不敗神話─崩壊の序曲


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「……これは、凄い。 素人目だけど、何かこう、命の息吹みたいなのを感じる……」

僕の目の前にあるのは、一つの巨大な像だった。

いや、巨大と言ってもさほど巨大な訳ではない、せいぜい僕の身長の二倍程……いや、三倍ほどだろうか。

まぁこの際大きさなんてどうでもいい、巨大と言った事に、意味はない。

けど、僕の目の前の像からは、その像の大きさを通常より何倍にも大きくさせる、何処か迫力じみた物があったのは確かだった。



その像は、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
何処かのゴミ捨て場のゴミを寄せ集めて作っただけの、言ってしまえばガラクタだ。

……しかし、そのガラクタのはずの像……『スターダスト・ドラゴン』を元に作ったのであろうその像に、僕は不思議と魅入られていた。



辺り一面に広がる草の絨毯から、ここがDパッドに書かれていたMAPに写しだされた赤い光点から、『H-5』周辺だと言うのは理解出来た。 遠くの方でザザーンと水の音が聞こえる辺り、恐らく島の端の方なのだろう。

灯りになる様な物は無く、偽りの星空と月明かりのみが、僕とこの像を照らしている。

辺りを見渡してみると、この像の他にも像があるみたいだった。

夜な上にライトアップもされていないので、像の陰位しか判らないが……結構沢山の像があるみたいだ。

一度、何故こんな草原に像があるのか考えたが……辞めた。どうせ判りっこない事だ。
こんなゲームの世界で、意味不明な事に対しての意味を求めても仕方ない。





「………はぁ、どうしてこんな事に……」



最初は、自分の新たなデッキを試してみる為だった。
学園の誰かを相手に試しては、敵将達にデッキの内容がバレてしまう恐れがあった為、最近流行っていると噂のCCDを試してみる事にしたんだけど……まさか、こんな事になるなんて。

憂鬱だ、帰って寝たい。


「……けど、帰れないんだよなぁ……」

まず、ログアウトが出来ない。
意識を世界に送り込んでデュエルする、という無駄に画期的な方法のせいで、僕の意識はこの世界に縛られたまま……
恐らく、このイベントの参加者全員を倒せば帰れるのだろうが、正直それは御免被りたい。


第一、僕が帰れない理由はもう一つある訳で……

「……やっぱり、探さないと駄目だよなぁ……」



……それは、僕がこのCCDを行うきっかけ……新たなデッキを作る事になったきっかけである、あの死んだ魚の様な眼をした少女の事だ。

……いや、少女というのは少し違うか。
何故なら彼女は、見た目こそは少女のそれだが、本当は老いる事などない不変の存在……『精霊』と呼ばれる、カードに宿った魂なのだから。



これは仮説の話だが、僕が元の世界に帰ったとしても、元のデッキは僕の手元にあるだろう。
ただし……そのデッキのカードに、彼女は……『ミラ』は居ない。

僕と一緒に世界に入って来たのは、このイベントが始まる前に確認済みだ。



僕が彼女を見つける前に帰ってしまえば、ミラはこの世界に取り残されたまま……帰る方法を探すにしても、まずはミラを見つけなければ始まらない。

……それなら、イベントに書かれていた通りにデュエルを行えと言われるかも知れないが、正直僕のデュエルの腕は『それなり』だ。
そこら辺の雑兵や武将に負けはしないだろうが、流石にプロのデュエリストには簡単に負けてしまう。

そして、こんなゲームには『廃人』と呼ばれる、それこそプロに退けを取らない存在が居るのは、知識で知っていた。



……勝てないよなぁ、やっぱり。



今日何度目かになるため息を吐き出して、僕は目の前の像を背もたれに、草の絨毯の上に座り込む。

正直、考えるのに疲れた。
とりあえずはじっとして居よう。
幸いにもここはMAPの端だし、普通の人はMAPの中心である繁華街の方へと向かうはずだ。
誰かと会う確率は低いし、少しゆっくりしてから、身の振り方を考えよう。



そう考えて、僕はゆっくりと眼を閉じる。
意識の世界で眠ると言うのもおかしな話だが、今は何も考えたくなかった。
適度な現実逃避も、より良い思考力に必要な休息だ。

そう考えつつ、僕の意識は急速に睡眠へと落ちていく──………





























……──と、その前に。



「流石に自分のデッキ位は、確認して置いた方が良いよね」



眠い眼に鞭を打ち、右手を動かしてDパッドを操作する。
……正直、この時の僕は浮かれていた。
比較的安全な所に居るという安堵感と、どんなデッキが支給されたとしても使いこなしてみせると言う、ある意味の自信故の慢心だった。

ナギに召し抱えられるまで、僕は色々なデッキを使って来たのだ。
どんなデッキが来ても、ある程度は使いこなしてみせる。





……そう思っていた時期が、僕にもありました。









「………な、な、ななななな………なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」









キャラ崩壊?知るかんなもん。

絶叫と共に飛び起きた僕は、一目散に駆け出していく。
向かう先は、MAPの中心……市街地の方だ。

え?先程の考えと全く違うって?

じゃあデッキ見てみろよ、あんな甘ったれた考え一瞬で吹き飛ぶから。

もうこれは、脱出がどうとかミラがどうとか考えれる状況じゃない。
『どれだけ早く保護して貰えるか』が、僕のこの世界での行く末を決めると良いだろう。

正直、これならスターターデッキ一箱の方がまだマシだ。



だから、走る。
多少なりと危険は増えるが、このまま事態が好転しないよりかはずっとマシだ。

上手く保護してくれそうな人を見つけて、保護してもらおう。
あわよくば、何かまともなデッキを貸して貰おう。







……僕は、走り続ける。
元の世界に帰る為に、再びナギの笑顔を見る為に。

暗闇の中を、ひた走る。









……この世界に、自らが使える主が居る等とは、考えもせずに。







{H-5とG-4の境目付近―0:05分頃}
【木下遊吉郎@遊戯王e-Squire】
[参戦時間軸]カグラ戦前
[状態]全速前進、焦り、眠気(眠ってる場合じゃないので一時的に緩和中)
[デッキ]儀式ハイビート(仮面ライダー軸)
[思考・状況]
1:誰かに保護して貰う、それ以外はとりあえず保留!
2:ま と も な デ ッ キ が 欲 し い。
3:ミラを探して脱出。
[備考]
※この世界に【織田信凪@遊戯王e-Squire】が居るなんて考えてもいません。
※彼の絶叫を近くにいた人(半径200m前後?)が聞いた恐れがあります。
※H-5の海岸付近に【スターダストドラゴンの像@遊戯王5D's】が置かれています。

【デッキ解説】
言わずとしれた仮面ライダー軸。
カオスライダー(グスタフでも可)に凶暴化の仮面とビックバンシュートを装備してライダーキックを決める為のデッキ。
自分のサイコショッカーを相手に送り付けて、そのショッカーを攻撃したりもする。
HEROカードが入ってないのにマスクチェンジと各種M・HEROが入っていたり、効果が全く噛み合わないけど、台詞的な意味で【星に願いを】が入っていたり、とにかく酷い。
運営側の優しさか、一部インゼクターが入っていたりする。(もちろん、【ホーネット】【ギガマンティス】【ギガグリオル】等のカードは入っていない)
正直、この世界で最弱デッキであろう【桃源 郷の精霊山盛り憑依装着ビート】にすら勝てるか怪しい。



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