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『創造石』 各地の能力者高校で発現した物質であり、原因は不明。 周囲の人間の精神状態や、能力によって性質を変える不思議な物体。 能力者高校で発見された事と能力及び精神力に影響される事から能力者特有の精神エネルギーが具現化した物であるとの説が濃厚だが、それも確かでは無い。 通常は白色透明。周囲の環境や作用により色が変色する。 高校各所で発見されて以来、エネルギー資源としても利用されている。 その性質から取り扱いが非常に難しく、能力に関連する可能性があるなら能力の扱いに長けている人物の多い施設が良いとの判断から高校各所の地下に原石は厳重に保管されていた。 しかし、エネルギー資源は比較的高額な資金になる為、高校内部に限らず数多くの者達がその石を求めて高校を襲撃。 高校地下も安全な保管場所とは言えなくなってしまったのである。 金に対する『欲望』 高校がエネルギー資源を独占しているという『嫉妬』 厳重に保管されていた、と言っても限界がある。 人間の『闇』に晒され続けた石は黒く変色してしまった。 黒く変色してしまった石がどのような効果を及ぼすのか。 資料の無い現状では予想も対策も難しい。 早急な解明が必要となる。 その為にも、まず自分の仕事を果たさねば。 ー能力者高校警備隊 とある隊員の手記より。ー 久々の休暇だった。 社内で俺が受け持っていたプロジェクトが一段落、上司からお褒めの言葉と一緒に一週間の休みを頂いた。 今までへばりついていた作業机から離れ、臭いの染み付いた少々硬い布団に寝転ぶ。 そういえば布団をゆっくりと干す時間すら無かったなぁ、と僅かに漂う汗の臭いから感じた。 視界に広がるのは真っ白な壁紙にところどころシミが付いた天井。 天気が悪く昼間から電灯を点けていた所為か、白い光が目に焼きついて痛い。 寝返りをうつと目の前には空になった酒の缶と、シワの付いたスーツ。 こうも忙しいと酒を飲まずにはいられない事もある。 親父が酒飲みだったにも関わらず、そこまで酒を飲まないのは不幸中の幸いだったろうか? 安月給にも関わらず酒飲みとあっては生活が成り立たなくなってしまう。 枕元に置いてあった携帯を開いて予定表を確認した。 つい昨日までギッチリと詰まっていた予定は、ここ一週の間だけぽっかりと穴が開いている。 そんな穴の中に一つだけポツンと書いてある赤文字が眼に入った。 丁度、明日の日付である。 「……あぁ。そう言えば高校行こうみたいな話になってたっけかな」 仕事で忙しい中ごめんね、とご丁寧に前置きを添えて真雄からメールが送られて来ていた。 久々に高校に顔を出しに行くから一緒に行かないか?とのお誘い。 正直に言ってしまうとあまり気が向かなかったのだが、今も関係が続いている数少ない友人からのお誘いを断る訳にも行かなかった。 仕事の予定が詰まっているならまだしも、休暇が貰える週間のど真ん中なのだ。 断る理由と言えば、自分の心情だけだった。 ふと、数年前の事を思い出す。 あの時、同級生に居た将来の社長に頼めば職ももっと良いモノに就けただろう。 本人もお前なら良いと言ってくれていた。それに甘えてもよかったのかもしれない。 今となっては過ぎた話だ。考えても仕方がないのだが、物思いに耽る時、どうしても頭を過ってしまう。 『高校の教師になりたい』 それが俺のかつての目標だった。 昔の俺を変えてくれた高校を内側から支えたい。 俺が変わった様に、数多くの人を変えてやりたい。 そんな思いがあった。 いつからだったろうか?そんな考えを失くしたのは。 大学に進学し、卒業したものの教員になる事を断念。 徐々に気力さえも失い、高校からの友人達との繋がりも断ち切れていった。 教師になる、と大口を叩いておきながら自らその道を諦めたのだ。 素直に応援してくれていた友人達を思うと、向けられる顔が無かった。 資格を取る事の厳しさと周囲と自分のギャップ。 コミュニケーション能力が非常に求められる職でもある。 第一印象が絡む都合もあるのか周囲は俗に言う美男美女が多かった。 それに引き換え自分はどうだろう。 自分からコミュニケーションを取るのは実は不得意。 腕っ節が強いだけではお話にならない。むしろ質が悪い。 かつての面子は優しかった。 ある程度気を使って接しても、顔と言うのは第一印象を決定する要素としては実は大きい。 人は時に残酷なモノでもある。 現実を知り、落胆したと言えば聞こえは良い。 ネガティブに考えれば、自分が甘えた結果とも取れる。 勝手に壁にぶつかって、勝手に砕けた。 今の自分をあえて表現するならコレが正しいのかもしれない。 棚の上の写真立てには、学校全体での集合写真が飾られていた。 大体真ん中辺りで笑う俺の周りに居るのは友人達。 癖こそあれど、どれも良い奴だった。 「皆、元気かな」 会いたいと思う事が無いと言ったら嘘になる。 ただ、やはり自分の中の変な取っ掛かりがそれを邪魔していた。 自分が挫折したとしても対応を変える様な面子じゃない。励ましてくれるかもしれない。 そう思う事すら甘えなのか。そう考える事すら現実逃避なのか。 自分の中で積み上げた石ころは何時しか巨大な壁になっていた。 どちらにしても高校に行くのは明日だ。 今日はもう寝てしまおう。 少々汚れた掛け布団を被り、俺は無理やり夢の世界へ旅立った。 そのまま放り投げた携帯が激しく震えている事にすら気付かずに。

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