飛べないハードルを負けない気持ちでくぐる


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戦場から離れるようにただただ南へ。
名も知らぬ赤髪の男に感謝の意を込めながら、ソラはただひたすらにハンドルを握っていた。
目を閉じれば、あのときの恐怖や絶望が蘇る。呪文も効かず逃げることしか許されない、理不尽すぎる戦争だった。
自分の力が及ばなかった理由は分からない。もしかすると、別の方向から攻めればよかったのかもしれない。
それこそ今更考えればマヒャドを唱えるという手もあったろう。しかし怖れを抱いた自分には出来なかった。
これからもああした手合いは現れるだろうというのに……それを分かっていながら、体中の震えが止まらなかったのだ。
だから、無関係な人に頼るしかなかった。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……っ」

自然と口から零れた謝罪の言葉は、誰をも救う勇者のように颯爽と現れたあの男に向けてのものだ。
恐らく彼は無事では済まないだろう、というのはあの場の空気で分かる。もしかすると最悪の事態が起こった可能性すらある。
戦えない自分に代わって犠牲になった彼の事を思う度に、目から涙が止まらない。超高速で移動している最中だというのに、目の前の風景が歪んでよく見えなくなる始末だ。
前をきちんと見なければ、何かにぶつかる可能性もある。だから涙を流さずにしっかりしなければならない。だが感情がコントロール出来ず、涙は流れ続けた。

「ふぇ……?」

だがそうしていると、不意にルーラの呪文を唱えたときにも似た感覚が身体を包み込んだ。
そして大層な何かが起動したような音声が耳に届くや否や、目の前が真っ白に染まっていく。
あまりの不意打ちに涙が止まり、彼女は辺りを見回したが、遂に何も見えなくなってしまった。

ソラは知るよしもない。これがドッグシステム起動の合図であったことを。



       ◇       ◇       ◇       ◇       ◇



一方その頃某所にて、ある男が地図と睨めっこをしていたのだが、



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                   \  __  /
                   _ (m) _ ピコーン
                      |ミ|
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おかげで何か閃いたようだった。



       ◇       ◇       ◇       ◇       ◇


戦場から離れるようにただただ南へ。
名も知らぬ赤髪の男に感謝の意を込めながら、ソラはただひたすらにハンドルを握っていた……はずなのだが。

「きゃああぁあぁぁああっ!」

いつの間にやら彼女は、木々生い茂る山中をバイクで駆け下りていた。

「いやあぁぁあぁぁぁぁっっ!!」

何故そんなことになったのか解説しよう。
実は彼女、ルーラを唱えたような感触と共にとある場所へ移動した。赤髪の男が託してくれたシステムが起動したからである。
果たして彼女は血も通わぬ戦闘機械から逃げおおせることが出来た。地図曰く〝D-4〟のエリアにあるという断罪の塔へとワープしたのだ。
ソラ自身は地図を見ていないため理解できていないだろうが、あの男の願いは叶ったと言える。

「だ、誰かっ! 誰か! 止め、止めてっ! これ止めてぇぇぇえええぇえぇえ!!」

だがその後がまずかった。何せソラは、バイクの仕組みを知らなかったのである。
断罪の塔に到着した? だから何? 到着してもブレーキがかけられなきゃ意味無いだろ。
彼女の世界ではバイクなんて存在しないのだ。遠くまで逃げられたとて、止まる術など知りようがない。

「もぉやだぁあぁぁぁああぁ!!」

猛スピードで迫ってくるようにも思える樹木を奇跡的に避けながら、ソラはあっという間に下山を完了する。
そして幾分整備された道路を横断する形であっという間に突っ切ると……そのまま浜辺に突撃し、波打ち際にまで突入。
果たしてバランスを崩したバイクから吹き飛ばされたソラは水中へと没し、ようやく停止することが出来たのだった。

「ぷはっ! げほっ、げほげほっ!」

突然呼吸が出来なくなったことに混乱しつつ、ソラはようやく停止できたことに喜びながら顔を上げる。
凄いペースで心臓が動いているために胸が痛い。それでもどうにか現状を確認せねばと本能的に察した彼女は、胸を押さえながら辺りを見回した。
さっき猛スピードで海に突っ込んだのは夢ではなかったらしい。さきほどのルーラを使ったときのような感触の正体は掴めないが、遠く離れた場所には移動できたのは確かだ。
まずは陸地に行かなくては……と思った途端、自分をここまで運んでくれた乗り物の存在を思い出す。水中に潜って見てみれば、バイクは無惨に横たわっている。
すると再び顔を上げた彼女は〝バイキルト〟を唱えた。単純に力を倍にしてくれるこの呪文で、機械仕掛けの大きな物体を運ぼうというのである。
とは言え元々の腕力などにそうそう自信があるわけではないソラにとっては、この呪文をもってしても作業は難航の一途を辿るばかりである。
水の中に沈んだバイクをどうにかこうにか「うんしょ、うんしょ」と引っ張るも、水の抵抗力もあってか上手く進まない。
すると、

「そこの少女! 何をしている!?」

水の届かぬ砂浜にいた謎の男から、声をかけられた。



       ◇       ◇       ◇       ◇       ◇


タケダ・カンリュウと名乗ったその男に手伝ってもらい、どうにかこうにかバイクを回収したソラは、まずは一番に謝罪をした。
というのもどうやらこのタケダ・カンリュウ、地図と睨めっこしながら前も見ずに歩いていたところ、ソラのバイクに目の前を横断されたらしい。
後もう少しだけタイミングが違っていたら大事故が起こるところだった、とはタケダ・カンリュウの弁。故にソラは謝り倒したのである。
とはいえタケダ・カンリュウは大人の男。ソラの謝罪に素直に応じると「気にするな。実際に事故が起きていなかったのだからな」と優しい言葉をかけてくれた。

「っくしゅん!」
「大丈夫かね」
「だ、大丈夫です……それにしても、凄いですねそれ」
「分かってくれるか! これこそ私の支給品、回転式機関砲(ガトリングガン)だ!」

ソラが褒めたその支給品は、タケダ・カンリュウにとっても実にお気に入りの物であったらしい。
その度合いたるや、放っておけば頬ずりまで始めるのではないかという勢いだ。実際に頬ずりしているわけではないが、魔物の心がわかるソラには予感がしたのだ。
なんだかこのままガトリングガンのことに触れたままではまずいと思ったソラは、話題を逸らすためにも今度は自分の身の上話を始めた。
このゲームに参加させられた瞬間に殺されかけたこと。そして自分をかばって名前も知らない人間が闘ってくれたこと。そして自分が逃げ出したこと……全て包み隠さずにだ。
するとタケダ・カンリュウの両目は再び大人のそれとなり、びしょ濡れになった彼女の髪を一度撫でると、「それは大変だったな」と微笑む。
そして「過去のことを思ってはいかん。竹になって緩やかに流し、未来を思ってもっと熱くなるのだ」と言って立ち上がった。
この状況下でも冷静そのもののタケダ・カンリュウに勇気づけられたソラは、その言葉に「はい!」と返事を返すと「わたし……頑張ってみます!」と笑顔になった。
すると、

「では、君に手伝って欲しいことがある。とても大事なことだ」
「な、何ですか?」

立ち上がっていたタケダ・カンリュウは、開いた地図をソラへと渡した。見ればその地図は、西の海辺一体を大きな丸で囲んである。
どうやらタケダ・カンリュウ直筆であるらしく、その丸で囲まれた部分には細やかな文字が大量に書かれてある。
しかしその文字は、城にある本でも読んだことのない言語だ。グランバニア地方の古語かとも思ったがやっぱり違う。文字と言うよりも、細やかなアートにも見える。
地図に書き込まれたミステリアスな文字に、突然の手伝ってくれ宣言。二つの未知に対して、不安を抱くソラ。

「私は、今よりこの企画の主催者に反逆する! 自衛以外の人殺しなど興味が無い! 世の中はそういうものでは回っていない!」

だが彼女の心配は杞憂だったようだ。ソラが手にした地図を自分でも覗き見るタケダ・カンリュウの表情は、実に熱い。

「そこでだ、私は主催者の最も嫌がることは何かと考えた……そして出た答えは!」
「答えは……なんですか?」

しかし、そんなことが可能なのだろうか……ソラは不安に思った。
確かにそれが出来るならそれが一番良い。だが誰もが古代呪文であるルーラを覚えているわけでもない。
島であるからには船くらいはあっても良いかもしれないが、港があるわけでもなし……そうなると島から脱出するには……あれ? ま、まさか!
己が到達した結論を疑うように、地図上で丸に囲まれた部分を注視するソラ。するとタケダ・カンリュウは嬉しそうに笑みを浮かべると、大げさにその部分を指差し、







   \あの辺り一帯を潰して港を造り、船で参加者を送り出す!/


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              (服は着ています)


こんな奇妙奇天烈なことを、大まじめに言い出した。
無意識に発した「え?」という呟きを合図に、ソラの身体が固まる。この男が何を言ったのか、一瞬分からなかったためだ。
港を造り、船で参加者を送り出す? え? 何が? 何を? ちょっと何を言ってるかわからないですね。

「あの、今、なんて?」
「あの辺り一帯を潰して港を造り、船で参加者を送り出す!」
「どこに?」
「ニッポン中にぃ」

しかも、ニッポン……?
聞き慣れない言葉に対し、呆けたように口を開けてしまうソラ。

「ニッポン、って?」
「我が故郷だ。荒野ばかりだが、金ならいくらでもあるぞォー! さっさと(砂漠化現象を)ぶっ潰せぇー!」
「あの、わたし、その国を知らないんですけど」
「良いぞニッポンは! 牛鍋もつつける! ユートピアだ! 皆でエクソダスだ!」

タケダ・カンリュウは己の策が完璧だと思っているらしく、大きな声で笑っている。ときおり「ほーっ、ホー! たまんねぇなぁ!」と叫ぶおまけつきでだ。
どうもナルシストの気があるらしいタケダ・カンリュウに、正直ドン引きするソラ。温和な性格と思っていたのに、これははっきり言って怖い。他人の振りをしたいほどだ。
それに、港を一から造るなどという作戦なんて成功するわけがない。しかも自分はニッポンなんて国は知らないし。グランバニア、あくまでグランバニアに帰りたいのだ。
しかもこんな作戦、どう考えても主催者にバレバレである。何がどうなれば成功すると思えるのだろうか。

「あのー」
「何だね?」
「そんな大規模な作戦、短期間で成功させるには、かなりの人手がいりますよね?」
「金なら祖国にいくらでもある! そのことをちらつかせれば、人手なんてすぐに集まる!」

背を仰け反らせるかのように胸を張るタケダ・カンリュウ。
げんなりするソラ。

「それにわたしは、グランバニアに帰りたいんですけど……」
「いいや、現状ではニッポンに帰るのが一番まともな策だ! 諦めなさい!」
「いや、でもわたしは! グランバニアの王女です! 成さねばならないことがあるんです!」
「王女だったことなんて忘れちまいな。脱出出来なけりゃ牛鍋もつつけん」

背を仰け反らせるかのように胸を張るタケダ・カンリュウ。
げんなりするソラ。

「もしくは、俺が主催者に取って代わる!」
「どうするんですか。どうやってですか」
「金ならいくらでもある! 懐柔してトップに座り、殺し合いを止めるのだ!」

背を仰け反らせるかのように胸を張るタケダ・カンリュウ。
げんなりするソラ。

「大丈夫だ! それに君は何やら天狗が使うようなあやかしの術で、爆発を起こしたり氷を作ったりできるそうではないか!」
「そうですけど……ですから、それが通じなくて……」
「大丈夫だ! 金の力と妖術、この二つが合わされば必ずやこの殺し合いは止まる!」
「そんな、楽観的すぎます! もう少し現実を見て……」
「もっと熱くなれよ! どうしてそこで諦めちゃうんだそこで!」

背を仰け反らせるかのように胸を張るタケダ・カンリュウ。
げんなりするソラ。

「もう、いいです」

あまりにも話が通じない相手に、堪忍袋の緒が切れたソラ。
そして、我慢の限界に達した彼女は、タケダ・カンリュウのいう〝あやかしの術〟のための詠唱を始め……!

「頭を冷やしてください! マヒャド!」
「え?」


結果、タケダ・カンリュウは奇妙な氷像となった。




             \      寒い      /

                 /.:.:/ヽ.:.:.ヽv'´.:.;ヘ:.:.\
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              ,ィヘ/∧/)「^¨´ ̄ ̄ ̄ ̄`¨¨ミ:.:.:.:.:`、
           /レヘメ:.:.:.:.:.:i| __           ミ:.:.:.:.:.:.:.、
           ,'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i.:i「 ̄ ̄`ヽ   /⌒ヽ〉:.:.:.:.ト、:!
           .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|i|i ===ミ_   _ィ==ミy:.:i|i:.:.| i}
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              `丁i        `¨ニニ  ,′
          .    , 、             ,   . }
             / { ..> 、        .:'    .|
         .. / ...ヽ、   . > 、   j′   /
               ヽ、._、   `ー‐t´   ./|
          ..  ヽ                |
          ...  |ヽ      Y      / __ト、
        ヽ、    | ヽ・__ / ヽ__・/Y-'゙, .\


           _人人人人人人人人人人人_
           > ガリガリくん武田観柳味 <
            ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


そしてカチンコチンのタケダ・カンリュウに別れを告げ、びしょぬれのまま単独行動を開始するソラ。
バイキルトを頼りにバイクをつく彼女が最後に残した言葉は、



            /|\
             |

──‐  ./ ̄| ̄ヽ   │
      |  │  |   人
(____  ヽ_丿 ノ  /  \

┌┬┐      __
├┼┤        /   ―/―  __   \/
└┴┘       /     / ―  / / \  /
| \_´´  つ  \    /  ー  'ー'   / (__  
     
 ヽ   ┼┐
 _ ─┴┴    ヽ
  /   口     ´ ̄\
 ( ─┬┼─      /
/   ┴┼      /
――__│_   /                    」



だったそうである。


【エリアE-3/1日目/黎明】

【ソラ@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
【状態】顔と膝を負傷、びしょぬれ、バイキルト
【装備】サイファイ@MM2R
【道具】基本支給品、不明支給品(1~3)
【思考】冷静にはなれたが、やっぱり家族に会いたい


【タケダ・カンリュウ(トレーダー)@メタルマックス2:リローデッド】
[状態]:氷像
[装備]:O・ディオのガトリング@LIVE A LIVE、アームドガン@メタルマックス2:リローデッド、ガルシアガン@メタルマックス2:リローデッド
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
第一行動方針:島の西側一帯を潰し、船で参加者を送り出す
基本行動方針:対主催
[備考]
タケダ・カンリュウの故郷はニッポンというところだそうです。


[備考] 
エリアE-3の一部が、マヒャドの余波を受けて氷付けになっています。


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