右足を出す。
力を込める。
左足を出す。
力を込める。
一歩歩ける。
当たり前だ。
体がうごく。
当たり前だ。
だがそれは。
関係ない事。
気がつけば、塔の頂上にいた。
その中で見たもの、その色、その形、全てがどうでもよかった。
何色が映ろうと、何者が映ろうが、どうでも良い。
一面に広がる無限の景色。
視界に入った途端に色が落ち、形が崩れる。
ぼろぼろと、ぼろぼろと。
朝日が昇り始める空も。
遠くに広がる一面の海も。
その手前に広がる限られた大地も。
何も映らない。
そこに何があろうと同じだから。
あの人以外は、何もかもが同じだから。
この高き塔から全てを見下ろしても。
あの人はこの目に映りはしない。
映るのは、他のどうでも良い存在ばかり。
ああ、全てを見抜く目さえあれば。
この罪を断つ塔から、あの人を見つけることが出来たのか。
全てを見抜く目さえあれば――――
いや、それがあったならば。
既に自分は絶望していなければいけない。
あの人の何もかもを見抜いてしまえば、絶望するのは自分だ。
だから、分からない方が良い。
分からない方が、希望が持てる。
全てを見抜くのではなく、事実をこの目に焼き付ければ良い。
真実は、牙を剥く。
.
ここは、断罪の塔。
罪を断つという単語を冠した塔で、彼女は想う。
自分の今までの罪を、全て断ち切ればあの人は自分を見てくれるのかと。
倫理、論理、理屈、ありとあらゆる理がそれを罪だという。
世界という全てが、自分を否定しに来る。
自分自身という存在が罪であると、烙印を押しに来る。
ならば。
この罪を断てば、あの人は目を見てくれるのだろうか。
死ぬことを辞め、生きて罪を断つことが出来れば。
見てくれるだろうか。
ただ、あの人に見て欲しいだけ。
罪を断つことが正解なのか、許されたいと想う心を捨てるべきなのか。
何が必要なのか。
生きることは正解ではない。
死ぬことは正解ではない。
何が正解なのか、わからない。
わからない。
ただ、今の自分にはあの人に会うと言うことしか出来ない。
ただ、今の自分があの人と出会うことが正解なのかどうなのかはわからない。
ただ、今の自分に足りないものがあるのではないかと考えてしまう。
もう一度、目を逸らされるのではないか。
もう一度、あの人に拒絶されるのではないか。
もう一度、自分は無価値に成り下がるのではないか。
わからない。
でも、会うしかない。
今の自分にはそれしか出来ないから。
あの人が、自分を見てくれることを祈りながら。
――――を背負い、塔を下る。
【D-5/断罪の塔入り口/早朝】
【フリアエ@ドラッグオンドラグーン】
[状態]:健康
[装備]:光のドレス、シルクのヴェール、真紅のベヘリット
[道具]:基本支給品*1
[思考・状況]
基本行動方針:カイムを探す
[参戦時期]:自殺後
最終更新:2013年02月06日 16:00