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「冷静になった結果がこれだよ」(2012/04/18 (水) 20:15:24) の最新版変更点
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*冷静になった結果がこれだよ ◆orpsJh.62I
----
憤る理由は充分にある。
それにより現れるものが義憤であるか、身勝手な自己保身か。
様々ではあるがいずれにせよこの状況を善しとする者はそういない。
善しとしないのならば、まずこの殺し合いという名で行われているゲームにおいて
重要なことの一つはいかに冷静に振る舞うかに尽きるだろう。
怒りは視野を狭めさせ、周りに対しての注意力が散漫になる。
奇襲、奸計、その他諸々なんでもありのルールにおいてそれは致命的だ。
簡潔に言うならば、生き残るにはどんなことがあっても冷静に努めること。
まあ、例外はあるのだが。
◆◆◆
木原数多は殺人狂ではない。
もちろん、人を人とも思わない狂った価値観を持ち合わせてはいるのだがそれでも
自分がどのような状況に置かれているのか、どのように行動すべきかは理解している。
まずは使える人材が必要だ。表向きは協力関係を築きながらも自らの手足となるような
そんな人材が。逆らう者、使えない存在は容赦なく消す。それが彼の方針だった。
尤も彼の人相では他人に対して穏便に接触するのが難しいだろうが。
だから少し遠くから物音が聞こえたときには彼は木陰に身を隠していた。
ここは月の光すら満足に届かない山の中。視界が殆ど及ばないために支給品確認以外には
ランタンも使用せず、眼下に見えた外灯のある山道を目指していたのだが、物音にも
気を使っていていたために何者かの接近は容易に木原の知れるところとなった。
しかし気を配るほどでもなかった。
何しろ相手は暢気にランタン片手に斜面を下っていたのだから。
呆れるといった感情すら湧き起こらずに、それを見て取った木原は行動に移ることにした。
相手は、20代は確実に超えているであろう金髪の青年。黒のライダースーツを着用している。
その表情は険しいが、一切の武器らしい武器を持っていないことが確認できたので慎重に近づき
『情報収集』に走ることにしたのだ。無論、警戒は怠っていない。
支給されていた銃を構え、じり、と一歩踏み出したとき
「この我に対し武器を向けるか、雑種――」
瞬間、木原の全身を凍るほどの殺意が貫いた。
だがしかし彼はそれに強張ることも、怯むこともなく引き金を引く。
短機関銃特有の小気味良い発砲音が響き渡った。
僅か1秒の間に射出される大量の弾頭は前方にある対象を容赦なく破壊する。
発射されては到底太刀打ちできるものではない。
青年がいた場所に跡形もないのは当然のことだ。
なぜならば、彼はすでに木原の頭上に迫っていたのだから。
「!!」
気付き、木原は半ば反射で身を倒す。
背後が斜面であることなど構っていられない。
そうしなければこっちが狩られると確信したからである。
鈍い振動音が聞こえながらも木原は斜面を転げ落ちる。
10mほどいったところで留まり、すぐさま状況を確認するために顔を上げる。
目に映ったのは、驚愕に値する光景だった。
胴回り2mを超えると思われる木が、メキメキと音を立てて倒れくるではないか。
木原は横に移動することで難なく避けたがその木は先ほどまで木原が隠れるために使っていたもの。
要するに、回避できていなければ自分があのような運命を辿ったということに他ならない。
「・・・・・・」
対して青年は自らの拳を訝しげに睨んでいる。
あの様子からして彼は素手で木を叩き折ったらしい。
まだ襲ってきてはいないにしろ、ついさっきの光景を木原は思い出す。
木原が指を動かし弾が飛び出るまでのその間に、男は一息の内に跳び上がり全弾を躱したのだ。
常人ではまず為し得ない挙動。宙に舞ったカンテラのお陰で辛うじてその異常を察知できたものの
それが無ければ昼間であったとしても瞬間移動を使ったかのようにしか捉えられなかっただろう。
何にせよ放たれる前に動いたとはいえ銃弾を避けるほどの身体能力を持つ男。
さっきの攻撃で弾は切れている。弾倉を交換している暇はない。
そう判断した彼の行動は速かった。
青年は少しして眼下にいる男――木原に目をやった。
ちょうど何かを放り投げているところだったが、それを認識した瞬間。
目の前が一瞬で真っ白になった。
「む…」
しばらくして咄嗟に庇った顔をおこすと、木原の姿はすでになかった。
それを確認した男――ギルガメッシュは奇跡的に無事だったカンテラを拾い上げながらフンと小さく鼻を鳴らす。
視界がやや明滅して、耳鳴りが続いているがそれに関してはあまり気に留めている様子は無い。
「逃げたか。……まあいい、次に相見える時に命は無いと思え」
◇◇◇
ギルガメッシュは激怒していた。
木原に遭遇する前から、いや、ゲームが開始されてすぐ彼の怒りは頂点に達している。
集められた人間と殺しあえと強制されることが、自分が法と考えている彼にとっては屈辱的な
事であり、あまつさえ自身の武装は黄金の都に通じる鍵剣を残して全て奪われていたことが
彼を怒らせた最大の理由だろう。ちなみに他にあるランダム支給品は『作業台』という物だけ。
使えば武器も作ることが出来るのだろうが、そんなものは鍛冶屋の仕事だ、と彼は心の中で一蹴した。
けれども彼は冷静だった。
武器は全て奪われたも同然。身体能力は大幅に制限されている。
この状況で、慢心してはいても油断は一切ない。だからこそ木原の攻撃に対応できたのだ。
さて、逃げ場が無く、自由度が制限されているこの殺し合いにおいても彼の方針は聖杯戦争に
参加していた時とそれほど変わらない。自身の気に入らないモノは排除する。ただそれだけのことだ。
彼の性格上他人に敷かれたルールを守る気などさらさら無い。
しかしこの殺し合いに興味が無いわけでもなかった。
勝手に喚び出したことは万死に値するが、どの程度の者が参加しているのか確かめたい、といったところか。
木原との戦闘はその小手調べだったのだろう。開始直後から自身にかかる違和感の確認のようなものだった。
「まあ、我の期待に沿わぬ者しかおらんのであれば、このような児戯に付き合わせた代償は高くつくぞ――」
これからどうするか、ランタンを消し、地図を見てギルガメッシュはしばらく考えた。
逃げていった男……木原のことだが追跡はしないと既に決定している。
小鼠一匹追うのに山中を駆けずり回るのは王のやることではない、と思っているからだ。
ならば何処へ向かうのか。さっきはわざわざランタンの明りで参加者を呼び寄せながらそこら辺を歩いていたのだが
地図まで広げたのだから明確な目標が必要になる。まずは、拠点作りだろう。
(とりあえず近くから見ていくとするか……)
一番近くにある施設は呪いの館だった。
わざわざ「呪い」と名がついているあたり何かありそうだが、見てみないことには始まらない。
ギルガメッシュは早速そこに向かうことにした。
◆◆◆
山道に出てさらに少しばかり走った後、木原は道路の傍に座って息を整えた。
白衣は動くのに邪魔になったのでデイパックにしまいこんでいる。
男が追ってきていないのを再度確認すると、なるべく暗がりを選んでそこに身を潜めた。
基本的な方針は変わりない。
ついさっきの失敗は、相手の罠にまんまと乗ってしまったからだと木原自身理解していた。
ならばとる方法は一つ。先手必勝である。
反撃も回避もする暇を与えず、相手を一瞬で抹殺する。
虫の音すらも聞こえないこの静けさだ。接近してくる者がいればそれこそすぐに分かる。
ふと目を遠くにやると夜のためよく分からないが巨大な建造物が見えた。
「ありゃ……館か」
なんであんなところに、と思ったがどうせ考えても無駄だろうと彼は感じた。
珍妙な施設ばかりが地図に記載されていることや、あの体育館で解説をした男が即殺されたことなど
主催者の意図がどうも読み取れない。あいつらはまともに殺し合いを進める気があるのか、と。
「まぁグダグダ文句垂れたところで始まらねぇよな。あーあ面倒くせぇ」
アレイスターからの命令で打ち止めを回収する段取りを進めていたところで意識を失って、気が付いたら
こんな状況に陥っていた。あまりにも非常識すぎて嘆息するのも仕方ないと言える。
疲れはまだとれないがとりあえず戦闘に臨めるくらいには回復した。
ところでこの山道。外灯があるにはあるのだがその間隔は20m以上離れていて光もあまり強くない。
(どうすっかな……近場だとあいつに遭遇する可能性もあるんだろうし、麓まで下りるかね)
ルール上難しそうではあるが潜伏する場所は必要だ。
天候のことも考えるとあまり山中に長居したくはない。
と、その時、左の方から何かが滑ってくる音がした。
足音ではない。山道の砂利をかき分けるような、車輪が出す特有の音だ。
音の軽さからして自転車の類か。
木原のいるところに辿り着くまであと数十秒もかからないだろう。
彼はとっさに匍匐の状態になり、弾を装填した銃を構える。
このまま何もしなければ何者かは木原に気付くことなく通り過ぎるだろう。
だが彼がそのまま見過ごすはずがない。
スピードを上げながら坂を下りてくるその影を捉え、狙いを定める。
銃の特性上精密な照準は求められていないが、チャンスは1度きりである。
見通しの悪い中で、ライトもつけていない相手が自分の存在に気付くことは出来ない。
そう思いながら彼は前方めがけて射程距離に入った相手に狙いを定める。
そして三発の銃声の後、頭蓋に銃弾を撃ち込まれた木原は絶命した。
ザザザザと砂利を飛ばし、急ブレーキの影響で砂煙が上がる。
生物としての機能が完全に停止した男の死体の傍につけるとズカズカと近づいてきた。
「――悪いけどお互い様よ。先に狙っていたのはそっちなんだから」
少女の名はレミリア・スカーレット。
吸血鬼であり、紅魔館の主である。
だがその詳細はやや異なっている。
まず『普通の』レミリアは自転車をカリスマ的に乗りこなしたり銃器の扱いに長けていたりしない。
そんなことをするくらいなら自分で空を飛び、弾幕を放つだろう。
しかしこのレミリアにはそれが当て嵌まらない。
と、言うより彼女の存在する世界がもとの幻想郷とはかなり異なっている所為なのだが。
まあ根本的なことは何も変わらない。
吸血鬼であること。そのために夜目がきくこと。
自転車で疾走しながら道路脇に潜む木原を発見できたのはそのためだ。
どちらに分があったのか、結果を見れば明らかだ。
そして変わらないものはまだある。
妹であるフランや、従者である咲夜、引きこもり同人作家であるパチュリー。
紅魔館の住人達がレミリアにとって大切だということ。
彼女たちのもとに帰るために、手段は選んでいられない。
生き残れるのがただ一人というのならば、猶更。
(イングラムか。まともに食らっていたら危なかったでしょうね。体に違和感も感じるし……)
木原の頭を念のため念入りに踏みつけた後、そそくさとデイパックの中身を彼女のに移し替えた。
四次元デイパックであるために荷物の多さを考慮する必要は無いのは嬉しいところだった。
やたらとバッグを持っていたら怪しまれるのはその本人である。
荷物を移し終えるとレミリアは再び自転車に大股開きで跨り勢いよく走りだした。
(このまま麓まで下りてみようか。正直いつまでも自転車だと疲れるのよね……住宅街とかあれば
車を借りることもできるんでしょうけど)
積極的に動くならば今のうち。
別に日が昇っている間でも平気だが、夜の方が彼女にとって明らかに有利なのは言うまでもない。
とにかく現在彼女が方針として固めたのは出来る限り自分に有利な戦力を揃えること。
武器にせよ、協力者にせよ、それが生存に繋がるのならば彼女はどんな手でも使うつもりだった。
「待ってなさい。絶対に帰ってみせるから」
その少女の姿からは想像もできないような男らしい声色で呟き、夜の闇を駆け抜けた。
&color(red){【木原数多@とある魔術の禁書目録 死亡確認】}
【F-07上部/1日目・深夜】
【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:視界が明滅、耳鳴り
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、王の財宝@Fate/stay night(空)、作業台@Minecraft
[思考・状況]
基本行動方針:気の向くままに行動する。
0:主催者を殺し王の財宝を取り戻す。
1:呪いの館に向かう。
2:男(木原)は今度遭ったら殺す。
※自身にかけられている身体能力の制限に気が付きました。
【F-08山道】
【レミリア・スカーレット@東方GTA ~レミリア様がゆく~】
[状態]:健康
[装備]:マッハじてんしゃ@ポケットモンスター
[道具]:基本支給品一式×2、デザートイーグル@現実、イングラムM10@現実、
スタングレネード×5@現実、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に生還する。
0:山道を下って麓に行く。
1:敵と判断したものは容赦なく殺す。
2:可能ならば武器や協力者を集める。
※声や挙動がやたら男らしいです。それに関してレミリアは不自然に思っていません。
※自身にかけられた制限を違和感として感じ取っています。
【王の財宝@Fate/stay night】
ギルガメッシュの所持する宝具の1つ。
バビロニアの宝物庫と、それに繋がる鍵剣。
空間を自身の宝物庫に繋げて、中にある武器・道具を自由に取り出す事が出来る。
但し中に武器が無ければただの倉庫同然である。
中に武器を収納することが可能で、そこから複数の武器を一斉射出することもできる。
【作業台@Minecraft】
Minecraftにおいて必須であるアイテム。
素材さえ揃えればアイテムを合成、加工することが出来る。
但し製作できるのはMinecraftで作ることのできるアイテムに限られる。
アイテムのレシピは付属されてある。
【デザートイーグル@現実】
自動拳銃の一種。装弾数は9発。
姿勢や扱い方に注意を払えば非力な人間でも使うことが出来る。
【イングラムM10@現実】
アメリカ製の短機関銃。装弾数32発。
射撃の発射速度が高いためにフルで装弾しても1.5秒で撃ち尽くしてしまう。
【スタングレネード@現実】
爆発時の爆音と閃光により付近の人間に一時的な失明、眩暈、難聴、耳鳴りを起こさせる。
通常使用する際は耳栓や対閃光ゴーグルをつけることが推奨されている。
【マッハじてんしゃ@ポケットモンスター】
ポケモンシリーズでお馴染みのアイテム。
スピードが出やすいので乗りこなすにはある程度技量がいる。
|sm23:[[燃え滾る魂! 王者と魔術師!]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm25:[[対戦車戦で満足するしかねぇ!鬼柳京介のバトルロワイアル]]|
|sm23:[[燃え滾る魂! 王者と魔術師!]]|[[投下順>00~50]]|sm25:[[対戦車戦で満足するしかねぇ!鬼柳京介のバトルロワイアル]]|
||ギルガメッシュ|[[]]|
||レミリア・スカーレット|[[]]|
||木原数多|&color(red){GAME OVER}|
*冷静になった結果がこれだよ ◆orpsJh.62I
----
憤る理由は充分にある。
それにより現れるものが義憤であるか、身勝手な自己保身か。
様々ではあるがいずれにせよこの状況を善しとする者はそういない。
善しとしないのならば、まずこの殺し合いという名で行われているゲームにおいて
重要なことの一つはいかに冷静に振る舞うかに尽きるだろう。
怒りは視野を狭めさせ、周りに対しての注意力が散漫になる。
奇襲、奸計、その他諸々なんでもありのルールにおいてそれは致命的だ。
簡潔に言うならば、生き残るにはどんなことがあっても冷静に努めること。
まあ、例外はあるのだが。
◆◆◆
木原数多は殺人狂ではない。
もちろん、人を人とも思わない狂った価値観を持ち合わせてはいるのだがそれでも
自分がどのような状況に置かれているのか、どのように行動すべきかは理解している。
まずは使える人材が必要だ。表向きは協力関係を築きながらも自らの手足となるような
そんな人材が。逆らう者、使えない存在は容赦なく消す。それが彼の方針だった。
尤も彼の人相では他人に対して穏便に接触するのが難しいだろうが。
だから少し遠くから物音が聞こえたときには彼は木陰に身を隠していた。
ここは月の光すら満足に届かない山の中。視界が殆ど及ばないために支給品確認以外には
ランタンも使用せず、眼下に見えた外灯のある山道を目指していたのだが、物音にも
気を使っていていたために何者かの接近は容易に木原の知れるところとなった。
しかし気を配るほどでもなかった。
何しろ相手は暢気にランタン片手に斜面を下っていたのだから。
呆れるといった感情すら湧き起こらずに、それを見て取った木原は行動に移ることにした。
相手は、20代は確実に超えているであろう金髪の青年。黒のライダースーツを着用している。
その表情は険しいが、一切の武器らしい武器を持っていないことが確認できたので慎重に近づき
『情報収集』に走ることにしたのだ。無論、警戒は怠っていない。
支給されていた銃を構え、じり、と一歩踏み出したとき
「この我に対し武器を向けるか、雑種――」
瞬間、木原の全身を凍るほどの殺意が貫いた。
だがしかし彼はそれに強張ることも、怯むこともなく引き金を引く。
短機関銃特有の小気味良い発砲音が響き渡った。
僅か1秒の間に射出される大量の弾頭は前方にある対象を容赦なく破壊する。
発射されては到底太刀打ちできるものではない。
青年がいた場所に跡形もないのは当然のことだ。
なぜならば、彼はすでに木原の頭上に迫っていたのだから。
「!!」
気付き、木原は半ば反射で身を倒す。
背後が斜面であることなど構っていられない。
そうしなければこっちが狩られると確信したからである。
鈍い振動音が聞こえながらも木原は斜面を転げ落ちる。
10mほどいったところで留まり、すぐさま状況を確認するために顔を上げる。
目に映ったのは、驚愕に値する光景だった。
胴回り2mを超えると思われる木が、メキメキと音を立てて倒れくるではないか。
木原は横に移動することで難なく避けたがその木は先ほどまで木原が隠れるために使っていたもの。
要するに、回避できていなければ自分があのような運命を辿ったということに他ならない。
「・・・・・・」
対して青年は自らの拳を訝しげに睨んでいる。
あの様子からして彼は素手で木を叩き折ったらしい。
まだ襲ってきてはいないにしろ、ついさっきの光景を木原は思い出す。
木原が指を動かし弾が飛び出るまでのその間に、男は一息の内に跳び上がり全弾を躱したのだ。
常人ではまず為し得ない挙動。宙に舞ったカンテラのお陰で辛うじてその異常を察知できたものの
それが無ければ昼間であったとしても瞬間移動を使ったかのようにしか捉えられなかっただろう。
何にせよ放たれる前に動いたとはいえ銃弾を避けるほどの身体能力を持つ男。
さっきの攻撃で弾は切れている。弾倉を交換している暇はない。
そう判断した彼の行動は速かった。
青年は少しして眼下にいる男――木原に目をやった。
ちょうど何かを放り投げているところだったが、それを認識した瞬間。
目の前が一瞬で真っ白になった。
「む…」
しばらくして咄嗟に庇った顔をおこすと、木原の姿はすでになかった。
それを確認した男――ギルガメッシュは奇跡的に無事だったカンテラを拾い上げながらフンと小さく鼻を鳴らす。
視界がやや明滅して、耳鳴りが続いているがそれに関してはあまり気に留めている様子は無い。
「逃げたか。……まあいい、次に相見える時に命は無いと思え」
◇◇◇
ギルガメッシュは激怒していた。
木原に遭遇する前から、いや、ゲームが開始されてすぐ彼の怒りは頂点に達している。
集められた人間と殺しあえと強制されることが、自分が法と考えている彼にとっては屈辱的な
事であり、あまつさえ自身の武装は黄金の都に通じる鍵剣を残して全て奪われていたことが
彼を怒らせた最大の理由だろう。ちなみに他にあるランダム支給品は『作業台』という物だけ。
使えば武器も作ることが出来るのだろうが、そんなものは鍛冶屋の仕事だ、と彼は心の中で一蹴した。
けれども彼は冷静だった。
武器は全て奪われたも同然。身体能力は大幅に制限されている。
この状況で、慢心してはいても油断は一切ない。だからこそ木原の攻撃に対応できたのだ。
さて、逃げ場が無く、自由度が制限されているこの殺し合いにおいても彼の方針は聖杯戦争に
参加していた時とそれほど変わらない。自身の気に入らないモノは排除する。ただそれだけのことだ。
彼の性格上他人に敷かれたルールを守る気などさらさら無い。
しかしこの殺し合いに興味が無いわけでもなかった。
勝手に喚び出したことは万死に値するが、どの程度の者が参加しているのか確かめたい、といったところか。
木原との戦闘はその小手調べだったのだろう。開始直後から自身にかかる違和感の確認のようなものだった。
「まあ、我の期待に沿わぬ者しかおらんのであれば、このような児戯に付き合わせた代償は高くつくぞ――」
これからどうするか、ランタンを消し、地図を見てギルガメッシュはしばらく考えた。
逃げていった男……木原のことだが追跡はしないと既に決定している。
小鼠一匹追うのに山中を駆けずり回るのは王のやることではない、と思っているからだ。
ならば何処へ向かうのか。さっきはわざわざランタンの明りで参加者を呼び寄せながらそこら辺を歩いていたのだが
地図まで広げたのだから明確な目標が必要になる。まずは、拠点作りだろう。
(とりあえず近くから見ていくとするか……)
一番近くにある施設は呪いの館だった。
わざわざ「呪い」と名がついているあたり何かありそうだが、見てみないことには始まらない。
ギルガメッシュは早速そこに向かうことにした。
◆◆◆
山道に出てさらに少しばかり走った後、木原は道路の傍に座って息を整えた。
白衣は動くのに邪魔になったのでデイパックにしまいこんでいる。
男が追ってきていないのを再度確認すると、なるべく暗がりを選んでそこに身を潜めた。
基本的な方針は変わりない。
ついさっきの失敗は、相手の罠にまんまと乗ってしまったからだと木原自身理解していた。
ならばとる方法は一つ。先手必勝である。
反撃も回避もする暇を与えず、相手を一瞬で抹殺する。
虫の音すらも聞こえないこの静けさだ。接近してくる者がいればそれこそすぐに分かる。
ふと目を遠くにやると夜のためよく分からないが巨大な建造物が見えた。
「ありゃ……館か」
なんであんなところに、と思ったがどうせ考えても無駄だろうと彼は感じた。
珍妙な施設ばかりが地図に記載されていることや、あの体育館で解説をした男が即殺されたことなど
主催者の意図がどうも読み取れない。あいつらはまともに殺し合いを進める気があるのか、と。
「まぁグダグダ文句垂れたところで始まらねぇよな。あーあ面倒くせぇ」
アレイスターからの命令で打ち止めを回収する段取りを進めていたところで意識を失って、気が付いたら
こんな状況に陥っていた。あまりにも非常識すぎて嘆息するのも仕方ないと言える。
疲れはまだとれないがとりあえず戦闘に臨めるくらいには回復した。
ところでこの山道。外灯があるにはあるのだがその間隔は20m以上離れていて光もあまり強くない。
(どうすっかな……近場だとあいつに遭遇する可能性もあるんだろうし、麓まで下りるかね)
ルール上難しそうではあるが潜伏する場所は必要だ。
天候のことも考えるとあまり山中に長居したくはない。
と、その時、左の方から何かが滑ってくる音がした。
足音ではない。山道の砂利をかき分けるような、車輪が出す特有の音だ。
音の軽さからして自転車の類か。
木原のいるところに辿り着くまであと数十秒もかからないだろう。
彼はとっさに匍匐の状態になり、弾を装填した銃を構える。
このまま何もしなければ何者かは木原に気付くことなく通り過ぎるだろう。
だが彼がそのまま見過ごすはずがない。
スピードを上げながら坂を下りてくるその影を捉え、狙いを定める。
銃の特性上精密な照準は求められていないが、チャンスは1度きりである。
見通しの悪い中で、ライトもつけていない相手が自分の存在に気付くことは出来ない。
そう思いながら彼は前方めがけて射程距離に入った相手に狙いを定める。
そして三発の銃声の後、頭蓋に銃弾を撃ち込まれた木原は絶命した。
ザザザザと砂利を飛ばし、急ブレーキの影響で砂煙が上がる。
生物としての機能が完全に停止した男の死体の傍につけるとズカズカと近づいてきた。
「――悪いけどお互い様よ。先に狙っていたのはそっちなんだから」
少女の名はレミリア・スカーレット。
吸血鬼であり、紅魔館の主である。
だがその詳細はやや異なっている。
まず『普通の』レミリアは自転車をカリスマ的に乗りこなしたり銃器の扱いに長けていたりしない。
そんなことをするくらいなら自分で空を飛び、弾幕を放つだろう。
しかしこのレミリアにはそれが当て嵌まらない。
と、言うより彼女の存在する世界がもとの幻想郷とはかなり異なっている所為なのだが。
まあ根本的なことは何も変わらない。
吸血鬼であること。そのために夜目がきくこと。
自転車で疾走しながら道路脇に潜む木原を発見できたのはそのためだ。
どちらに分があったのか、結果を見れば明らかだ。
そして変わらないものはまだある。
妹であるフランや、従者である咲夜、引きこもり同人作家であるパチュリー。
紅魔館の住人達がレミリアにとって大切だということ。
彼女たちのもとに帰るために、手段は選んでいられない。
生き残れるのがただ一人というのならば、猶更。
(イングラムか。まともに食らっていたら危なかったでしょうね。体に違和感も感じるし……)
木原の頭を念のため念入りに踏みつけた後、そそくさとデイパックの中身を彼女のに移し替えた。
四次元デイパックであるために荷物の多さを考慮する必要は無いのは嬉しいところだった。
やたらとバッグを持っていたら怪しまれるのはその本人である。
荷物を移し終えるとレミリアは再び自転車に大股開きで跨り勢いよく走りだした。
(このまま麓まで下りてみようか。正直いつまでも自転車だと疲れるのよね……住宅街とかあれば
車を借りることもできるんでしょうけど)
積極的に動くならば今のうち。
別に日が昇っている間でも平気だが、夜の方が彼女にとって明らかに有利なのは言うまでもない。
とにかく現在彼女が方針として固めたのは出来る限り自分に有利な戦力を揃えること。
武器にせよ、協力者にせよ、それが生存に繋がるのならば彼女はどんな手でも使うつもりだった。
「待ってなさい。絶対に帰ってみせるから」
その少女の姿からは想像もできないような男らしい声色で呟き、夜の闇を駆け抜けた。
&color(red){【木原数多@とある魔術の禁書目録 死亡確認】}
【F-07上部/1日目・深夜】
【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:視界が明滅、耳鳴り
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、王の財宝@Fate/stay night(空)、作業台@Minecraft
[思考・状況]
基本行動方針:気の向くままに行動する。
0:主催者を殺し王の財宝を取り戻す。
1:呪いの館に向かう。
2:男(木原)は今度遭ったら殺す。
※自身にかけられている身体能力の制限に気が付きました。
【F-08山道】
【レミリア・スカーレット@東方GTA ~レミリア様がゆく~】
[状態]:健康
[装備]:マッハじてんしゃ@ポケットモンスター
[道具]:基本支給品一式×2、デザートイーグル@現実、イングラムM10@現実、
スタングレネード×5@現実、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に生還する。
0:山道を下って麓に行く。
1:敵と判断したものは容赦なく殺す。
2:可能ならば武器や協力者を集める。
※声や挙動がやたら男らしいです。それに関してレミリアは不自然に思っていません。
※自身にかけられた制限を違和感として感じ取っています。
【王の財宝@Fate/stay night】
ギルガメッシュの所持する宝具の1つ。
バビロニアの宝物庫と、それに繋がる鍵剣。
空間を自身の宝物庫に繋げて、中にある武器・道具を自由に取り出す事が出来る。
但し中に武器が無ければただの倉庫同然である。
中に武器を収納することが可能で、そこから複数の武器を一斉射出することもできる。
【作業台@Minecraft】
Minecraftにおいて必須であるアイテム。
素材さえ揃えればアイテムを合成、加工することが出来る。
但し製作できるのはMinecraftで作ることのできるアイテムに限られる。
アイテムのレシピは付属されてある。
【デザートイーグル@現実】
自動拳銃の一種。装弾数は9発。
姿勢や扱い方に注意を払えば非力な人間でも使うことが出来る。
【イングラムM10@現実】
アメリカ製の短機関銃。装弾数32発。
射撃の発射速度が高いためにフルで装弾しても1.5秒で撃ち尽くしてしまう。
【スタングレネード@現実】
爆発時の爆音と閃光により付近の人間に一時的な失明、眩暈、難聴、耳鳴りを起こさせる。
通常使用する際は耳栓や対閃光ゴーグルをつけることが推奨されている。
【マッハじてんしゃ@ポケットモンスター】
ポケモンシリーズでお馴染みのアイテム。
スピードが出やすいので乗りこなすにはある程度技量がいる。
|sm23:[[燃え滾る魂! 王者と魔術師!]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm25:[[対戦車戦で満足するしかねぇ!鬼柳京介のバトルロワイアル]]|
|sm23:[[燃え滾る魂! 王者と魔術師!]]|[[投下順>00~50]]|sm25:[[対戦車戦で満足するしかねぇ!鬼柳京介のバトルロワイアル]]|
||ギルガメッシュ|sm34:[[青鬼ごっこ]]|
||レミリア・スカーレット|sm38:[[ゴンさんは滅びんよ、何度でも蘇るさ]]|
||木原数多|&color(red){GAME OVER}|
表示オプション
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