※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「あたしは絶対認めない」 ◆nILUsYbTpY





 ①>究極の闇


 スドン、と音を立てて古びた家屋へと一人の少女がぶつかり、新たな残骸へと変えていく。
 殺し合いの場として選ばれた会場の一角。エリア【J-05】に位置する、何もかもが荒廃した街で、早くも一つの戦いが起こっていた。

「ッ――てぇ………」
 自身に覆い被さる瓦礫を押し退けながら、佐倉杏子は全身の痛みに悪態を吐いた。
 瓦礫の山に叩き込まれた体には無数の擦り傷が付き、砂埃が舞っている。

 槍を振り払い、砂埃を吹き飛ばせば、眼前には黒と金に彩られた異形の人型がある。
 その異形こそが佐倉杏子を家屋へと叩き込み、倒壊させた張本人だった。

「テメェいったい何なんだ! こんなくだらねぇ殺し合いに乗ったって言うのか!?」
「――――――――」
 杏子が声を荒げて問いかけるが、異形は何も答えない。

「チッ、やっぱだんまりか」
 この異形は最初からそうだった。

 この異形は、最初は普通の青年だった。
 ふらりと現れた彼に、杏子は初めて遭遇した人物だった事もあって話しかけた。
 だが彼は何も答えなかった。それどころか「変身」と呟くと同時に異形へと変わり、いきなり攻撃してきたのだ。

「何も言わねえってことは、つまり敵ってことでいいんだな」
「――――――――」
 やはり、異形と化した青年は何の反応も返さない。
 それを前に、杏子は目の前の異形を完全に敵だと判断した。

「死んだって恨むなよ。そっちが先に仕掛けてきたんだからな!」
 槍を前へと構え、眼前の敵へと駆け出す。
 彼がどのような理由で戦っているのであれ、訳も解らず殺されるつもりはない。


「―――オラァ!」

 渾身の力を籠めて槍を突き出す。
 弱い魔女なら、それだけで倒せそうな一撃を放つ。

「――――――――」
 敵はそれをあっさりと受け流し、お返しとばかりに拳を振りかぶる。
 その一撃を飛び退いて躱し、ついでとばかりに分銅鎖となった槍の柄で足を拘束する。
 だがそれは僅かな妨害にしかならず、一瞬で鎖が引き千切られる。

 その僅かな隙に槍を伸ばし、横殴りに振り抜く。
 それを敵は腕を上げて防ぐが、それと同時に先端を多節棍へと変化させて拘束する。
 同時に上空へと放り投げようと力を籠めるが、敵は一瞬早く拘束を破り、槍の柄を掴んで逆に杏子を上空へと投げ飛ばす。

「オオ―――!?」

 その筋力の前に、堪える間もなく空へと振り上げられる。
 敵はそのまま杏子を地面へと叩きつけようと槍を振り下ろすが、その前に手放して地面へと着地する。

「チィ……!」

 杏子舌打ちしながらも、新たに槍を作りだし敵と相対する。
 彼女は今の攻防で既にこの敵から逃げる決断を決めていた。
 今の自分が叶う相手ではないと完全に理解したのだ。
 だがどうにも逃げる隙が見つからなかった。

 この敵は、動き自体はどこか機械じみていて精彩を欠いてはいるが、それを補って余りあるパワーを有している。
 それはおそらく走力にも言える事で、であればただ逃げた所で追いつかれてしまうだろう。
 故に敵から逃れた後、どこかに身を隠すだけの余裕が必要なのだが、どうにもその余裕が作れないのだ。
 このままでは、一方的になぶり殺されるのが目に見えていた。

「はっ、だから何だってんだ。こんな場所で……こんな所で諦められるかよ!」
 決死の覚悟を持って敵へと突撃する。

 そう、こんな所で諦める事は出来ない。
 自分にはやらなければならない事があるのだから。
 敵に隙がないのであれば、無理矢理にでも作りだしてやる。

「ハァ――ッ!!」

 先程と同じように、先程以上の気迫を籠めて槍を突き出す。
 敵はそれを、やはり先ほどと同じように受け流そうとする。
 その直前に槍を旋回させ、多節棍に変化させ足に絡め、一息に転ばせる。
 そのまま体勢を立て直す間を与えずに、敵の身体へと槍を突き刺す。

 力は籠めども体重の乗っていない、明らかに威力不足の一撃。
 だが僅かな布石にでもなればと繰り出した一撃は、しかし。

「な――!」

 敵の無防備な胴に、切っ先しか突き刺さらなかった。

「――――――――」
 その僅かな驚愕の隙に敵は脚部の拘束を破り、同時に杏子へと足払いを掛ける。
 それを杏子はどうにか躱すが、その隙に立ちあがった敵が拳を振りかぶる。
 対する杏子は、その拳へと合わせる様に槍を突き出した。
 敵の力を利用し、その武器を破壊しようと考えたのだ。
 しかし。

「ゴッ―――!?」

 敵の拳は、杏子の槍をあっさりと粉砕し、その身体を打ち抜いた。
 そのあまりの威力に杏子の身体が宙を飛び、今にも倒れそうなビルへと叩き込まれる。

「、ガハッ……ゲホ……」
 叩き込まれたビルの中で、口から血を吐きながらも身体を起こす。
 どうやら内臓をやられたらしく、身体の中が異常に熱い。

 ――――想像以上、どころではない。
 敵の攻撃は、ともすれば話に聞くワルプルギスの夜を単騎で討ち倒せるのではと思えるほど苛烈だ。
 加えて自身の槍で傷一つ付けられないとあれば、戦う術などあるはずもなかった。

「………くそ、仕方ねぇ。試してみるか」
 自身の血で汚れる口を拭い、デイバックからある物を取り出す。
 それは長さ二メートルもする、血の様に紅い槍だった。

 ―――“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”

 投げれば三十の鏃となって降り注ぎ、突けば三十の棘となって破裂したというこの槍は、杏子に支給された支給品の一つだった。
 膨大な魔力を宿し、その真名と共に放てば必ず相手を貫くというこの槍であれば、あの敵を倒せるかもしれない。

 今まで杏子がこの槍を使わなかったのは、純粋に武器としての性能の差だ。
 同じ槍とはいえ、自在に変形する杏子の槍と、一つの形に固定されたこの魔槍とでは、戦い方に開きがある。
 故に杏子は、必殺の魔槍ではなく、手に馴染んだ己の槍を以って戦っていたのだ。

「ま、うだうだ言ってもしょうがねぇ」
 眼前には既に、異形の敵が迫っている。
 その感触を確かめるように魔槍を旋回させ、両手で構える。

 ―――絶対に生き残ってやる。

 その意志と決意を、己が担う魔槍に託して――――


「ハアァァアア――――!」

 一息で敵との距離を詰め、素早く小刻みに魔槍を突き出す。
 敵はその連続攻撃を見切って躱すが、時には両腕を使って捌く。

「オオオオオオオオ――――!!」

 魔槍の重さや間合いに慣れるにつれ、少しずつ繰り出す突きの速度を上げていく。
 少しずつ。少しずつ。限界へ向けて、体力の続く限り加速していく。
 それに合わせて敵も、魔槍を両腕で捌く回数が増えていく。

 そうして敵が魔槍による突きの半分を両腕で捌く様になった、その瞬間、

「オオオオオ、ラァ―――ッ!!!」

 唐突に突きから薙ぎ払いへと攻撃を切り替える。
 突きによる攻撃に慣れ始めていた敵は、唐突に切り替わった攻撃に対処できず、胸部に浅く斬り傷を作る。

 だが薙ぎ払いによって出来た隙に、敵が拳を振りかぶってきた。
 その一撃を咄嗟に魔槍を盾にして受け、その威力に両足が地面を滑る。
 彼女自身の槍なら砕けていた一撃を受け、折れなかった魔槍の強度に感嘆すると同時に―――

“―――通った! いける……この槍なら!!”

 敵の胸部に付いた浅い傷に、杏子は確かな確信を得る。
 傷自体はあっさりとに治癒されたが、今重要なのは敵が傷付いたという事。
 彼女自身の槍では掠り傷さえ付けられなかった敵の装甲が、この魔槍ならば破れるのだ。

「まだまだァ!」
 その事実に高揚する感情と共に、再び敵へと疾走する。

 高速で繰り出す突きに薙ぎ払いも加え、少しずつ魔槍の扱いに慣れていく。
 敵へと攻撃を繰り出すたびに、少しずつその精度を上げていく。
 だがしかし、攻撃に慣れ始めたのは敵も同じだった。

 不意に敵が、攻撃を突きから薙ぎ払いへと切り替えるその僅かな隙に、唐突に拳を振り抜いてきた。
 今までの様な力任せの一撃とは違う、素早く当てる事を目的とした軽い牽制(ジャブ)。
 だがそれにより、杏子の攻勢は容易く終わりを告げた。

「グッ!?」
 脇腹に当てられた一撃に僅かに呻く。
 しまった、と思うと同時に、即座に後方へと飛び退く。

「ッ――――!」

 だかその判断は一瞬遅く、敵は杏子の魔槍を掴む事で、彼女を一瞬引き止めた。
 そしてその一瞬の内に、更に魔槍を引き寄せながら回し蹴りを杏子に叩き込んだ。

「、ァ――――、ッ………」
 その瞬間杏子は、自らの肋骨が折れる音を聞いた。
 堪らず魔槍を手放し、再び空を飛んで瓦礫の山に激突する。

 油断した。否、油断する余裕などない。だが調子に乗っていた。
 敵に攻撃が通る事に喜び、些か攻め過ぎたのだ。
 敵の一撃の強さを失念していた。


 血反吐を吐きながら、瓦礫を支えに立ち上がる。
 血を拭って前を睨みつければ、敵が紅い魔槍を持って近づいてくる。

「ち……くしょ………」
 絶体絶命の状況に、力なく感情を呟く。

 唯一敵に有効な魔槍は、その敵の手中にある。
 故に敵から魔槍を取り返す必要があるのだが、その方法が思い浮かばない。
 最早杏子に、敵に対抗する術はなかった。

「は。だから何だってんだ。あたしは絶対あきらめねぇ………。絶対に、さやかを助けるんだ………!
 だから、こんなとこでちんたらやってる暇はねぇんだよ――――!!」


 佐倉杏子は、鹿目まどかと共に魔女となった美樹さやかの結界に突入した直後にここに連れて来られた。
 だから彼女は、さやかを救うためにもこんな所で立ち止まる訳にはいかなかった。

 杏子にとって美樹さやかは、昔の自分とも言える存在だった。
 父のためにキュゥべえと契約して、そのせいで杏子は全てを失った。
 だから自分勝手に生きると決め、その通りに生きて、そんな自分に嫌気がさしていた。
 故に、かつての自分に似た美樹さやかを救う事は、佐倉杏子に残された最後の希望だった。


「アァァァアアアア――――――ッッ!!!」

 自身の槍を作りだし駆け抜ける。
 勝算などない。……勝算さんなどいらない。
 ただ生き残るという、その意志だけを以って敵へ突撃する。

「――――――――」
 それを敵は、魔槍による一刺のみで応じた。

「――――あ」
 それで死ぬのだと、杏子は唐突に理解した。
 敵の刺突を避ける事が出来ない。それをさせないだけの疾さが、その一撃にあった。


 ………これで、終わるのか?
 こんな風に呆気なく終わっちまうものなのか?
 こんな所で。負け続けのままで。誰も救えないままで。

 ―――そんなのはイヤだ。
 頼むよ神様。さやかを助けたいんだ。
 せめて一度くらい、本物の奇跡を起こしてくれよ。


 死棘の槍が、杏子の身体を刺し穿つために疾走する。
 稲妻の如きその一撃を、杏子は避ける事も防ぐことも出来ない。
 故に杏子にその死の運命を逃れる術はなく――――

 ――――彼女が助かるとすれば、それは他の誰かの手によるものに他ならない。

 唐突にソレは飛来した。
 杏子へと槍を突きだす敵へと向けて、二つの刃が挟み込むように奇襲する。
 その内の一振りは魔槍を握る腕に突き刺さり、もう一振りが杏子へと迫る魔槍を弾く。

「――――!」
 その一瞬。生還への光明を、杏子は逃さなかった。

 剣が突き刺さり、傷を負った腕。
 剣に弾かれ、狙いのそれた魔槍。

 それらを前に杏子は、さらに敵へと前進し、敵の持つ魔槍を弾き飛ばした。
 そして自身の槍を鞭のようにしならせ、宙に弾かれた魔槍を手繰り寄せる。

 その間に敵は即座に杏子へと振り返り、傷を負っていない方の腕で一撃する。
 それを杏子は魔槍を盾にして受け、その威力を利用して後方へと飛び退く。
 だが地面へ着地すると同時に、それまでのダメージから膝を折った。

「大丈夫か?」

 そんな杏子を庇うように、赤銅色の髪をした青年が彼女の前に立ち、敵と相対した。
 その声は力強く、見上げたその背中は見かけよりも頼もしく見えた。


 ②>正義の味方


 魔槍を支えにして立ち上がり、青年の横に並び立つ。
 折れた肋が痛むが、いざとなれば痛覚を遮断してしまえばいい。

「無理はするなよ」
「大丈夫さ、まだやれる。他人に心配されるほど弱っちゃいないよ。
 それに、あたしら魔法少女はゾンビみたいなもんだ。身体の痛みなんて、その気になれば簡単になくせる」

 その事実がさやかを追い詰めた事を考えると、キュゥべえに対し怒りが湧く。
 だが同時に、その事実が知らされたから仲良くなれたのだと思い至った。
 その皮肉に、自嘲するように鼻で笑う。

「ふざけるな。お前の言う魔法少女が何かは解らないけど、痛みがないからって無茶はするな。
 それにそもそも、俺はお前みたいな女の子が戦うのは基本的に反対なんだからな」

 だがそんな杏子に、青年は腹を立てた様子で言い返した。
 杏子はそれを聞いてキョトンとした後、先程の自嘲を取り消すように笑った。

「ハッ、言ってくれるね。まぁ助けられたのは事実だし、礼は言っておく。
 あたしは佐倉杏子だ。アンタは?」
「俺は衛宮士郎だ。それに礼はいらない。
 俺は正義の味方を目指してるからな。困っている誰かを助けるのは当然だろ?」

 本当に当然のことの様に、衛宮士郎はそう言った。
 それを聞いた杏子は一瞬、頭が真っ白になった。

 正義の味方。
 見返りを求めず、誰かを助ける存在になりたいのだと、彼は言った。
 その横顔は、まるで何も知らない子供の様で。まるで、さやかや昔の自分の様で――――

 気が付けば、目の前の敵の事も、彼に助けられた事も忘れて怒鳴っていた。

「ハァ!? テメェふざけてんのか!? 遊んでんなら殺すぞ!」
「遊んでるつもりも、ふざけてるつもりもない。正義の味方は、俺の理想だ」

 だが士郎は至極真面目な顔でそう言い返してきた。
 その事に、どういう訳か更に怒りが湧き上がる。

「それをふざけてるって―――」
「話は後だ! 来るぞ!」
「チィッ! コイツ倒したら次はテメェだからな! 忘れんなよ!」

 杏子は士郎にそう告げ、異形の敵へと疾走する。

 すぐ近くまで接近していた敵は、杏子に合わせる様に拳を振りかぶる。
 その必殺の威力を秘めた一撃を躱し、必殺の意志を籠めて魔槍を放つ。

「、ハァ――ッ!」

 敵はその一撃を、左腕を盾にして防ぎ、右足で蹴り上げて反撃してくる。
 それを僅かに飛び退いて躱し、勢いよくその足元を薙ぎ払う。
 だが敵は、更に前へと出る事で振るわれた魔槍の勢いを殺し、右拳を再び振りかぶる。

「ッ―――!」

 魔槍を盾にしてその一撃を防ぐが、衝撃で手が痺れた。
 その隙を敵が突き、更に一撃しようと接近してくる。
 だがそこに衛宮士郎が割り込み、白と黒の双剣で敵の攻撃を防ぐ。
 その間にサイドへと移動し、魔槍を突き出す。
 敵はそれを後方へと後退して回避するが、躱しきれずに浅い傷を作る。
 更に士郎が即座に距離を詰め、敵へと切り掛かる。


 その衛宮士郎の剣技を見て、巧い、と感心した。
 彼は魔法少女ではなく、おそらくはただの人間だろう。
 だというのに彼は、自分が手古摺った敵の攻撃を捌ききっている。
 先程の攻防を見るに、攻めはともかく、守りに関してなら自分以上だ。
 彼の言った正義の味方になるという言葉も、あながち冗談ではない様に思えてきた。


「ハァ!」
 士郎が双剣を、身体を回転させて上段から振り下ろす。
 敵は左腕を盾にして防ぐが、腕には二条の切傷が出来る。
 腕を斬り落とすまでには至らないが、あの双剣も有効な武器らしい。

「――――――――」
 敵は盾にした左腕とは逆の、右腕で士郎へと拳を振りかぶる。
 双剣を振り下ろした士郎にそれを防ぐ術はない。
 だがその一撃は士郎へと届く前に、杏子の魔槍で打ち払われる。
 そして再び士郎が、今度は斬り上げる形で双剣を振り抜く。
 敵はこれを避けられずまともに受けるが、胸部の装甲に浅い傷しか付いていない。
 しかもそれらの傷は、瞬く間に治癒されていく。

「……厄介だな。浅い傷だとすぐに回復しやがる。
 やっぱこいつを使うしか寝ぇか」

 傷の治った敵へと魔槍を薙ぎ払い、距離を取りながらそう呟く。
 それに同じように後退していた士郎が、杏子の持つ魔槍を見て反応した。

「ゲイ・ボルク――ランサーの槍か」
「お前、コイツを知ってんのか?」
「ああ。因果を逆転させる必中の魔槍だろ。
 確かにその槍を使えば、あいつを倒せるかもしれないな。
 ………なら、俺がどうにか隙を作るから、その間にゲイ・ボルクを使ってくれ」
「はあ!? お前、バカか!? なんでそんな危ない橋を自分から渡ろうとするんだ、このバカ! それも正義の味方とやらの一環か!?」
「む。確かにアイツ相手だと危険だけど、他に方法はないだろ。
 それにそもそも、杏子は戦いながら真名を解放できる程、ゲイ・ボルクを使いこなせてないだろ」
「ぐ………」

 士郎の指摘に、杏子は思わず口籠る。
 本来の持ち主を知っている彼からすれば、杏子の魔槍の扱いはまだまだ拙く感じたのだろう。
 確かにこの戦いで大分慣れてきたとはいえ、この魔槍を使いこなせている訳でないのは自覚していた。
 ましてや真名解放などした事がない。勝手がわからないモノを、ギリギリの戦いの中で使うのは危険だ。

「チッ、仕方ねぇ。なら囮は任せた。だからって無茶すんじゃねーぞ!」
「わかってるさ。俺だってそう簡単に死ぬつもりはないからな!」

 そう言うと、士郎は敵へと駆け出し、斬りかかる。
 それに追従する様に杏子も走り、敵へと槍を突きだす。
 士郎を囮にすると言っても、それは杏子が攻撃しない事ではない。ただ単純に、ゲイ・ボルクを解放するための溜めを作るだけだ。

「――――――――」
 対する敵は、士郎の双剣を躱し、杏子の魔槍を受け流す。
 そして近場にいる士郎へと蹴りを放つ。

 士郎はそれを、双剣を交差して受け止める。
 そうして出来た敵の隙に杏子が再び魔槍を突きだし、地面に残る軸足を狙う。
 敵はそれを蹴り上げた足を振り下ろす事で払い、そのまま軸足を変えて杏子へと回し蹴りを放つ。
 対する杏子は槍が払われた時点で後退し、敵の一撃を躱すと同時に更なる刺突の助走距離を取る。

「タァ―――ッ!」

 そうして一瞬でトップスピードまで加速し、魔槍を勢い良く突きだす。
 敵はそれに対応する様に拳を構え、杏子へとカウンターの一撃を放つ。
 だが、杏子の魔槍が敵を貫くことも、敵の拳が杏子を捉える事もなかった。

 なぜなら魔槍が穿ったのは敵ではなく、その下の地面だったからだ。

 杏子は棒高跳びの様に地面から跳ね上がり、敵の頭上を軽々と越えて一気に距離を取る。
 そしてカウンターとして拳を振り切り、大きな隙の出来た敵へと士郎が突撃する。

「フッ―――!」

 最大の魔力を籠めて、陽剣干将を投擲する。
 放たれた黒い刃は、弧を描いて標的へと襲いかかる。
 敵はそれを右腕で打ち払うが、鉄塊をも打ち砕く一撃に鮮血を飛ばす。
 そこへさらに士郎自身が、陰剣莫邪で敵を薙ぎ払う。

「ハァ―――ッ!」

 間断なく放つ二撃目。渾身の力を籠めて振るわれた白い刃。
 だがそれは、敵の左腕に防がれ、受け止められる。
 刃は敵の左腕を切り裂くが、それだけだ。
 この程度の傷なら、敵はそう時間を置かずに治癒するだろう。

「――――――――」

 士郎の双剣は、片方は彼自身が投擲し、もう片方は今防がれた。
 今の士郎に、敵の攻撃を防ぐ術はない。その絶大な隙を叩こうと、敵が拳を振りかぶる。

 だがそこに、敵へと襲いかかるモノがあった。
 杏子ではない、敵から彼女は距離を取ったまま、魔力を滾らせている。
 助ける者の居ないこの場で、敵へと襲いかかったモノ。
 それは―――士郎が投擲し、敵に弾かれたはずの陽剣干将だった。

 ―――干将・莫邪。
 陰陽の理を持つこの双剣は、夫婦剣とも呼ばれる二振りだ。
 この双剣は、その強い絆によりお互いに引き合う性質を持つ。

 故に、衛宮士郎が莫邪をその手に持つ限り、干将もまた、彼の元へと戻ってくるのだ。


 完全に拳を振りかぶり、攻撃態勢となっていた敵に、その背後からの奇襲を防ぐ術はない。
 だが敵は、上体を大きく仰け反らせる事で、辛うじて唸りを上げて飛来する干将を回避した。
 その隙に士郎は己が手に戻ってきた干将を掴み取り、再び右手の莫邪で敵を薙ぎ払う。

 ………だか敵の戦闘能力は、士郎達の想像を更に超えていた。

「ッ――――!」
 グン、と、異常な速さで敵の上体が跳ね上がる。
 完全にバランスの崩れた状態から、士郎へと向けて一気に右腕を振り抜く。

 先ほどとは逆に、今度は士郎が回避できない。
 そして彼には、眼前の敵の様な異常な身体能力はない。
 故に士郎は敵の拳に打ちすえられるしかなく、しかし、

「―――士郎!」

 ―――その声と共に、敵の右腕が一瞬止まる。
 その腕には、多節棍となった杏子自身の槍が絡まっていた。

 だがその拘束は一瞬で引き千切られる。
 そしてその一瞬で、士郎は敵の一撃を左手の干将で辛うじて受け流した。
 それだけで左手が麻痺し、干将を手放してしまう。
 だが身体を回転させ、敵の一撃の威力も加え、残った莫邪を三度敵へと薙ぎ払う。

「なッ―――――」

 それでも負けた。
 振り抜いた莫邪は敵の左肘と左膝に力の限りに挟み込まれ、その圧倒的な破壊力に粉砕された。

 これで無手。
 干将は取り落とし、莫邪は破壊された。
 武器を持たない衛宮士郎に敵の攻撃を防ぐ術はなく、杏子の支援では敵を止める事は出来ない。

「――――――――」
 衛宮士郎に逃げる間を与えまいと、敵が崩れた体制のまま拳を振り抜く。

 敵の戦闘能力は驚異的だ。
 たとえバランスを崩し、体重の乗っていない一撃だろうと、普通の人間と同じ強度しか持たない衛宮士郎を殺すには余りある。
 そしてその必殺の一撃が、微塵の容赦もなく士郎へと振り抜かれる。

 ――――だがこの瞬間こそ、衛宮士郎の真価が問われる時だ。

「投影(トレース)―――」

 一瞬で自らの内へと埋没する。
 己が心象風景へと意識を飛ばす。
 一から作り出す時間はない。
 一から作り出す必要はない。

 求めた物(ツルギ)は、既にこの手の中に―――!

「―――完了(オン)―――!」

 防げないはずの敵の一撃を防ぐ。
 存在しないはずの刃を以って受け止める。
 衛宮士郎の手には取り落とし、砕かれたはずの干将・莫邪が握られていた。

「佐倉、今だ―――!」

 既に準備を整えていた杏子へと合図を送る。
 敵は無理な体勢で放った一撃により完全にバランスを崩している。
 今ならばいかなる攻撃も避ける事も、防ぐ事も出来ない。

「これで終りだ―――!」
 士郎の声に応え、杏子が魔槍を地面へと突き立てる。
 同時に敵の足元から巨大な槍が飛び出し、敵を空へと打ち上げる。

 だがこれで倒せるとは思っていない。
 杏子はゲイ・ボルクを一振りし、槍投げの形に構える。

「喰らいな! “突き穿つ(ゲイ)―――”」

 膨大な魔力が咆を上げる。
 周囲の大気(マナ)が凍りつく。
 因果を逆転させる呪いの魔槍が、その真名と共に、上空に打ち上げられた敵へと解き放たれる。

「“―――死翔の(ボル)”………ッ!!??」

 ――――直前。
 佐倉杏子は、己が死を理解した。
 なぜならば既に、敵から膨大なエネルギーの黒炎が放たれていたからだ。

「――――――――あ」

 それはもはや、死を受け入れる以前の問題だった。
 敵を討たんと見上げた空から降ってきた黒炎は、既に杏子の眼前へと迫っている。
 避けようと行動する以前に、避けようという思考まで届かない。
 故に佐倉杏子は茫然としたままそれを見つめ、


 ――――不意に、横合いから抱きしめられた。


「え………?」

 見れば、士郎が必死な顔で自分を抱え、その場から離れようと地面を蹴っていた。
 そしてその直後に起きた爆発の衝撃で、一瞬意識が飛んだ。


 ③>ディストレーション


 衛宮士郎がそれに気付いたのは、まったくの偶然だった。

 ギリギリの瀬戸際で敵に可能な限りの隙をこじ開け、杏子へと指示を飛ばした。
 そうして敵の最後を見届けようと空を見上げた時、敵のその行動に気付いたのだ。

 上空に打ち上げられた敵の両腕が、黒い炎を纏っている。
 それは急激にエネルギーを増幅させ、臨界点に達した、その時。
 今まさに魔槍を解き放たんとしていた、佐倉杏子へと放たれたのだ。

 それを認識するより早く、士郎は既に杏子へと向けて走り出していた。


 敵にそんな能力があるとは知らなかった、などとは言い訳にならない。
 ならばそもそも、その能力を使う隙を与えなければよかったのだ。

 つまりは杏子に助けられたあの一瞬。
 二度目の莫邪を薙ぎ払った時点で敵に隙を作れていれば、そのダメージにより能力を使う余裕はなかったかもしれないのだ。


 そんな後悔を置き去りに、士郎は杏子を庇うように抱きしめ、力の限りに地面を蹴った。
 ――――正義の味方として、迫る危機から彼女を救うために。

 そうして彼等は、地面に着弾した黒炎の爆発により吹き飛ばされた。



「いっ………ててて」

 一瞬の気絶から目を覚まし、痛む頭を押さえながら生きている事に安堵する。
 そして一体何があったのか、自分はなんで生きているのか。
 それを確かめようと身体を起こして、

 ドサリ、と、自分の上に覆い被さっていたモノが地面に落ちた。
 一体何がと思い目を向ければ、それは紛れもなく、衛宮士郎本人だった。

 だがその身体の半分近くが、真っ赤に焼け爛れている。
 生きてはいるが、その呼吸は浅く、今にも途絶えそうだった。

 ――――これは佐倉杏子には知り得ない事だが、衛宮士郎がその程度の重傷で済んだのは、彼の持っていた干将・莫邪の恩恵だった。
 干将・莫邪には、互いに引き寄せ合う特性の他に、揃えて装備することにより対魔術・対物理防御が向上する効果がある。
 それにより敵の黒炎による爆発のダメージは、衛宮士郎が生き残れる程度に緩和されたのだ。


「…………おい、……士郎?」

 重傷を負い、地面に倒れ伏す士郎を見て、杏子は何があったのかを理解した。
 あの瞬間自分は、衛宮士郎に助けられたのだ。
 彼が、その身を盾にする事によって。

「……おい、起きろ! 起きろよ士郎!
 テメェふざけんなよ! 起きろって言ってんだ!!」
 士郎の身体を揺さぶり、必死に声を掛ける。
 それに反応してか、士郎が僅かに目を開けた。

「…………ぁ、よか……た。
 ……無事……みたい……だ……な…………」

 だが士郎はそう言うと、再び目を閉じて気絶した。

「は? なんだよ……それ」

 頭が真っ白になった。
 湧きあがる怒りで前が見えない。

 ――――コイツは今、なんて言った?

 命がある事に喜ぶでもなく、死に損ねた事に嘆くでもない。
 コイツは今、死に掛けの自分を置き去りに、あたしの無事を見て安心しやがった。

「………何ふざけたこと言ってんだよ。あたしは目を覚ませって言ってんだ。
 あたしの声が聞こえねぇのか! 答えろよ! 死に掛けてんじゃねぇよ、士郎ッ!!」

 ――――ふざけるな。
 なんでこんな事をした。
 どうしてあたしを庇った。
 一体誰がそんな事を頼んだ。

 ふざけるなバカヤロウ。
 そんなんで助けられても、嬉しくもなんともないんだよ。


「――――――――」

 敵が、まだ戦えるあたしを今度こそ殺そうと歩いてくる。
 そこには誰かを殺した後悔も、歓喜の感情も、何らかの使命感さえも感じられない。
 憎しみも喜びもない、魔女とも魔法少女とも違う異質な存在。

「…………どけよ」
 瀕死の士郎を背負い、敵に向かって告げる。
 それはどこまでも冷淡で、冷徹な命令だった。
「――――――――」
 だが敵は、杏子の声など聞こえてないかのように歩みを進める。

 ―――瞬間。
 佐倉杏子の感情が爆発した。

「そこをどけぇぇぇええええ――――――ッッッ!!!!」

 直後、敵の周囲に幾つもの巨大な槍と、佐倉杏子が現れた。
 幾人にも分身した杏子は、それぞれが巨大な槍を従えて敵へと突撃する。
 これにはさすがの敵も対応し切れず、身を守る事しか出来なかった。

 杏子達の一撃により辺りには粉塵が舞い、それが晴れた時にはもう彼女の姿はなかった。


『――――どうやら、佐倉杏子は上手く逃げたようだな』

 異形の怪人を一人残した廃墟の街に、その声が響き渡った。
 その声の主は瓦礫の影から現れると、異形の怪物の隣へと並んだ。

『しかし、まさかあの娘があの魔法を使うとはな。
 過去のトラウマから、無意識に封印していた筈だが……。
 既にトラウマを克服していたのか、それとも何か別の要因があったのか』

 その白い影は、己が考察を声に出して整理する。
 どれが役に立つ情報で、どれが無価値な情報なのかを。
 だがその重苦しい声には、どこか感情が感じられなかった。

『まぁいずれにしても、佐倉杏子程度なら、彼がいれば障害にはなり得ぬな。
 仮面ライダークウガ・ライジングアルティメットフォーム。まさかこれほどの力を持っていようとは。
 さすがは究極を超える闇と呼ばれるだけの事はある。私の想像を遥かに超えていたよ』

 ただ黙し、ジッと立ち尽くしていた異形の怪人は杏子の最後の攻撃で受けた傷が言えると同時に、その変身を解いた。
 そうして現れたのは一人の青年。彼は意思を感じさせぬ貌で、やはりただ立ち尽くしている。

『この殺し合いを主催した人間達の言う事が真実かは判らぬが、これならば試してみる価値はありそうだ。
 優勝すれば、いかなる願いでも叶うというその報酬。それはエントロピーを凌駕しうるモノなのかどうかをな』

 白い影――キュゥべえは、人間に戻った青年の肩に飛び乗る。
 青年はその事を意に介さず、ただジッと立っている。

『それでは行くとしようか、小野寺ユウスケよ。この宇宙を救いにな』

 インキュベーターとも呼ばれるソレは、自らの首に掛けた紫紺色の石に念を送る。
 それに従い、小野寺ユウスケは次なる目的地へと歩き出した。


【J-05 廃墟の街/1日目・深夜】

【キュゥべえ@キュゥべえのCVが若本だったら】
[状態]:健康
[装備]:地の石@仮面ライダーディケイド
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:小野寺ユウスケを利用して優勝し、宇宙の熱的死を防ぐ。
1:次の目的地に向かい、見つけた参加者を殺す。
2:戦闘の際は、姿を隠して様子を見る。
3:もし見つかった場合は、状況に応じて対応する。
[備考]
※次にどこに向かうかは、後の書き手にお任せします。

【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
[状態]:疲労(小)、地の石で操られている
[装備]:アダマム
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品×1~5(ユウスケ+キュゥべえ)
[思考・状況]
基本思考:――――――――
[備考]
※地の石の影響で、ライジングアルティメットフォームに変身可能となりました。

【地の石@仮面ライダーディケイド】
キュゥべえに支給。
門矢士の妹の門矢小夜が持っていた首飾り型の宝石。
仮面ライダークウガをライジングアルティメットフォームへと強化し、操る事が出来る。


 ④>自分勝手な生き方


 敵が追跡して来ていない事を確認し、浜辺に建てられた海の家へと押し入る。

 先程は殺し合いの事やさやかの事、士郎の事で溜まっていた鬱憤が爆発し、激情に任せて魔法を使ったらなんとかなった。
 だが次も上手くいくとは限らない。むしろ行かない可能性の方が高いだろう。
 ならば敵に追いつかれる訳にはいかず、周囲の警戒は怠れない。
 ―――けど、それよりも先にするべき事がある。


 手近なテーブルに士郎を寝かせる。
 士郎の呼吸は浅く、全く予断を許さない状況だ。
 なにしろ体の半分近くに重度の火傷を負っているのだ。
 このままでは脱水症状などの合併症状を起こし、命の機器に晒されてしまう。

 今の状況ではまともな治療は行えない。
 マミやさやかの様な、癒しの祈りを願った魔法少女ならば彼を治癒出来たかも知れない。
 しかしそうでない杏子には、そこまで強力な癒しの魔法は使えない。

 ――――だが一つだけ、杏子には士郎を救う手立てがあった。


「士郎、起きろ! 目を覚ませって!」
 士郎の頬を叩き、気付けを促すが、僅かに呻くだけで目を覚ます様子はない。
 杏子はそれでも諦めず、士郎へと声を掛けながらデイバックからある物を取り出す。

「これを食え、士郎! これを食えば、どんな傷も治るんだ!」
 取り出した小さな巾着の中から、一粒の豆取り出し、士郎の唇に押し付ける。

 それは仙豆と呼ばれる、そら豆に似た形状の豆だった。
 仙豆は一粒食べれば軽く十日は飢えを凌げるほどの、極めて高い栄養価を持つ豆だ。
 だが仙豆の真価は、その非常に高い回復作用にある。
 病気などの内科的なものを除けば、どれほどの外傷でもたちどころに回復させてしまうのだ。


「士郎、食えって! 死ぬつもりはないんじゃなかったのか!?」
 仙豆を士郎の唇に押し付け、必死に食べるように促すが、反応はない。
 最早目を覚ますだけの体力さえ残っていないのだ。

 そうしている内にも、士郎の命は刻一刻となくなっていく。
 そんな今にも消えそうな彼の命の日を前に、杏子は覚悟を決めた。

「ちっ、うだうだ言ってる暇はねぇか………」
 デイバックから水の入ったペットボトルを取り出し、仙豆を口に放り込む。
 そのままペットボトルを開け、水もある程度の量を口に含む。

 そうして杏子は、衛宮士郎の唇に自らの唇を重ね、水ごと仙豆を彼へと流しこんだ。

「っ―――ゲホッ……、ゴホッ………」

 それにより士郎が咳き込むが、仙豆を吐きだす様子はない。
 どうやらちゃんと飲み込んでくれたらしい。

 ―――そしてそこからが劇的だった。
 士郎の身体の焼け爛れた皮膚が、目に見えて回復していったのだ。

「効果覿面……だな」

 その様子に杏子は、唇を拭いながら一安心する。
 すると途端に、戦いの疲れがどっと押し寄せてきた。
 多少ふらつきながらも椅子に座り、自分の身体も修復する。

 自分もあの異形の怪人との戦いで結構なダメージを受けた。
 しかしグリーフシードのない今、魔力の消耗は可能な限り抑えたい。
 故に修復するのは、骨や内臓といった、戦闘に支障の出る部分に限定する。


 少しずつ身体を修復しながら士郎の様子を診る。
 すでに彼の呼吸は安定し、血色も良くなってきている。
 火傷が治りきった訳ではないが、命に別状はなくなった。
 残った火傷も、彼が目を覚ます頃には回復しているだろう。

「………おまえ、ほんと何考えてんだよ」
 先程の士郎の行動を想い、責める様に呟く。

 あの時士郎は、何の躊躇いもなく黒炎から杏子を庇った。
 あの黒炎を食らえば危険だって事は、一目見れば理解できた筈なのに、だ。

「あれか? 正義の味方ってのは、知り合ったばかりの他人のために自分の命を投げ出すような奴なのか?
 はっ、ふざけんな! それで助けられたって、助かった方は喜ぶことなんてできねぇっつうの。
 そんな正義の味方なんて、あたしは絶対認めない」

 士郎の行動は、考えれば考えるほど腹立たしくなってくる。
 自棄になっていたわけでもないのに、簡単に命を投げ出した事が頭に来る。
 しかも自分が死にそうだって時に、他人を心配する様な根性も気にくわない。
 そんな簡単に自分を蔑にするような奴に、あたしは助けて欲しくなんかない。

「………よし、決めた。テメェは絶対死なせねぇ。ふんじばってでも生き残らせてやる。
 そんでもって、さやかだって絶対に助けてみせる。何一つ譲ってやらねぇ」

 これは意地だ。
 助けると決めた奴が手の届くところにいる限り、絶対に死なせたりしない。
 そいつがどんな文句を言おうが聞く耳なんか持ってやらねぇ。

 それが今のあたしの、あたしなりの自分勝手な生き様だ。

「そうと決まれば、まずはメシだ!」
 勢いよく椅子から立ち上がる。
 ここが海の家なら、かき氷とかの材料があるだろう。
 そう期待を籠めて厨房の冷蔵庫へと向かう。

 ―――その途中で、なんとなく自分の唇をなぞりながら。


【I-04 海の家れもん/1日目・深夜】

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(中)、ソウルジェムの穢れ(中)
[装備]:ゲイ・ボルク@Fate/stay night、ソウルジェム(杏子)@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]: 基本支給品、ランダム支給品×0~1
[思考・状況]
基本思考:死ぬつもりはないし、あのバカ(衛宮士郎)も絶対死なせない。
0:とりあえず冷蔵庫を漁る。かき氷が食べたい。
1:士郎が起きたら情報交換。けどその前に説教。
2:周囲を警戒する。敵(小野寺ユウスケ)が来たら速攻で逃げる。
3:もしも知り合いがいれば、彼女達を探す。
4:さやかの事が心配………。
5:お菓子が欲しい。なるべく大量に。
[備考]
※参戦時期は、まどかと一緒に人魚の魔女の結界に突入した直後です。

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:火傷(中度:回復中)、気絶
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本思考:殺し合いを止めて、皆を助ける。
0:――――――――
1:杏子を助けられて良かった。
2:殺し合いを止める手段を探す。
[備考]
※参戦時期は、アーチャーとの決闘後です。

【ゲイ・ボルク@Fate/stay night】
佐倉杏子に支給。
第五次聖杯戦争におけるランサーの宝具。
因果を逆転させ、必ず対象へと命中させる能力を持つ。
真名解放は下記の二通りがある。
1.“刺し穿つ死棘の槍”
“心臓を貫いた”という結果を先に作り、その原因・過程を後から発生させる。
それ故に不可避であり、大概の防御も無意味。この一撃を回避するには非常に高い幸運が必要となる。
2.“突き穿つ死翔の槍”
ゲイ・ボルク本来の使用法。
対象となる相手の周囲を含めて、絨毯爆撃のごとく吹き飛ばす。
“相手の心臓を必ず貫く”という効果はないが、やはり不可避で、威力もこちらが上。

【仙豆@ドラゴンボールZ、】
佐倉杏子に一粒支給。
高い栄養価を持ち、一粒食べればどんな大怪我でも即座に回復させる。
ただし、制限により回復力・回復速度は低下している。




sm07:優しい魔王 時系列順 sm09:ズガンを……強いられているんだ!(集中線)
sm07:優しい魔王 投下順 sm09:ズガンを……強いられているんだ!(集中線)
衛宮士郎 sm35:仙豆だ! 食う!
小野寺ユウスケ sm64:ニコロワγのクウガが強すぎるやばい
佐倉杏子 sm35:仙豆だ! 食う!
キュゥべえ sm64:ニコロワγのクウガが強すぎるやばい




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー