Dragon Hello


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 ソラがサイファイを疾らせて幾分時が経ったであろうか。
 もう本人も何分経ったか覚えていない。
 とにかく、それくらい長い時間の間、ソラは運転を続けていた。

 最初は何もわからなかったが、こう長い間乗っていれば操作の仕方は食事のマナーよりも簡単。
 今では自由に動かせるほど相棒となりつつあった。
 これは誰でもとは決して言えない。
 ソラだからこんなにも短時間で相棒にできるのである。
 幼い頃から努力に努力を重ねた結果、小さな体からは想像できない戦う術や知識を備えている。
 だから乗り物なんかに遅れを取るようなことはないのだ。

 そんな相棒と共に行動している。
 だがあのタケダカンリューと名乗っていた人物に会ってから長いこと経つものの一向に他の人に会えない。
 ならば方向転換でもするか。
 とソラは簡単にサイファイの疾らせる向きを変える、その方向に誰か居ることを信じて。

 ソラはとにかく誰かと会いたかった。
 何故か、ソラは隣に誰かが居たほうが強くなれるからだ。
 もちろん彼女自身が後衛的役割である魔法の心得のほうが、体術より優っていることも理由の一つ。
 しかしそれだけじゃない、ソラは生まれてこの方一人で戦う、いや一人でいた事すら無いのだ。
 いつも隣に家族や仲間がいた。暖かく柔らかくソラを見守っていてくれた。

 彼女にとって一番力を出せるのが信頼出来る誰かといるとき。
 しかし彼女は今それを得てはいない。
 故に彼女は今、追い詰められている。
 この殺し合いを打破するために必要であるものが得ていないのだから。

 そしてその孤独であることがソラの精神を衰弱させているとは今は誰も、ソラ自体も予期していない。


 ☆ ☆ ☆

 古代遺跡から南に進み、地平線まで続く海が見えるそんな場所。
 そんな場所から何か細長い棒をぶうんと振った音が延々と聞こえてくる。

 振る振る振る振る降る振る。
 杖を振る。
 ドラゴンの杖をただ振る。

 杖はつくだけものか。
 いいや、古の時代からつく以外のものとして使われていた記述は幾つもある。
 それに木の棒が全て杖と呼べるのなら、クリケットのバットなども杖だ。
 だから振ることは何も間違ってはいない。

 杖を縦に振る、脳天から叩きつける練習か。
 いいや、杖では脳みそは飛びださない。
 杖を横に振る、脇腹からぶっ飛ばす練習。
 いいや、杖では力不足感は否めない。
 杖斜めに振る、肩からぶちのめす練習。
 いいや、杖では袈裟斬りはできない。

 杖は武器にならない?
 いいや、練習すれば武器になる。

 だから杖を振る。

 振る

 振る振る振る振る振る振

 振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る

 振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る

 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る振る振る振る振る降る振る
 振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る振る




 振る




 振った数、3万回を遥かに超える。
 実に2時間、ただ一心に振り続けた。

「ほっほっほ…… 流石に疲れましたねえ……」

 流石の大魔導師ゲマと言えど休憩無しで振り続けるのキツイか。
 海風に煽られながら、一人呟く。

 ゲマは武道家か。
 違う、その対に値する魔術師だ。
 ならば何故魔術を生かさない。
 いいや生かしたい、だけど生かさない。
 何故か。

 リュカ一味に負けた。
 負け理由は数あれど、一番は己の能力の過信であろう。
 ゲマは呪文に頼りに頼り、頼り続けた。
 それで大抵のことは済んでしまう。 
 だから他には拘らなかった。

 けれども今回は拘ることにした。
 呪文だけでは勝てぬのなら、手数を増やせばいい。
 魔力が切れたら、武力で討ち破ればいい。

 だから杖を振るのだ。
 どの構えが一番なのか。
 どの叩きつけ方が最優なのか。
 どの振りぬき方がベストなのか。

「ほっほっほ。 ですが休んでいる暇などありません」

 夜の闇に静かに波の音が流れる。
 その音を聞きながらゲマは静かに素振りを続ける。


 さらに時間が経つこと二時間。
 太陽がうっすらと顔を出した。

「これで…… 完成です」

 鞄のボトル水を全て飲み干し、清々しい顔を浮かべている。
 完成。
 そう完成したのだ。
 このドラゴンの杖を最も強く、そして己の武力を示すことが出来る型(フォーム)を。

 ゲマはもう一度己の型を取るため呼吸を整える。
 ドラゴンの杖を体の正面でゆったりと構える。
 まるで日本の神社に仕える神主がお祓い用をするようなそんな姿形。
 一種の神々しさそ匂わせるが、ゲマの全身はリラックスしている。
 そんな姿から、力強く、速く、ドラゴンの杖を振る。

 迫力、攻撃力、そして振りぬいた後の隙の無さ。
 3つの部門の王は狙える圧倒的な力。
 そんな完璧な姿形をゲマは会得したのだ。
 執念か、運命か、それとも偶然か。
 ともあれ得たのだ、ゲマは呪文以外に頼る方法を。

「疲れましたねえ…… 本当に疲れました…… っと、おやぁ……?」

 朝日が差し込んだ海岸地域に、慌ただしい駆動音が響く。
 目覚ましには丁度いい。
 然れどもゲマは逆である、即ち今すぐ休みたい。
 音を無視して睡眠をとってもいいのかもしれない。

 でもその選択をとらなかった。
 なにせゲマの耳に響いたその出処の主が、実に興味深い。
 興味深い興味深い。
 興味深い、が、向こうはどうも芳しくなさそうだ。

 音はゲマへ向かって近づく。
 近づくに連れて相手の顔が見えてくる。

 相手は嫌悪感を浮かべている。
 実に正しい反応だ。

 そんな音の主を見つめながら、三冠の型で受け止めるゲマ。
 そのゲマの姿を見て、音の主━━ソラ━━はゲマの目の先数メートル前で静かに停車する。

☆ ☆ ☆ 

 ああ、何故この少女は災難に巻き込まれるのだろうか。
 今のゲマの姿を、志を知らぬものなら誰しもが思うこと。
 体調は優れない、恩人を見捨てる、変なのには絡まれる。
 幾分長い間サイファイを走らせていたにも関わらず誰にも遭遇できない。
 いや会えたものの怨敵と出会ってしまう。

 ソラの心は、大きくぶれる。
 純粋な心は消え、全てを放棄せざるを得ない、そんな圧力に屈する。

「ほっほっほ…… お嬢さん、久方ぶりですねえ……!」

 怨敵が何かほざいている。
 彼女は心のなかで愚痴る
 うるさい黙れ。
 黙れ。
 頭に響く、
 と。
「お嬢さん、いや、リュカの娘のソラお嬢さん。
 たしかに今までの私はあなた方の多大なる敵!
 貴方にとっての祖父母を殺し、貴方を5年間もの間寂しい目に合わせたその化物に過ぎません!
 ですが今の私は当時のあなた方同じ駒!
 好き放題動かし、汚れたらゴミ箱へ捨てられる存在!
 そんな愚かな駒なのです!!!
 だから私はそんな駒として、貴方と一緒に行動することを望みます!
 あなたの力と私の力、呪文を軸にした戦い方は実に似ている!
 お互いがお互いの欠点を述べ合い、指摘し合えば!
 ほっほっほ!
 私たちに敵は無くなります!」

 ソラにとっては痛ましく、悩ましい言葉を目の先の怨敵は言い放ってきた。
 なに?
 なんだって?
 こいつはなんだって?

 一緒に行動する?
 父の仇敵を?
 諸悪の根源を?

 ふざけるな
 ふざけるな
 ふざけるな

 ソラの心には、否定の言葉しか浮かんで来なかった。

「黙れ……」

「ほっほっほ!
 だまりませんよ!
 私が黙ったところでこの殺し合いは終わりません!
『恐怖』から逃れることはできません!
 あなたのその傷、とても叶わぬ相手から逃げきてきたのでしょう?
 でももう大丈夫! 私が貴方を守って見せます!」

「黙れ……!」

 目先の化物、ゲマが世迷言を語りかけていく。
 いくら仇敵とはいえ、ソラは話を一切聞かずに一方的に吐き散らすような娘ではない。
 どんな話もきちんと聞いてくれるあの父の子である。
 だけども今のソラにはそれができない。

 原因は幾つかある。

 いきなり襲われたこと。
 命を救われたことも。
 タケダ・カンリューなどと名乗った意味不明なことしか言わない男と合流したことも。
 その後誰とも合流できなかったことも。
 怨敵が戯言を言ってきことも。

 そんな彼女を惑わす多くの出来事が、まるで癌のように彼女の心を蝕んでいった。

「貴方も誰かを殺すことは嫌でしょう?
 なぜならリュカの娘なのですから!
 リュカは決してこの様な殺し合いは許さないでしょう!!
 だから今の私はリュカと同じ! そう同じなのです!!」

 ソラのイライラは止まらない。
 お前が、父上と一緒のはずがない。
 いくら善行に励もうが、いくら殺し合いを否定しようが、お前が父上と一緒のワケがない。
 だからこれ以上父上の名を出すな。


 黙れ

 黙れ

 黙れ

 黙れ

 黙れ

「黙れええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

         そして

 ソラは     ついに      キレた


 恐れも罪悪感も嫌悪感も寂しさもそして怒りも。
 全ての負の感情が超越してしまった。
 彼女は彼女自身の内部から負の感情しか生み出せなくなっていた。

 そんなソラの目からは、血の涙が出ていた。




 そしてソラは 




 異形


 に

 なった。

☆ ☆ ☆


「ほっほっほ……! ここまで拒絶されるのは少し悲しいですねえ……!
 ですがこの力は…… ひょっとしてミルドラース様も凌駕するかもしれませんねえ……!」

 リュカの娘、ソラが突如として雄叫びを上げる。
 その叫びに思わずゲマは竦んでしまった。
 だがそのことよりも、その後のことが彼の興味を全て奪ってゆく。

 ソラの全身が光りに包まれ、その光は上空へ高く舞い上がり
 そして分散し隆々とした物を造り出す。

 その姿、ドラゴン。
 元々の姿が純情可憐な女の子とは信じられぬ程の荒々しくそして質実剛健なドラゴン。
 ゲマの体に震えが走る。
 勃興する感情。
 恐怖。
 ミルドラース様の力を見た時よりも激しい恐怖。
 そんな恐怖。
 でも、なんとも気分のいいことだろう。
 やっぱりリュカは偉大だと、ゲマはさらに己の中にいるリュカを褒め称える。

「リュカ…… あなた方はミルドラース様に敗れたと思っていましたが!
 撤回いたしますよ! 娘がこれほどの力を持つことが出来るのなら! 貴方一人でもミルドラース様を倒すことが出来るでしょう!
 貴方はやはり素晴らしい! いったい娘に! どれほどの! 試練を! 与えたのですか!?」

 目の先の龍がゲマに向かい爪で切り払う。
 無論怒りに身を任せての一撃はそうは食らわない。

「しかし…… それでも私の考えは変わりません!
 そんな力を持っていても! 孤島に放り込ませる力を黒幕は持っている!
 恐らく! これは貴方ほどの力を持ってしても! 打ち破れまいでしょう!!
 だから私は! リュカッ! 貴方よりも速く! 真の黒幕を打ちのめしてみせましょう!
 それやってこそ……! 貴方を超えられるのですッ!」

「だからまずは! そこにいるあなたの娘を! 私の所有物とする!
 話を理解できないなら理解できないで結構!!
 私は娘を奴隷とさせて頂きますよ!」

 ゲマの決心。
 それはリュカを超えること。
 ミルドラースをも超えるリュカを超えること。

 だから、そのリュカから娘を奪う。
 奪って従わす。
 それが打破の一歩となり、リュカを超える道となる。

「ほっほっほ! かかってきなさい!
 私の夢のために! リュカをこえるために!」

 杖を構えたゲマの顔は、明るい。

【エリアF-7/東側海岸/1日目/早朝】

【ゲマ@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:健康 疲労感中 
[装備]:ドラゴンの杖
[道具]:基本支給品、
[思考・状況]
基本行動方針:この殺し合いを破壊し、黒幕を撃破し、リュカを超える。
[参戦時期]:死亡後
1:リュカの娘を止め、奴隷にする。

 ※神主打法を会得しました。

【ソラ@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
【状態】顔と膝を負傷、バイキルト、ドラゴラム中 情緒不安定
【装備】爪爪爪 
【道具】基本支給品、不明支給品(1~3) サイファイ@MM2R
【思考】冷静にはなれたが、やっぱり家族に会いたい
1:ぶちのめす。

※移動中に誰かに
目撃されたかもしれません。


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032:飛べないハードルを負けない気持ちでくぐる ソラ 056:なんとも醜い復讐劇の序章
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