開幕―魂は冷たく静かに燃える

 デュエルアカデミアに、生徒たちには内緒でその機械が運ばれてきたのは2日ほど前だった。バーチャルリアリティの完成品ともいえる存在……『Cyber Connect Duel』、略称『CCD』。
 まず教員達が試し、その後生徒の代表1人が使用。それで問題がなければ、本格的に設置される予定だった。
 教員のチェックは問題なく済み、生徒の代表を選ぶことになり……1人の生徒が選ばれた。
 生徒の名前は『ソウル・マウンティーナンド』。オベリスク・ブルーの1年生。
 素行は規則正しいものであり、成績も優秀。1年生では実質トップといえる。デュエルの実力もそうだが、彼は何より知識と思考力に長けていた。
 本来は彼1人のはずだったのだが……CCDがある部屋に(鍵がかかっていたはずなのだが)別の生徒が入って来てしまったのだ。見られたからには仕方ない、とその生徒……『双葉 海堂(ふたば かいどう)』と交渉の上、海堂もCCDを試すこととなった。
 かくしてソウルと海堂の2名は、CCDの世界に入っていった。



 ……ゲームにはイレギュラーがつきものだが、これは違うな。
 青髪青眼の少年、ソウルは冷静に頭を巡らせていた。
 現在地はe-4、市街地。具体的に言えば、家の中。しかし家具類は一切ない上に埃くさく、どうやら廃屋のようだった。
 真夜中の廃屋、怖くないといえば嘘になる。しかし今はそれを押しつぶすように、思考する。

「ディスクの改造は、このためだったのか」

 ソウルは左腕につけている、デュエルアカデミアの白いディスクを見た。ただしそれは青いボタンの下に、長方形のモニターが取り付けられている。ボタンを押せばカバーが開き、モニターが露出する仕組みだ。
 これをつけている者は、今まで見た中で自分と海堂を除き誰もいなく、そもそもデュエルディスクすらあまり見なかった。理由はあらかじめ先生に聞いていた。制服をあわせて、『デュエルアカデミア生徒だということを強調するため、特別に使わせてもらっている』のだという。本来は元々モニターがあるD・パッドなるものを使うのだという。
 今、ディスクのモニターには地図が表示されているが、少し前まではメッセージが表示されていた。『特別ステージへの招待のご案内』……といったところか。
 真っ先にソウルは、チームを組むことを考えた。協力者がいるといないとでは、デッキに《大嵐》を入れると入れないとほどの差がある。

「幸いここは市街地。合流は難しくない」

 口に出し、思考の欠落がないか調べる。問題はない。
 あくまで彼は冷静だった。たいていの場合ソウルは慌てず判断を下せる。

「要は勝てばいい。俺の『支配者』がいれば、そう簡単に負けることは……」

 そう言って、ディスクからデッキを抜いたとき。
 二重のショックが、ソウルを襲った。

「これは……!」

 そこにあるのは、彼のデッキ……『タイムルーラー』ではなかった。これが1つ目のショック。
 もう1つは、デッキの一番上にいるのが、幻のレアカード……《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》だということ。
 ただし、こんな時でもソウルは思考を忘れない……癇癪を起こした子供が暴れまわるのと同じように、混乱したときソウルはとりあえず頭を働かせる。その思考は濁流のように滅茶苦茶だが、やがて、冷静な思考は戻ってくる。

「……思えばここは仮想空間。幻のレアカードが存在したところで、なんの不思議もない……同時にデッキの交換も充分あり得る。【レッドアイズ】デッキの使い方は知っている……」

 自分に言い聞かせるようにしながら、デッキの中身を見る。強さは申し分ない。使いこなせれば、充分戦える。
 思えばメッセージには『デッキの配布』とあった。運営によるデッキ変更は充分考えられる。そもそもこの世界の主導権は運営側にあるのだ……
 そのとき、ふと思った。
 このまま運営に踊らされていいのだろうか。
 そう思った途端に、彼の中でふつふつと怒りが沸いて来る。その源泉は、無表情の仮面の下に持つ……『プライド』。

「……よし」

 ソウルは、運営を敵と見定め、それを攻撃することを心に決めた。だがあくまでもそれは『最終目的』。完全な支配・被支配関係を覆すのは容易ではない。
 ひとまずやるべきは……情報収集・チーム組み。全てはそこからだ。

「さて、行くとしよう。まずはデュエルではなく、『仲間探し』だ」

 ソウルは廃屋を後にした。





{e-4、0:15}
【ソウル・M@DA】
[参戦時間軸]
 『生徒達の章』、デッキ改造後
[状態]
 健康
[デッキ]
 レッドアイズ(信凪@遊戯王e-Squire)
[思考・状況]
1:チームを組む
2:情報収集
3:デュエルする
[備考]
  • 運営への明確な敵意あり。
  • 「遊戯王GX」世界の住人なので、一部のカードの価値観にズレがある。
  • CCDに入った時に、本来GX世界に存在しないカードを色々調べ頭に叩き込んでるので、知識面は問題なし。
  • 日本語ペラペラだけど見た目は外国人。ちなみに日本人と、ハーフ(イギリスとイタリア)の間のクォーター。

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最終更新:2012年05月31日 20:59