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「……い、……さい…………おい、葛西!」 顔にかかる連続した軽い衝撃に葛西が目を覚ましたのは路地裏で吐いてから約三十分後だった 自分を呼ぶ声と顔の感覚に鬱陶しそうにうっすら目を開くと、痺れを切らした弾間の拳が腹に向けて振り下ろされる所だった 腹の痛みにしばらく悶え苦しんだ後、煙草を吸いながら弾間は尋ねた 「お前、路地裏で鞄抱えてゲロん中に突っ伏してたけどよ、  何があったんだ?」 「……お前に言われた所に行ったらな……」 葛西は全てを話した、鞄の事、『ジレッタ』の事、異様な雰囲気の施設の事 葛西自身は「夢でも見たんだろ」と否定して欲しかったが、体の震えと顔色、吐き気のためか弾間も神妙な顔になる 「…ここ最近、米軍が色々な実験を行っているらしい」 「実験?」 「能力者が出てきた当初はどこの国も利用方法などが判らず結局兵器に頼った  第三次大戦でアメ公どもが勝てたのも兵器を打ち破る能力者を配備したのもある  だが最近じゃ世界中で能力者が増えてきてる  そこでアメリカは能力者の能力も打ち破るようなモノの研究をしているんだとよ」 噂だがな、と小さく付け加える弾間に葛西は詰め寄った 「じゃああの『ジレッタ』も…?」 「可能性だらけだな、それよりもうそろそろ一時だぞ?  どうする?やるなら別に止めはしないが…」 流石の葛西もこれには悩んだ 下手に打ったら廃人になるかもしれない、死ぬかもしてない ただ立派な社会不適合者の葛西には最早この『ジレッタ』を打つしか食いぶちを稼げる仕事はなかった しばらく悩んだ挙げ句、葛西は首筋に注射器の針を差し、中の液体を全て注入した その瞬間、葛西は一瞬脳味噌が揺さぶられるような感覚に陥った 地面に崩れ落ち、起き上がろうと目線を上げた途端、葛西はビビると言うよりは驚いた 空は美しく淡いピンク色に薄く輝き、辺りには光るナニかが漂っていた それらを見ていく内に、葛西の心から恐怖や疑問といったものは消え失せ、代わりに恐ろしく愉しくなってきた かつて幻覚剤やドラッグに手を出したことはあるが、それを遥かに凌駕するような快感を葛西は味わっていた 身体中が溶けるかのような快感に浸りながら起き上がり、葛西はそのまま走り回ってみよう、と考えだした 理由なんてない、思い立つとほぼ同時に彼はひたすら駆け出した なんとなく身体中に力がみなぎってくるような気がした 葛西はふと立ち止まり、自身の頭程の大きさのモノを見つけた 何なのか近づいて見ると、それは葛西にとっては大嫌いな人物の顔だった 腹立たしさを感じ、右手を固く握り、顔を殴ろうと拳を放つと顔は思いの外あっさり砕けた 砕けた破片を勢いよく踏み潰すと、トマトを踏むかのようにあっさりと潰れ、細かな破片が飛び散った 破片を踏み潰して遊んでいると、突如として頭の中に直接語りかけるような声が響き渡った 耳を塞いでも防げない、諦めて耳を傾けてみるとどうやら何かのURLのようだ そこで一瞬意識は途切れ、葛西は現在へと引き戻された 「お前、いきなり走り出して…」 鞄を持って追いかけてきた弾間を向く、正確には彼の持っていた鞄に目がいく 葛西は素早く鞄を引ったくり、中から黒い携帯電話のような物を引っ張り出し、先程聴いたURLを入力した 画面と画面から流れる音を見聞きした途端、再び葛西の意識は途切れた それから更に数分後、右手のテーピングを終えた葛西は粉々に砕けた人の頭程の岩の側に腰掛けた 「つまり、とんでもない快感が味わえたと?」 「………まあ……そうなるね」 「訳が判らん…アレを打った時の記憶は無いのか?」 「いやーとんと」 「まるで意味が判らんぞ…  米軍がわざわざ麻薬を作るとは思えないしな…」 拭えぬ疑問を持ちながらも弾間は「仕事があるから」と帰ってしまった 夕食の後、川の水で顔を洗おうと覗き込んだ時に気付いたが、顔に少し自分でもよく判らないものが幾つかついていた 恐らく路地裏で吐き戻したものだろう、服にもシミが出来ていた また悪くなった気分を押さえ、葛西はゴミを寄せ集めて作った住居で眠りについた

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