なんということだ……

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「なんという……ことだ……!」 淡々と必要事項のみを語る放送。 それを聞き、男は焦りの表情を浮かべていた。 急いで地図を広げ、状況を確認していく。 筆記具で印を入れ終えてから、改めて事の重大さに気づかされる。 今、この瞬間に自分は、死の淵に立たされているという事に。 ここは地図の端、カテドラル。 その施設の屋上近くまで登ってきたわけだが、それに至るまでにほぼ半日かかっていた。 道中のトラップ、入り組んだ構造、記憶し切れていない部分はまだまだ沢山ある。 それらを考慮しても、今から二時間以内に脱出するというのはほぼ不可能だろう。 カテドラルを抜ければ禁止エリアの外、ならまだしも、カテドラルを出た先も禁止エリア。 全速力で駆け抜けても、間に合わないことぐらいは分かる。 なれば、もう死ぬことしか道はないのか、というとそれは違う。 唯一助かる方法、それは先ほど下調べをしておいた転移の間を通じて、他所に転移する方法だ。 転移先は一つではなかった、今から急いで移動し、転移すればなんとか間に合うかもしれない。 というより、助かるにはそれを選ぶ他無い。 自分の足での脱出は、ほぼ不可能なのだから。 そうと決まれば話は早い、今すぐにでも心臓を持ち、先ほどの転移所まで駆け抜け―――― 「……ん?」 そこで、違和感に気づく。 思考に耽りすぎたせいか、まったく気がついていなかった。 隣に置いていたはずの鞄がなくなっていること。 そして、先ほど眠りについたはずのアリスが、そこにこと。 カリョストロは、気づいていなかった。 天才が故に禁止エリアの危険性に素早く気づいてしまい、それを確かめることに思考を割いていたから。 眠りに就こうとしていたアリスが放送のせいで目覚めていたことなど。 「もう、せっかくお昼寝しようと思ったのに……」 ぷう、と頬を膨らませ、見えない誰かに怒りを示す。 会場全土に響きわたるほどの音量の放送は、カテドラル内部にもしっかりと届いていた。 アリスは放送の中身には興味はなく、ただ"起こされた"という不快な事実がそこにあるだけ。 ちょっといたずらをしてやろう、とカリョストロの袋を盗み、一人で探検の続きへと洒落込んでいたのだ。 「お花も、お魚も、なんにもいなくって、つまんないや」 ある種の宗教施設と呼べるカテドラルは、少女にとっては退屈極まりないものだ。 ずらりとならぶ剣や銃も。 戦いに身を置く者のための防具も。 おいしいお菓子でもなんでもない道具も。 彼女の興味を惹くには至らない。 楽しいことなんて、何もない。 「あ~あ、つまんないなあ」 一室にぽつんと置かれた端末を適当に叩きながら、アリスは小さく溜息をつく。 けれど、お楽しみはこれからなのだ。 そろそろ、ちょっかいをかけたおじさんが、アリスと遊んでくれるはずだから。 それまでは、何か適当に暇でもつぶしていよう。 カタカタ、カタカタ。 画面に映る文字も、押したキーがどう作用するのかも、全く分からない。 誰かにとっては意味を為すことでも、今の彼女には暇つぶし以下でしかない。 やがて、それにも飽きだして、その部屋を出ようとしたとき。 「見つけたぞっ!」 怒号に近い声とともに現れる男。 「あはっ、見つかっちゃった!」 その顔を見て、アリスは笑顔で返事をする。 「ねえ、次は何す――――」 「私の鞄を返して貰おう」 上機嫌で放った遊びの誘いは、途中で男の声に遮られる。 ああ、そういえばと、アリスは持ってきていた鞄を見つめる。 「これ?」 「そうだ」 何かを計っているのか、カリョストロは一定の間合いを保ったまま、アリスに鞄だけを要求する。 「ふぅ~ん」 それをみて、不審そうにカリョストロを見つめ、少しだけにらめっこを興じた後。 握り拳をもう片方の手のひらに打ち付け、少し胸を張ってカリョストロに言う。 たった今閃いた、名案を。 「アリスと、遊んでくれたらいいよ! キャッチボールね!」 この距離ならば、キャッチボールするにはちょうどいい距離だ。 その絶妙な間合いを保ってくれていたのだと、アリスは好意的に解釈する。 そして、アリスはカリョストロの鞄から、"ボール"を取り出す。 その瞬間、カリョストロの目が見開かれる。 こともあろうか、アリスがボールとして取り出したのは。 オザワの、心臓だったのだから。 そして、驚愕は続く。 「あれ?」 ふわりと浮いたアリスが、青白い光を纏い始めた。 それが何か、天才的な頭脳を持つ彼はやはり即座に理解した。 同時に、ことが全て遅すぎたことも理解した。 カリョストロがここに来る前、適当に端末を操作していたアリスは、偶然にも転移の手順を踏んでいた。 あとは鍵となる心臓を掲げるだけ、それだけでよかった。 そして、キャッチボールが始まった。 瞬時に消えていくアリスの体を止めることすら出来ず、カリョストロは一人その場に残される。 もし、初手から華麗な舞いで殴り飛ばしていれば、難なく奪えたかもしれない。 いや、この美声で動きを封じていてもよかったかもしれない。 そもそも、放送に気を取られすぎなければ、こうはならなかったのだ。 後悔だけが、積もる。 その後? 言うまでもない。 ただ、走り。 ただ、狂い。 ただ、叫ぶ。 一人の男が、突如として血を吐き。 眠るように、誰にも知られず。 崩れ落ちるように、倒れただけ。 「きゃはははは!! すご~い! 面白~い!!」 少女は、そんなことなど、知らずに。 電子の海を、泳いでいた。 &color(red){【カリョストロ@メタルマックス2:リローデッド 死亡】} 【????/1日目/朝】 【アリス@真・女神転生Ⅰ】 [状態]:転移中 [装備]:なし [道具]:基本支給品、不明支給品(1~3) 基本:友達100人できるかな~♪ 第一行動方針:わ~い [備考]:カリョストロの事を既に死んでいる人だと思っています。 ※どこに転移するかはお任せします |061:[[取らぬ狸の皮算用]]|投下順|063:[[金の掛かった首は重い]]| |061:[[取らぬ狸の皮算用]]|時系列順|063:[[金の掛かった首は重い]]| |022:[[見えない境界線]]|カリョストロ|&color(red){GAME OVER}| |022:[[見えない境界線]]|アリス|:[[]]|
「なんという……ことだ……!」 淡々と必要事項のみを語る放送。 それを聞き、男は焦りの表情を浮かべていた。 急いで地図を広げ、状況を確認していく。 筆記具で印を入れ終えてから、改めて事の重大さに気づかされる。 今、この瞬間に自分は、死の淵に立たされているという事に。 ここは地図の端、カテドラル。 その施設の屋上近くまで登ってきたわけだが、それに至るまでにほぼ半日かかっていた。 道中のトラップ、入り組んだ構造、記憶し切れていない部分はまだまだ沢山ある。 それらを考慮しても、今から二時間以内に脱出するというのはほぼ不可能だろう。 カテドラルを抜ければ禁止エリアの外、ならまだしも、カテドラルを出た先も禁止エリア。 全速力で駆け抜けても、間に合わないことぐらいは分かる。 なれば、もう死ぬことしか道はないのか、というとそれは違う。 唯一助かる方法、それは先ほど下調べをしておいた転移の間を通じて、他所に転移する方法だ。 転移先は一つではなかった、今から急いで移動し、転移すればなんとか間に合うかもしれない。 というより、助かるにはそれを選ぶ他無い。 自分の足での脱出は、ほぼ不可能なのだから。 そうと決まれば話は早い、今すぐにでも心臓を持ち、先ほどの転移所まで駆け抜け―――― 「……ん?」 そこで、違和感に気づく。 思考に耽りすぎたせいか、まったく気がついていなかった。 隣に置いていたはずの鞄がなくなっていること。 そして、先ほど眠りについたはずのアリスが、そこにこと。 カリョストロは、気づいていなかった。 天才が故に禁止エリアの危険性に素早く気づいてしまい、それを確かめることに思考を割いていたから。 眠りに就こうとしていたアリスが放送のせいで目覚めていたことなど。 「もう、せっかくお昼寝しようと思ったのに……」 ぷう、と頬を膨らませ、見えない誰かに怒りを示す。 会場全土に響きわたるほどの音量の放送は、カテドラル内部にもしっかりと届いていた。 アリスは放送の中身には興味はなく、ただ"起こされた"という不快な事実がそこにあるだけ。 ちょっといたずらをしてやろう、とカリョストロの袋を盗み、一人で探検の続きへと洒落込んでいたのだ。 「お花も、お魚も、なんにもいなくって、つまんないや」 ある種の宗教施設と呼べるカテドラルは、少女にとっては退屈極まりないものだ。 ずらりとならぶ剣や銃も。 戦いに身を置く者のための防具も。 おいしいお菓子でもなんでもない道具も。 彼女の興味を惹くには至らない。 楽しいことなんて、何もない。 「あ~あ、つまんないなあ」 一室にぽつんと置かれた端末を適当に叩きながら、アリスは小さく溜息をつく。 けれど、お楽しみはこれからなのだ。 そろそろ、ちょっかいをかけたおじさんが、アリスと遊んでくれるはずだから。 それまでは、何か適当に暇でもつぶしていよう。 カタカタ、カタカタ。 画面に映る文字も、押したキーがどう作用するのかも、全く分からない。 誰かにとっては意味を為すことでも、今の彼女には暇つぶし以下でしかない。 やがて、それにも飽きだして、その部屋を出ようとしたとき。 「見つけたぞっ!」 怒号に近い声とともに現れる男。 「あはっ、見つかっちゃった!」 その顔を見て、アリスは笑顔で返事をする。 「ねえ、次は何す――――」 「私の鞄を返して貰おう」 上機嫌で放った遊びの誘いは、途中で男の声に遮られる。 ああ、そういえばと、アリスは持ってきていた鞄を見つめる。 「これ?」 「そうだ」 何かを計っているのか、カリョストロは一定の間合いを保ったまま、アリスに鞄だけを要求する。 「ふぅ~ん」 それをみて、不審そうにカリョストロを見つめ、少しだけにらめっこを興じた後。 握り拳をもう片方の手のひらに打ち付け、少し胸を張ってカリョストロに言う。 たった今閃いた、名案を。 「アリスと、遊んでくれたらいいよ! キャッチボールね!」 この距離ならば、キャッチボールするにはちょうどいい距離だ。 その絶妙な間合いを保ってくれていたのだと、アリスは好意的に解釈する。 そして、アリスはカリョストロの鞄から、"ボール"を取り出す。 その瞬間、カリョストロの目が見開かれる。 こともあろうか、アリスがボールとして取り出したのは。 オザワの、心臓だったのだから。 そして、驚愕は続く。 「あれ?」 ふわりと浮いたアリスが、青白い光を纏い始めた。 それが何か、天才的な頭脳を持つ彼はやはり即座に理解した。 同時に、ことが全て遅すぎたことも理解した。 カリョストロがここに来る前、適当に端末を操作していたアリスは、偶然にも転移の手順を踏んでいた。 あとは鍵となる心臓を掲げるだけ、それだけでよかった。 そして、キャッチボールが始まった。 瞬時に消えていくアリスの体を止めることすら出来ず、カリョストロは一人その場に残される。 もし、初手から華麗な舞いで殴り飛ばしていれば、難なく奪えたかもしれない。 いや、この美声で動きを封じていてもよかったかもしれない。 そもそも、放送に気を取られすぎなければ、こうはならなかったのだ。 後悔だけが、積もる。 その後? 言うまでもない。 ただ、走り。 ただ、狂い。 ただ、叫ぶ。 一人の男が、突如として血を吐き。 眠るように、誰にも知られず。 崩れ落ちるように、倒れただけ。 「きゃはははは!! すご~い! 面白~い!!」 少女は、そんなことなど、知らずに。 電子の海を、泳いでいた。 &color(red){【カリョストロ@メタルマックス2:リローデッド 死亡】} 【????/1日目/朝】 【アリス@真・女神転生Ⅰ】 [状態]:転移中 [装備]:なし [道具]:基本支給品、不明支給品(1~3) 基本:友達100人できるかな~♪ 第一行動方針:わ~い [備考]:カリョストロの事を既に死んでいる人だと思っています。 ※どこに転移するかはお任せします |061:[[取らぬ狸の皮算用]]|投下順|063:[[金の掛かった首は重い]]| |061:[[取らぬ狸の皮算用]]|時系列順|063:[[金の掛かった首は重い]]| |039:[[見えない境界線]]|カリョストロ|&color(red){GAME OVER}| |039:[[見えない境界線]]|アリス|:[[]]|

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