無題12

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MAP上でのe-8地点、灼熱の砂漠の真ん中で“綾小路叶”対“寺海千明”のデュエルが開始された。 このデュエルを申し込んだ叶の方はやる気満々、対して千明の方は叶の気迫に少し押され気味であった。 「先攻は僕がもらうよ。僕のターン、ドロー!」 叶は自身の手札を見渡し静止する。この孤島に飛ばされルール説明を受けた時点で、ある程度デッキの動かし方は把握していた。それは自身のデッキである“リチュア”と同じ水属性だからか、はたまたこのデッキが叶自身に合っているのか…… 「手札からモンスターを裏守備でセット、カードを1枚伏せてターン終了」 叶:4000 場、裏守備×1、伏せ×1 手札×4 「わ、私のターンドローっ!」 千明も自身の手札を見渡し考える。 しかしその表情には明らかな困惑の色が浮かんでいた。 (“リチュア”なんて使ったことないし、動かし方なんてわかんないよ~。あんまり可愛くないし、私のデッキはガスタじゃなきゃ……) 「……とりあえず、出来ることをしよう。手札の“シャドウ・リチュア”の効果、このカードを手札から捨てることでデッキからリチュアと名の付いた儀式魔法を手札に加える。えーっと、私は“リチュアの儀水鏡”を手札に」 千明はおぼつかない手付きでリチュアデッキを回してゆく。 叶はその様子をただジッと見つめていた。 「えっと……手札から“リチュア・アビス”を召喚! 効果によりデッキから守備力1000以下のリチュアと名の付いたモンスター1体を手札に加えるよ。私は“ヴィジョン・リチュア”を手札に、いいかな?」 「……邪魔しないから。続けなよ」 「う、うん……。加えた“ヴィジョン・リチュア”の効果、このカードを手札から捨てることでデッキからリチュアと名の付いた儀式モンスター1体を手札に。……この手札なら“イビリチュア・テトラオーグル”ね!」 どうやら千明は初ターンから動くようだ。自信ありげにカードを使用していく。 「手札から“リチュアの儀水鏡”を発動! 場の“リチュア・アビス”と手札の“リチュア・エリアル”を墓地へ送り、出てきて! “イビリチュア・テトラオーグル”っ!!」 千明の場に猛々しい半魚人が現れる。 心なしか、砂漠に立つその姿はかなり疲労しているように見えた。 「テトラオーグルの効果! カードの種類を1つ宣言し互いに宣言したカードを1枚墓地へ送るわ。私はモンスターを宣言!」 高らかに宣言する千明、直ぐにデッキからモンスターを選ぼうとするが、それは叶の言葉によって遮られる。 「……手札の“キラー・ラブカ”を捨てることで、テトラオーグルの効果を無効にする」 「えっ?」 「……テトラオーグルの効果は絶対じゃない。……僕が気に入らなかった時は、僕の手札1枚を捨てることでその効果を無効にされる。……カードのテキストは全部読みなよ!」 「ご、ごめんなさい」 語尾を強めて千明を睨みつける叶。両者の間に微妙な空気が漂い始めた。 千明は少し威圧されながらターンを進める。 「ば、バトルフェイズに入ります! テトラオーグルで裏守備モンスターを攻撃!」 「……罠発動“フィッシャー・チャージ”。僕の場の魚族モンスター1体をリリースして相手の場のカード1枚を破壊、その後1枚デッキからドロー。……僕は“ビッグ・ジョーズ”をリリースし“テトラオーグル”を破壊する」 全ての歯が刃となっている大鮫が、向かってきたテトラオーグルにその牙を突きつける。両者は激突し互いに破壊されてしまった。 「……じゃ、1ドローするよ」 「う……、私はターンを終了します!」 千明:4000 場、なし 手札×3 「僕のターン……ドロー……」 ドローカードを確認し少し思考した後、叶は千明に向かって語り出した。 「……君は、そのデッキを使いこなせていない。今のターンも、ただ攻撃力の高いモンスターを出しただけだ。……僕なら、もっと展開させることができた」 「え、えっと……ごめんなさい?」 「……やはり、そのデッキは僕のものだ。……僕が使うべきデッキなんだ……!」 「う……」 叶は千明に対して苛立ちを隠しきれずにいた。 リチュアデッキは複雑怪奇、初見で動かせるほど簡単なデッキではない。千明が上手く動かせないのも納得のいく話なのだが、叶にとって感じ方は違う。自分のデッキは強い、そう信じているからこその苛立ち。 ……これ以上、僕のリチュアが無様に戦う姿なんて見たくない! 「僕のターンドロー! ……手札から“ハリマンボウ”を召喚だ」 叶の場にマンボウにしてはドデカい口に何十本もの針を備えたマンボウが現れた。 「続けて僕は“シャーク・サッカー”を特殊召喚する。……このモンスターは、僕の場に魚、海竜、水族のモンスターが召喚、特殊召喚された時に手札から特殊召喚できる。……行くよ。このデッキのエースモンスター!」 「これは……!?」 砂漠地帯に放たれる輝かしい閃光。今ここに、とある世界の青年が愛用するデッキより……エースモンスターが降臨する! 「……☆3の“ハリマンボウ”と“シャーク・サッカー”でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 出でよ“No.17 リバイス・ドラゴン”!!」 『グルオオオーーッ!!』 青の鱗に大きく広げられた翼、身体に浮き出ているのはナンバーズの証である17の数字。その真紅の瞳から発せられる威圧感は並のものではない。 灼熱の砂漠地帯に巨大な海竜が現れた。 「すごい……これがナンバーズ……」 「……“リバイス・ドラゴン”の効果発動。エクシーズ素材を1つ取り除き、このカードの攻撃力を500上げる。僕が取り除くのは“シャーク・サッカー”。……行くよ、バトルだ! リバイスで君にダイレクトアタック!」 「ぷあぁっ!!?」 凄まじい水の放射が千明を襲う。 いかに灼熱の砂漠でも、これはしんどい。 千明:1500(-2500) 「……カードを1枚伏せて、ターン終了」 叶:4000 場、リバイス、伏せ×1 手札×3 「く……私のターン、ドロー!」 先制点は叶の方からとなった。あまりにも大きすぎる先制点、しかしそれで千明が終わるわけではない。 先のターンに対抗してか、今度は千明が叶に向かって語り出した。 「好き放題言ってくれましたね! もう怒りましたよ。ええ、私は怒りましたとも!」 「……それが、何なのさ」 「絶ぇーーっっ対!! このデュエル、私が勝ちます! で、私の実力を見せてあげます!」 「……ふぅん。やってみなよ」 あくまでも冷静に返す叶に千明はさらに激情する。 脇で見ている勢櫻はもう突っ立っているしかできなくなっていた。 「私は手札から“リチュア・ビースト”を召喚! 効果により墓地から☆4以下のリチュアと名の付いたモンスター1体を守備で特殊召喚できる! 来て“リチュア・アビス”!」 千明が呼び出したリチュア・ビーストの効果で再びリチュア・アビスが特殊召喚される。 ビーストの効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化されない。よってアビスの効果は問題なく発動する。 「アビスの効果でデッキから“シャドウ・リチュア”を手札に加えます。そして墓地にある“儀水鏡”の効果発動! 墓地のリチュアと名の付いた儀式モンスター1体、“イビリチュア・テトラオーグル”を手札に戻し、このカードをデッキに戻します! そして今加えた“シャドウ・リチュア”の効果により、“儀水鏡”を再び手札に!」 「…………」 グルグル回り続けるリチュア。初めて扱うリチュアデッキでここまでスムーズに動かせるのは、千明の天性の才能か、はたまた相性なのか……。 そんな千明のプレイングを、ただジッと見つめているだけの叶。正直なところ、かなり不気味である。 「……また☆6でテトラオーグルでも出すつもり?。……こっちのリバイスは攻撃力2500、少しだけだけど足りないって」 「そんなのわかってます! 私が出すのは☆6じゃない! 手札から“儀水鏡”を発動、場のアビスと手札のテトラオーグルを墓地へ!」 「……! そっちか……」 アビスは☆2、テトラオーグルは☆6、つまり、千明が儀式召喚するのは☆8! 「儀式召喚! 出てきて“イビリチュア・ソウルオーガ”!!」 千明は遂にリチュアの最上位とも呼べるモンスター、ソウルオーガの儀式召喚に成功する。いかに叶と言えど、自分のエースモンスターの一角が召喚されれば焦りの一つも生まれるというものだろう。 「……面倒な、……さすが僕のモンスター」 「自分のモンスターの力を思い知りなさい! “ソウルオーガ”の効果発動、手札のリチュアと名の付いたモンスター1体を捨てることで、相手の場に表側で存在するモンスター1体をデッキに戻します! 私は“イビリチュア・ガストクラーケ”を捨てます!」 ソウルオーガの発する水しぶきが叶のリバイスをエクストラデッキへと押し戻してしまった。 これにより叶の場はがら空き。ソウルオーガの2800とビーストの1500が通れば千明の勝利が決定するが…… 「……まだだ。リバイスのエクシーズ素材だった“ハリマンボウ”の効果発動。このカードが墓地へ送られた時、相手の場のモンスター1体の攻撃力を500下げる。……ソウルオーガを対象に」 「くっ……ギリギリ、生き残るわけね……」 千明は悔しさに歯噛みする。 これでソウルオーガの攻撃力は2300となった。つまり、ビーストと合わせても累計ダメージは3800。ほんの200だけ足りなかったのだ。 「バトルフェイズです! ソウルオーガとビーストでダイレクトアタックします!」 「……受けるよ」 叶:200(-3800) わずかに残った叶のライフ。 エースモンスターも除去されて、ここから挽回する手立てはあるのだろうか……。 「私のターンは終了です!」 千明:1500 場、ソウルオーガ、ビースト 手札×1 「僕のターン……ドロー。……これは、なかなか……」 「どうしたんですか。何かいいカードを引きましたか?」 「……あぁ。引いたよ」 自信ありげにそう告げた叶は伏せてあるカードを千明に見せつけた。 千明はそれを見て、怪訝な表情になる。 「……“エクシーズ・リボーン”じゃないですか。ああ! リバイスが破壊されてもそれで蘇生するつもりだったわけですね。自分のモンスターの効果のせいで、ただの死に札になっちゃいましたね……」 「……ふふ。……その通り、こいつは死に札だ。でも、狙っていたことは、できそうだよ」 「……? 一体何を」 「行くよ。僕は“ジェネクス・ウンディーネ”を召喚」 叶が召喚したのはたかが攻撃力1200のモンスター、効果は強力そのものだがこの状況を打破できるのだろうか……? 「……“ウンディーネ”の効果、デッキから水属性モンスター1体を墓地へ送り、デッキから“ジェネクス・コントローラー”を手札に加える」 「今更シンクロ召喚でも狙うつもり? そんなの後の祭です! あなたは次の私のターンに、」 「デュエルの勝敗は、……このターンに決まる」 「な……!」 強がる千明の言葉を遮り、叶は1枚のカードを見せた。 「……僕が墓地へ送るのは、“レインボー・ニジマス”だ」 それは七色に光る鱗を持つ魚。 まだ千明は叶が何をしようとしているのかがわからない。 「な、何が起こるっていうんですか?」 「……墓地に送られた“レインボー・ニジマス”の効果は……墓地のこのカードと、☆が同じである他のモンスター1体とをゲームから除外することで、エクシーズ召喚を行うことができる!」 「ええ!?」 「☆3の“レインボー・ニジマス”と“キラー・ラブカ”でオーバーレイネットワークを構築!」 それはchampionshipの世界にて、不老不敗との決戦で不知火という青年が使用したエクシーズ召喚、いや、これは……“墓地エクシーズ”だ! 「再びその姿を現せ! “No.17 リバイス・ドラゴン”!!」 千明の前に再び、ナンバーズの名を持つ竜がその姿を現した。 しかし、千明にはまだ余裕がある。 「……よ、よく見たらそのリバイスにはエクシーズ素材がないじゃないですか! それでは攻撃力は2000のまま、私のライフを0にすることはできない!」 「……これで終わりだなんて、誰も言ってないだろ?」 「ま、まだ何かあるんですか」 「進化しろリバイス、カオス・エクシーズ・チェンジ!」 青の竜は銀色に輝く。まばゆい光が収まるとそこには、全身が銀色に変わりフォルムもより威圧的になった竜が降臨していた。 「……これが、このデッキの切り札……“cNo.17 ネオ・リバイス・ドラゴン”らしい。……さあ、覚悟はできてるか?」 「な、何が出てきたかと思えば。たかが攻撃力2000のモンスターじゃないですか!」 「ネオ・リバイスの効果は、エクシーズ素材を1つ取り除くことで……攻撃力を1000上げる」 「……そ、そんな」 「さらに、……僕のライフが500以下の時に相手モンスターを戦闘で破壊した場合、相手にその破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与えるんだが……これは関係ないな」 ネオ・リバイスの攻撃力は3000、千明の場には攻撃力1500のビースト、そして千明のライフは1500……。 この瞬間、デュエルの勝敗が決した。 「……バトル! ネオ・リバイスでリチュア・ビーストに攻撃!」 ―――ネオ・バイス・ストリーム!!――― 「きゃあああ!!」 千明:0(-1500) デュエルは叶の勝利で幕を閉じた。 勝者である叶は、敗者である千明のもとへ歩み寄り手を伸ばした。 その手を見て、千明は少し涙ぐむ。 「手を貸してくれるんですか? ありが、」 「違う……僕のリチュアを返してくれ」 「……あ、あぁ。はいはい……」 スッと千明はデッキと、そしてエントリーカードを叶に差し出す。叶は先にデッキを受け取り、その後でエントリーカードを受け取った。 そこに横で観戦していた勢櫻が走り寄ってくる。その表情は緊迫感に包まれていた。 「おい! 君、確か寺海千明って言ったな? ヤバいぞ!」 「えっ? 何がですか?」 「……? 勢櫻、どうしてそんなに焦ってるん、」 「もうすぐ朝の“6時”になっちまうんだよ! 寺海さんは今、エントリーカードを所有してないんだぞ!? 敗者にペナルティ無しとは書かれていたが、デッキもエントリーカードも持ってない人がこのゲームを続けられると思うか?」 「あっ」 「……」 広い砂漠に3人で固まった。 勢櫻の言うことには一理ある。勝者である叶には何かしらの報酬が与えられるだろうが、敗者である千明はどうなるのか。 開始直後に各自D・パッドへ送られた文書からわかるように、このゲームはただ1人の勝者を決定することで終了する。つまり、敗者の存在意義は限りなく薄い。そして“6時間毎の定時連絡”である意味。そりゃあ一秒一分毎に定時連絡なんてしてられないとか、そういう理由もあるだろう。だが、こうは考えられないだろうか。6時間とは……敗者に対する“猶予期間”である、と。 「……ゴメン、僕がいきなりデュエルを申し込んだから……」 「ちょっと! それじゃあ叶さんが勝つことが当たり前だったみたいに聞こえますよ!?」 「2人とも落ち着け! 先ずは……寺海さん。早く誰かとデュエルして、エントリーカードを手に入れないとマズいんじゃないか?」 「ええっ!? でも、この砂漠には私たち3人しか見あたりませんよ~。デッキは叶さんに渡しちゃったし、いったい誰とデュエルするっていうんですか!?」 「……一度デュエルした僕とはデュエルできないと思うから、……ここにいる人間で、寺海さんとデュエルできるのは……勢櫻しかいないんじゃ?」 「……え」 「勢櫻さんと、デュエル?」 叶はジト目で勢櫻を見つめ、勢櫻は戸惑いの表情で千明を見つめ、千明は救いを求めるように勢櫻を見つめた。 3人が砂漠には似つかない冷や汗を流したその時、島の地平線から一筋の光が差し込む。 あれは……朝日というやつではないだろうか? 「「「うわあああああ!!!」」」 孤島の日の出は6時の合図。 慌てる3人のD・パッドには既に、新たな“文書”が受信されていた……。 (e-8)6:00 【綾小路叶@symphonic】 〔時間軸〕大会以前 〔デッキ〕リチュア(綾小路叶@symphonic)、レベル3軸魚族(不知火敦也@championshipにっ!) 〔状態〕自分のデッキを取り戻し安心 〔思考・状況〕 1、千明のことが心配 2、砂漠から出たい 3、新谷兄妹と合流したい 〔備考〕 寺海千明のエントリーカードを受け取る。 【寺海千明@ASS】 〔時間軸〕vs勢櫻戦後 〔デッキ〕なし 〔状態〕デュエルに敗退し若干の焦り 〔思考・状況〕 1、デッキ、エントリーカードが欲しい 2、叶と仲良くなりたい 3、砂漠から出たい 〔備考〕 エントリーカードとデッキは叶へ。 【遊凪勢櫻@Xs】 〔時間軸〕霊峰到達後 〔デッキ〕正規召喚型三幻神(神孝司@symphonic) 〔状態〕若干の緊張 〔思考・状況〕 1、千明のことが心配 2、勝者、敗者の待遇を知りたい 3、セスナと合流する 〔備考〕 特になし。

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