タクシー代出ますか?(茶緒)

六月合宿中、寮の仕事のため後輩の倫とともに農部にいた茶緒。
夜中の二時ごろ電話がかかり、彼女はおもむろにこう聞いた。


「寮の仕事終わったんすけど、合宿所戻ったほうがいいですか?」


隣の部屋では先輩の玉乃丞、会長のルディ、同期にあたる霰、そして三人のかわいい後輩が
必死に落語を練習している!
また裏方の仕事もこれからが正念場なのである!!
我々は茶緒の質問の意図を理解できず、とりあえず戻ってきてほしい旨を伝えた。

すると、


「でも雨降ってるんですけど…」


我々は雷に打たれた衝撃を感じた!
出来ることなら差し入れの一つでも買ってきてくれてもいいんじゃないかと
でさえ思っていた我々はこの予期せぬ反応に動揺を禁じ得なかった。
我々はそれでも、猫の手でも借りたい一心で、戻ってきてほしい旨を伝えた。
というか、演者のリンちゃんがいる時点でソッコー戻ってきてほしかった。

すると、


「タクシー代出ますか?」


我々は振り向きざまにあて身投げを食らわせられたような、激しいめまいを感じた!!
雨が降っているから歩くのは嫌なそうだ。しかし完全に小雨である。
一体誰が彼女の乗るタクシー代を立て替えてくれるというのか!?
まずさすがに後輩からという線はない。では同期からか?
いや、OBさん達から頂くことはないにしても、おそらく先輩からなのか??
もしかしたら部費から徴収する気なのかもしれない!
しかし今落研財政が苦しいのは誰の目にも明白である!!

疑問が疑問を呼び、頭の中を激しくかき乱した!!

とりあえずタクシー代は出ないことを告げ、電話を切った。


数十分後、憔悴しきった我々の前に茶緒が現れた。どうやらそれでもタクシーを使ったらしい。

「タクシー…、使ったんだ…。」

そう聞くと、彼女はムスッとした表情でこう答えた。


「当たり前じゃないですか!こっちには後輩の女の子がいるんですから!!」