愛か、友情か

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紅規が目にした光の正体――やはり別の参加者だった。 郷と弥琴以外の参加者は全て「敵」。彼女を助けるためにはこれしか方法はない。 頼れる光は月明かりと無数の星のみ。そんな暗闇の中、彼らの目があったのはそう遠くない距離だった。 獲物を見つけた狩人と、強烈な警戒心を示す獲物。決闘する前から何やら力の差を見せつけられたかのように見えた。 紅規は何も言わずにD・パッドを示した。対する相手――烏丸 宗護は若干の怯えた目をしながら立ち上がる。 「手を組む……なんてこと、ないですよね?」 「悪ぃな。見つけた相手は片っ端から倒すようにしてるんだ。」 お互いはまだ自分のデッキを良く知らない。勿論それは全ての参加者に言える事だろう。デッキを確認する余裕がなかった分、少なからず宗護が不利か。 「「デュエル!!」」 「俺の先攻です。ドロー! えーと、永続魔法カード“六武衆の結束”を発動。  手札から“真六武衆-カゲキ”を召喚。このカードの効果により、更に手札から“真六武衆-エニシ”を特殊召喚します!」 短時間でデッキを見た限りでは、【六武衆】は展開力に優れたカテゴリーらしい。相手のデッキは分からないが、とにかくモンスターを展開していれば1ターンで負ける事もない……だろう。 そんな簡単な考えだが、このデッキの回し方が分からない今の宗護にはこれしかないのだ。 「六武衆が2回召喚されたことで武士道カウンターが2つのった状態の“六武衆の結束”を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローします。カードを1枚セットして、ターン終了です。」 「俺のターン、ドロー。魔法カード“融合”を発動。手札の“サイバー・ドラゴン”2体を融合し、“サイバー・ツイン・ドラゴン”を融合召喚する!」 2つの龍を素材として現れたサイバー・ツイン・ドラゴン。月明かりの光を受け、銀色の鋼はより一層神々しい姿を見せている。 攻撃力2800から繰り出される連続攻撃は、生半可な壁モンスターでは到底防ぎきることなど不可能。“リミッター解除”や“パワー・ボンド”を使用されていないだけまだマシであろうか。 「更に手札から“シャイン・エンジェル”を召喚。  行くぞ! サイバー・ツインでエニシに攻撃!」 「と、通します……」 宗護LP4000→2900 「他に六武衆が居ない状態のカゲキは、攻撃力が200に戻る。  サイバー・ツイン・ドラゴン! カゲキに追撃!」 自分の攻撃宣言で、抵抗もせずに命令に従うサイバー・ツイン・ドラゴン。間違いなくそのモンスターは、自分が今使っているデッキだ。 それを感じれば感じるほど、今までずっと使っていたカエルへの罪悪感が募っていく。 ――自分に言い聞かせる。これは郷を助けるため。これは自分のデッキを取り返すため。そんな事を思ってもただむなしさが残るだけだとしても。 「……リ、リバースカード“リビングデッドの呼び声”を発動! 墓地のエニシを再生させます!」 「ならサイバー・ツインでエニシを攻撃する! その後シャイン・エンジェルでカゲキを攻撃!」 「ぐっ……うぁぁぁぁ!!」 宗護LP2900→1800→600 息もつかせぬ猛攻撃。つい先ほど配布されたデッキを、紅規は自分の手足のように操っている。 それも彼の天才的な頭脳による。驚異的な頭の回転が、それを可能にしているのだ。 若しくは、想い人を背負っているから……だろうか。 「待っててくれ……郷。俺が元の世界に……」 「……“郷”……?」 思わず声に出してしまった。小さな声とはいえど他にそれを遮るような音はなかったために、宗護の耳に何とか行き届いた。 「その人を助けるために決闘を……?」 皆でこのゲームから抜け出そうと考えているのならば、今の紅規のような悲しみに満ちた顔をする筈がない。 彼の表情を見て、宗護は彼の考えをあやふやだが感じ取った。 「「片っ端から参加者を倒す」って、その人を助けるためですか? もしかして、自分も犠牲になろうとしてるんですか……?」 徐々に紅規の表情は曇っていく。その後また沈黙があったが、恐らく図星なのだろう。 大切な人を助けるために、自分が犠牲になる―――― それは宗護には全く理解できない考えだった。キング・レオンを助けるために自分が犠牲になるなんて考えた事もないから。 「そんなの……駄目ですよ。皆で脱出する方法を――」 「俺だってそうしたい! だけど運営側がそんな方法を用意してると思うか?! あいつを助けるためにはこれしかねぇんだ!」 風の音すらなくなった瞬間に、紅規の大きな声が空間に響き渡った。郷のことは知らなくても、宗護には紅規の想いが言葉と共にそのまま伝わった。 だが共感はしない。してしまえば、それは自分とキング・レオンの絆を否定することになる。 郷という人も勿論助かってほしい。対戦相手……紅規も助かってほしい。このゲームの参加者全員が助かってほしい。 紅規の考えを変えてやらなければ、このゲームの終わりに待っているものは…… (考えろ……考えろ!! この手札で形勢を引っ繰り返す手段を……!!) 「俺のターン、ドロー! ……これは……  永続魔法“六武の門”を発動!」 六武衆の結束同様、武士道カウンターを使用して効果を発動できる永続魔法。召喚する度にカウンターが2つのりそれを利用できる効果は強力であり、大量展開を得意とする六武衆とのシナジーは計り知れない。 「手札からもう一体の“真六武衆-カゲキ”を召喚! 更にこのカードの効果で“六武衆の影武者”を特殊召喚します!」 「シンクロ……か」 宗護にとっては未知の境地である「シンクロ召喚」。それはようやく見えた一筋の光だった。 「レベル3の“真六武衆-カゲキ”に、レベル2の“六武衆の影武者”をチューニング!  シンクロ召喚! “真六武衆-シエン”!!」 紅の鎧を身に纏った、大きな体を持つ六武衆。しなやかながらも重量感溢れる太刀を片手で振り回すその姿を見れば、如何にそのモンスターの力が強大であるかはすぐにでも分かるだろう。 1ターンに1度魔法や罠を無効化にし、自身が破壊されても他の六武衆を身代わりに出来る。六武衆の切り札と言っていい存在だ。 「これで“六武の門”にたまった武士道カウンターは6つです。この内の4つを取り除き効果発動! デッキから“真六武衆-キザン”を手札に加えます。そして自身の効果でキザンを手札から特殊召喚!」 「くっ……耐えきれるか……?!」 「まだです! “六武の門”にまたカウンターが2つのった事で、残りの4つを取り除きもう一度効果を発動してデッキからキザンを手札に! そのまま特殊召喚します!」 シエンを守るように左右に鎮座する、漆黒の鎧を着た武士……“真六武衆-キザン”。 これで宗護のフィールドにはモンスターが3体……だが、全てサイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃力を下回っている。 しかし2人とも理解している。この後の展開を。 「“六武の門”にまた2つのカウンターが乗りました。この2つを取り除いて効果を発動。“真六武衆-シエン”の攻撃力を500ポイントアップさせます!」 真六武衆-シエン 攻2500→3000 「シエンでサイバー・ツインに、キザンでシャイン・エンジェルに攻撃!」 紅規 LP4000→3800→3100 「ぐぅっ……!! “シャイン・エンジェル”の効果で“サイバー・ヴァリー”を召喚する!」 天使の置き土産として現れ出た“サイバー・ヴァリー”は、猛威をふるったサイバー・ツイン・ドラゴンと比べるとやや貧相なフォルムをしてはいるが、効果はとても強力。 自身を除外すれば相手の攻撃を無効にし、さらに1枚ドローできる。 残ったキザンで攻撃すれば相手が起死回生のカードを引く可能性が増してしまう。 「ターン終了です。」 ライフは未だに勝ってはいるが、フィールドを見ればそれも霞む。 魔法や罠を1度無効にする効果を持つシエンが居る限り、思い通りのプレイングなど出来ない。 まさしく「形勢逆転」。あまり自身の持てない宗護にもようやく勝ちが見えてきたようだった。 ―――――こんな所で負ける訳にはいかない。 彼女を守るために、敵対する物は全て倒す。それは「最高」の策ではないかもしれないが、自分にとっては「最善」の策なのだ。 自分に見せてくれたあの笑顔……自分の人生を変えてくれたあの笑顔を失う事など、あってはならない。 大きく深呼吸をして、紅規はデッキに指を置いた。ただ勝利のみを信じて。 「俺のターン、ドロー……!!」 「手札から“サイバー・エルタニン”を特殊召喚する!!」 「なっ……?!」 「このカードは俺のフィールドと墓地に存在する光属性、機械族のモンスターを全て除外して特殊召喚する。  そしてコイツの攻撃力はその数×500になる。更に……」 その直後、宗護のフィールドに居た武士たちは忽ち音もなく消え去っていった。 破壊された時の独特のエフェクトがない。状況の分からぬ宗護の目に移るのは空になった自分フィールドと、生々しい機械音を奏でながら自分を睨みつける機械竜のみ。 「サイバー・エルタニンが召喚された時、このカード以外のフィールド上のモンスターを全て墓地へ送る。  ……これで終わりだ! サイバー・エルタニンでダイレクトアタック!!」 「―――ごめん、キング・レオン」 宗護 LP600→0 決闘が終わり、場は元の静かな草原に戻った。変わらず人工の月は辺りを照らし、人工の海は心地よい波の音を生み出す。 宗護はすぐに紅規の元へ近づいて、自分がたった今使っていた六武衆のデッキとエントリーカードを手渡した。 2つが紅規の元に渡る瞬間、宗護は口を開いた。 「お願いがあります」 「……?」 「俺を連れていってくれませんか?」 流石の紅規も、この言葉は予想外だった。 その後すぐにあらゆる思考が彼の頭を巡っていく。隙を見てデッキを奪い返そうとしているのか、はたまた自分の計画の邪魔をしようとしているのか。 しかし、どう見てもそんな事を企んでいるような眼はしていなかった。 「どう言う事だ?」 「敗者の戯言だと思って聞き流してもらっても構いません。ただ……俺も探している人がいるんです。  勿論貴方達には助かって貰いたいし、俺もここから何としても出るつもりです。  だから……皆でこのゲームから抜け出す方法を探しませんか……?」 自分を犠牲にしてでも相手を助けようとする、深い愛情。 可能性が低くても相手と共に助かろうとする、強い友情。 勿論どちらが良いとは言えない。だがどちらも簡単に出来ることではない。 紅規は目を瞑った。勿論その瞼の裏に、郷の顔が映った事は言うまでもない。 {場所:時間}H-5 : 0:40前後 【色崎 紅規@Gray foolishness】 [参戦時間軸]不明(少なくともバトロワ編前) [状態]宗護の申し出に対する動揺・カエルへの罪悪感 [デッキ]【サイバー流(ver.遊輔)@遊戯王Symphonic】【真六武衆@新羅 誠悟「遊戯王soul・link】 [思考・状況] 1:郷を救う。 2:弥琴と郷の捜索。 3:デッキの強化(乗り換えも視野) [備考] ※【白咲 弥琴@Gray foolishness】がイベントに参加していると思い込んでいます。 ※宗護の申し出を承諾したかどうかは後の作者様にお任せします。 【烏丸 宗護@ENERGY】 [参戦時間軸]斬岬 狂璽との決闘後 [状態]全員で脱出しようとする考えを強めている [デッキ]なし [思考・状況] 1:キング・レオンとの再会 2:ゲームからの脱出 [備考] [Twitter] [修正] [削除]

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