「螺!! 螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺旋因果 大復活ッッッ!!」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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食事。
というにはあまりにも豪快で、あまりにも残酷で、あまりにも凄惨な光景だった。
二人分の少年の肉体をいとも簡単に部位ごとに分解し、肉にむしゃぶりつき、滴る血を啜る。
薄く赤の残った骨が次々に投げ捨てられながら、それの食事は進んでいた。
最後の最後、手に取ったのは少年たちの頭。
まるで魔法のように表面の皮と肉をそぎ落とした後、人間から遠く離れた腕力で頭蓋骨の中身を啜る。
文字にするには少し下品すぎる音を立てながら、液という液を啜り尽くす。
その後は、満足したのか白い四つの球体を口に放り込んで転がしている。
残るのはペンキをぶちまけたかのように広がる血と、赤と肉をわずかに残した骨たち。
獣とは違い、骨だけがきれいに残っているというのが、彼女が"人間"であったという証明になるだろう。
しばらくして、四つの白を口で転がすのに飽きたのか、彼女は二人分の肉が入り込んでいったはずの平たい腹をさすりながらあたりを見渡す。
そこには、驚愕の表情のまま固まっている二人の青年が居た。
反射的にこぼれた涎を拭い、だらりと両腕を前に垂らして両者の様子を伺う。
三者が三者ともに睨み合い、互いの様子をさぐり合う。
風が吹き、汗が流れ、唾を飲み込む音が静寂に響く。
誰かが動けば、それが標的になるのは明白。
互いに動けない時間が長く続いた後。
張りつめた空気を引き裂くように一つの影が三者の目の前を横切る。
そこからの動作はそれぞれ一瞬だった。
リュカは空飛ぶ靴に足を通して瞬時に舞い上がり。
カイムは手にしていた風の帽子を空にかざして舞い上がり。
アリオーシュは現れた影へと喰いかかった。
「は――――」
靴に導かれた場所で、リュカは小さな笑いを零す。
始めは、ある一定の場所にしか移動できないこんな靴に頼るつもりは無かった。
ルーラが思い通りに使えない、つまり自分の移動に自由性は無いと知るまでは。
本当の事を言えば、本能的に拒否していたのかもしれない。
この靴は、思い出したくも無い"あの塔"への道筋なのだから。
だから初めの場所で襲われたときは、あの星を使って逃走した。
次に出会ったのは一触即発の状況。
一手間違えれば、あの骨たちの仲間入りしかねなかった。
怪しい影が飛び込んできたと同時に、あの場所から「逃げ出す」ことを選んだ。
きっと、あの状況から「足」で逃げても、食い殺されて終わりだっただろう。
死ぬかもしれない場面に直面すれば、初めは使うことを拒んでいた物を使うことなど、簡単なことだった。
「まさか、同じ事を考えてるとはね」
寄寓にも同じ手段を取っていた、もう一人の男の方へと振向いて話しかける。
その瞬間、眼前に迫るのは巨大な鉄塊。
あと少し前に出れば死んでしまう状況で、リュカは笑う。
「大丈夫、僕は君と同じ立場の人間だ」
へらへらと笑ったまま、リュカは言葉を続ける。
鉄塊は今にも顔面を突き抜けそうだというのに、リュカは笑顔を崩さない。
「僕はこの殺し合いを終わらせる、だからこの場にある全ての命を狩りつくす」
リュカは、この殺し合いを終わらせようとしている。
それは、絶望を手に入れないため。
喪失という感情を手に入れる前に、自分から切り離すため。
全てを殺そうと、彼は思っているのだ。
「細かい理由は違えど君も同じだろう? だったら、僕達が殺しあうのは最後の最後で良い」
転移の前、リュカはこの男の周りをしっかりと観察していた。
潰れた人肉、飛び散っている血。
彼が殺し合いに乗っていることなど、別に自分でなくても分かることだ。
だから、それに相応しい提案をしていく。
このくだらない殺し合いを素早く終わらせるために。
男は考えた。
別にここで相手を殺しても構いはしなかったのだ。
だが、なんとなく彼を見逃してみようと思った。
自分が先ほど"復讐"を忘れないための"殺戮"を成し遂げたからかもしれない。
それよりも彼の身体から、どこか"復讐"を嫌がる空気を感じたからだ。
勿論、到底理解のできるものではないし、理解するつもりも無かった。
この男が何を考えているのか、何に絶望しているのかは自分の知ったことではない。
ただ、ここで彼を見逃せば、彼は人を殺しに行くだろう。
どれだけ"復讐"を拒んでいても、人を殺すうちに"復讐"に目覚めることもある。
何より、殺人の快楽に溺れることが出来る。
だから、それを知らない可哀想な青年を見送ることにした。
願わくば、殺人の快楽に目覚めることを祈りながら。
そうして、鉄塊が下ろされた。
「じゃ、また今度会おうか」
その言葉と共に、二人は逆方向へと歩いていく。
途中、決して振り返る事は無く。
新たな"獲物"を探しに、この地を再び彷徨い始めた。
「……おいしくない」
毛がズル剥けになったサルのような人間の心の臓に手を突っ込みながら、アリオーシュは食いちぎった喉笛を吐き捨てる。
気がつけば視界に捉えていた二人の男は消えているし、手にした獲物はマズいしで踏んだり蹴ったりである。
腕に突き刺さっているサルの遺体を適当に放り投げ、近くの潰れた女の肉体へと駆け寄る。
潰れきったそれは、さっきの少年程の味わいはない物の、人肉特有の味と食感を誇っている。
混じった骨を吐き出すのが少し難儀だったが、アリオーシュはまるでマジックのように女だった肉体を食べきってしまう。
「はぁ」
口にこびり付いた血を手で拭い、とぼとぼとどこかに向けて歩き出し始めたときである。
「Fallen!!」
華麗な蹴り上げから声と共に、そのままアリオーシュに突っ込んでくるもう一つの影。
ゲドーピングタブとコーラたんで増幅された能力を生かし、奇襲を難なく往なして行く。
「Scheisse!!」
予想以上のカウンターを食らう形となり、呪詛を吐きながら乱入者――ハヌマーンは地面を転がる。
即座に耐性を建て直し、飛びかかってくるアリオーシュを低姿勢の蹴りで追い払っていく。
そのまま低空のソバットへと繋げ、怯んだところにラッシュを仕掛けていく。
「Sterben!!」
腕を振るうと同時に飛び出していく衝撃波を操りつつ、ハヌマーンは一気に畳みかけていく。
このままハヌマーン優勢のまま、コトが進むと思われていた。
「うるさい」
凍てつくような一言。
続けてエンジェルを引き裂くほどの恐ろしい腕力に、半永続的に続くゲドーピングタブの力が上乗せされる。
放たれた衝撃波に怯むことなく、飛びかかってきたハヌマーンの頭を掴む。
「うるさいよぉ」
ハヌマーンが防御行動に出る前に、その頭を握りつぶす。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」
びくりと跳ね上がった四肢を、息をつく間もなくバラバラに引き裂く。
「はぁ……」
飛び散っていく肉に興味すら示さず、その場に座り込んでしまう。
ハヌマーンが合体事故で生まれた悪魔だと言うことを感づいたか、それとも元がゾンビアーミーであると察したのか。
アリオーシュはハヌマーンに喰いかかろうとはしなかった。
「ごはん、さがしにいこ」
全身を赤に染めたまま暗い表情と空腹を抱え、彼女は新しい食料を求めて歩きだす。
そうしてゆっくりと立ち上がった時、彼女の視界にまた違う"赤"が写り込んだ。
「ががっ、期待はずれだががーっ!!」
誰もいなくなった場所で、不機嫌そうに真っ二つの黒こげ遺体を足蹴にする男。
テッド・ブロイラーは一人、炎の海で残された道具を回収していた。
邪教の館にて生成した手駒の力を試そうと、見あたった女に向けて放ってみた。
しかし結果は喜ばしいものではなく、それどころか無様に死に絶えてしまった。
襲いかかった女が強かったのかもしれない、何か道具の力があったのかもしれない。
なにがどういう状況であったとしても、手にした駒が"弱すぎた"という事実は変えられない。
実際、自分が戦闘してみればものの数秒もかかることはなかった。
所詮、この程度の人間に敗北してしまう程度の手駒にしかすぎなかったのだ。
力がないから負ける、ただそれだけのこと。
初めに出会したときにはそこらの魔物とは違う気配を感じたというのに、実際の結果はこれだ。
手駒が弱く、女が強い。そして自分がそれよりも強い。
それだけのことだ。
「ふんっ」
テッドは、失望の表情のままアームターミナルを破壊していく。
自分の配下に雑魚を群れさせるつもりはない、使えないと分かれば処分するだけだ。
弱者に生きる価値はない。
弱者は常に強者の糧となるべき存在なのだ。
弱者が吸える空気など、どの世界にも微塵も存在していないのだから。
圧倒的強者たる自分が全てを焼き払い、この殺し合いを生き残り、神をも越える力を手に入れる。
だからその約束された未来の中で、より使える"力"を手にしていく。
「ががががーっ!!」
炎の中、悪魔が笑う。
全てを手中に収めんと、勝ち誇った笑みで。
一人、強者の立場に居座りながら笑う。
びくり。
何かが動き出したのは、その時である。
「ここは――――」
葉隠覚悟は、重い瞼を開け、ゆっくりと目覚めた。
一面に広がる白、体を包み込む安堵感、語りかける声。
冷静になった頭に情報を詰め込み、覚悟は今の状況を理解していく。
その瞬間――――覚悟の双眸から零れ出す大粒の涙!
そう、この暖かい感覚! 全裸の己! 響きわたる優しい声!
ここは天国、いや死後の世界であると覚悟が理解するのにコンマ以下もかかりはしなかった!
覚悟はあられもない姿で、ただ、ひたすらに声を上げて泣き続けた!
彼の望みは「牙なき人の牙となる」事! それを成し遂げられぬ事、何より悪鬼散を討つ前に死に絶えてしまった事が無念で、不甲斐なく、己の感情を駆り立てているのだ!
「覚悟ォーーーー!!」
「零!?」
「いや、厳密に言うならば私は零の一部だ」
そんな覚悟の元に、聞き覚えのある声が届く。
覚悟の戦友たる存在、強化外骨格「零」に宿っていた戦士たちだ!!
だが、それに出会ったところで覚悟の表情は晴れない。
「何を泣いておる、覚悟!」
零は、そんなふがいない姿をさらす覚悟に語りかけていく。
覚悟は、止まらない大粒の涙を抱えながらも零へと訴えかけていく。
「泣かずにはおれん! 討つべき悪があり、守るべき人々がいる!
だがこの俺は肉体を失い、牙になることができずにいる!
零よ、俺は悔しいのだ! 牙なき人の牙となれぬ、俺という存在が、惨めで悔しいのだ!」
嗚咽をこらえながら、覚悟は己の無念を零へと語る。
つもりにつもる悔しさ、やらねばならぬ事の多さ、それを成し遂げられぬ事実。
覚悟は、この事実に屈さざるを得なかった。
それを聞き、零は――――
「惑わされるな――――覚悟!!」
覚悟を、大振りの腕で殴り飛ばした。
「貴様の誇りというのは、その程度か! 牙なき人の牙となるというのは、その程度の誇りで務まるものなのか!」
「ち、違う! だ、だが……」
「ではなぜ止まる! 我ら三千の英霊を従えしものが、肉体が死に絶えた程度で何を戸惑う!」
「く……」
死に絶えた先の天界だというのに、ヒリヒリと痛む頬を押さえながら、覚悟は零の言葉に耳を傾ける。
「安息を手にすることなく! 未来永劫苦しむことになろうと人の牙になろうというのなら!
己の居場所はここではないというのなら!
覚悟よ! 突きつけられた運命を拒め! 差し出された居場所を拒め!!
我ら三千の英霊は、覚悟! お前と一心同体! 我らはお前が望むのならば、永遠の時をもさまよおうぞ!!」
そう、零たちは死してなお現世をさまよう戦士たちの魂だ。
肉体が死んだ今となっても、その誇り高き魂と共に現世で戦っている!
この世の悪を討つため、この世の正義を貫くため、彼らは現世にとどまっていたのだ!!
覚悟はハッとした表情の後、ククク、ハハハ、と繋がるように大きく笑う。
しばらく笑い転げた後に、ニヤリと口を曲げて笑う。
その笑みをみて、零も同じようにニヤリと笑う。
「零……! そうだ、そうだな! 俺の肉体が死したところで、俺自信は死んだわけではない!
感謝するぞ、零! 俺はどうかしていたようだな!」
「それでこそ葉隠覚悟! さあ行こう、我らと共に!!」
固い握手を交わし、両者はそのままその場に座り込み――――
一息。
カッ!!
強化外骨格「零」に宿っていた一部の英霊、並びに葉隠覚悟!!
神の息吹により包まれし、安息の死後の世界にて!
断首! 割腹! 蔵滅!
正義の拒否三段活用により、零とともに天界を脱出!!
その瞳、その動き、その覚悟、寸分の惑いなし!!
人々の牙となるべく、不滅の魂へと変化を遂げる!!
葉隠覚悟! 天界から三千の英霊の一部の手助けを受け!
ベン2の体内に打ち込まれし三千の英霊と同化!
その後内部にて、本来の男の精神と拳で語り合い!
共にベン2及び血髑郎の残滓を殲滅!!
堅い握手を交わし! 彼らは立ちあがる!!
まるで彼らの意志のように熱く燃え上がる炎を背に、目の前の悪へと名乗りを上げる!!
「正義の"弁"者、ハガクレン・カクーゴ……」
拳を構え、討つべき悪へと告げる!
その存在を一瞥し、炎を背にあざ笑う悪へと告げる!!
「当方に、迎撃の覚悟あり!!」
【アリオーシュ@ドラッグオンドラグーン 死亡】
【C-2/中央部/1日目/早朝】
【テッド・ブロイラー@メタルマックス2:リローデッド】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:炎の爪@DQ5、モヒカッター@MMR2
[道具]:基本支給品*5、零式鉄球装着砲@覚悟のススメ、斬車刀@MM2R、ギガスマッシャー@真・女神転生、メデューサの弾@真・女神転生
コーラたん@MM2R、不明支給品(1~5)
[思考・状況]
基本方針:皆殺し
1:火炎放射器を取り戻したい。
[参戦時期]:撃破前
【ベン2@俺ODIOロワ】
改め
【正義の"弁"者 ハガクレン・カクーゴ@俺ODIOロワ】
[状態]:牙無き人の牙となる@俺ODIOロワ
[装備]:防弾ベスト@現実、猟銃@現実
[道具]:基本支給品(記憶喪失の赤髪の男のもの)
[思考・状況]
基本行動方針:牙無き人の牙となる
[備考]:記憶喪失の赤髪の男が持つメタモーフ細胞がベンの体毛より細胞を模倣し、血髑郎の戦術鬼の細胞の力で生まれた新生物です。
記憶喪失の赤髪の男の意志があるかどうか、ブレードトゥースとの競合性等については不明です。
爆発の影響によって全身の毛が焼失しました。ただ、しばらくすると生えて元通りになると思います。
体内に打ち込まれた三千の英霊の一部と、天界の三千の英霊の一部が同化する際に葉隠覚悟の意思も相乗りする形で漂着しました。
暴れまわっていたベンの意思とかは覚悟とドラムカンの手によって殲滅されています。
【E-7/古代遺跡前/1日目/早朝】
【リュカ@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:ダメージ小、魔力消費大
[装備]:アームターミナルC(空)、空飛ぶ靴@DQ5
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:情が湧く前に全員を殺し、元の世界に帰還する
[参戦時期]:石化直後
【カイム@ドラッグオンドラグーン】
[状態]:健康
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク、風の帽子@DQ5
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:生き残り復讐する
1:レッドドラゴンを探す
[備考]
会場内のどこかに、カイムと契約したレッドドラゴンが身動きの取れない状態でいます。
契約相手同士以外の“声”の伝達に制限がかかっています。
※それぞれ別方向に向かったようです
|052:[[わがまま]]|投下順|054:[[愛を取り戻せ]]|
|052:[[わがまま]]|時系列順|055:[[第一放送]]|
|036:[[Himmlisch Atem]]|アリオーシュ|&color(red){GAME OVER}|
|045:[[イッツァソ○○アタック!]]|ベン2|&color(red){悪鬼消滅!}|
|[[正義再誕!>螺!! 螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺旋因果 大復活ッッッ!!]]|正義の"弁"者 ハガクレン・カクーゴ|:[[]]|
|036:[[Himmlisch Atem]]|リュカ|060:[[壊せば、いいんだろ?]]|
|036:[[Himmlisch Atem]]|カイム|:[[]]|
|042:[[Himmlisch Atem]]|テッドブロイラー|:[[]]|
食事。
というにはあまりにも豪快で、あまりにも残酷で、あまりにも凄惨な光景だった。
二人分の少年の肉体をいとも簡単に部位ごとに分解し、肉にむしゃぶりつき、滴る血を啜る。
薄く赤の残った骨が次々に投げ捨てられながら、それの食事は進んでいた。
最後の最後、手に取ったのは少年たちの頭。
まるで魔法のように表面の皮と肉をそぎ落とした後、人間から遠く離れた腕力で頭蓋骨の中身を啜る。
文字にするには少し下品すぎる音を立てながら、液という液を啜り尽くす。
その後は、満足したのか白い四つの球体を口に放り込んで転がしている。
残るのはペンキをぶちまけたかのように広がる血と、赤と肉をわずかに残した骨たち。
獣とは違い、骨だけがきれいに残っているというのが、彼女が"人間"であったという証明になるだろう。
しばらくして、四つの白を口で転がすのに飽きたのか、彼女は二人分の肉が入り込んでいったはずの平たい腹をさすりながらあたりを見渡す。
そこには、驚愕の表情のまま固まっている二人の青年が居た。
反射的にこぼれた涎を拭い、だらりと両腕を前に垂らして両者の様子を伺う。
三者が三者ともに睨み合い、互いの様子をさぐり合う。
風が吹き、汗が流れ、唾を飲み込む音が静寂に響く。
誰かが動けば、それが標的になるのは明白。
互いに動けない時間が長く続いた後。
張りつめた空気を引き裂くように一つの影が三者の目の前を横切る。
そこからの動作はそれぞれ一瞬だった。
リュカは空飛ぶ靴に足を通して瞬時に舞い上がり。
カイムは手にしていた風の帽子を空にかざして舞い上がり。
アリオーシュは現れた影へと喰いかかった。
「は――――」
靴に導かれた場所で、リュカは小さな笑いを零す。
始めは、ある一定の場所にしか移動できないこんな靴に頼るつもりは無かった。
ルーラが思い通りに使えない、つまり自分の移動に自由性は無いと知るまでは。
本当の事を言えば、本能的に拒否していたのかもしれない。
この靴は、思い出したくも無い"あの塔"への道筋なのだから。
だから初めの場所で襲われたときは、あの星を使って逃走した。
次に出会ったのは一触即発の状況。
一手間違えれば、あの骨たちの仲間入りしかねなかった。
怪しい影が飛び込んできたと同時に、あの場所から「逃げ出す」ことを選んだ。
きっと、あの状況から「足」で逃げても、食い殺されて終わりだっただろう。
死ぬかもしれない場面に直面すれば、初めは使うことを拒んでいた物を使うことなど、簡単なことだった。
「まさか、同じ事を考えてるとはね」
寄寓にも同じ手段を取っていた、もう一人の男の方へと振向いて話しかける。
その瞬間、眼前に迫るのは巨大な鉄塊。
あと少し前に出れば死んでしまう状況で、リュカは笑う。
「大丈夫、僕は君と同じ立場の人間だ」
へらへらと笑ったまま、リュカは言葉を続ける。
鉄塊は今にも顔面を突き抜けそうだというのに、リュカは笑顔を崩さない。
「僕はこの殺し合いを終わらせる、だからこの場にある全ての命を狩りつくす」
リュカは、この殺し合いを終わらせようとしている。
それは、絶望を手に入れないため。
喪失という感情を手に入れる前に、自分から切り離すため。
全てを殺そうと、彼は思っているのだ。
「細かい理由は違えど君も同じだろう? だったら、僕達が殺しあうのは最後の最後で良い」
転移の前、リュカはこの男の周りをしっかりと観察していた。
潰れた人肉、飛び散っている血。
彼が殺し合いに乗っていることなど、別に自分でなくても分かることだ。
だから、それに相応しい提案をしていく。
このくだらない殺し合いを素早く終わらせるために。
男は考えた。
別にここで相手を殺しても構いはしなかったのだ。
だが、なんとなく彼を見逃してみようと思った。
自分が先ほど"復讐"を忘れないための"殺戮"を成し遂げたからかもしれない。
それよりも彼の身体から、どこか"復讐"を嫌がる空気を感じたからだ。
勿論、到底理解のできるものではないし、理解するつもりも無かった。
この男が何を考えているのか、何に絶望しているのかは自分の知ったことではない。
ただ、ここで彼を見逃せば、彼は人を殺しに行くだろう。
どれだけ"復讐"を拒んでいても、人を殺すうちに"復讐"に目覚めることもある。
何より、殺人の快楽に溺れることが出来る。
だから、それを知らない可哀想な青年を見送ることにした。
願わくば、殺人の快楽に目覚めることを祈りながら。
そうして、鉄塊が下ろされた。
「じゃ、また今度会おうか」
その言葉と共に、二人は逆方向へと歩いていく。
途中、決して振り返る事は無く。
新たな"獲物"を探しに、この地を再び彷徨い始めた。
「……おいしくない」
毛がズル剥けになったサルのような人間の心の臓に手を突っ込みながら、アリオーシュは食いちぎった喉笛を吐き捨てる。
気がつけば視界に捉えていた二人の男は消えているし、手にした獲物はマズいしで踏んだり蹴ったりである。
腕に突き刺さっているサルの遺体を適当に放り投げ、近くの潰れた女の肉体へと駆け寄る。
潰れきったそれは、さっきの少年程の味わいはない物の、人肉特有の味と食感を誇っている。
混じった骨を吐き出すのが少し難儀だったが、アリオーシュはまるでマジックのように女だった肉体を食べきってしまう。
「はぁ」
口にこびり付いた血を手で拭い、とぼとぼとどこかに向けて歩き出し始めたときである。
「Fallen!!」
華麗な蹴り上げから声と共に、そのままアリオーシュに突っ込んでくるもう一つの影。
ゲドーピングタブとコーラたんで増幅された能力を生かし、奇襲を難なく往なして行く。
「Scheisse!!」
予想以上のカウンターを食らう形となり、呪詛を吐きながら乱入者――ハヌマーンは地面を転がる。
即座に耐性を建て直し、飛びかかってくるアリオーシュを低姿勢の蹴りで追い払っていく。
そのまま低空のソバットへと繋げ、怯んだところにラッシュを仕掛けていく。
「Sterben!!」
腕を振るうと同時に飛び出していく衝撃波を操りつつ、ハヌマーンは一気に畳みかけていく。
このままハヌマーン優勢のまま、コトが進むと思われていた。
「うるさい」
凍てつくような一言。
続けてエンジェルを引き裂くほどの恐ろしい腕力に、半永続的に続くゲドーピングタブの力が上乗せされる。
放たれた衝撃波に怯むことなく、飛びかかってきたハヌマーンの頭を掴む。
「うるさいよぉ」
ハヌマーンが防御行動に出る前に、その頭を握りつぶす。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」
びくりと跳ね上がった四肢を、息をつく間もなくバラバラに引き裂く。
「はぁ……」
飛び散っていく肉に興味すら示さず、その場に座り込んでしまう。
ハヌマーンが合体事故で生まれた悪魔だと言うことを感づいたか、それとも元がゾンビアーミーであると察したのか。
アリオーシュはハヌマーンに喰いかかろうとはしなかった。
「ごはん、さがしにいこ」
全身を赤に染めたまま暗い表情と空腹を抱え、彼女は新しい食料を求めて歩きだす。
そうしてゆっくりと立ち上がった時、彼女の視界にまた違う"赤"が写り込んだ。
「ががっ、期待はずれだががーっ!!」
誰もいなくなった場所で、不機嫌そうに真っ二つの黒こげ遺体を足蹴にする男。
テッド・ブロイラーは一人、炎の海で残された道具を回収していた。
邪教の館にて生成した手駒の力を試そうと、見あたった女に向けて放ってみた。
しかし結果は喜ばしいものではなく、それどころか無様に死に絶えてしまった。
襲いかかった女が強かったのかもしれない、何か道具の力があったのかもしれない。
なにがどういう状況であったとしても、手にした駒が"弱すぎた"という事実は変えられない。
実際、自分が戦闘してみればものの数秒もかかることはなかった。
所詮、この程度の人間に敗北してしまう程度の手駒にしかすぎなかったのだ。
力がないから負ける、ただそれだけのこと。
初めに出会したときにはそこらの魔物とは違う気配を感じたというのに、実際の結果はこれだ。
手駒が弱く、女が強い。そして自分がそれよりも強い。
それだけのことだ。
「ふんっ」
テッドは、失望の表情のままアームターミナルを破壊していく。
自分の配下に雑魚を群れさせるつもりはない、使えないと分かれば処分するだけだ。
弱者に生きる価値はない。
弱者は常に強者の糧となるべき存在なのだ。
弱者が吸える空気など、どの世界にも微塵も存在していないのだから。
圧倒的強者たる自分が全てを焼き払い、この殺し合いを生き残り、神をも越える力を手に入れる。
だからその約束された未来の中で、より使える"力"を手にしていく。
「ががががーっ!!」
炎の中、悪魔が笑う。
全てを手中に収めんと、勝ち誇った笑みで。
一人、強者の立場に居座りながら笑う。
びくり。
何かが動き出したのは、その時である。
「ここは――――」
葉隠覚悟は、重い瞼を開け、ゆっくりと目覚めた。
一面に広がる白、体を包み込む安堵感、語りかける声。
冷静になった頭に情報を詰め込み、覚悟は今の状況を理解していく。
その瞬間――――覚悟の双眸から零れ出す大粒の涙!
そう、この暖かい感覚! 全裸の己! 響きわたる優しい声!
ここは天国、いや死後の世界であると覚悟が理解するのにコンマ以下もかかりはしなかった!
覚悟はあられもない姿で、ただ、ひたすらに声を上げて泣き続けた!
彼の望みは「牙なき人の牙となる」事! それを成し遂げられぬ事、何より悪鬼散を討つ前に死に絶えてしまった事が無念で、不甲斐なく、己の感情を駆り立てているのだ!
「覚悟ォーーーー!!」
「零!?」
「いや、厳密に言うならば私は零の一部だ」
そんな覚悟の元に、聞き覚えのある声が届く。
覚悟の戦友たる存在、強化外骨格「零」に宿っていた戦士たちだ!!
だが、それに出会ったところで覚悟の表情は晴れない。
「何を泣いておる、覚悟!」
零は、そんなふがいない姿をさらす覚悟に語りかけていく。
覚悟は、止まらない大粒の涙を抱えながらも零へと訴えかけていく。
「泣かずにはおれん! 討つべき悪があり、守るべき人々がいる!
だがこの俺は肉体を失い、牙になることができずにいる!
零よ、俺は悔しいのだ! 牙なき人の牙となれぬ、俺という存在が、惨めで悔しいのだ!」
嗚咽をこらえながら、覚悟は己の無念を零へと語る。
つもりにつもる悔しさ、やらねばならぬ事の多さ、それを成し遂げられぬ事実。
覚悟は、この事実に屈さざるを得なかった。
それを聞き、零は――――
「惑わされるな――――覚悟!!」
覚悟を、大振りの腕で殴り飛ばした。
「貴様の誇りというのは、その程度か! 牙なき人の牙となるというのは、その程度の誇りで務まるものなのか!」
「ち、違う! だ、だが……」
「ではなぜ止まる! 我ら三千の英霊を従えしものが、肉体が死に絶えた程度で何を戸惑う!」
「く……」
死に絶えた先の天界だというのに、ヒリヒリと痛む頬を押さえながら、覚悟は零の言葉に耳を傾ける。
「安息を手にすることなく! 未来永劫苦しむことになろうと人の牙になろうというのなら!
己の居場所はここではないというのなら!
覚悟よ! 突きつけられた運命を拒め! 差し出された居場所を拒め!!
我ら三千の英霊は、覚悟! お前と一心同体! 我らはお前が望むのならば、永遠の時をもさまよおうぞ!!」
そう、零たちは死してなお現世をさまよう戦士たちの魂だ。
肉体が死んだ今となっても、その誇り高き魂と共に現世で戦っている!
この世の悪を討つため、この世の正義を貫くため、彼らは現世にとどまっていたのだ!!
覚悟はハッとした表情の後、ククク、ハハハ、と繋がるように大きく笑う。
しばらく笑い転げた後に、ニヤリと口を曲げて笑う。
その笑みをみて、零も同じようにニヤリと笑う。
「零……! そうだ、そうだな! 俺の肉体が死したところで、俺自信は死んだわけではない!
感謝するぞ、零! 俺はどうかしていたようだな!」
「それでこそ葉隠覚悟! さあ行こう、我らと共に!!」
固い握手を交わし、両者はそのままその場に座り込み――――
一息。
カッ!!
強化外骨格「零」に宿っていた一部の英霊、並びに葉隠覚悟!!
神の息吹により包まれし、安息の死後の世界にて!
断首! 割腹! 蔵滅!
正義の拒否三段活用により、零とともに天界を脱出!!
その瞳、その動き、その覚悟、寸分の惑いなし!!
人々の牙となるべく、不滅の魂へと変化を遂げる!!
葉隠覚悟! 天界から三千の英霊の一部の手助けを受け!
ベン2の体内に打ち込まれし三千の英霊と同化!
その後内部にて、本来の男の精神と拳で語り合い!
共にベン2及び血髑郎の残滓を殲滅!!
堅い握手を交わし! 彼らは立ちあがる!!
まるで彼らの意志のように熱く燃え上がる炎を背に、目の前の悪へと名乗りを上げる!!
「正義の"弁"者、ハガクレン・カクーゴ……」
拳を構え、討つべき悪へと告げる!
その存在を一瞥し、炎を背にあざ笑う悪へと告げる!!
「当方に、迎撃の覚悟あり!!」
&color(red){【アリオーシュ@ドラッグオンドラグーン 死亡】}
【C-2/中央部/1日目/早朝】
【テッド・ブロイラー@メタルマックス2:リローデッド】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:炎の爪@DQ5、モヒカッター@MMR2
[道具]:基本支給品*5、零式鉄球装着砲@覚悟のススメ、斬車刀@MM2R、ギガスマッシャー@真・女神転生、メデューサの弾@真・女神転生
コーラたん@MM2R、不明支給品(1~5)
[思考・状況]
基本方針:皆殺し
1:火炎放射器を取り戻したい。
[参戦時期]:撃破前
【ベン2@俺ODIOロワ】
改め
【正義の"弁"者 ハガクレン・カクーゴ@俺ODIOロワ】
[状態]:牙無き人の牙となる@俺ODIOロワ
[装備]:防弾ベスト@現実、猟銃@現実
[道具]:基本支給品(記憶喪失の赤髪の男のもの)
[思考・状況]
基本行動方針:牙無き人の牙となる
[備考]:記憶喪失の赤髪の男が持つメタモーフ細胞がベンの体毛より細胞を模倣し、血髑郎の戦術鬼の細胞の力で生まれた新生物です。
記憶喪失の赤髪の男の意志があるかどうか、ブレードトゥースとの競合性等については不明です。
爆発の影響によって全身の毛が焼失しました。ただ、しばらくすると生えて元通りになると思います。
体内に打ち込まれた三千の英霊の一部と、天界の三千の英霊の一部が同化する際に葉隠覚悟の意思も相乗りする形で漂着しました。
暴れまわっていたベンの意思とかは覚悟とドラムカンの手によって殲滅されています。
【E-7/古代遺跡前/1日目/早朝】
【リュカ@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:ダメージ小、魔力消費大
[装備]:アームターミナルC(空)、空飛ぶ靴@DQ5
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:情が湧く前に全員を殺し、元の世界に帰還する
[参戦時期]:石化直後
【カイム@ドラッグオンドラグーン】
[状態]:健康
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク、風の帽子@DQ5
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:生き残り復讐する
1:レッドドラゴンを探す
[備考]
会場内のどこかに、カイムと契約したレッドドラゴンが身動きの取れない状態でいます。
契約相手同士以外の“声”の伝達に制限がかかっています。
※それぞれ別方向に向かったようです
|052:[[わがまま]]|投下順|054:[[愛を取り戻せ]]|
|052:[[わがまま]]|時系列順|055:[[第一放送]]|
|036:[[Himmlisch Atem]]|アリオーシュ|&color(red){GAME OVER}|
|045:[[イッツァソ○○アタック!]]|ベン2|&color(red){悪鬼消滅!}|
|[[正義再誕!>螺!! 螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺旋因果 大復活ッッッ!!]]|正義の"弁"者 ハガクレン・カクーゴ|063:[[金の掛かった首は重い]]|
|036:[[Himmlisch Atem]]|リュカ|060:[[壊せば、いいんだろ?]]|
|036:[[Himmlisch Atem]]|カイム|:[[]]|
|042:[[Himmlisch Atem]]|テッドブロイラー|063:[[金の掛かった首は重い]]|