ザ・ヒーローの孤独なグルメ、改め強くてニューゲーム

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フツオよ 扉をくぐりし汝を 待ち受けるは 光のもとに選ばれし民の 法と秩序か 力を頼る者どもが相争う 混沌か 汝の天秤に二つをのせ こぼれ落とさぬよう 歩むがよい ◇ 夢を見ていた。 意識を失ったのはどれほどの時間だっただろうか。 一秒か、一分か、十分か、あるいは一時間だろうか。 疲れ果てたザ・ヒーローは確かに眠っていた。 連戦に次ぐ連戦は確実に、フツオの身を削っていた。 疲労の果ての眠りであってすら、それは無防備なものではない。 夢を見ていた、ということはその眠りの浅さを意味している。 浅き眠りはいつでも立ち上がり、駆け出すことを前提としている。 静かにただ眠りを貪るなどという贅沢を、もはや彼は味わうことができないのだから。 のろのろと起き上がり、カバンを拾う。 ドロップアイテムの確認すら出来なかった、それほどの疲労は大きく軽減されている。 睡眠欲に次いで身体を襲うのは食欲だ。 支給物資を確認し、浮かぶのは呆れの表情。 戦闘に役に立つものもあるが、最も手に取りやすい、最上段に位置するものは明らかにそうではない。 あの男は。ただ持っているだけで、有用なアイテムであっても使う気など全く存在しなかったのだろう。 戦闘者としての型の問題でもあったのだろう。 人によってはそれを誇り高さ故と肯定しただろう。 生よりも誇りを優先するその思考には、悪魔故の、生きていないが故の傲慢さが見て取れ、反吐が出る。 それでも、憎悪よりも先に呆れが浮かんだのは、その絵面があまりにもマヌケだったからだ。 物騒な品々の上に置かれたのは、まだ封を切られていない大量の駄菓子と、齧りかけのかすていら。 なによりも、既に死したモノを嘲笑うような、さらに追い打ちを掛けるのは趣味ではない。 グ~っと、腹の虫が鳴る。 目の前にはとりどりの、安っぽい駄菓子たち。 「いただきます」 手を合わせ、信仰ではなくただ習慣として、そんな言葉を口にして。 ◇ 「オラッ、さっさとやれ」 「るっせ、やってるっての、黙って見てられないの」 ターミナルPCの前にあるのは小さな小競り合い。 彼の主張により、彼と彼女はハッキングを試みていた。 禁止エリアと指定されたこの場に長居する選択はなく、だからと言って二本の足でただ駆けるでは面白くない。 それではまるで踊らされているだけではないか。 だからこそ、ワルオは一度も試行したことも、思考したことすらないアイデアを試してみる。 悪魔とはなんなのだろう?異能とは一体なんなのか? 幾通りもの答えがある問いではあるが、その問いの一つにこんなものがある。 世界は数字でできている。 邪教の館と言われる施設、悪魔全書と呼ばれる書物に宿る方程式など実にわかりやすい。 DIGITAL DEVILの名が示すように。 アナライズデータという方程式に、マグネタイトというエネルギーを掛け合わせ、生まれ落ちるは仮初めの器持つ悪魔。 異能であっても似たようなものだ。 呪文という関数に、注ぎ込まれるマグネタイトの変動によって、その威力は決まる。 世界は数字でできている。 悪魔はデータで出来ている。 ならば、知識ではなく感覚として、機械を操ることも不可能ではけっしてない。 物質転送装置ターミナルは悪魔召喚プログラムの基盤となったシステムである。 そしてこのターミナルにはもとから、心臓というマグネタイトを受け取る受け皿が機能として存在している。 マグネタイトそのものを操る異能者・悪魔に対して、それは不用心とすら言える機構。 大きく開け放たれたドアのセキュリティは決して高いものではない。 スティーブンの知識は科学だ。 つまりその発明品も、重厚な科学的セキュリティに覆われている。 反面、霊的防御に関してはお粗末だ。 ターミナルに接触、サイバースペースという一種の"異界"に自身の"分霊"を送り込む。 ここには"アスラ王"を取り込んだものがいる。 かつてカオスサイドで"ヒーロー"とまで呼ばれたものがいる。 可能なのだ、精神世界に紛れ込んだ多くの悪魔たちのように。 肉持たぬ霊的存在だけであれば、ただ入りこむことは難しくない。 室内にバチリと紫電が奔る。 画面が1と0だけの言語に支配される。 仕様外の強引な操作に、エラーを幾つも吐き出しつつも、ターミナルは止まらない。 肉が裂け、血が滲む。 倒れ伏した分霊たちからのダメージフィードバック。 送り込んだ幾つかが倒れ消え、ダメージとわずかな経験を本体たる二人に遺して行く。 眼球を通してではなく、その意識に直接走り続ける意味不明の数式と言語を、意味を解せず咀嚼し続ける。 『不滅のヴラド4.0』『強化外骨格』『TOKYOミレニアム』『ミルドラース』『再生の卵』『契約』『信仰』『幽世』…… 流れる情報のほとんどを、精査せずにただ流れるに任せる。 今必要なのはそれではない。 ミシカがここに飛ぶために感じた瞬間を、ワルオがかつてフツオと共に利用した瞬間を。 再現するための、基幹プログラムを探し当てる。 あらゆる鍵は開け放たれるためにある。 時間さえかける事が出来れば扉は必ず開くものだ。 鍵の役割は開かれるまでの時間を稼ぐことであり、セキュリティが発動するまでの時間を稼ぐことだ。 サイコダイバーのような専門家でなくとも、妨害がないこの場でなら、いずれ開くことが出来るもの。 ブルースクリーンと化していた画面が切り替わる。 ......Transport Program Set up. ......Ready. ......Please Show Key. ENTERの意思をターミナルに送り込み、二人の身体が消え去っていく。 ターミナルとの意識リンク、それが途切れる最後の瞬間に流れ込んできたのは。 『ODIO』 そんな一つの単語だった。 ◇ 齧りつく。 紙のような触感の、安っぽいソース味。 噛み千切り、徐々に唾液と混じり合わせ、ほんの少し食べ物らしくなっていく。 懐かしい。 齧りつく。 サクリと音をさせて、粉っぽい感触と共に筒状のスナックが欠けていく。 なんとなく、この穴に指を突っ込んだこともあったと幼い日を思い起こす。 懐かしい。 慎重に袋を破る。 勢い余って中身をバラけさせてしまったことが何度あっただろうか。 一枚一枚掴み取り、口に運ぶ。 触る場所を意識していないと、すぐに油でベタベタになってしまうので注意が必要だ、 懐かしい。 懐かしい。懐かしい。懐かしい。懐かしい。懐かしい。懐かしい。懐かしい。 大破壊前の大量消費品は、全て失われた遠い過去の品。 工業ラインがあってこその品々は、今となっては三ツ星シェフの高級料理以上に貴重な存在だ。 その粗末な味がなによりも懐かしい。 未来に希望などはない。 そういうものは全て過去に置き去りにし、切り捨ててきたものなのだから。 不意に予感が訪れる。前兆らしい前兆などなにもないただの予感。 >ここに とどまりますか? そんな選択が頭をよぎり、考えるまでもなかったかと苦笑し、構える。 四方八方、視覚・聴覚・嗅覚・表在感覚・深部覚と、感覚を研ぎ澄まし警戒する中。 "過去"が空から降ってきた。 ◇ 「ねえ、フツオ君」 遠い昔の話。 「悪魔が憎くないのかい?」 日常が奪われ、非日常に放り込まれた、そんな頃の話。 「ボクやワルオ君はまだいいんだ、戦うために必要なのは、自分の力、自分の意志だけだから」 まだ、友達と共に歩めた頃の話。 「だけど、キミは悪魔使い」 道を違える前の話。 「どうしてキミは、憎いはずの悪魔と戦えるんだい?」 ◇ どこかで"ビジョンクエスト"と呼ばれたモノにも似た過去の光景が終わり。 突然の浮遊感。 掴みどころのない宙の中、出来るのはわずかに身を固める事だけで。 ドサリと落ちる。 ツツツ、と痛みに声を挙げながら。 「*いしのなかにいる*!  なんて事にならなくてよかった、とでも言うべきかね……」 起き上がり、片手で頭を押さえながら、そんなことを呟く。 首を振り、見える景色は打って変わった森の中。 最低限、禁止エリアからの脱出は出来たと見てもいいだろう。 なんせ、こんなギリギリの時間までそんなところに留まって、駄菓子をつまむのんきもの、なんているはずがない。 「よう、久しぶりだな、フツオ」 「ああ、本当に久しぶり、ワルオ」 ◇ 「スマン、そこのコンソメ味取ってくれ」 「ん」 二人の男が、地べたに並んで座っている。 目前に広がるのは安っぽい菓子袋たち。 どこか笑いを誘う光景ではあるのだろうが、当人たちが気にしない以上それには何の意味も無い。 なんせ力があろうがなんだろうが、彼らが大破壊前の基準において、"未成年"と区分される存在だったことに変わりは無い。 殊更遵法精神に溢れている、という訳ではないが、子どもっぽいと忌避するような年月の積み重ねは持ち合わせていない。 広げられた袋の中身たちを消化しながら、会話を続ける。 長く続くような会話でなくても、あたりまえの確認で、相槌だけで終わるようなそれでも、確かに必要なそれ。 「で、どうするよ」 「神なんて、認めない。殺すよ、今までどおりに」 久方ぶりに交わった道。 もう交わることがないと思っていた道。 「ああ、同感だ」 それだけの言葉を交わし、新しく口に入れる。 顔を顰める。 少し湿気たものも混じっているようだ。 「ヨシオの野郎が逝きやがったな」 「ああ……」 少しばかりの間隔を空けて、 「残念だよ」 それだけの言葉が帰ってくる。 少しだけ、驚く。 既にヨシオは敵でしかなかった筈で、利害で考えればプラス以外の何者でもなかった筈なのに。 "俺たち"が関わることができない場所で逝ってしまった、その事実は思っていた以上に堪えていたようで。 「ああ、そうだな……」 そんな言葉を返す。 ◇ ポカリと、頭を叩く。 不満げに顔を向けてきたヨシオに対して俺は。 「バカが、聞くものじゃないだろ、そういうもんはよ」 あたりまえのことを口にする。 それがもしも、キツイ事だったとしても。耐えられないようなものだったとしても。 そうしなければ生き残れないのだから。 「だけど、無理をさせてるのなら、力になりたいだろ!」 友達なんだから。そんな風に続く言葉に重ねて返す。 「俺たちだって余裕が無いんだ、キツイから止めます、なんてされたら全員死ぬだけだ」 フツオの力は貴重だ。 悪魔使いとしての力量も然ることながら、何よりも大事なのは戦場を俯瞰する司令塔としての力。 アイツがいなければ俺もヨシオも何回死んでいたかわからない。 "三人"だったからこそ、俺たちは生き残れたんだ。 そんなこと、お前だってわかってるだろうにと。 それでもと続けようとするヨシオの言葉をフツオが遮って。 「ありがとう、ヨシオもワルオも」 感謝の言葉が降ってくる。 「正直、憎いかどうかって言えば憎いんだろうし、キツイんだとは思うよ」 ならばと口を挟みそうになるヨシオを遮る。 これは最後まで聞くべきだ。 プログラムが奔る。 「だけど、全ての悪魔が憎いか、と言えばそうでもないんだ」 モムノフがいる。ルサールカがいる。ドワーフがいる。 交渉によって仲魔にしたものがいる。悪魔合体により仲間にしたものがいる。力比べをして仲魔にしたものがいる。 一時は敵対した、今は横に立つモノたち。 「人殺しに身内を殺されたとして、それで人類を全て憎まないといけないわけじゃない。  もちろんイイ奴もいるけれど、イヤな奴だっている。結局は人間と同じなんだよ、きっと」 表情や声音から、その言葉の何処までが本当なのかはわからない。 きっと言っている本人だって、自分自身に言い聞かせている部分もある、本当かどうかなんてわからないだろう。 だけどその後に続いた言葉は。 「だから、大丈夫だよ、きっとね」 紛れも無く、本心から出てきたもので。 ああ、これだからコイツラは嫌いだ。 俺とは違う"強さ"を持っている。 ヨシオには他者を抱え込もうとする強さがある。 自身の芯を妄信して、要らぬ波風を立てるところもあるが、それすらコイツ自身の強さと正しさから来るもの。 正しさを信じる強さ、己を信じる確固たる強さを持っている。 フツオの強さはどこか曖昧だ。 何処に身を置けばいいのかわからず、迷って迷って迷って。 それでも投げ出さずに、最後まで答えを求め続ける強さがある。 信じるという一種の思考停止とは無縁の強さ。 歩みを止めず無限に広がり成長し続ける強さ。 コイツが足を止める時は、きっと他の何者にも変えられない、代えられない芯を得た時なんだろう。 俺とは違う。 ゴトウに、その配下に、つまるところ他人に左右され、そんな自分が嫌で仕方なく。 逃避のように"強さ"を求める俺とは違う、"己の内から来る強さ"。 眩しい、妬ましい、嫉ましい、憎らしい。そんな劣等感。 それは、ひょっとしたらオザワに対して抱き続けた"憎悪"すらも超えるほどの悪感情。 それでも、コイツラは間違いなく俺の"友だち"で、俺はコイツラのことを決して―――― ◇ そして、"未来"が降ってきた。 希望など、何処にも無い。 ◇ >とてつもなく恐ろしい  悪魔の気配がする…… >ここに とどまりますか? 根拠など何も無い、ただの勘働き。 だが、一人ならともかく二人ともがそれに気付いたのならば、それは確実な予見だ。 互いに背中を預け構え、周囲を見渡す。 空間が揺らぎ、女が一人降ってきた。 ワルオが弛緩する。 「よお……」 随分のんびりしてたじゃねえか、そんな風に言葉を紡ぐよりも速く、二人が駆ける。 ミシカとフツオ、二人の間にあるのは明らかな"敵意"。 失敗を悟り、ワルオは叫ぶ。 「待てバカ!そいつは敵じゃ……!」 言葉では止められない、止まらない。 アスラ王の"記憶"は、ザ・ヒーローの進む"道"は、そんな陳腐じゃ越えられない。 先手を打ったのはミシカだ。 彼女の得手とする技が、駆けるという行為と同質の行為であったが為に。 何故彼女の名は他者に広まることがなかった? その軌跡がレナの後追いでしかなかったことが最大の要因だろう。 それでも、彼女程の実力者の名が一切広まらないというのは不自然である。 答えは決まっている。 彼女の戦闘スタイルが、レナのそれに極めて近しかったが為に、より強大な彼女と同一視され、呑み込まれたのだ。 降って沸いた"アスラ王"の力には頼らない。 単純な最大火力を叩き込む戦術の甘さは"ワルオ"に叩き潰された。 だからその"記憶"と"知識"、"身体能力"のみを取り込んで、いつもの"ミシカ"として戦おう。 レスラーのスキル、ジェットハットがフツオを捉える。 ◇ 痛烈な痛みと共に尻餅を着く無様。 ダメージ以上に頭を占領するのは何故という疑問。 起きた事象の意味は理解している。 ジェットハットは"敵の防御がこちらの防御より高すぎると自爆ダメージを受ける" 今起きたことはつまりそういうことだ。 だが、アスラ王の記憶が言う、ミシカ自身の眼力が言う。 "こんなことはありえない" ザ・ヒーローの脅威は集団戦にある。 策を弄し、手段を模索し、徹底的に弱みを突く戦略的強さ。 単独戦力としての"彼"はあくまで人間でしかなかったはずだ。 だが、この結果はなんだ。 アスラ王の力を上乗せされたミシカすら上回る基礎能力など、ヤツが持ち合わせるモノでは決してない筈なのに。 物質的な衝撃と混乱の中、そんな分析をするミシカの頭上に天空の剣が振り下ろされようとして…… 「だから、待てッつってんだろうがぁぁぁぁぁぁあああああ!!」 怒声とマハラギオンの炎が割り込んだ。 ◇ ダメージはない。 もとより牽制こそが目的の魔法であり、事実ミシカとフツオ、二人の距離を開くことに成功する。 すかさず間に割って入る。 言いたいことはいくらでもあるが、今最も大事なことは。 「てめえ、フツオ、一体どういうつもりだ!」 大きな違和感、予想外の行動に出た友に対する事だ。 「悪魔は殺す、それだけだよ」 臨戦態勢は崩れぬまま、何も変わらないと、そう言葉を繋げる。 違和感だけが膨らむ。こいつは誰だ、そんなことすら思ってしまうほどに、"フツオ"を感じない言葉。 他ならぬ、"デビルサマナー"であるフツオとしては考えられないほどの短絡思考。 「ふざけるな!」 まだフザケテくれている方がマシですらあったが、そこには本気の色しか見えなかった。 だからこそ、その言葉の矛盾を突く。 「ならば、なんで俺を殺そうとしなかった!」 ワルオという"カオスヒーロー"を殺そうとしなかった、その矛盾を。 「だって、キミはもうカオスヒーローじゃないだろ?」 不意打ちだった。 後ろの方でミシカの呆けてるんじゃねえという叱咤が耳に届くも、生まれた意識のスキマは既に十分過ぎて。 ザ・ヒーローの音無しの剣がワルオの頭部に到達した。 ◇ 人の想いはなによりも深い。 想いこそが神を象る。 想いこそが悪魔を象る。 想いこそが人を象る。 想いこそが全てを象る。 人は一人では生きていけない。 人は集団でこそ、生きる生き物だ。 だからこそ、個人意思なんてものは幻想だ。 ワルオがカオスヒーローになったように。 ヨシオがロウヒーローになったように。 女神たれと願われた少女のように。 魔王たれと願われた勇者のように。 人もまた、誰かに望まれたように形を変えていく。 かくあれかしと、願われるままに。 信仰は、他者の意思は、存在を捻じ曲げる。 ◇ 兜が割れ、素顔が現れる。 無傷ながらも衝撃に、神経質そうな顔は歪んでいる。 そんな"ありえない"事態がここにある。 比喩ではなく、悪魔合体以降その兜は彼の"一部"だ。 "彼"という悪魔の、悪魔としての姿の一部であったはずだ。 本来ならば、その程度のダメージで済むはずがない。 「カオスサイドは弱肉強食、一度でも負けた存在を"ヒーロー"なんて崇めはしない」 ザ・ヒーローは理由を語る。 本当かどうかなんて知りはしないけれど、彼が思う仮説を口にする。 ロウサイドであれば、敗北は殉教だ。 ひょっとしたら聖人と祭り上げられるかもしれない。 だが、カオスサイドでは話が別だ。 敗北はそのまま嘲笑の対象であり、忘却の対象である。 かくして"カオスヒーロー"は剥奪された。 「舐めやがって、余裕じゃねえかよ!」 そんなものは知らないとミシカが割り込む。 名前の通り、吹き荒ぶ暴風のごとき台風チョップに距離を取りながら、それでも言葉は止まない。 「キミの魂は、悪魔よりも強かった。  キミと共にあった悪魔が滅びても、最期の最期までキミは生にしがみついていた」 かつてを想起しながらに、己が友に施した最期を思い出しながらに。 「だから、キミは最期にあんな事が言えたんだろう?」 いい夢だったなんて、悪魔に憑かれた人間の末路からは程遠いと。 だから、ここにあるのは"カオスヒーロー"でも"悪魔人"でもない。 "人間"ワルオの、強くてニューゲーム。 ◇ 思いだして欲しい。 "フツオ"は何時から武術の達人になった? 零式防衛術の見真似、魔法を斬り裂く斬撃、アカシャアーツ。 どれを取っても"彼"に出来る事の領域を越えている。 彼は確かに強い。彼は確かに悪魔使いだ。彼は確かに有能な指揮者だ。 しかし彼に武術の心得などない。 法にも混沌にも属さぬ彼に、特別な技など何もない。 銃に頼り、剣に頼り、それでも決して極めるなどと言う領域からは縁遠い。 彼は、ただの機械弄りが好きな一般人でしかなかったのだから。 つまりそうしたものは後付けの外付け要素でしかない。 誰がそんなものを用意した? 心の海を占める形なき"一般人"、あるいは悪魔たちの畏れこそがそれを象る。 秩序にも混沌にも属さず、その悉くを滅ぼした存在に対する畏れ。 それはより魔界に、精神世界に近いこの世界において大きく彼という"個"を揺さぶった。 ただの人間に為せる筈がない実績は大きな信仰を生んだ。 異能を持たない人間が、どうして天から来たりし御使いを、地の底から這い上がる悪魔の軍団を討ち果たせたというのか? 当然のように人は幻想する。 それはきっと、人として、考えられる限り、完成していて、壊れているのだろうと。 身体を動かすことしかできない? それならば、そのできることはきっと、人として考えられる限り最高の水準なのだろう。 なぜ、法も混沌も、区別なく滅ぼすのだろうか? それほどまでに憎いのだろう、それ以外に考えられぬほどに。 人々は夢想する、空想する。 その根源は未知への恐怖故に、畏れゆえに。 休むことなく組み挙げられる最新神話。 メシア教によって後に"コロシアムのチャンピオン"と貶められる以前の、"ザ・ヒーロー"という神話幻想。 それはあらゆる"魔"に属する存在に対する対抗神話。 それは憧れと共に語られる英雄ではない。 共感とともに語られる人の物語でもない。 それは人のまま人を超えたものへの畏れ、ヒーローの名を冠した――― ◇ ・・・何故俺を起こした! せっかく いい夢を見ていたのに・・・ 「クソッ!」 全てを理解した訳ではない、それでも、これだけはわかる。 俺の見た夢の先が、こんなにもくだらない未来に続いていた、そんな悪い夢。 「ふざけるなよ!」 お前がそんなにくだらないモノで終わるわけがないだろうが! 悪魔が憎い、だから全て滅ぼそう、そんなツマラナイ奴じゃなかったはずだろう! そんな安易に流される"弱さ"なんて、お前のものじゃなかっただろう! 自身と何処か被って見える、その弱さが憎らしい。 ならば、どうする? 決まっている。 「ブッ倒してでも正気に戻してやるから、覚悟しとけ!」 ◇ >【魔人ザ・ヒ-ロ-】が1体出た! >どうしますか? ◇ 【D-5/森林地帯/1日目/午前】 【ザ・ヒーロー@真・女神転生Ⅰ】 [状態]:魔人 疲労(中) 怪我(小) [装備]:天空の剣@DQ5 [道具]:基本支給品4式(松明1つ消費)、キメラの翼4枚@DQ5、不明支給品1~9 [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いに勝ち残り、神と契約する [参戦時期]:ニュートラルルートエンディング後 [備考] 大きな力について、意識すればいくらか感知することが可能です。 ”ザ・ヒーロー”と関わり薄い記憶から少しづつ失われています。 零式超吸着掌打を習得しました。 対人戦術を覚えました。 【ワルオ@真・女神転生Ⅰ】 [状態]:人間 魔力消費・大、全身に火傷・軽度の裂傷 [装備]:ムラサメ@LIVE A LIVE [道具]:基本支給品*4、青酸カリ@現実、強化外骨格『零』不明支給品(2~9、アスラ王、モズグスの物を含む)、ストラディバリ@真・女神転生Ⅰ [思考・状況] 基本行動方針:もう何かに従う気はない、当然この殺し合いにも。 [参戦時期]:本編死亡後 [備考]:最後の支給品はホネ肉@LIVEALIVEでした [備考]:『零』に宿る三千の英霊が現在成仏しているため、『零』を装着することは出来ません。 【ミシカ@メタルマックス2:リローデッド】 [状態]:全身火傷(左腕の炭化はディアラマによってそこそこに治療されました)・軽度の裂傷・魔力消費小 [装備]:無し [道具]:無し [思考・状況] 基本行動方針:強くなる 【備考】女ハンター、サブジョブとしてレスラーをマスターしています。他のサブジョブは不明。 |064:[[戦火を交えて]]|投下順|066:[[]]| |064:[[戦火を交えて]]|時系列順|066:[[]]| |057:[[汝は人間なりや?]]|ザ・ヒーロー|:[[]]| |058:[[再始動]]|カオスヒーロー|:[[]]| |058:[[再始動]]|ミシカ|:[[]]|

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