを離れねばならぬこととなり、各地の戦場を転々として、流れ着いたのが≪鷹の団≫。
国を持つとの夢を掲げたグリフィスにひかれて、小さくもそれぞれの夢や思いを持ち寄った者達の集まりである。
戦いに身を置きながらも、泣いたり笑ったり怒ったりもできるようなその場所で得たものは、
冷たい剣を掻き抱いて夜を過ごしていたような男にとって、かがり火の如き輝きと暖かみを感じさせる記憶。
のちに男自ら手放すことにもしたが、確かに居場所や仲間とも呼べるものであった。

そして因果の流れのもとに、時の接合点たる“蝕”を迎えて。

かつて日々を共にした者達が皆、魔に喰われ、嬲られ、犯される。
悪夢の顕現たる世界を贄となりしも生き残った男は、狭間に人の身で立たされることとなり、
また、守るか、挑むか
終わらぬ悪夢を斬り伏せながら、その選択を己が魂に問いつづける宿命を負った。

しかしてそのうちの一方が、唐突に奪われたとあらば。
守るべきものが何も、無くなってしまったのだとすれば。
残りし方――『復讐』へと一挙に天秤が傾くのも、無理からぬことであるのかもしれない。



◆◆◆


――逃げるか、向かうか。

殺意をむき出しに凶器を構える男に対して、リュカが採った選択は 逃走/闘争 であった。

放送前に昇り始めた太陽が高度を上げ、森の中にも大分陽光が差し込むようになった時刻。
土や下草を巻き上げる勢いで、二人の男が木々の隙間を駆け抜け続ける。
逃げるはリュカ、追うはガッツ。両者の距離は危うい均衡のもとに一定を保っている。

リュカがこうするに至った理由――

ガッツとリュカの装備には、大きな開きがあった。
ガッツの装備は魔神の愛用品たる戦鎚と、漆黒の鎧にマスクや小手、具足なども備えた完全武装。
対してリュカには満足な武器も防具もなく、あるのは共通支給品とempty(空っぽ)なCOMPに空飛ぶ靴、
最後のランダム支給品は悪の福袋というアイテムの詰め合わせであったが、
中身は車の塗装スプレーやブロマイドなど、およそ戦闘には適さないものがほとんどであった。

リュカ自身、武器はなくとも攻撃魔法を扱うことができるとはいえ、
このような状況でまともに正面から打ち合うとなれば問題が多い。
出会い頭の推測通りに男が無気力な脱け殻のままであったのならばともかく、
目をギラギラと血走らせたような者、それも装備の万全な者が相手とあっては、
たとえ勝てたとしても激しい消耗を伴うだろう。
回復呪文の効力が落ちていることなどからも、今後のために魔力はなるべく温存しておきたい。

ならば空飛ぶ靴をここで使って、逃走を図るか?
今空飛ぶ靴は、ベルトで服との間に挟み込んだところに、
福袋の中にあった鉢巻きで落下しないよう固定しているような状態であり、
緊急時でもすぐに取り出し使用できるようにしておいてあった。
とはいえこの靴はあらかじめ決められた場所――この地においては古代の遺跡へとしか移動できない。
リュカがガッツと遭遇したのは、遺跡からさして離れていない場所で休憩をとっていた直後であり、
すぐさま移動したところで大きく距離をとることはできず、
再び鉢合わせすることになってしまう可能性も低くはなかった。

逃走するのであれば、転移先から男を引き離してからにしておきたく、
そうであるのならば――

リュカの脳裡をよぎったのは、先程休憩の終わりに確認した時刻と地図。
朝8時――放送で提示された禁止エリアが設定される時間まで、そう遠くなかった。
その時刻までは、ペナルティなく禁止エリアに立ち入ることができる。
現在地はE-7西部。隣接するF列一帯は、まもなく禁止エリア。
そして自分の手にあるのは、超高速での移動を可能とするアイテム。

――禁止エリアの深くに男を誘い込み、自分は8時直前に空飛ぶ靴で離脱する。

それがリュカの考えた作戦であった。



移動可能な場所が1箇所に決められているという空飛ぶ靴の性質も、この場合はかえって良かった。
島全体のエリアの区分数は54個であり、
そのうち禁止エリアとして指定されたのは、島の周囲を取り囲むエリア一帯、数にして30個。
仮に転移がランダムであったのならば、移動先も禁止エリアである確率は2分の1以上。
とてもではないが、賭けに出られるような確率ではない。

リュカは魔法を何度か挑発として男へと放ち、逃走/闘争 の開始とした。
男が後を追ってくるのを確認して、福袋の中にあった内でも有用な方であるアイテム――スピード・タブという
生体加速剤を取り出し、3錠あったうちの1つを飲み込む。

薬によって高められた神経の反射速度を駆使しながら、リュカは森を疾走していく。
軽装の自分に比して、相手は金槌や甲冑などの重装備。
速度が増強されている現在、追いつかれる心配をする必要はさほどなく、持久戦に持ち込めばなおのこと余裕だろうと
――――そう思っていた。

(くっ――!)

張り出した根や転がる石などを避けるように、何度目かのルート変更。
あまり早くに森を下って目的を悟られてしまったりしないよう、
もともと迂回や蛇行を繰り返しながら奥へと至るつもりではあったが、
それにしても獣道さえ満足にできていない悪路は、なかなか思う方へと進路を取らせてくれない。
根も石も、通常ならば大した問題になるはずもないような、小さな障害である。
しかし“男がぴたりと食らいついてきて引き離すこともままならない”状況下では、
わずかにでも足をとられ減速しようものなら即座に距離を詰められることとなり、あの金槌の餌食となる。

リュカにとっての誤算は、ガッツが普段より武器の満載した甲冑を身に着けながらにして
身の丈を越える大剣を振り回すような、人並み外れたスタミナの持ち主であったことと、
ガッツが現在身に着けているホッパーブーツなどの装備品、
これらが速度を大きく補強することもできるアイテムであったこと。

巨体に見合わぬスピード、背を向ける獲物を追う姿、『ヒグマ』の如し! ならば苦戦するは道理!



そしてさらに悪いことに、リュカの用いたスピード・タブ、その効果は永続的なものではなかった。
飲むと同時に即効性を示すが効果を失うのも早く、時間と共に上昇値は落ちていく。
今もまだ最大効果の半分ほどは残っているだろうが……8時まではあとわずか。
追い込みをかけるためにもと、予備として握ってあった錠剤をもうひとつ口に放った、ちょうどその時である。

後方から衝撃音。そして頭上に陰が差した。

(なっ――!?)

上げた視線の先で、斜めに延びる幹がリュカの方へと“倒れ込んでくる”のが目に入った。
男が大樹の一本を金槌で殴り倒したのだ。
叩き折ったあと更に打ち付けたのであろう樹は、加速をつけてリュカを押し潰さんとする。
10メートル弱はある樹高を前にして、今までに開けていた距離も無意味。
しかもちょうど山道に差しかかろうという地点であったために、広がる枝が他の樹に絡んで途中で止まるなんてこともない。

油断した。
逃走に入る前から今まで、男は金槌をそのまま振る以外の攻撃を繰り出そうとは一向にしてこなかったし、
また正直このような機転を利かせた行動を取れるほどの理性が残っているとは見えなかったため、
武器の間合いにさえ入らないよう気を付けていれば、問題ないと思っていたのだ。
あるいは正気というわけではなく、獲物を追い詰める獣の本能みたいなものに因るのであったのかも知れないが、
いずれにせよ、予想外の方向からの攻撃にリュカの判断がわずかに遅れた。

一瞬。しかしこの場においては致命的な隙。
たとえ倒木を避けられたとしても、次に迫るは魔神の金槌。
漆黒が死を携えてやって来ていた。


(けれども……こんなところで終わってたまるか)


ドーピング直後の最大速度を活かして、魔法を完成させる。

「ルーラ!」

瞬間移動呪文。リュカにとって空飛ぶ靴の他の、もうひとつの移動手段。
ただし制限のため連続での使用はできず、次に何かあったとしても魔法での回避は不可能となる。



――本当に、ままならないことばかりだ。

こうなった原因は自分の見通しの甘さにあるが、そんな風にも思ってしまう。

……少しだけ、良いのではないかと思った。
何も愛さず愛されずにいようとしていたけれど、愛おしくもなってしまった日々に、未来(さき)があることを信じてみても。
そうして子どもも生まれて……その矢先に、僕も妻も、未来など歩めない石に変えられた。

得たものは失われる。積み上げたものは突き崩される。そんな世界。
いつか奪うというのなら、なぜ夢を見させる!
もうこれ以上なにも手にするつもりはない。何の感情も抱いてしまわないうちに、縁を断ち切る。

ここはおそらくE-5かF-5、F-6、その境界部といった辺り。
禁止エリアに入っていたとしても浅く、このままここから去れば、男はあっさりと抜け出してしまうだろう。
禁止エリアの奥まで辿り着けなかったのも、自ら手を下す必要のない契約を利用して
“人殺しに伴う感情”から逃げ出すことなどさせぬと、断じられているようであって。


(……ならばこの場で、決着を着けてやる!)


リュカがルーラで飛んだ先は、斜め前方、ほんのすぐ近く。
転移を認識した男が方向転換し迫る中、詠唱を開始する。

5メートル

同時にデイパックより、基本支給品である松明を掴む。

4メートル

着火具を用いて、点火。

3メートル

そして、接近する男が先ほど倒した樹、その葉の生い茂る部分にさしかかった瞬間に。

2メートル


「バギクロス!!」


左手より魔力を解放し、右手の松明を投げ込んだ。



轟、という音を鳴らして、生じるは火炎の竜巻。
リュカの言によって吹き荒れた暴風が男の進撃を止め、
松明は風に乗りながら、旋風が巻き上げる木の葉や下草を次々と燃やしていく。
渦巻く風は、絶えずふいごで空気を送り込むようなものだ。瞬く間に火は成長し、男を炎の渦の中に閉じ込めた。

魔法だけでなく炎を併用したのは、一発の攻撃の威力を上げるためである。
魔力は既に半分以上使い果たし、これからも独りで戦っていくのなら、少ない消耗で大きな打撃を与える必要がある。
背に腹はかえられない。
だから、先程食い殺されかけた時に空飛ぶ靴を使うことにしたのと同じく。
“炎がどのような想いを呼び覚ますのだとしても”、本能の拒絶を無視して、こうすることを選んだのだ。

離れてなお皮膚をちりちりと苛む熱風と、鼻の奥を掻く焦げ付いた臭いが、
リュカが凍りつかせたいと願う『感情』を刺激していく。
津波の前に引く潮のように全身からさあっと血が引いていき、
そしてまもなく揺り戻しが来ようとしているような、そんな感覚。

旅の中では、メラの魔法や火の息などで炎を目にすることは日常的にあったし、
リュカ自身、仲間に対してそのような指示をすることだってあった。
けれども、この殺し合いに連れて来られる直前、リュカにとってはまだ8時間と経っていない前、
十余年の時を経て、父を殺した仇敵に再会し、わずかばかりに積み上げたものを奪われ、
どうしようもなく黒い感情を自覚し、“仇”と“炎”が強く結びついてしまった今、
その光景は、『喪失感』やら『復讐心』やらで、ぐちゃぐちゃと乱れた想いを惹起させるものとなっていて――

……歯を食いしばる。
生体加速剤によって亢進した神経活動のために、少しの時も引き伸ばされているような時間感覚の中、
リュカはありったけの精神力を注入し、その『感情』に抗う。
その甲斐あって、張りつめてはいるものの仮の安定を得て、思考を回す。

そうして、ふっと、思った。
『炎』はむしろ、自分の望みに合致したものなのではないかと。

そこにあるものの意味も価値もおかまいなしに、奪い去っていく『炎』。
それによって全てが無へと還されれば、何も残ることはなく、これ以上得てしまうことはない。
死んだらそこで終わりで、死者はもう何も成すことなどできないのだから、
この男の歩んできた道も、想いも、名前だって知る前に灰へと変えてしまえば、
きっと情が湧くことも縁ができることもありはしない。

とはいえこの『炎』は、仇敵が使ったものに比べればあまりに貧弱だった。
無にするどころか、殺せているのかどうかだって怪しい。
まだ男が生きているのならば、起き上がったりしないように、とどめを刺さなければならない。
結局慕ってくる仲間を拒みきれなかった今までのようにはいかないと、そう決意したのだから。

いつか失われてしまうような未来に繋がるものは、全部捨て去る。
こんな殺し合いなんて早く終わらせて、元の世界に戻って、
過去の清算――ゲマの炎とサンタローズの戦火を免れた父さんの遺志が
本当に無意味と無価値にされてしまわないように、それだけを遂げてしまえば、もう何も奪われずに済む。
あとは閉じた過去の思い出の中で、静かに朽ち果てればそれでいい。

リュカの瞳は『炎』を映しこんでいたが、そこに輝きなどなかった。
唾を飲み込み、殺意を手に握り締める。
そして、舞う灰や砂煙で中の様子が判別しづらい竜巻の中に目を凝らして――絶句した。



確かにこの一撃だけでは終わらないかもしれないと、思ったばかりではある。
しかしそれなりの成果はあってしかるべきだった。
傍にいるだけのこちらまで汗が噴き出すほどの灼熱の炎風に嬲られているはずなのに、
渦の中の黒い影は、金属の鎚を取りこぼすことさえなく、しかと大地を踏みしめ立っていた。


――リュカにはあずかり知らぬことであるが、ガッツが身に纏いしは、漆黒の鎧。
  普通の鎧とは異なり耐火性能に優れたそれは、“炎によるダメージを大きく軽減させる”。


影が動く。
リュカの目に映ったのは、火を前に怯むことさえ忘れた、獰猛で凶暴な『狂犬』の姿。





……さて。
この地に魔女はおらず、男にとって道連れ(なかま)と呼べる者を新たに得る間もなしに
かけ替えの無いものを喪失(うしな)ってしまった今、男を止められるものはない。

しかし荒れ狂う彼の心が『獣』と称されるものであるのならば、
“モンスター”の邪心をも打ち払うとさえ言われる≪魔物使い≫にであれば、
その心を鎮めることも可能だったのであろうか。

ただいずれにせよ、リュカが投げ込んだのは敵意を持った『炎』。
そうであっては、男の内で猛る『ドス黒い情念の火』の火勢を増させこそすれ、
その『炎』に男が飲み込まれるのを防ぐ≪かがり火≫の替わりになど、なれるはずもなく。


故にこの二人の邂逅は、魔神の金槌の一振りに終わる。





ドォウゥゥ――――ン……


.



◆◆◆


ぱちぱちと、木の爆ぜる音が鳴る。
術者が消えて風が凪いだことで、煌々と燃え盛っていた炎柱は霧散し、
周囲に延焼した部分に残った火がもたらす熱気が、祭りの名残のようにわずかにあるばかりであった。

そこに生きたまま立つは――――ガッツただ一人である。

「がはァッ……」

ガッツは魔神の金槌の柄を支えとして軽く凭れながら、
火に肺腑を焼かれぬようにと止めていた呼吸を再開し、空気を貪った。

漆黒の鎧が炎に強いとて、全てのダメージを防げたわけではない。
火に因らぬ鎌鼬は鎧の至る所を抉り傷つけ、露出していた部分の肌には無数の裂傷と熱傷が刻まれていた。
深夜の戦術鬼との戦いで負った、全身の打撲や胸腹部の骨折も完全には癒えきってはいない状態である、
常人ならとうに倒れていてもなんら可笑しくはなかった。

しかしガッツの中で地獄の業火の如く噴出する『想い』が、
楔となって彼を生へと繋ぎとめ、地に伏せることを良しとしない。
狂戦士の甲冑などの呪物や夢魔の手により増長されたものではなく、
されどそれに勝るとも劣らない、純粋に彼自身の内より燃え上がった『激情』。

壊れることなど厭いはしない。
だが鉄塊を―――――にくれてやる前に、潰れてしまうわけにはいかない。

残りの回復カプセルをすべて飲み下し、取った進路は、幸運にも北。
禁止エリア<契約による死>から逃れることを可能とする方位であり、
またその道の到る先にあるは、“魔王山”。そこにはかがり火を飲み込んで蘇っていった鷹がいた。

周囲に動くものが何もない今は、熾火のように燻ることとなった『想い』を抱えながら、
ガッツは再び幽鬼の如き足取りとなって、山道を登り始める。

帰る所≪鷹の団≫も愛する人≪キャスカ≫もこぼれ落としてしまった男の歩みは、止まることなく。



そしてこの地には、“二本”の倒木が残っていた。



【E-5/F-5との境界付近/1日目/午前】

【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:気になるか? 気にしていられると言うのか?
[装備]:魔神の金槌@DQ5、漆黒の鎧@真・女神転生Ⅰ、ホークマスク@MM2R、タイガーグローブ@MM2R、ホッパーブーツ@MM2R
[道具]:基本支給品×2、不明支給品0~2(武装の類ではない?)
[思考]
基本:復讐
1:壊す。
[備考]
※放送など、聞いているわけがない



◆◆◆


――敵も味方もなく目に写るもの全てを破壊せんとする狂戦士より逃れる術は、その視界に収まらぬようにすること。


1時間と経たずに戻ってくることになった古代の遺跡の前で、リュカはドキドキと鳴り止まぬ心臓を押さえていた。
空飛ぶ靴。
ルーラは使えなくなっていたが、ある種当初の予定通りにそちらを使用して、難を逃れたのだ。

紙一重で間に合ったのは、スピード・タブの効果がまだほぼ完全に近い状態で残っている間であったことと、
結局『炎』の中のあの状況を“不快”であるとして逃避を求めていた心が、
敵わぬとみるやすぐさま靴へと手を伸ばしたがため。

とはいえなんの問題もなく回避できたかというとそんなことはなく、
炎の渦の中から放たれた一撃は火を引き摺っていて、
空へと舞い上がったリュカの足元を掠めて、執念深く靴に食らいついてきた。
もともと戦闘用の物品でなかったためだろうか、火の手の回るのも早く、
ここまでは無事飛んで来られたが、羽の部分などは既に焼け落ちてしまっていた。

焦げ付いた臭いを放つ靴を摘まみ、デイパックの奥にしまう。
結局アイテムを無駄に消費してしまっただけの、惨憺たる結果に終わってしまったが、
殺意を向けながらも“快”ではなく“不快”と感じられたことに、リュカは胸をなでおろしていた。

……恐ろしかったのだ。知らず『炎』を肯定なんてしていた自分が。堕ちていっているようで。

けれどもその安堵を打ち砕こうとでもいうように、未だ高鳴り続ける心臓は
モヒカン男と戦った時の記憶も掘り起こしてきて、刻みつけようともしていた。


――黒い鎧を纏い、鎚を振りかぶった男。
対峙してわかった。あの男は同類だ。
おそらく何かを失ったのだと、そう感じた。
そしてそれが、あの破壊衝動に繋がっている。

復讐も殺人もともすれば、大義を超えて対象さえ曖昧にして、ただ行き場を失った『感情』を放出するためだけのものとなり得る。
流せぬ涙の代わりに他者の血をぶちまけてあがなうかのような行為に、あの男は何を思っていたのだろうか。

怒りだろうか。悲しみだろうか。怖れだろうか。

それとも――――歓喜(よろこ)んででも、いたのだろうか。


「関係ない……僕には関係のないことだ」

目を閉じる。汗ばんだ体を通り抜ける風に、身を預ける。
体調を崩すわけにはいかないが、今はただ熱を持った体を早く冷やしてしまいたかった。



時刻はまもなく8時を迎えた。



【E-7/古代遺跡前/1日目/午前】

【リュカ@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:ダメージ小、魔力消費大
[装備]:アームターミナルC(空)
[道具]:基本支給品(松明1つ消費済)、空飛ぶ靴@DQ5、悪の福袋(スピード・タブ×1、悪のブロマイド、プラチナスプレー、男くさいはちまき)@MM2R
[思考・状況]
基本行動方針:情が湧く前に全員を殺し、元の世界に帰還する
[参戦時期]:石化直後
[備考]:空飛ぶ靴は一部燃えました。おそらくそのままの使用は不可能かと思われます。

062:金の掛かった首は重い 投下順 ザ・ヒーローの孤独なグルメ、改め強くてニューゲーム
062:金の掛かった首は重い 時系列順 ザ・ヒーローの孤独なグルメ、改め強くてニューゲーム
060:壊せば、いいんだろ? ガッツ
060:壊せば、いいんだろ? リュカ
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