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~一週間前~

汚れのないまっさらな白く塗られたレンガの壁が、照明に照らされ輝く。
その輝きが中央に輝く玉座を更に輝かせる。そう、ここは王宮
しかしその玉座に座るは服装こそ豪華なものの、暗く、とても陰のある表情をした老人
この老人こそがこの国の王なのだが、その姿に威厳等は感じられず、不安、絶望、そんな感情ばかりが感じられる

「そうか・・・駄目だったか・・・」

ため息と共に吐き出した小さな声。表情よりもその声は更に暗く、何もかも諦めたような、そんな声。
つい数日前、この国は唯一の「魔術師」を病で失った。この世界で言う魔術師とは、ただ魔法使いのことではなく、ゴーレムに魔力を流し、操縦するものを指す。
そしてこの国はその唯一の魔術師の圧倒的な力で近隣の国と対等を保っていた国。
その魔術師を失ったことを知られれば、他国に直ぐにでも滅ぼされてしまうだろう。

「やっぱり彼女の魔力じゃゴーレムを動かすには足りない・・・
 それでも、まだ希望はある。」

口を開いたのは僕、「ヒューズ・レインジ」 今、回想している張本人だ。
僕はこの国で鍛冶屋をやっている。鍛冶屋といっても刀や鎧を作るのではなく、作るのはゴーレムだが。

「それは本当か!? して、その希望とは何だ」

眼を大きく見開き、体を前に乗り出して王が叫ぶ。暗かった表情も先程と打って変わり表情から陰が幾分か消えた。
ついさっきまで生きることも、国のことも、全て諦めていたのに急に希望があるといわれては、こういう反応をするのも無理は無い。
しかしまだ完全に希望は持ててないのか、陰が幾分か消えたといってもまだ表情は少し暗い。

「少し前に作った、できるだけ少ない魔力で動かせるように作ったゴーレムがあります。
 実用段階には行きませんでしたが、あの機体なら・・・彼女の魔力でも動かせるかもしれない」

今日、ある女性がこの国を訪れた。名前は・・・確か「メル・アーヴェン」と言ったか
腰辺りまで伸びた美しい銀髪と引き締まった細い体。そして何度も修羅場を抜けてきたのが直ぐにわかる、鋭く、強い、覚悟のこもった目が特徴的だった。
目を強いというのはおかしいかも知れないが、とにかく僕は彼女の目を一目見たときにそう感じた。
そしてこの女性の容姿は、少しでも過去の戦場、ゴーレムのない戦場を知るものなら誰もが知っているはずの姿だった
<銀髪の斬殺魔>、<大剣豪>等、ゴーレムが現れるまでは圧倒的な剣の実力から様々な異名を着けられ、数々の戦場を渡り歩いたという伝説の兵士の姿
しかしその圧倒的な実力もゴーレムの前では意味を持てず、ましてや彼女は魔力など殆ど無い。ただの一般人として今は暮らしているはずだった
そんな彼女がなぜ、しかも<魔術師>として雇ってくれなんていうのか、僕は問いかけた
でも彼女は「理由は話したくない。しかし魔力は鍛えてきた。役に立つはずだ」としか答えなかった
まあ動機はなんであれ、魔術師を失ったこの国にとって魔術師として志願してくれたメルの存在はありがたかった
すぐさま機体を動かせるかテストしたのだが・・・駄目だった。鍛えてきたといってるだけあって、確かに魔力はあるのはあるのだが、少なすぎたのだ
そのことを王に報告しているのが今の状況だ。

「ならば直ぐにでも作業に取り掛かってくれ。この国の命運はお前達にかかっておるのだ・・・」



あれから一週間。なんとか魔術師を失ったことを他国に知られることなく順調に作業は進んでいる
まだ完成していないが、なんとか彼女でもゴーレムを動かすことは出来ている
低い魔力でゴーレムを動かす。ただそれだけに特化して他の全てが犠牲になっている機体なので、実戦に到底使える代物ではない。
だが、もう少しあればメルの実力もあって並程度のゴーレムとなら戦えるようにはなるだろう


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