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「……んで、なんの用? じーさん」 「お姉様、敬語を……」 「どうでもいいだろ。仮にも能力者だぞ? 私は」 「……」 二人がやって来たのは、村長の家。 部屋の壁は本棚で覆われており、たくさんの本が詰まっていた。 「……私がお前達を呼び出した理由が、分かるか?」 「はぁ? 何を言って……」 「『仮にも能力者』なのだろう? ミリアの方は読心術が使えるとも聞いた」 「……いや、あれはまだ練習中で……」 村長は口ごもるミリアに視線を向けると、すぐにそらした。 「まあ良い。今回、呼び出した理由はじゃな…… ***我が国が、隣国の挑発に乗り、戦争を開始したから なんじゃ」 「隣国と……戦争を!?」 「どこの国だよ!?」 いきなりの通達に驚き、動揺を隠せない様子の二人。 「国名は……『聖リーフシェルト帝国』」 聖リーフシェルト帝国。 近隣国の中では最も人口が多く、軍事力も絶大な国である。 独自の「シェルト教」という宗教が栄えており、信仰も盛んである。 そして、この宗教の特徴故戦争時には非常に残虐な行動が多く目につく。 虐殺を行ったり、村を丸焼きにしたり、拷問をしたり……。 「敗者には死を」 という考えを基準とした国である。 そんな国と、戦争を……。 考えただけで悪寒が走る。 「リーフシェルト……」 「よりによって……! 王は一体何を考えている!?」 そんな二人とは対称的に、村長は酷く落ち着いた様子である。 「そして、これはそんな国王様からの命令だ。__存在する全ての能力者を集め、軍隊を作れと、な」 能力者を筆頭とした、特殊な部隊を作る。 ……国王は、それをリーフシェルト帝国への対抗策としたのだった。 「ちょっと待てよ! そりゃあ、私は戦闘にもそれなりに慣れてるからまだいいさ。だけど、カルティエは!? コイツはまだ11歳を過ぎたばさりなんだぞ!?」 「……お姉様……」 冷静さを失い、村長に対してそう叫んだミリア。 怯えた様子でそれを見守るカルティエ。 「『全ての能力者を』というのが国王の命令。年齢は関係無いのだ」 「そんなの……っ! 私が許すと思うのか!?」 ボッ、と音を立てて、ミリアの左手に小さな青白い炎が現れた。 「お姉様、落ち着いて__!」 カルティエのその言葉で火を消した物の、ミリアが焦っているというは事誰が見ても理解出来た。 「それなら、カルティエに代わる新たな能力者でも生み出したらどうだね? 最も、そんな事が出来るとは思わないが」 「カルティエは生まれつき体が弱いんだぞ!? そんな……戦争なんて……」 ミリアの声が段々と小さくなってゆく。 ……と、次の瞬間。 ミリアが床に座り込んだ。 「お姉様!?」 「お願いだよ……カルティエだけは……」 ミリアの目からは涙が溢れ、床に少しずつ落ちていった。 「うむぅ……」 そんなミリアの様子を見て、村長は困ってしまった。 村長とて、感情が無い訳ではない。 孫だっているのだ。 同世代の少女の泣き顔には弱いのであろう。 「お姉様……私なら……」 『私なら大丈夫』。 カルティエはそう言おうと思ったが、自分の体が弱いことぐらいは知っているし、姉がそれをなによりも気にかけていることを分かっていた。 「……ふむ、仕方がない……。……ミリア」 「なんだよ……っ」 「お前の功績次第では、カルティエを戦争に出さないで済むかもしれぬぞ」 「本当か!? ……いや……本当ですか?」 「ああ」 ミリアの瞳から、輝きが少し……消えた。 「やってやるよ。相手を倒せばいいんだろ? カルティエが戦争に出ないで済むなら、私は……誰にだって立ち向かってやる。そいつを倒してやる」 「……お姉様……?」 カルティエは、ミリアの様子が少し変わってしまった事に驚きを隠せなかった。 「仕方あるまい……それで許可しよう」 ……この時。 ミリアの未来視の力は完全では無かった。 そう、完全では無かった……。 だからこそ、これから起きる事態を知らなかったのであろう。 いや__ ***知らない方が、良いのだ。
「……んで、なんの用? じーさん」 「お姉様、敬語を……」 「どうでもいいだろ。仮にも能力者だぞ? 私は」 「……」 二人がやって来たのは、村長の家。 部屋の壁は本棚で覆われており、たくさんの本が詰まっていた。 「……私がお前達を呼び出した理由が、分かるか?」 「はぁ? 何を言って……」 「『仮にも能力者』なのだろう? ミリアの方は読心術が使えるとも聞いた」 「……いや、あれはまだ練習中で……」 村長は口ごもるミリアに視線を向けると、すぐにそらした。 「まあ良い。今回、呼び出した理由はじゃな…… ***我が国が、隣国の挑発に乗り、戦争を開始したから なんじゃ」 「隣国と……戦争を!?」 「どこの国だよ!?」 いきなりの通達に驚き、動揺を隠せない様子の二人。 「国名は……『聖リーフシェルト帝国』」 聖リーフシェルト帝国。 近隣国の中では最も人口が多く、軍事力も絶大な国である。 独自の「シェルト教」という宗教が栄えており、信仰も盛んである。 そして、この宗教の特徴故戦争時には非常に残虐な行動が多く目につく。 虐殺を行ったり、村を丸焼きにしたり、拷問をしたり……。 「敗者には死を」 という考えを基準とした国である。 そんな国と、戦争を……。 考えただけで悪寒が走る。 「リーフシェルト……」 「よりによって……! 王は一体何を考えている!?」 そんな二人とは対称的に、村長は酷く落ち着いた様子である。 「そして、これはそんな国王様からの命令だ。__存在する全ての能力者を集め、軍隊を作れと、な」 能力者を筆頭とした、特殊な部隊を作る。 ……国王は、それをリーフシェルト帝国への対抗策としたのだった。 「ちょっと待てよ! そりゃあ、私は戦闘にもそれなりに慣れてるからまだいいさ。だけど、カルティエは!? コイツはまだ11歳を過ぎたばかりなんだぞ!?」 「……お姉様……」 冷静さを失い、村長に対してそう叫んだミリア。 怯えた様子でそれを見守るカルティエ。 「『全ての能力者を』というのが国王の命令。年齢は関係無いのだ」 「そんなの……っ! 私が許すと思うのか!?」 ボッ、と音を立てて、ミリアの左手に小さな青白い炎が現れた。 「お姉様、落ち着いて__!」 カルティエのその言葉で火を消した物の、ミリアが焦っているというは事誰が見ても理解出来た。 「それなら、カルティエに代わる新たな能力者でも生み出したらどうだね? 最も、そんな事が出来るとは思わないが」 「カルティエは生まれつき体が弱いんだぞ!? そんな……戦争なんて……」 ミリアの声が段々と小さくなってゆく。 ……と、次の瞬間。 ミリアが床に座り込んだ。 「お姉様!?」 「お願いだよ……カルティエだけは……」 ミリアの目からは涙が溢れ、床に少しずつ落ちていった。 「うむぅ……」 そんなミリアの様子を見て、村長は困ってしまった。 村長とて、感情が無い訳ではない。 孫だっているのだ。 同世代の少女の泣き顔には弱いのであろう。 「お姉様……私なら……」 『私なら大丈夫』。 カルティエはそう言おうと思ったが、自分の体が弱いことぐらいは知っているし、姉がそれをなによりも気にかけていることを分かっていた。 「……ふむ、仕方がない……。……ミリア」 「なんだよ……っ」 「お前の功績次第では、カルティエを戦争に出さないで済むかもしれぬぞ」 「本当か!? ……いや……本当ですか?」 「ああ」 ミリアの瞳から、輝きが少し……消えた。 「やってやるよ。相手を倒せばいいんだろ? カルティエが戦争に出ないで済むなら、私は……誰にだって立ち向かってやる。そいつを倒してやる」 「……お姉様……?」 カルティエは、ミリアの様子が少し変わってしまった事に驚きを隠せなかった。 「仕方あるまい……それで許可しよう」 ……この時。 ミリアの未来視の力は完全では無かった。 そう、完全では無かった……。 だからこそ、これから起きる事態を知らなかったのであろう。 いや__ ***知らなくて、良かったのだ。

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