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小説書き起こし版

試験的にその2。

#2 その名は猛竜神


覚醒人凱号は生まれ変わった。
凱号は元々、ザ・パワーの調査・運搬用に作られたニューロメカノイドである。
GGGの帰還と木星開発計画の頓挫、そして戒道幾巳を星の海へと見送ったのをきっかけに、護の単独操縦用へと大規模な改造が成された。
二つのコックピットを統合し、動力源にリンカージェルに代わってGSライドを搭載した凱号は、地球技術と緑の星のオーバーテクノロジーが高度な融合を果たした、覚醒人G号へと進化を遂げたのである。


オービットベースに、地上からGGG隊員たちを乗せたディビジョンフリートや連絡艇が次々と帰還してくる。
大半は護も見知った顔だ。何しろ護は10年前からGGGに出入りしている。
中でもひときわ懐かしい声―
「Hello!マモル~!Veryveryveryvery、久しぶりなんだもんね~!ナイストゥミーチューコングラッチュレーショ~ン!」
「マイク!元気そうだね!」
「Wow!マモ~ル!お久しぶりデース!It's amazing!とってーも大きーくなりまーシタね!」
「スワンさん!スタリーさんも!」
「ほっほ~、この調子だとそのうち凱のことも抜きそうだのう」
「雷牙博士!みんな、今日はアメリカから?」
「Yes!長官からー、緊急招集Scrambleかかりまシタのでー、マイクのバリバリーンでナミアシ・カケアシ・イソギアシで発進Miracleダイヨーサイ!」
スワンが得意のカタコト早口言葉で微笑む。
10年の時を経てなお、未だパワフル、未だダイナマイトボディ、そして未だパンクでロックな出で立ち。
もちろんスワンは髪型も大人らしく落ち着いたし、雷牙博士の言動もさすがに80代も半ばを迎えてほんの少しスローペースではあるが、それでも彼らの前に立つと、護は自分が9歳の子供に戻ったような気分になる。
「マモールの活躍、アメリカでもよく聞きマース。GGGのユニフォームとってーも似合ってマースね!」
「そう言われると照れるなぁ、ありがとう!」
「ガイとミコ…Oh、Mr&Mrsシシオウは元気そうカイ?」
「あはは、もちろん!もうメインオーダールームにいるはずだよ」
いたずらっぽい笑顔を浮かべるスタリオンに、同じくやんちゃな笑顔を返す護。
こうして派手に談笑しながら歩いては、まさか誰も彼ら客人がGGG研究部の精鋭中の精鋭とは思うまい。(特に先頭を歩く煌びやかなご老人は。)
護のベストフレンドと言っても過言ではない、そのコミカルな出で立ちの勇者がアメリカから飛来したと聞いて、護は一級待機状態のメインオーダールームから、制止も聞かずに思わず飛んで行った。
マイクは連れてきた隊員を下ろせば汎機収修多胴艦・コノハナのメタルロッカールームにそのまま収容されてしまうので、その前にどうしても一目会いたかったのだ。
その甲斐あって、アメリカからの旧友をいの一番に迎えることができた。マイクもモニターに「涙を浮かべて」再会を喜んでくれた。マイクの明るい機械音声が、ずっと緊張状態だった護の心をスッと軽くしてくれる。
メインオーダールームに戻った時に、他の隊員から「まだまだ子供だな」という視線を向けられることを思うと、少し耳の辺りが熱くなるけど、だってしょうがないじゃないか。僕にとっては幼馴染と変わらないんだもの。
「Nooooo~!マイクまだまだマモルとお話したいんだもんね~!でもでも、マイクだってもう10歳だから我慢するんだもんね~!マモル~!!マイクいい子で待ってるから、大事な会議終わったらまた遊びに来て欲しいんだもんね~~~!!」
搬送されゆくマイクの声がだんだん遠くなるのを聞きながら、一行はメインオーダールームへの角を曲がった。

「勇者諸君!よく集まってくれたな!!」
メインオーダールームに、大河長官の重々しい声が響きわたる。
集まったのは長官の他、火麻参謀、猿頭寺チーフ、雷牙博士、スワンに牛山隊員、凱と命、護…懐かしの顔ぶれが勢揃いだ。
「本当ならば再会の喜びを分かち合いたいところだが、残念なことにそうも言っていられない事態だ」
参謀が口角を少し上げて護を横目で見る。護が少し気まずそうに目をそらした。
「他でもない!先日地球に飛来した、謎の飛行物体!及びそこから現れた敵性体について、重大な発表がある!」
メインスクリーンが点灯し、様々な資料が展開された。
幼い頃こういう場面に立ち会っても意味がさっぱりわからなかったが、訓練された正規の隊員となった今、護もその内容の深刻さを読み取ることができた。
「これは…!」
「ハイ。あのアスタコ型の敵性体との交戦跡地から、微量の素粒子が検出されたんですよ」
モソモソと、脂っこいを通り越してフカフカし始めた髪をかき混ぜながら猿頭寺チーフが言う。
「これが今回の素粒子の組成…そしてこっちが…」
「素粒子Z0!」
「Oh…話には聞いてまシタが、あまりにもそっくりデース…」
素粒子Z0は、ゾンダーの発する特異な物質だ。ゾンダーとの戦いの時は、これを観測して敵の出現を見極めたものだ。
映し出された画像は、素人目には区別がつかない。やはり今度の敵は、ゾンダーと関係がある。
「だが、これでは素粒子Z0と同一とは言えんのう」
玄人目を持つ世界十大頭脳が切り込む。
「えぇ、素粒子の根幹の決定的な部分が微妙に違います。非常によく似ていますが、同じものとは言えません」
「しかしこれだけ似ているとなると、関係性は疑いようがあるまい」
「はい、ですからこれを…『素粒子Zα』と名付けました」
護は思い出していた。
あのガレキが降ってくる直前に感じた、一瞬の違和感。
あれは、ゾンダーが出現する前の感覚に似ていなかったか?
「これは、従来のZセンサーでもある程度感知することができます。ただ、あっちが活動してないと発生しないこともあり、長い追跡は難しいですね…」
「他のガレキの落下地点を探し出すのは、無理ってわけか」
「無理?あれだけのものが降ってきたとあれば、すぐニュースになるだろう?」
凱がもっともな疑問を呈する。
「それが、落下報告は何箇所かあったし、市街地に落ちたものも少なくなかったんですが、救助隊が駆けつける頃には、落下物そのものが消えてしまっていて…」
「消えた?」
「地下深くまでめり込んでいった…いや、潜っていったというのが、正しいんでしょうか…」
「…EI-01…」
命が忌まわしい名を口にする。
確かに、かつて地球に飛来し、地中に逃亡して潜伏した地球外知性体、EI-01そっくりだ。
乗っていた宇宙船のEI-01との衝突で凱は一度はその生命と肉体を奪われ、命もその落下による大火災で両親を失った。既に10年以上も前の、過ぎた思い出ではあるが、解決した今となっても未だに苦い記憶だ。
「やはり…ゾンダーと関係があるんだろうか」
「だが、ゾンダーはZマスターを倒したことで完全に消滅したはずだ」
「護くんは、何か感じなかった?」
考えにふけっていた護に唐突に話が振られる。
少しうろたえながらも、護は答えるために立ち上がった。
「確かに…感じた、と思う。けど…ゾンダーみたいに、ハッキリとはわからなかった…それに、あれが降ってくるほんの数秒前のことで、ゾンダーみたいにあらかじめわかったわけじゃなかった。でも…でも確かに、感じ方はゾンダーに似ていた…ような、気がする…」
曖昧な記憶を手繰り寄せながら、切れ切れに言った内容に、隊員たちの眉間のしわが深くなる。
「やはり…」
「ありえないことではなかろう。機界新種のような例だってある。機界昇華されたどこかの星から、進化の過程でZマスターの支配下から抜け出した、ゾンダーの変種のようなものが生まれていても何の不思議でもない」
「『機界変種』、…とでも、呼称すべきでしょうね」
「もしそうだとすれば、今地球は安全じゃねえってわけだ」
「ガレキが自力で地中に消えたとすると、あのSpaceship全体がその『機界変種』、Zonder-Mutantだと考えるべきデース」
「状況によっては、今後長い戦いを強いられることとなる。ZMナンバーを新設すべき時かもしれん」
「あ、あの…ちょっと、いいでしょうか…?」
全員の目が、機動部隊席の小さな影に注がれる。
おずおずと挙げられた華奢な右手には、湿布と包帯が巻かれている。
ベイタワー基地から護専属オペレーターとして共に招集されてきた、日辻未来だ。

未来にしてみれば、初めての宇宙で、突然GGGの古株に囲まれて昔話が始まってしまい、萎縮しないわけがなかった。
入隊時に頭に完璧に納めたはずのゾンダー関連の知識は、いざそれを実体験した前提で話されると何の役にも立たない。
唯一同い年の護も、10年来の特別隊員で、旅は道連れというわけにもいかない。
みんなの話についていくのがやっとだ。なんで私がここにいるんだろう、絶対場違いだ、未来は目を白黒させる。
今までいることにすら気づかれなかったのも無理はなかった。
そんな彼女が、なぜここにきて発言する気になったかというと…。
「あの、い、いきなりすみません、ただ、少し…」
「構わないよ、続けたまえ」
もごもごと口ごもる未来に大河長官が優しく助け舟を出す。
未来は緊張で頬を染めながらも、口を開いた。
「あの、…機界昇華された星から、機界変種が生まれた、ということは、その、機界変種も、ゾンダーの被害者なんじゃないでしょうか…?」
隊員たちが未来を凝視する。
「えっと、あの、もしかしたらあのロボットも、私たちに敵意はなかったんじゃないかと思うんです。ただ、機界昇華された母星を逃れて、生きるために地球に来たんだとしたら…ええと、あの」
語尾を消え入らせてしまった未来に、隊員たちは顔を見合わせた。
もっともだ。
未来の言うことは、全員即座に、正確に理解した。
「日辻くん、だったね」
大河の声音はどこまでも優しい。
「素晴らしい。君の疑問は至極当然だ。我々は長く戦いに身を置きすぎて、頭ではわかっていても、非情になりすぎているかもしれないな…しかしだ」
その目は毅然としている。
「仮にそうだとしたら、これは生存競争だと、私は考える。現にあのロボットによって、Gアイランドシティの市民は危険にさらされた。もしあの機界変種が、悪意はなくとも生きるために我々の生存を脅かすのなら、我々もまた、生きるために彼らに抵抗する権利がある」
それは、これまで幾度もその生存競争に勝利してきた、勇者の目だった。
「我々ガッツィー・ギャラクシー・ガードは、勇気ある銀河の守護者。しかしその前身は、ガッツィー・ジオイド・ガード、勇気ある地球の守護者だ。これは我々地球人のエゴであるかもしれないが、だが我々が地球人である限り、我々は地球を守らねばならん」
「そう、『生きる資格、それは、もがきあがくことで掴み取るものだ』、ってね」
事実それをその手で勝ち取ってきた勇者である凱が、優しくも力強い微笑みを未来に向ける。
「自分たちが生きるためなら他を犠牲にしてもいい、なんて驕っているわけじゃないさ。それじゃあ、あの遊星主たちとおんなじだ。でも、悲しいが、生きることっていうのは、紛れもなくそういうことなんだよな」
その笑顔には、破壊神の力を振るうことを宿命づけられた哀しみが、なくもなかった。
しかしその力の拠り所に、凱は誇りを持っていた。
「俺は、俺や命、それにみんなの生まれたこの青い星を守りたい―それだけなんだ」
眼下に広がる美しい地球。
凱につられて、隊員たちの目がその青い宝石に注がれる。
母星と生命を慈しむ彼らの眼差しに、野蛮に生存を追い求める獣性はなかった。
未来は心で理解する。
ああこの人たちは違う。ただむやみに戦っているわけではない。
彼らは戦士ではない。
自分たちのやっていることを理解し、そのうえで我が道を行くことを信じることのできる、本当に強い心を持った『勇者』なのだと。

それでも、少し葛藤が顔に出ていた未来に、護がフォローを入れる。
「大丈夫!あのロボットとは僕が直接戦ったけど、生体反応は出なかった。そりゃまぁ、地球の生き物とは構造が違うってだけかもしれないけど、少なくとも、地球から見ればあれはただの機械だよ。人や動物みたいな生き物を殺すわけじゃない。ね?」
その発言自体は、AIロボットと寝食を共にしているGGG隊員としては問題のある発言ではあったが、ひとまずその場で未来を丸め込んで安心させるためのものだと誰もがわかっていた。
何しろ、つい先ほど、その『地球から見ればただの機械』に属するはずの旧友に、招集をすっぽかして会いに行って、いい歳して大目玉を食ったのだ。
未来も心の底では発言の矛盾にも、そう言った意図にも気づいていたが、新人の自分を元気づけようとしてくれる護の気遣いは素直に嬉しかったし、それに、その、そんなふうに目を見つめられると…。
未来が顔を真っ赤にして礼を言おうとした時、けたたましい警報音が鳴り響いた。


途中、この先未定