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小説書き起こし版

試験的に。
後編→1話小説(後編)


#1 勇者王再臨!(前編)


我々は忘れてはならない。
かつて、この地球を守り、命をかけて戦った勇者たちがいたことを。
そして、その勇者たちの志を脈々と受け継ぎ、今日もなお戦う者たちがいることを、決して忘れてはならない―。

2015年―

日本、Gアイランドシティ、再建ベイタワー基地。

「はい、もう普通に動かしてもいいよ」
「有難うございます、馬場さん」
ここは医務室。地球を守る戦いで傷ついた戦士が治療を受けるところだ。しかし、今手首の包帯を外してもらった少女は、ふわふわした髪に優しい瞳が愛らしく、とてもそんな修羅場をくぐってきたようには見えない。
「それにしても、いくら先の戦闘が激しかったとはいえ、まさかこの基地から怪我人が出るとはねぇ」
医療部の馬場が苦笑交じりに言うと、少女が恥ずかしげに顔を赤らめる。
「そうだぞ、日辻ィ!」
威勢のいい声とともに、医務室のドアが乱暴に開かれた。日辻と呼ばれた少女は驚いて振り返る。
「猪狩くん!」
「全くよぉ、フランスでの戦闘で、護ならともかく、なんで日本の基地のオペレーターが怪我するんだよ?」
「だ、だって…」
少女が決まり悪そうにうつむく。
診てもらっていた怪我は、手首の軽い捻挫。先のバイオネットとの大規模な戦闘のオペレート中に、コンソールの防護板を叩き割った際にひねったのだ。
防護板といっても割られるように出来ているわけで、そこまで頑強なはずがない。第一、あのコンソールは戦闘があるたびに、ほぼ毎回割っているのだ。彼女の右手周りの負傷は、実を言うとこれが初めてではない。
どうにも間抜けな『名誉の負傷』に、同期の猪狩があきれ返る。
「世話ねえぜ。参謀たちみたいにムキムキになれとは言わねえけどよ、もうちょっと鍛えたらどうなんだ?」
「まぁまぁ、怪我も大したことなかったんだし、あんまり言うこともないだろう。用があったんじゃないのかい?」
「そうだ日辻、勤務中の機動部隊は、休暇の説明があるからメインオーダールームに集合だってよ」
馬場の助け船で、どうにか猪狩の追及は遮られ、GGGのかよわきオペレーター・日辻未来は医務室を抜け出すことができた。

猪狩の言うことも至極もっともだ。
未来はトボトボと歩きながらため息をつく。
護ならともかく…そう、最前線で戦っている護くんならともかく…。
先日、フランスで何日も続いたバイオネットとの一大交戦がようやく幕を閉じた。GGGの地上部隊と宇宙部隊、それにシャッセールの協力者まで投入した、大規模な犯罪行為鎮圧戦。長い戦いでGGGも痛手を被りはしたが、戦いは勝利に終わった。しぶといバイオネットも、さすがにしばらくは大きな行動を起こせないだろう。
今日はつかの間の休息。本当の『名誉の負傷』を負ったはずの護は、今日は治療もそこそこに出かけているという。
彼とて、貴重な休日を勤務地で過ごしたくはないだろう。何せ―…。
未来の足取りが、また少し重くなった。

「猿頭寺くん、休暇は本当に取らんでいいのかね」
オービットベース、メインオーダールーム。
ダンディな声は、顎ひげを清潔に整えたGGGの長官、大河幸太郎だ。
「はァ、ぼくはここが家みたいなモンですので…」
ボソボソと頭をかいてフケをそこらじゅうに散らしながら、猿頭寺耕介チーフが答える。ワーカホリック気味の彼は、不規則な生活のせいか、ここ数年で周りに比べてめっきり老けこんでしまった。しかし当の本人に全くそれを気にする様子はない。
「あ、あぁ、なら結構。しかし休暇中に一度、アー…そうだな、健康診断でも受けるのがいいと思うぞ」
漂うフケを回避しながら、大河長官が遠まわしに入浴を勧めるが、猿頭寺はどこ吹く風だ。
「長官、担当区域の最終チェック済みました。少ししたら僕は失礼させてもらいますね。一番下の弟の、就職祝いもまだしてやれてないんですよ」
「あぁ、牛山くんの弟くんは宇宙開発公団の職員になったと言っていたな。結構、結構」
「祝いと言えばよう幸ちゃん、あいつらって新婚旅行とか行ったのか?」
「いや、式の後も二人揃って通常勤務だったな、そういえば」
「かーッ、いくら忙しいったって、あれからもう3年目だぜ。いい加減今回こそは、無理矢理にでも休暇ァやったんだろう…なっ!?」
ズズン!
他愛もない会話が、突然の衝撃によって遮られる。
耳触りな警報音がけたたましく鳴り響いた。
「何事だ!?」
「バイオネットのやつらか!?」
先ほどまでのだらけた状況から一変、猿頭寺が素早く状況をチェックする。いつもショボショボと半開きの眠たげな目が、画面を見て見開かれた。
「な、なんだァこれは…」
「猿頭寺くん!」
「オービットベースの至近に、巨大な飛行物体の出現を確認!そいつと衝突した模様です!」
そんなバカな!誰もがその言葉を飲み込んだ。
メインスクリーンに映し出されたそれは、大宇宙船と言って差し支えないサイズと形だった。
そんなものが、誰にも発見されずに、衝突するような距離にどうやって!?
―そんな疑問は後回しだった。
「オービットベースの被害状況は!?」
「基地本体及びディビジョン艦クニヌシ、損傷レベル3!それに観測衛星が数個破壊された模様です!」
「おい!地球に落ちるぞ!」
火麻参謀の言うとおり、衝突物は目で見てわかるほどのスピードで、地球の重力圏へ向けて吸い込まれていく。
「このまま落下した場合、地上への被害は!?」
「大きな被害が見込まれると思われますが、衝突の影響で機器が破損して、正確な追跡と計算が…」
「なんとか落下を食い止められないか!?」
「ダメです!機動部隊の出動、間に合いません!」
猛烈なスピードで地球に落ちて行く落下物は、すでに地球の大気と触れて赤熱していた。バラバラと装甲がはがれて散らばりながら落下していく。
「!一部装甲の予想落下地点が観測されました!市街地です!落下物本体及び、他の剥離装甲は、追跡不能!」
「くっ…とにかく、わかっているだけでも対処せねば!地上部隊を大至急派遣せよ!!」


Gアイランドシティ

「じゃぁ、何日かはお休みをもらえるのね?」
「うん、基地をがら空きには出来ないから皆いっぺんってわけじゃないけど、交代で少し休むことになったんだ」
「そうなの、よかったぁ」
大犬数匹と、仔犬は数十匹になるだろうか?
とにかくものすごい数の、セントバーナードと思しき大型犬の群れを、大学生くらいの男女がどうかこうか散歩させている。
この10年間でうんと背の伸びた、天海護と初野華だ。二人とも19歳になる。
「護くんがフランスに行っちゃって、すっごく心配してたのよ」
「華ちゃ…」
すねたように唇を突き出して見せる愛らしいガールフレンドに、声をかけようとした矢先のことだ。
護は急に違和感を感じて立ち止まる。華がきょとんと振り向いた。
次の瞬間、通信機に、非常事態を表わすシグナルが入った。戸惑っていた護の表情が険しくなる。
詳細を確認しようとしたそのとき…

ズドーン!!
轟音を立てて、すぐそばに、物凄いスピードで何かが落下した!
衝撃が港町に襲いかかる!
「きゃあぁ!!」
肝をつぶした犬たちがめちゃくちゃに駆けだし、華の小柄な身体が引きずられていく。
「華ちゃん!!」
護は追いかけようとするが、通信機からの入電がそれを許さなかった。
『護!アンタ今港湾地区にいるね!?』
「あ、あやめさん!アレは何!?何か、大きなものが…!」
『まだ正体は不明よ!今オービットベースから通信があって…何か、宇宙船の装甲みたいなものみたい。とにかく、地上班は人命救助のため急行!』
「わ、わかりました!」
護は通信を切ると、連れていた犬の中でもひときわ大きい、堂々とした一匹の前にしゃがみこんだ。
「おい、よーぜふ2世、華ちゃんを頼むぞ!」
通じたのかどうなのか、とにかく大犬は頼もしい感じに一声鳴くと、リードを離された他の犬を引き連れて、華が消えて行った方向に駆けて行った。
「さて、と…」
護は立ちあがって、背後の何もない空間に向かって声をかける。
「ボルフォッグ!そこにいるのはわかってるんだよ!出てきて!」
とたん、背後の空間がユラリと歪み、一台のパトカーが姿を表わす。護は盛大なため息をついた。
「だからさぁ、プライベートにまで付いてくるのはやめてって、いつも言ってるだろ!?僕はもう子供じゃないんだから!」
「申し訳ありません。しかし護隊員の護衛は、10年続く私の責務でありますので」
「だから!もう隊員じゃなくて、機動部隊副隊長!」
融通のきかない機械音声相手に機嫌が悪そうにしている護だが、ブツブツ言いながらも勝手知ったる様子でパトカーに乗りこみ、隊服に着替え始める。このパトカー、もといボルフォッグとは10年来の特別な付き合いだ。この緊急時に恥ずかしがるような間柄でもない。
動きやすいタイトなGGG隊服に素早く着替えた護がパトカーを飛び出して、振り向きもせず駆けだす。
次の瞬間、パトカーの停まっていたところには、紫色の装甲をまとった忍者のようなロボットが代わりにしゃがみこんでいた。
「護副機動隊長、IDアーマー、射出します!」
彼の片足から、銀のトランクが護の背後めがけて発射される。護もそれに合わせて高く跳び上がった。
「イークイーップ!」
護の叫びを受けて、トランクがガバッと開き黄金の鎧を空中に吐き出す。護の身体にアーマーがまとわれ、右目を覆うスコープが展開されると、GGG地上部隊を指揮する副機動隊長・天海護の戦闘装備の完成だ。いや、もう一つ!
「急がなきゃ…!」
護の額にGの紋様が浮かび上がり、身体が緑色に淡く光を放つ。髪が逆立ち、背には光る4対の翼が広がった。
そして護は地面を蹴ると、フワリと宙に身体を浮かせ、現場へと羽ばたいて行った。

天海護は、地球人である我々から見れば、いわゆる宇宙人である。
彼は19年前、彼の故郷である三重連太陽系の滅亡とともに、その最後の遺産としてこの地球上に降り立った。
機械文明の暴走により滅ぼされた、彼の生まれ星―緑の星。
同じように滅ぼされようとする地球を守るため、彼は10年前、幼い体で機械文明の脅威へと立ち向かった。
護の身体には緑の星の人類の持つ、勇気と命の力が宿っている。その力を発揮するのがこの姿だった。
この状態にある護は、サイコキネシスを始めとした、数多くの驚くべき能力を発揮する。
彼を分析したGGGでは便宜的にそれを『浄解モード』と呼んだが、しかし護のこの能力を知る者は一握りしかいない。
彼が宇宙人であることを知る者も、ごく一部の関係者だけだ。
この地球でそんなことが知れれば大騒ぎになるのは火を見るより明らかだ。おいそれと人前で変身するわけにはいかない。
そのため、護はわざわざ身体能力を強化するIDアーマーをまとい、なるべく浄解モードにならないようにしている。
どうしても緊急性のある場合は、アーマーをイークイップしたうえで変身することで、念力も翼も、全部この黄金の鎧の画期的な機能の一つということにするわけだ。

事故現場は騒然としていた。
落下の衝撃が地震となり、建物の倒壊に火事まで起きているようだ。
地上で逃げ惑う市民の間に降り立ち、避難の誘導をする傍ら、護はビル火災に目を止めた。
煙を吐き出す高いビルのいくつもの窓から、人が助けを呼んで手を振っている!
しかし、地上には車が何台も立ち往生し、とても消防車が入りこめる状態ではない。
護がインカムに向かって叫ぶ。
「爆竜!凍竜!」
『合点だ!』
『副隊長、ただいま到着いたしました!』
インカム越しの通信と、すぐ背後で聞こえる声がステレオ再生になる。
護が振り向くと、大きなポンプ車とレッカー車が、現場めがけて突進してくるところだった。
走りながら二台は、車体の底からブーストを吹き出して、浮かび上がる。
『システムチェーンジ!』
赤と青の鮮やかな車体が装甲となり、りりしい二台の勇者ロボが立ちあがる!
赤いポンプ車から変形して現れたのは、熱い魂の勇者、爆竜!
青いレッカー車から出現するのは、クールな静の勇者、凍竜!
ロボ形態に変形した彼らは、行く手を阻む瓦礫をものともせずに現場に向かっていく。
「副隊長!ここは我々にお任せください!」
「一人残らず、無事に救助してやるぜ!」
「わかった!二人とも、頼んだよ!」
無造作に地上に停まった車を鮮やかに退避させ、強力な放水で消火活動を行う二人の見事なコンビネーションに、護はその場を任せた。

「護くん!来たね!」
現場に到着した、ひときわ大きな救急車の運転席から、医療部で見知った顔が現れた。
「馬場さん!直接出向いてきたんですか!?」
「あぁ、どうやら今回はどちらかというとただの災害みたいだし…それに、落ちたのが市街地となると、怪我人も多いだろうと思ってね!」
救急車の荷台が展開して、満載した医療器具をズラリと並べる。
GGGの医療車だ。敵の目を欺くために救急車にカモフラージュされているが、人を運ぶスペースはない。その代わり、こんな風に医療器具がギッシリ詰まっていて、本物の救急隊の到着まで現場の応急処置を引き受けるのである。
「医療班のスタッフも大勢来ている。ここに誘導するのは彼らがやってくれるはずだ。護くんは別のところを!」
「わかりました!」

護が踵を返そうとしたとき、通信機に入電があった。
『護!地上部隊とは合流できた!?』
地上部隊の参謀を務める、初野あやめだ。華のいとこにあたる。以前はオペレーターを務めていたこともあったが、女性ながらそのたぐいまれな軍事関係の知識を買われ、参謀に昇格したとかなんとか。今や護の直接の上司である。
「はい!爆竜凍竜、それに医療部の馬場さんとも!」
『よし、その場は皆に任せて、アンタはすぐ落下物の調査に向かって!危険物の場合は迅速に撤去しなきゃならないからね!』
「わかりました!」
護が駆けだし、大きく息を吸って叫ぶ!
「ガリフォーーーーン!!!」
瞬間、風を切る轟音とともに、遥か空の彼方から、輝く四足の鳥が飛来する!
金属のボディを持つそれは、GGGの誇るスーパーメカだ。鷲のようなりりしい頭部、背部の飛行ユニット、ライオンのような下半身は、さながら伝説の猛獣・グリフォンの姿そのものだった。
「フュージョンッ!」
ガリフォンと呼ばれたその機体は、大空を一足飛びに駆けてくると、そのままの勢いで口を開き、護に襲いかかる!
護が鋭いくちばしに飲み込まれる直前、その身体が緑色に輝いたように見えた。
護を飲み込んで大空に飛び上がったガリフォンは、頭を胸部に埋めると、四肢を展開させて二足歩行の形態を形成し始める。
瞬く間に雄々しい人型に変形したガリフォンに備わる頭部が吼えた。
「ガイフォーーー!!!」

ガリフォンとフュージョンし、見上げるようなメカノイドに変身した護が、地響きを立てて落下物付近の大地に降り立った。
メカノイドの正式名は、ガイゴーMk-Ⅱ。通称ガイフォーだ。
かつて、三重連太陽系から帰還した護が、親友・戒道と共に搭乗していた機体の後継機。その特筆すべき機能は、なんといっても…
「アナライズ!」
護の口からボイスコマンドが発されると、ガイフォーの腕が展開し、落下物周辺をサーチし出した。
カメラアイも最大限に機能し、落下物を仔細に観察する。
しばらくすると、メインオーダールームのスクリーンと、護のスコープに、その分析結果が事細かに表示され始めた。
そう、ガリフォン及びガイフォーの前世代機の正体は、かの調査用ニューロメカノイド、覚醒人凱号!
その分析力、探査力をそのまま受け継いだガイフォーは、こうした調査任務にその真価を発揮するのである。
しかし―…

「な…なんだ!?」
最初に異変に気付いたのは護だった。
「あやめさん!落下物が、…う、動いてる!」
『動いてるぅ!?』
動いている!?その事実が確認されるにつれ、メインオーダールームに衝撃が走った。
今しがた、大気圏で真っ赤にあぶられながら降ってきた、宇宙船の装甲だ。それも、丸のままならともかく、バラバラに壊れながら、だ。機械が内蔵されていたとして、その機能が無事とは到底思えない。
いや、むしろ、その動き方…
「み…脈打っている…生きているのか、こいつ…!?」
護が観測したその動きは、確かに心臓の鼓動のような、有機的な動きだった。
その不気味なうごめきは、本当に生きているように見える。
機械生命体に覚えがないわけではないが、今こんな形で降ってくるものに心当たりはない。
ただでさえ、オービットベース近辺に魔法のように現れた、謎だらけの物体なのだ。
一同の背中を、得も言われぬ嫌な予感が走り抜ける。
アナライズ分析は、まだ、終わらない。
『護!一旦ソイツから離れ―――!!』

遅かった!
脈打つ落下物は、まるで今目覚めたとばかりに急激な変形と運動を始めたのだ。
一見してただの瓦礫のようだった落下物から、突然勢い良く伸ばされた長い腕のようなものに突き飛ばされ、ガイフォーが後ろへ数mも吹っ飛ばされる!
「うわああ!!」
『護!?』
アナライズ分析中に不意を突かれたガイフォーは体勢を崩し、轟音を立てて転倒した。
即座に起き上がって落下物を見るが、護はその見覚えのある動きに戦慄を覚えていた。
「あれは…まさか…」
もはやそれは落下『物』などではない!生き物だ!
硬い瓦礫だったはずの表面は流体金属のように柔らかく変化し、体に触れた自動車や瓦礫など、金属製のものを手当たりしだいに体に取り込んで吸収していく。
そして体をグネグネと変形させるその姿は、10年前の記憶を鮮烈に呼び起こす。
「まさか、ゾンダー!?」
生えてきた腕を地面に付き、墜落の衝撃で地中に半分もめり込んだ体を引きずり出すと、その全長はまさにかつてのゾンダーロボかそれ以上だ。
まるで脱皮した生き物が固まるように、ベキベキと音を立てて硬い金属の体が構成されていく。
どう対応すべきか、相手は敵性体なのか、護が判断を仰ごうとしたその時!
「きゃあああ!!」
「!!華ちゃん!?」
聞き覚えのある悲鳴に護が緊張する。なぜよりによってここに!?
少し離れた場所から、よーぜふたちが吠え立てている。
華だけではない、周辺で避難誘導を受けていた民間人が、目の前の金属生命体が密かに伸ばした触手に絡め取られていたのである。
その姿は、かつてゾンダー素体を集めようとしていたゾンダーロボそのものだった。
もう迷っている場合ではない。
機界昇華は確かに終結したはずだったし、ゾンダーがこの宇宙に残っているはずがないが、今目の前であの悪夢が繰り返されようとしている。
金属として固まった脚部は既に周辺市街地のさらなる破壊を始めている。何のために人をさらおうとするのかは不明だが、助けを求める民間人の悲鳴が次々と上がる。
『護!聞こえる!?』
あやめとの通信回線が開かれた。
『その化け物は、たった今、国連評議会で敵性体として認定されたわ…GGGの総力を上げて、排除承認!』
「言われなくても!!」
その瞬間、相手の急激な変化に手間取っていたアナライズ分析がようやく完了した。
相手の生命反応は…検知されず!
その分析結果に違和感を覚えつつも、ゾンダーロボのように内部に罪もない人間が囚われている可能性は消え、護は次のボイスコマンドを発した。
「ブレイクシンセサイズ!」
音声認識がされるや、再び胸の吸気口が大きく大気を吸い込む。
護の通信機に、メインオーダールームの未来のオペレートが届く。
『リンカージェル電池、スタンバイ完了。ジュエルジェネレータ稼働率、異常なし!擬似デュアルインパルス発生、増幅開始!リンカージェル活性化率、80%以上!微生物の遺伝子操作、開始します!』
吸気口、もといTMシステム―完全物質装置であるガイフォーの胸部は、覚醒人の機能を受け継ぎ、高度な生物工学技術を搭載している。
即ち、古細菌であるリンカージェルに大気中の微生物の遺伝子を書き換えさせることにより、瞬時にそれらを別の生き物へと作り替え、必要とする化学物質をその場で即座に作り出すのだ。
そしてそれを、ボイスコマンドを通して、敵に向けて射出することができる!
ガイフォーの胸が、高速の化学反応で光り輝く。
『ガイフォー、化合物生成95%完了!発射フェーズに移行可能です!』
未来の報告を受けて、護がガイフォーの腕を敵性体めがけて突き出すと、手首が展開して無骨な砲口があらわになる。
護が最後のボイスコマンドを口にしたその時だ!
「シナプス弾げ…!?」
スコープに表示された新たな分析結果に、護がすんでのところで口をつぐむ。
メインオーダールームにも同じものが表示された。
現れた文字は、敵中枢部の球状の部分に多数の生命反応を示している。閉じ込められた民間人たちだ!
ブレイクシンセサイズにかかったわずかな時間、その間に、敵性体は捉えた市民を体内に取り込んでしまったのだ。
砲身に溜め込まれた化合物、金属生命体を瞬時に溶かしてしまうような強酸を、慌てて地面に排出する。地面に散乱していたわずかな金属片にさえ反応して、ジュッと恐ろしい音が上がる。こんなものが、中の市民に一滴でもかかったら!

敵性体はもう完全に金属の巨大ロボとしての形をなしていた。
物騒な工具を取り付けた巨大な双腕、周りのものをなぎ倒すブルドーザーブレード、重厚なキャタピラは、解体作業で活躍する双腕作業重機のアスタコを思い起こさせる。しかし実際はそれよりももっと禍々しく、もっと凶悪な、破壊専門の巨大ロボと言ったところだ。
大きさはガイフォーより何mも大きく、振り回される大振りな腕に近づくこともままならない。
しかも、敵の内部に民間人が囚われているとなるとうかつに攻撃が出来ない。シナプス弾撃は先ほど封じられた。残された武装といえば切れ味鋭いガイフォークローだが、それでもこのサイズ比では有効打となるか怪しい。
他の地上部隊は民間人の救護で手一杯だ。
大バサミによる強烈な一撃を危うくかわした護の判断は素早く、的確だった。

「ガイフォー、ファイナルフュージョン要請シグナルが出ています!」
「こんな化け物が相手じゃ、根性でなんとかってわけにいかないね!」
「長官!」
「…そうですねぇ…」
「八木沼長官!!」
「…彼がそう言うなら。…ファイナルフュージョン…承認、と」
いつものゆったりとしたペースで、コンソールに承認ハンコが押印されると、じれったいと言うようにシグナルリーダーが突き出てそれを読み取った。
長官の正式な承認が出たことで、未来にいつもの大役が回ってきた。
「未来ちゃん!やってやりな!」
「は、はい!」
あやめの声に後押しされて、緊張した面持ちの未来の指が、キーボードの上を滑りプログラムのロックを素早く外していく。
「ふ、ファイナルフュージョン、プログラム…」
最後のキーを打ち終え、華奢な右腕が振り上げられる。
「ドラーーーーイブ!」
目をぎゅっとつぶって打ち下ろした拳は、防護板から少しズレて、ドライブコンソールのフチを強打したが、どうかこうかプログラムはドライブされたようだ。
右手を押さえて涙目になる未来を尻目に、『山じい』として親しまれるオペレーターが、「シミュレーション通りやってつかぁさい!」と、毎度の決まり文句を合いの手のように入れた。

「ファイナル!フューーージョーーーンッ!!!」
護の雄叫びと共に、電磁竜巻が吹き荒れてガイフォーの全身を覆う。
その強固な竜巻を突き破り、ガイフォーの周りを寄り添うように飛び回るのは、ドリルガオーⅢ、ライナーガオーⅢ、ステルスガオーⅣだ!
3機の新世代ガオーマシンが、プログラムリングの軌跡をトレースし、ガイフォーとのドッキング各部へと導かれる。
ブレードドリルを備え、岩をも砕くドリルガオーを装着した重厚な脚!
最新型新幹線のスピードで、何者の追随も許さないライナーガオーが貫くたくましい肩!
黒い翼とウルテクエンジンで、大空を自由に翔けるステルスガオーの成す鋭い翼!
ガオーマシンから頑強な腕が形成され、輝く前立ての兜と厳めしいマスクで顔を覆われ、額のGストーンと胸の黄金の輝きもまばゆく、ここに新世代のスーパーメカノイドが、嵐の中から高らかにその名を宣言する!
「ネオ!ガイ!!ゴーーーーー!!!!!」
ついに!勇気ある誓いの後継者による、新たなる勇者が誕生した―その名も、勇者王ネオガイゴー!