ソウルの奇妙な行動

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 ソウルは、市街地を歩いていた。  絶えず警戒を続け目を走らせ、耳を研ぎ澄ませる。  デュエルはする。しかしただするのではない。『別のデュエルを見てから』するつもりだった。  相手のデッキを知るに越したことはない。相性がいい相手だけを選んでデュエルするのが良策と判断していた。さらにいえば、敗者はデッキを失っているのでチームを組ませやすい。既に2人組があって、そこに参加できればベターだ、とソウルは考えていた。  はっきり言って彼は臆病だ。『万全を期している』と自分を納得させつつも、結局は失敗を恐れているに過ぎない。今もそうだった。  と、そのとき。  耳に飛び込んできたのは、ドーンという爆発音。 「デュエルか」  早速訪れた好機、逃す手はない。  すぐさまソウルは駆け出した。  ――なるほど。  建物の影から、ソウルはデュエルを観察していた。  状況を確認する。  『E・HERO』と『EM』がデュエル。勝者は『E・HERO』、デッキとエントリーカードが移動。  また観戦していた女性(汐音というらしい)と別の男が対峙。男の傍には水属性モンスターらしき少女。  『EM』使いと汐音はデュエル後の様子からチームと判断。  『E・HERO』使いはミッション達成が目的だったのかデュエル後去った。  さらに頭を巡らせる。  『E・HERO』。遊城十代先輩が使っていたカードだと、彼は記憶していた。『EM』の方は聞いたことがないものだったが、どうやらカウンターを中心に回すデッキのようだ。  水でできた少女の方は、ゲームのマスコットだと判断した。カードとの会話への憧れはソウルとて抱いていた。  ――――ソウルは精霊の存在を知らないし、見えない。しかしカードにかける思いは強く、そもそも本来、精霊と心を通わす素質は充分にある。その素質は邪な精霊のせいで潰されていたのだが…………それがいないこの世界においては、精霊と通じ合うことができるかもしれない――――  何はともあれ、ソウルは行動を起こした。 「待った」  声をかけ、建物の影から進み出る。その場にいた者たちが若干の驚きを見せてこちらを見る。はっきりいって知らない人間だらけの場所に出るのは緊張するし恥ずかしい。しかし今はそれをねじ伏せなければならない。持病(?)の神経性腹痛もこの世界なら大丈夫だとふんでいた。 「取り込み中失敬。時間はとらない、少し話させてください」  ソウルは汐音に目を向けた。 「あなたのチームに、俺も加えて頂けませんか」  唐突な言い草だとは理解していた。むしろそれが狙いだった。  話しかけてきた少年は、汐音の見たところ同い年かそれ以下に見えた。口調は丁寧だが、それがアニメとかにいるイヤミエリーとみたいな印象を感じた。 「あんたは……?」  警戒と動揺を見せつつ聞く。  汐音が今思っていたことは、一言で言えば『何こいつ』。見た目は外国人にしか見えないけど日本語をすらすらと話すし、D・パッドじゃない別の物をつけてるし、青い髪青い目青い服と全身で『青好きです』と語っているような見た目だし。  しかし口調は至って真面目ではっきりとしていた。 「俺はソウル・マウント。気がつけばこの『特別ステージ』に参加させられてました」 「参加者の1人って訳ね。なんであたしらと?」 「たしか日本には『三人寄れば文殊の知恵』ということわざがあります。そういうことです」 「なるほどね」  丁度、協力者を欲しいと思っていたところだった。何かと気になるところはあるが。 「まあ、仲間は多い方がいいか」 「感謝します」  話がまとまったところで、 「もういいか」  とオーシャンを従えている男が言った。 「俺としては、どちらとデュエルしても構わない」 〔私としては、汐音とはあんまりやりたくないな〕  男と水少女が言う。どうやら『脱出のためにデュエルを繰り返す』ことを選んだらしい。あまり長くは待ってくれそうにない。 「汐音さん、あなたはデュエルしたいのですか?」 「うーん……」  どうやら決めかねているらしい。ならば『時間を稼げばいい』。あらかじめいくつか作戦は考えてある(考えておかないと無理)。 「耳を」  ソウルは汐音の耳元に口を寄せ、早口で作戦を耳打ちした。汐音が驚きを浮かべる。 「それって!」 「いいから……ん?」  その時、ソウルは何かに気付いたように振り返り、男に背を向けた。しかし夜の市街地に特別変化はなかった。 「気のせいか」  そう言って再び汐音の方を向き今度は右手を差し出した。 「健闘を約束します」  この握手には意味がある。汐音が応じてくれなければ色々と困る。 「う、うん」  彼女は戸惑いながらも応じてくれた。その手をしっかりと握り、やや仰々しく手を離した。  そして水少女と男の方を向く。 「俺が相手する……」  そう言って静かにディスクのデッキ入れに手を重ね、眼を瞑る。はためには瞑想か何かに見えたはずだ。  眼を瞑ったまま、言った。 「カードの加護があらんことを」  相手への揺さぶりもこめた心にもない言葉。今はそれが大事だった。  ソウルが祈りらしきことをやっている間に、汐音は風威を小突き言った。 「ついて来て!」  そして風威の返事を待たず、駆け出した。 「え、おい!」  背後から掛けられた声も無視する。すぐに追ってくる足音も聞こえだした。それを確認してから、ソウルから言われたことを頭の中で復唱する。  ――――『右の通りにある扉が全開になっている家』……ね――――  ソウルは走る音が聞こえなくなるのを待ってから、『祈り』をやめ眼を開いた。 「行くぞ」  精一杯の威嚇を込めて睨み、ボタンを押してディスクを展開した。相手もD・パッドを構える。  そして同時に、叫んだ。 「デュエル!」  しかしその時。相手は異常に気付いたようだった。  D・パッドがデュエルモードになっていないのだろう。もちろんこちらのディスクもそうだった。  デッキが、ないのだから。 「チャオ」  ソウルはそれだけ言い残して、踵を返して走り出した。  汐音は風威と一緒に廃屋に駆け込み、扉を閉めた。月のほのかな明かりだけが闇を照らす、埃っぽい場所だ。 「汐音、説明してくれ。なんでいきなり逃げたんだよ」 「ソウルに言われたのよ。『逃げる方が安全だ』って」 「あの外人少年か。信じられるのか、あいつ」 「わからないわよ」  正直、自分でもなんでソウルの作戦に乗ったのかわからない。彼が言った作戦はこうだった。  『今からあなたにデッキを渡し、俺があの男にデュエルを申し込む。その隙に右の通りにある扉が全開になっている家へ』。  デッキがないのなら申し込まれてもデュエルができない。その理屈はわかる。だが1つしかないデッキをろくに知らない他人に渡すなど正気の沙汰とは思えなかった。だが彼は自信にも見える安定感で作戦を語り、実行した。ひょっとすると、その『自信』が精神を消耗していた汐音に必要なものだから、ソウルを信用してしまったのかもしれない。  あとは……デッキを渡されたとき、『彼は私を信用している』と少し思ってしまったことが理由かもしれない。 「……よっぽど精神弱ってるのかな」 「なんか言ったか?」 「いえ」  とそのとき、廃屋のドアが開きソウルが駆け込んできた。 「作戦成功、でいいですかね」  早口で言いつつ彼は扉を閉めた。  なんと言えばいいものやら、とりあえず心配事を聞いてみた。 「ちゃんと撒いてきた?」 「ええ。それよりも」  ソウルは右手を差し出した。  すぐに汐音はその意味を察し、自分の右手に持っていた彼のデッキをそこに置いた(このときD・パッドのタイマーが消滅しているのだが、闇の中の彼らが知る由もない)。 「確かに」  彼はそのデッキトップを確認してから、腕のD・パッドの代わりのものに納めた。 「さて」  ソウルは風威の方を向いた。 「挨拶する暇がありませんでしたね。俺はソウルです。あなたの名前は?」 「あ、ああ、風威だ」 「わかりました、風威さん。よろしく願います」 「ちょっと」  色々と説明不足なソウルに業を煮やし、汐音が話しかける。 「なんでしょう」 「聞かせて。こんな作戦、無謀だってわからないの? 私があんたのデッキを持ち逃げしたら、どうするつもりだったの?」  ソウルは即答した。 「あなたは『いい人間』だ、と思いました」  初対面時と同じ唐突な物言い。  流石に言葉足らずだと思ったのか、彼は言葉を続けた。 「俺は昔から人間が怖かったから、他人をよく見て生きてきました。カウンセリングのような真似ができるんです。風威さんがデュエルに負けた時のあなたの表情、『味方が負けて都合が悪い』と思っているものには見えませんでした」  ソウルはそう言って、笑った。 「改めて、よろしくお願いします」 「……ええ」  この若干おかしな少年に違和感を感じながらも、汐音はソウルを『仲間』と認めた。 {e-4、1:20} 【ソウル・M@DA】 [参戦時間軸]  『生徒達の章』、デッキ改造後 [状態]  精神疲労 [デッキ]  レッドアイズ(信凪@遊戯王e-Squire) [思考・状況] 1:汐音さんはこれからどうするんだろう 2:正直疲れた 3:レッドアイズに相性いいデッキを狙いたい [備考] ・しばらく自分からの派手な行動は避ける予定   {e-4―1日目 1:20} 【水巻汐音@E・G・O】 [時間軸]不明 [状態] 不死と対面した精神的疲労、錯乱、戸惑い [デッキ] 憑依装着ビート@桃源郷(Gray foolishness) [思考、状況] 1:とりあえず逃げたけど、オーシャンは近くにいるんだよね…… 2:風威は大丈夫かな 3:ソウルはどんなデッキなんだろう [備考] ・未だに遊大とデュエルするか決めかねてます {e-4―1日目 1:20} 【谷原風威@PERSONA】 [時間軸] NBC直前 [状態] 不死と対面した精神的疲労、敗退による戦意激減 [デッキ] 紅赤也により剥奪 [思考、状況] 1:赤也にリベンジすべく行動する 2:新たに戦う手段を見つける 3:ソウルは強いのか? [備考] ・初戦敗北によりデッキ及びエントリーカードを奪われました {e-4―1日目 1:20} 【滝山遊大@LIAR遊戯王SeasonⅣ】 [時間軸]不明 [状態]健康 [デッキ]A・O@水巻汐音(E・G・O) [思考・状況] 1:汐音を探すべきか考えている 2:自分のデッキがどこにいったか気になる 3:この世界から脱出する [備考] ・特になし

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