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「いったい何が始まるんです?」(2012/06/15 (金) 20:40:13) の最新版変更点
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*いったい何が始まるんです? ◆w3bZRgegM2
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「動くな。何もしない。荷物を下ろせ、そして手をあげろ」
「……」
「いいから俺の言うとおりにしろ。荷物を下ろすんだ」
肩まで伸ばした金髪に微妙なイケメン顔が特徴の青年、イーノックは夜の砂浜をあてどなく歩いていた。
そこでいきなり背後から肩を掴まれ、ドスの利いた野太い声で荷物を下ろせと言われた。
この声は聞き覚えがある。
最初の部屋でディアズと名乗る男を瞬殺した筋肉モリモリのマッチョマンだ。
だが反撃はそこまで、娘を人質にとられて彼は意識を失った。
そしてイーノックも同様だ。
「巻き込んですまないと思っている。だがアンタには何もしない、俺を信じろ」
メイトリックスと名乗る男の言うとおりに、イーノックはゆっくりと砂浜に自分の荷物を下ろす。
とたんに背後から伸びた太い腕がそれを奪い去った。
「ちょっと調べさせてもらう……拳銃か。ないよりはいいか、貰うぞ」
どうやら目的は武器のようだった。
一通り調べ終わったのか、彼はイーノックの荷物を元に戻して地面に置く。
「見ていたかもしれんが、娘が攫われた。
俺たちに殺し合いをさせる気だろうが、どちらにしろ連中に約束を守る気はない。
馬鹿正直に殺しあっても生き残ったほうを殺すつもりだろう。
だから何とかして奴らを出し抜き、娘を助け出さなくちゃならない。
俺にとって娘は……ジェニーは……全てなんだ」
メイトリックスは最後の言葉を振り絞るように呟き、顔を歪めた。
娘のことを想い、そして悪漢どもの手に落ちたことを嘆いているのだろう。
ディアズという男を躊躇い無く瞬殺したりもしたが、おそらく悪い人間ではない――イーノックはそう判断した。
そうでなければイーノックを殺して荷物を奪っていただろうからだ。
結論を出し、スッとメイトリックスの眼前に右手を差し出す。
「なんだ……握手?」
メイトリックスの言葉にイーノックは頷いた。
「協力してくれるのか? だが危険だぞ。
身のこなしと体つきを見れば、素人でないのは分かるが……」
殺し合い――危険なのはどこも同じだろう。
ならば自らの意思で選択し、進んでいく。
今はここにいない友人もそう言うはずだ。
「大丈夫だ、問題ない」
イーノックは微笑み、穏やかな声で、だが力強く、言った。
パチンッ!
.
「――そんな装備で大丈夫か?」
その時だった。
指を弾く音が砂浜に響いた。
イーノックは声のした方向に振り向く。
メイトリックスも驚きの表情で同じ方向を凝視していた。
「いつの間に……!?」
イーノックから取り上げたリボルバー銃を構えて警戒態勢を取るメイトリックス。
撃鉄の金属音が、静かな砂浜にやたら大きく響いた。
だがあちらも銃を向けられていることは分かっているだろうに、落ち着いた足取りを保ったままでゆっくりと近づいてくる。
パチンッ!
「ろっとぉ。よし、落ち着いてくれ。まずは話をしよう――」
黒髪、黒シャツに黒のズボン。
瞳だけが紅く輝く黒ずくめの男は、軽快に指を鳴らしながらこう言った。
「ルシフェル――」
「やあ、イーノック。三十六万……いや、一万四千年ぶりか。それとも昨日の話だったかな?」
.
□
夜の砂浜を歩きながら、彼らは自分たちが巻き込まれたこの殺し合いについて話し合うことにした。
イーノックは基本的にあまり喋らないたちだ。
メイトリックスがもう一度自分の事情を説明、そしてイーノックの友人として紹介されたルシフェルに協力を申し出た。
一通りのことを聞き終えてルシフェルはゆっくりと頷いた。
そのまま俯き、しばらく考えるような仕草で砂浜に歩を進める。
穏やかな波の音、三人の砂を踏む音が交じり合う。
いつの間にか不思議な雰囲気が三人を包んでいた。
そしてふと、ルシフェルが顔を上げる。
「……よし、質問してもいいか」
「ああ、何か聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてくれ」
答えたメイトリクスを一瞥してから、ルシフェルはゆっくりと頷き、さらに言葉を続けた。
「メイトリックス。君はこのバトルロワイアルを開催したのが本当に彼らだと思うのか」
「……わからんな、どういう意味だ」
「元コマンドーの裏切り者や反政府組織のボス如きでは無理だ。
……人間程度では僕らを殺し合いに巻き込むなんてことはできない」
イーノックはルシフェルの言葉の意味に気付いた。
彼がその気になれば、首に仕込まれた爆弾を外すことなど容易いはずだ。
彼は大天使。
彼は時を自在に操る者。
人間のはるか上位に位置する存在なのだ。
「……すまんが、俺にも分かるように言ってくれないか」
「いいだろう、説明しよう」
パチンッ!
そういってルシフェルはまた指を鳴らした。
するといきなり彼の姿が消えた。
「!?」
メイトリックスは驚くが――ルシフェルがその背後にいきなり現れた。
「ンッフフフ。百聞は一見に如かず……だったかな? 私は人間じゃあない。この能力が証拠だ」
「トリック……じゃない、のか……?」
「違うね。その証拠にほら、首輪だって」
パチンッ!
もう一度、ルシフェルが指を鳴らした。
するとたったいま指を鳴らしたその右手に、外れた首輪が握られているではないか。
そしてその首には何もない。
「おい待て! どういうことだ!?」
パチンッ!
ルシフェルは答えず、さらにもう一度指を鳴らす。
すると今度は、その手にあった首輪が元通りになって首に装着されていた。
メイトリックス、そしてイーノックは無言で目を見開く。
もはや言葉すらない。
絶句というやつだ。
「さて、私は見ての通り首輪を簡単に取り外しできるわけなんだが……まあ、これじゃあ意味が無いよな」
殺し合いを強制するための道具なのだから、簡単に外せるようでは意味が無い。
それはイーノックも分かるのだが、眼前の信じがたい光景のせいでルシフェルの言葉が頭に入ってこない。
「君たち参加者に殺し合いをさせるためには、首輪を外すわけにはいかないんだよ」
「参加者……だと」
「そうさ、メイトリックスにイーノック。君たちはこのバトルロワイアルの参加者だ。
そして私も参加者の一人さ。そしてこのイベントをスムーズに進めるために、首輪を外すわけにはいかない」
「ふざけるな、進める必要なんかあるわけないだろ!」
メイトリックスは激高し、そしてルシフェルの言葉を否定する。
だがその傍らで、イーノックはある恐ろしい可能性に思い至っていた。
「主催者……」
思わず呟いた一言が震えていた。
「何!?」
「ンッフフフ、正解だイーノック。私はこのバトルロワイアルの参加者でもあり、主催の一人でもある」
「貴様は奴らの仲間だってのか!」
「別に……そんなことには興味がないんでね。彼らに直接聞いてみればいい」
メイトリックスが顔を真っ赤にして、怒りに全身を震わせている。
だがそれを前にしても、ルシフェルの全てをはぐらかすような態度は変わらない。
そんな彼に対してメイトリックスが取った行動は、当然ともいえるものだった。
「ふざけやがってぇ!」
イーノックから取り上げた銃を構えてルシフェルの眉間に突きつけ――
「ろっとぉ」
今度は指を鳴らすこともなく、何の前触れも無くメイトリックスの背後を取った。
時を自在に操るルシフェルには、こんなことなど朝飯前だ。
そして彼の手にはいつのまにか何かが握られていた。
「な……なんだ、そりゃあ!」
驚愕するのも無理はない。
その手に握られていたのは一人の少女。
人形とは思えない、あまりにも精緻な造詣。
紺と灰色の衣を纏った、つぶらな瞳と艶のある黒髪を持つ少女だ。
何度目を凝らしても、それ以外のものには見えない。
「驚いているな。よし分かった、説明しよう」
両腕を頭上に掲げ、まっすぐに伸びた少女の足首を、ルシフェルは無造作に掴んでいる。
怒り心頭だったメイトリックスも度肝を抜かれて立ちすくむしかないようだった。
「――これはアズサだ」
聞いたことの無い名だった。
「神が作り出した知恵のひとつ――いや、武器か」
武器?
これが?
「人類には決して辿りつく事のできない神の叡智として、神が我々に与えたものだ」
「貴様は何を言ってるんだ……!」
「よし、まずは広げてみるか」
メイトリックスを無視して、ルシフェルは少女の足首を両手で持ち上げ、あろうことかバックリと広げてみせた。
すらりと伸びた健康的な太ももがあらわになり、両足がVの字を形作るような体勢になる。
太ももの付け根まで広げられてしまい、その結合部分まで丸見えになってしまった。
その結合部――いわゆる女性器部分は申し訳程度の薄布で覆われているものの、布越しにその形がくっきり浮かび上がってしまっている。
「こ、この……変態野郎がぁぁぁぁ!!」
ここでメイトリックスの限界が来たようだ。
手に持った銃があるにも関わらず、その拳をルシフェルに振るおうとする。
がしんと骨肉が強くぶつかり合う音がした。
「おいおい、最後まで説明させろよ。どうだ、美しいフォルムだろう?」
なんとメイトリックスの拳は、アズサという少女の脚の部分で受け止められていた。
筋骨隆々の豪腕を真っ向から受け止めたにも関わらず、アズサの体勢は微塵も揺らがない。
その表情すらピクリともしない。
「人間じゃ、ない……!?」
「言ったろう。これは武器だ」
そういってルシフェルがアズサを振り上げた。
轟、と音が鳴る。
アズサの尻がメイトリクスの側頭部にまともにあたり、その巨体はスピンしながら砂浜を転げまわった。
あれが少女の肉体であれば、あんな衝撃を受けてグシャグシャにならないほうがおかしい。
だがアズサは無表情のままでルシフェルに足首を掴まれ、Vの字に開脚した体勢を保っている。
「くそったれ……ぐぅ……」
すぐに立ち上がろうとするメイトリックス。
だが足にきているようで、立ち上がれない。
そこで不意にルシフェルのほうから低く震えるような音がした。
「ん……ちょっと失礼、電話だ……ああ……やっぱり駄目だったよ……ん? ……ああ、わかった」
ピッという音を鳴らして、ルシフェルは懐から取り出したからくりを再びしまう。
そして立ち上がろうともがくメイトリックスを一瞥してから、イーノックに向き直った。
「さて、イーノック」
「……」
「君はどうする? 個人的に私が君をサポートしてやってもいい。
もちろん私の目的に協力してもらうことが条件だが」
それはつまり、この殺し合いに協力すること。
積極的に他の参加者を殺して回ることになる。
「どちらにしろ逃げられないぞ、イーノック。私がいるということはつまり――」
神が背後にいる。
神ではないにせよ、それに類する何かがルシフェルを操っている可能性もある。
だが――、
「………………イーノック」
メイトリックスを見る。
彼の話を聞いてしまった。
娘が彼の全てだと。
そのために命を懸けるのだと。
彼は人間だ。
そしてイーノックも人間だ。
イーノックに人間を見捨てることはできなかった。
「やれやれ……君は話を聞かないからな」
ルシフェルはため息をつき、そしてアズサを構えた。
イーノックは先程、メイトリックスに取り上げられなかった自分のアイテムを懐から取り出した。
サングラス――黒の色眼鏡だ。
それを見て、ルシフェルが楽しそうに紅い目を細める。
「ほう、使い方を知ってるのか?」
「説明書を呼んだ」
イーノックはこの地に降り立ってから、まず最初に己のアイテムを確認していた。
それゆえに一見役に立ちそうに無いこの色眼鏡が武器だとわかっていたのだ。
K´パッチと呼ばれるそれは、己の肉体に歴戦の格闘家を憑依させるものだとイーノックは理解していた。
そしてその理解はおおむね間違っていない。
「友人として、君にこんなことはしたくないんだがね……どうしてもやるってのか?」
「…………大丈夫だ、問題ない」
サングラスの形をしたそれを装着する。
肩まで伸びた金髪が、やや短くなって銀灰色に変化した。
純白の鎧は漆黒のライダースーツへと。
そしてその右手には灼熱の炎が宿る。
「いいだろう、少し遊んでやる。痛い目を見て、その上でどうするのか君自身が選択すればいい」
「俺一人で――――充分だ!」
優しげで爽やかな声すらも、獣の唸りをを思わせるものに変化していた。
対峙する二人の間に火の粉が舞う。
【I-04 砂浜/1日目・深夜】
【ジョン・メイトリックス@コマンドー】
[状態]:ダメージ(小)、脳震盪
[装備]:GUN鬼の銃@MUSASHI-GUN道-
[道具]: 基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本思考:娘を助け出し、殺し合いをぶっ潰す。
0:野郎……!
[備考]
※参戦時期は原作終了後。
【イーノック@エルシャダイ】
[状態]:健康
[装備]:K´パッチ@MUGEN
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考:全てを救う。
0:――――――――
【ルシフェル@エルシャダイ】
[状態]:健康
[装備]:新武器アズサ
[道具]:基本支給品、携帯電話
[思考・状況]
基本思考:主宰側として殺し合いの進行役を務める。だがイーノックは例外……?
0:さて……どうするかな。
【GUN鬼の銃@MUSASHI-GUN道-】
「ガン鬼の天」「ガン鬼の地」という二丁で一組のリボルバー拳銃。
GUN道を究めたものしか手に取ることができず、資格無き者が手にすれば鬼になると言われている。
この銃を手に取ったことで、今まで何人ものGUN道使いが命を落とした。
ガン鬼の銃には鬼が宿っており、精神力が弱ければ、鬼に体をのっとられてしまう、らしい。
ガン鬼の銃で撃った弾は通常の100倍の威力で敵を倒し、またいかなる弾であろうと撃つことが出来る、らしい。
さらにはガン鬼の銃を手にした者の潜在能力を10倍から100倍にまで高めることが出来る、らしい。
ちなみに、銃弾の反動による空中移動も可能。
弾数制限? そんなもんはねえ!
うおっ、まぶしっ。
【K´パッチ@MUGEN】
イーノックに支給。
K´のサングラス型の形状をしており、それをかけることで装備状態となる。
装備すると髪の色や肌、さらに声と右手がK´準拠に。
K´の技が自在に使えるようになるが、逆に言えばそれ以外を使えなくなるということでもある。
戦況を考慮した使い方が必要になるだろう。
【新武器アズサ】
ルシフェルに支給。
継ぎ目の一切ない美しいフォルムが特徴とはルシフェルの弁。
だが継ぎ目はなくともワレメはある模様。
ぱんつの色は白。
参考動画→ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm12283051
【携帯電話@エルシャダイ】
ルシフェルが神と思われる存在と通信するためのアレ。
|sm27:[[響チャレンジ!バトルロワイアル編]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm29:[[総統閣下は自分の現状にお怒りのようです]]|
|sm27:[[響チャレンジ!バトルロワイアル編]]|[[投下順>00~50]]|sm29:[[総統閣下は自分の現状にお怒りのようです]]|
|sm00:[[オープニング]]|ジョン・メイトリックス|sm:[[]]|
||イーノック|sm:[[]]|
||ルシフェル|sm:[[]]|
*いったい何が始まるんです? ◆w3bZRgegM2
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「動くな。何もしない。荷物を下ろせ、そして手をあげろ」
「……」
「いいから俺の言うとおりにしろ。荷物を下ろすんだ」
肩まで伸ばした金髪に微妙なイケメン顔が特徴の青年、イーノックは夜の砂浜をあてどなく歩いていた。
そこでいきなり背後から肩を掴まれ、ドスの利いた野太い声で荷物を下ろせと言われた。
この声は聞き覚えがある。
最初の部屋でディアズと名乗る男を瞬殺した筋肉モリモリのマッチョマンだ。
だが反撃はそこまで、娘を人質にとられて彼は意識を失った。
そしてイーノックも同様だ。
「巻き込んですまないと思っている。だがアンタには何もしない、俺を信じろ」
メイトリックスと名乗る男の言うとおりに、イーノックはゆっくりと砂浜に自分の荷物を下ろす。
とたんに背後から伸びた太い腕がそれを奪い去った。
「ちょっと調べさせてもらう……拳銃か。ないよりはいいか、貰うぞ」
どうやら目的は武器のようだった。
一通り調べ終わったのか、彼はイーノックの荷物を元に戻して地面に置く。
「見ていたかもしれんが、娘が攫われた。
俺たちに殺し合いをさせる気だろうが、どちらにしろ連中に約束を守る気はない。
馬鹿正直に殺しあっても生き残ったほうを殺すつもりだろう。
だから何とかして奴らを出し抜き、娘を助け出さなくちゃならない。
俺にとって娘は……ジェニーは……全てなんだ」
メイトリックスは最後の言葉を振り絞るように呟き、顔を歪めた。
娘のことを想い、そして悪漢どもの手に落ちたことを嘆いているのだろう。
ディアズという男を躊躇い無く瞬殺したりもしたが、おそらく悪い人間ではない――イーノックはそう判断した。
そうでなければイーノックを殺して荷物を奪っていただろうからだ。
結論を出し、スッとメイトリックスの眼前に右手を差し出す。
「なんだ……握手?」
メイトリックスの言葉にイーノックは頷いた。
「協力してくれるのか? だが危険だぞ。
身のこなしと体つきを見れば、素人でないのは分かるが……」
殺し合い――危険なのはどこも同じだろう。
ならば自らの意思で選択し、進んでいく。
今はここにいない友人もそう言うはずだ。
「大丈夫だ、問題ない」
イーノックは微笑み、穏やかな声で、だが力強く、言った。
パチンッ!
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「――そんな装備で大丈夫か?」
その時だった。
指を弾く音が砂浜に響いた。
イーノックは声のした方向に振り向く。
メイトリックスも驚きの表情で同じ方向を凝視していた。
「いつの間に……!?」
イーノックから取り上げたリボルバー銃を構えて警戒態勢を取るメイトリックス。
撃鉄の金属音が、静かな砂浜にやたら大きく響いた。
だがあちらも銃を向けられていることは分かっているだろうに、落ち着いた足取りを保ったままでゆっくりと近づいてくる。
パチンッ!
「ろっとぉ。よし、落ち着いてくれ。まずは話をしよう――」
黒髪、黒シャツに黒のズボン。
瞳だけが紅く輝く黒ずくめの男は、軽快に指を鳴らしながらこう言った。
「ルシフェル――」
「やあ、イーノック。三十六万……いや、一万四千年ぶりか。それとも昨日の話だったかな?」
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夜の砂浜を歩きながら、彼らは自分たちが巻き込まれたこの殺し合いについて話し合うことにした。
イーノックは基本的にあまり喋らないたちだ。
メイトリックスがもう一度自分の事情を説明、そしてイーノックの友人として紹介されたルシフェルに協力を申し出た。
一通りのことを聞き終えてルシフェルはゆっくりと頷いた。
そのまま俯き、しばらく考えるような仕草で砂浜に歩を進める。
穏やかな波の音、三人の砂を踏む音が交じり合う。
いつの間にか不思議な雰囲気が三人を包んでいた。
そしてふと、ルシフェルが顔を上げる。
「……よし、質問してもいいか」
「ああ、何か聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてくれ」
答えたメイトリクスを一瞥してから、ルシフェルはゆっくりと頷き、さらに言葉を続けた。
「メイトリックス。君はこのバトルロワイアルを開催したのが本当に彼らだと思うのか」
「……わからんな、どういう意味だ」
「元コマンドーの裏切り者や反政府組織のボス如きでは無理だ。
……人間程度では僕らを殺し合いに巻き込むなんてことはできない」
イーノックはルシフェルの言葉の意味に気付いた。
彼がその気になれば、首に仕込まれた爆弾を外すことなど容易いはずだ。
彼は大天使。
彼は時を自在に操る者。
人間のはるか上位に位置する存在なのだ。
「……すまんが、俺にも分かるように言ってくれないか」
「いいだろう、説明しよう」
パチンッ!
そういってルシフェルはまた指を鳴らした。
するといきなり彼の姿が消えた。
「!?」
メイトリックスは驚くが――ルシフェルがその背後にいきなり現れた。
「ンッフフフ。百聞は一見に如かず……だったかな? 私は人間じゃあない。この能力が証拠だ」
「トリック……じゃない、のか……?」
「違うね。その証拠にほら、首輪だって」
パチンッ!
もう一度、ルシフェルが指を鳴らした。
するとたったいま指を鳴らしたその右手に、外れた首輪が握られているではないか。
そしてその首には何もない。
「おい待て! どういうことだ!?」
パチンッ!
ルシフェルは答えず、さらにもう一度指を鳴らす。
すると今度は、その手にあった首輪が元通りになって首に装着されていた。
メイトリックス、そしてイーノックは無言で目を見開く。
もはや言葉すらない。
絶句というやつだ。
「さて、私は見ての通り首輪を簡単に取り外しできるわけなんだが……まあ、これじゃあ意味が無いよな」
殺し合いを強制するための道具なのだから、簡単に外せるようでは意味が無い。
それはイーノックも分かるのだが、眼前の信じがたい光景のせいでルシフェルの言葉が頭に入ってこない。
「君たち参加者に殺し合いをさせるためには、首輪を外すわけにはいかないんだよ」
「参加者……だと」
「そうさ、メイトリックスにイーノック。君たちはこのバトルロワイアルの参加者だ。
そして私も参加者の一人さ。そしてこのイベントをスムーズに進めるために、首輪を外すわけにはいかない」
「ふざけるな、進める必要なんかあるわけないだろ!」
メイトリックスは激高し、そしてルシフェルの言葉を否定する。
だがその傍らで、イーノックはある恐ろしい可能性に思い至っていた。
「主催者……」
思わず呟いた一言が震えていた。
「何!?」
「ンッフフフ、正解だイーノック。私はこのバトルロワイアルの参加者でもあり、主催の一人でもある」
「貴様は奴らの仲間だってのか!」
「別に……そんなことには興味がないんでね。彼らに直接聞いてみればいい」
メイトリックスが顔を真っ赤にして、怒りに全身を震わせている。
だがそれを前にしても、ルシフェルの全てをはぐらかすような態度は変わらない。
そんな彼に対してメイトリックスが取った行動は、当然ともいえるものだった。
「ふざけやがってぇ!」
イーノックから取り上げた銃を構えてルシフェルの眉間に突きつけ――
「ろっとぉ」
今度は指を鳴らすこともなく、何の前触れも無くメイトリックスの背後を取った。
時を自在に操るルシフェルには、こんなことなど朝飯前だ。
そして彼の手にはいつのまにか何かが握られていた。
「な……なんだ、そりゃあ!」
驚愕するのも無理はない。
その手に握られていたのは一人の少女。
人形とは思えない、あまりにも精緻な造詣。
紺と灰色の衣を纏った、つぶらな瞳と艶のある黒髪を持つ少女だ。
何度目を凝らしても、それ以外のものには見えない。
「驚いているな。よし分かった、説明しよう」
両腕を頭上に掲げ、まっすぐに伸びた少女の足首を、ルシフェルは無造作に掴んでいる。
怒り心頭だったメイトリックスも度肝を抜かれて立ちすくむしかないようだった。
「――これはアズサだ」
聞いたことの無い名だった。
「神が作り出した知恵のひとつ――いや、武器か」
武器?
これが?
「人類には決して辿りつく事のできない神の叡智として、神が我々に与えたものだ」
「貴様は何を言ってるんだ……!」
「よし、まずは広げてみるか」
メイトリックスを無視して、ルシフェルは少女の足首を両手で持ち上げ、あろうことかバックリと広げてみせた。
すらりと伸びた健康的な太ももがあらわになり、両足がVの字を形作るような体勢になる。
太ももの付け根まで広げられてしまい、その結合部分まで丸見えになってしまった。
その結合部――いわゆる女性器部分は申し訳程度の薄布で覆われているものの、布越しにその形がくっきり浮かび上がってしまっている。
「こ、この……変態野郎がぁぁぁぁ!!」
ここでメイトリックスの限界が来たようだ。
手に持った銃があるにも関わらず、その拳をルシフェルに振るおうとする。
がしんと骨肉が強くぶつかり合う音がした。
「おいおい、最後まで説明させろよ。どうだ、美しいフォルムだろう?」
なんとメイトリックスの拳は、アズサという少女の脚の部分で受け止められていた。
筋骨隆々の豪腕を真っ向から受け止めたにも関わらず、アズサの体勢は微塵も揺らがない。
その表情すらピクリともしない。
「人間じゃ、ない……!?」
「言ったろう。これは武器だ」
そういってルシフェルがアズサを振り上げた。
轟、と音が鳴る。
アズサの尻がメイトリクスの側頭部にまともにあたり、その巨体はスピンしながら砂浜を転げまわった。
あれが少女の肉体であれば、あんな衝撃を受けてグシャグシャにならないほうがおかしい。
だがアズサは無表情のままでルシフェルに足首を掴まれ、Vの字に開脚した体勢を保っている。
「くそったれ……ぐぅ……」
すぐに立ち上がろうとするメイトリックス。
だが足にきているようで、立ち上がれない。
そこで不意にルシフェルのほうから低く震えるような音がした。
「ん……ちょっと失礼、電話だ……ああ……やっぱり駄目だったよ……ん? ……ああ、わかった」
ピッという音を鳴らして、ルシフェルは懐から取り出したからくりを再びしまう。
そして立ち上がろうともがくメイトリックスを一瞥してから、イーノックに向き直った。
「さて、イーノック」
「……」
「君はどうする? 個人的に私が君をサポートしてやってもいい。
もちろん私の目的に協力してもらうことが条件だが」
それはつまり、この殺し合いに協力すること。
積極的に他の参加者を殺して回ることになる。
「どちらにしろ逃げられないぞ、イーノック。私がいるということはつまり――」
神が背後にいる。
神ではないにせよ、それに類する何かがルシフェルを操っている可能性もある。
だが――、
「………………イーノック」
メイトリックスを見る。
彼の話を聞いてしまった。
娘が彼の全てだと。
そのために命を懸けるのだと。
彼は人間だ。
そしてイーノックも人間だ。
イーノックに人間を見捨てることはできなかった。
「やれやれ……君は話を聞かないからな」
ルシフェルはため息をつき、そしてアズサを構えた。
イーノックは先程、メイトリックスに取り上げられなかった自分のアイテムを懐から取り出した。
サングラス――黒の色眼鏡だ。
それを見て、ルシフェルが楽しそうに紅い目を細める。
「ほう、使い方を知ってるのか?」
「説明書を呼んだ」
イーノックはこの地に降り立ってから、まず最初に己のアイテムを確認していた。
それゆえに一見役に立ちそうに無いこの色眼鏡が武器だとわかっていたのだ。
K´パッチと呼ばれるそれは、己の肉体に歴戦の格闘家を憑依させるものだとイーノックは理解していた。
そしてその理解はおおむね間違っていない。
「友人として、君にこんなことはしたくないんだがね……どうしてもやるってのか?」
「…………大丈夫だ、問題ない」
サングラスの形をしたそれを装着する。
肩まで伸びた金髪が、やや短くなって銀灰色に変化した。
純白の鎧は漆黒のライダースーツへと。
そしてその右手には灼熱の炎が宿る。
「いいだろう、少し遊んでやる。痛い目を見て、その上でどうするのか君自身が選択すればいい」
「俺一人で――――充分だ!」
優しげで爽やかな声すらも、獣の唸りをを思わせるものに変化していた。
対峙する二人の間に火の粉が舞う。
【I-04 砂浜/1日目・深夜】
【ジョン・メイトリックス@コマンドー】
[状態]:ダメージ(小)、脳震盪
[装備]:GUN鬼の銃@MUSASHI-GUN道-
[道具]: 基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本思考:娘を助け出し、殺し合いをぶっ潰す。
0:野郎……!
[備考]
※参戦時期は原作終了後。
【イーノック@エルシャダイ】
[状態]:健康
[装備]:K´パッチ@MUGEN
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考:全てを救う。
0:――――――――
【ルシフェル@エルシャダイ】
[状態]:健康
[装備]:新武器アズサ
[道具]:基本支給品、携帯電話
[思考・状況]
基本思考:主宰側として殺し合いの進行役を務める。だがイーノックは例外……?
0:さて……どうするかな。
【GUN鬼の銃@MUSASHI-GUN道-】
「ガン鬼の天」「ガン鬼の地」という二丁で一組のリボルバー拳銃。
GUN道を究めたものしか手に取ることができず、資格無き者が手にすれば鬼になると言われている。
この銃を手に取ったことで、今まで何人ものGUN道使いが命を落とした。
ガン鬼の銃には鬼が宿っており、精神力が弱ければ、鬼に体をのっとられてしまう、らしい。
ガン鬼の銃で撃った弾は通常の100倍の威力で敵を倒し、またいかなる弾であろうと撃つことが出来る、らしい。
さらにはガン鬼の銃を手にした者の潜在能力を10倍から100倍にまで高めることが出来る、らしい。
ちなみに、銃弾の反動による空中移動も可能。
弾数制限? そんなもんはねえ!
うおっ、まぶしっ。
【K´パッチ@MUGEN】
イーノックに支給。
K´のサングラス型の形状をしており、それをかけることで装備状態となる。
装備すると髪の色や肌、さらに声と右手がK´準拠に。
K´の技が自在に使えるようになるが、逆に言えばそれ以外を使えなくなるということでもある。
戦況を考慮した使い方が必要になるだろう。
【新武器アズサ】
ルシフェルに支給。
継ぎ目の一切ない美しいフォルムが特徴とはルシフェルの弁。
だが継ぎ目はなくともワレメはある模様。
ぱんつの色は白。
参考動画→ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm12283051
【携帯電話@エルシャダイ】
ルシフェルが神と思われる存在と通信するためのアレ。
|sm27:[[響チャレンジ!バトルロワイアル編]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm29:[[総統閣下は自分の現状にお怒りのようです]]|
|sm27:[[響チャレンジ!バトルロワイアル編]]|[[投下順>00~50]]|sm29:[[総統閣下は自分の現状にお怒りのようです]]|
|sm00:[[オープニング]]|ジョン・メイトリックス|sm48:[[士郎から寅丸星は大変な槍を奪い返しに来ました]]|
||イーノック|sm48:[[士郎から寅丸星は大変な槍を奪い返しに来ました]]|
||ルシフェル|sm48:[[士郎から寅丸星は大変な槍を奪い返しに来ました]]|
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