四月某日。
深夜まで部室で新歓の準備をしていた天涯家 葉月はその日、学生証の入ったキーケースの携行を失念していた。
トイレを利用するためにはキャンパス内の建物に入る必要があるが、その時間建物に入るには学生証が必要である。
そのため彼女は、その時間たまたま部室にいた綾家 遊桂から学生証を借り、建物へと侵入した。事件はそこで発生した。

学生証をトイレに忘れたのである。

すでに建物はオートロックがかかっており、再び開けるには学生証が必要である。
しかし彼の学生証はその建物内の女子トイレの中。
彼女の学生証は女子寮内にあるが、寮の鍵もまた寮内である。
つまり学生証の回収は、ロックが解除される午前七時まで不可能である。
時刻は五時を少し回ったところ。解錠まで二時間弱の間があることとなる。

…仮にその間、第三者が学生証を発見したらどうなるか。
おそらく、導き出される状況は以下のようであろう。

『深夜、人気のないキャンパスに出没した遊桂は、何かしらの目的を持って女子トイレに侵入する。
その後脱出するが、彼はうっかり学生証を置き忘れてしまった。』

事案である。


深夜の女子トイレへの侵入がどれほどの処罰に値するのかは不明だが、停学や退学を覚悟しなければならない。
不安で一睡もできない遊桂であった。

※事件発生当日午前6時前執筆