取らぬ狸の皮算用


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声が響き渡る。
意識を背けようにも背けることの叶わない、場そのものを満たす大音声。
もとより意識を背けるつもりなどはなく好都合でしかないのだが、それでも少しばかり気が削がれる。

極限までに切り詰められた、必要事項だけを述べる業務的かつ無機質な放送。
それは資本主義の権化たる彼に取って、極めて好意的に受け入れられる形式のものであったが、
そのような瑣事は状況の劣悪さに比べてはあまりにも小さな肯定要素。
雅などとは程遠いそれに、ため息ながらに周囲を見渡す。

視界を遮る障害物はなく、やはりその”声”の発生源になりうる何かはどこにも見当たらない。

朝焼けの中、ポタリと水滴滴らせる良い男、タケダ・カンリュウは空を見上げる。
雲一つなく、排煙やアドバルーン・飛行船の一つも見当たらない、一見して混じり気のないまっさらな空。

曙光に包まれながら日の本の男タケダ・カンリュウは、ただ空を睨む。

そうして放送は終わる。


その理不尽な内容に対して、大きく息を吸い込み彼は叫んだ。

「バァッカ、じゃ、ねえのーーー!!」

18名。この短時間で失われていったあまりにも多くの命数と、
30エリア。あまりにも多く指定された禁止エリアに、大いに彼は憤慨した。
必ずや、かの邪知暴虐の主催の手を逃れようと、決意を新たにする。
息を整えながらに情報を整理する。

この放送からわかったことはいくつかある。

一つは、開示された参加者および死亡者のデータからの推測だ。
レナ/テッド・ブロイラー/カリョストロ。
どの名もカンリュウ・ネットワークに掛かるほどの有名人だ。
単独で私兵隊50人にも匹敵・凌駕しうる戦闘力を秘めた超人にして、金になびかぬ独自の価値観を持つ狂人たち。

その危険性はカンリュウをして、これまでに少なくない金銭を彼らと遭遇しないためだけに、散財する必要があったほどだ。

つまりそんな奴らすら呼び込んだ、主催者という存在からは
(カネだ、カネの臭いがプンプンするぞぉ……)
まだ手にしていない、確実にモノとしたい金脈の気配に舌舐めずりする。

閑話休題。

とはいえ、確実に乗っているだろうこの3人だけでは18人もの犠牲は生まれなかっただろう。
単純にそれだけの人数と短時間で接触できたとは思えないというだけの根拠であるが、これはほぼ確実と考えてもいい。
つまり、名のしれた存在=わかりやすく警戒可能な人物以外にも殺し合いに乗っている”バカ”はいるのだ。
失われた命数もさることながら、その事実が現状の危機をより強く認識させる。

一つは、禁止エリアに指定された地域からの推測。
バーリトゥード(なんでもあり)同然のルールを敷いた管理者にとって、参加者の自由性を削ぎ落す禁止エリアの制定は本来消極的な要素であった筈だ。
禁止エリアが持つ役割は殺し合いに消極的な状況を刺激するための要素であり、望む方向に人を動かす積極的な介入である。
相反する要素は適切な運営によって初めて違和感なく結合する。

全体の人数が42人に対し、第一放送における脱落者が18人。
このペースは企画者にとってこの上なく順調な推移であるはず。
そうであるのならあまり多くの禁止エリアを無理に設ける必要はない。

にも関わらず、これほどに痛烈な締め付けを行う決断をするのには違和感が生じる。
考えられる要素とすれば、

(このイベント自体を根底から否定する”何か”の要素に主催者が気付き、それに参加者が気付く前に終わらせようとしている、なんて都合良く捉えすぎですかねぇ……?)

そうした”何か”があるとすれば、それはおそらく人ではない。
例えば私の「島の西側一帯を潰し、船で参加者を送り出す」という指針。
これが心底目障りだ、というのであれば禁止エリアを増やす、という対策ではなく単純に私の首を飛ばす、それだけで事が足りる。
それは特定の場所ではない。
そうと判断するにはあまりにも指定されたエリアが多すぎる。

おそらく気付きさえすれば”誰もが突ける致命的な穴であり”故に誰もそれに気付かぬうちに、このイベント自体を終わらせてしまいたいのだろう。

思考を止める。納得が行く推論ではあるが囚われるには危険な考えだ。
何よりも間違っていようが正しかろうが、真偽を確かめるだけの情報が足りない以上、時間の浪費にしかならない。

得ることができる”かもしれない”情報と、”確実に”失われていく時間とを天秤に掛ける。
メリットとデメリットを比べ価値のある行動を見出すのは、商人として呼吸をするよりも自然な思考である。


地図を取りだし、禁止エリアを睨み、タケダ・カンリュウは決断する。

「北、ですね……」
市街地が禁止エリアに設定されたことにより移動してくる誰かを期待する事が出来る。
今はなによりも誰かと接触することを優先することが必要だと決め打つ。

「本当なら、港の建築のためにも立地だけでも確認したかったのですが……」

この放送でそうも言っていられなくなった。
準備万端整えているのを待っていては、いざ実行に移そうとしたその時に労働力が足りない、なんてことになりかねない。
この柔軟さこそがタケダ・カンリュウを商人として大成させる要素の一つである。

ふと、気付く。
体を覆う氷がひび割れ、融け、砕け始めている。
(ソラと言ったか、放送に頭を冷やして妖術を解いてくれたのか……)

現金無しでの無様な交渉の結果である。
戒めとして受け取り彼女を責めたてる気はなかったが、どうやら許して貰えたようだ。
それはつまり、私の方針に対して理解を示してくれたということでもあるのだろう。

「早いうちに合流できればいいのですが……」

弾の切れた両手のマシンガンを外し、今まで氷に埋もれていたガトリングガンを担ぎ直す。
とある時代、西部にて≪最強≫を謳ったそれを持ってしてもこの場はあまりにも心細い。
何よりも、カンリュウにとっての≪最強≫はそのようなところにはないのだから。

空を見上げ、その先にあるモノを睨む。

タケダ・カンリュウは最も恵まれた境遇にいた、それゆえに気付けたことがある。
周りには視界遮る建物も樹木も存在しなかったこと。
そして彼がニッポン男児であった事も大きな要因だ。

つまりは遠く空の彼方で大きな存在感を放ち続ける重要情報、放送の発信源。
あの偽りの陽光こそがそれであると気づけたのだ。
今はまだ何もできない。
だがこの情報がなんらかの意味を持つ時がくるのかもしれない。

そんな何時かに対してわずかに意識を向けて、今を生きるために歩き出す。
未来は見えずとも、目指す夢はこんな場所でも変わりない。
口元は小さく歪んでいた。


【エリアD-2/1日目/朝】

【タケダ・カンリュウ(トレーダー)@メタルマックス2:リローデッド】
[状態]:びしょぬれ、下半身はパンツのみ
[装備]:O・ディオのガトリング@LIVE A LIVE
[道具]:基本支給品 、アームドガン@メタルマックス2:リローデッド、ガルシアガン@メタルマックス2:リローデッド
[思考・状況]
第一行動方針:島の西側一帯を潰し、船で参加者を送り出す
第二行動方針:そのためにも、物々交換や拾った物の売買で財を築く
基本行動方針:主催者を倒し金を奪い返す
[備考]
タケダ・カンリュウの故郷はニッポンというところだそうです。
ベン2を倒したと思っています。
レナ/テッド・ブロイラー/カリョストロに関する幾らかの情報を持っています。
会場上空のG・ガランに気付きました。
このイベントを覆すような”何か”がある可能性を考えています。

060:壊せば、いいんだろ? 投下順 062:なんということだ……
060:壊せば、いいんだろ? 時系列順 062:なんということだ……
045:イッツァソ○○アタック! タケダ・カンリュウ(トレーダー) 063:金の掛かった首は重い
ツールボックス

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