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 とても昔のことだ。紀元前1997年、メソポタミアではシュメール文明が没落している最中なもののナイル川ではツタンカーメンはまだ生まれてないし、古代ギリシア文明だって産声を上げたばかり。その頃の中国――後の呼び名は夏王朝――の小さな村で、僕は生まれた。なーんて事はない、家族構成だって父母祖父母と十数人の兄弟姉妹がいる普通の農民の四男であり、当時の子どもとしては何も変なこともなく育った。ここまでは。
 暦はこの時代中国にはない。だからだいたい大人になってきたかな、というぐらいのある日。あとで計算してみたら16歳の8月12日西暦で表せば紀元前1981年。家の手伝いとして、畑の手入れをしていた。当時は今ほど暑くなかったから別に倒れはしなかったが、やはり夏の日差しは辛い。少し体を冷やしに近くの川まで行こうと、父親にその旨を伝えて、鍬を置いて畑から出る。アスファルト舗装も何もないので地面は砂利だらけ。というか石と砂しかない。ガラス片も空き缶も風雨のせいで波打ってるエロ本もない。土地改良なんてものないから田んぼの形も自由そのもので、あぜ道は曲がりくねっている。
 とまあ何千年も前の何もない自慢をしているうちに、川についた。どこまでも青く澄んだ水がキラキラと輝きながら遙か地平線の先まで流れてゆくその川に手を入れ、輝く水を掬いあげた。それを飲み、体を冷やす。そして小さい丸い石の転がる川原に身を横たえ、しばしの休憩をする。流れる水音、風に揺れる草木の音、遠くに聞こえるキャッチボールの掛け声…

「え?」

 聞いたことのない、異質な声。
「おい今のしっかり取れって~」「ごめんごめん、次行こう、次!」「おっしゃまかせろー!」

今の自分にとっては聞き慣れた声であるが、この当時の自分にとっては「なにしてるんだろうか」という話である。野球なんて歴史にはまだ当分出てこない。異質な声の主を探しに、起き上がる。川の伏流水で適度に冷えた石を素足で踏みながら、声の大きくなる方へ向かってゆく。歩き続けて数分、茂みの向こうでその声が聞こえる。危険があるかもしれない、のっそりと足音を殺して茂みを抜けたその瞬間――――――――

飛来したボールが僕の脳天を直撃し、僕は灼けた草原に倒れ込んだ。

―続く―

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