シネマね!~剣とナゴヤがB級ホラー~p3


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§1章 名駅ホームでまもなく列車が♪だだんだんだだん!


 夜空に銃声がこだまする。
 その様子を大樹はあぜんとして見守っていた。
 無抵抗に転がった……皮ジャンの少女。



 ──どうなったんだ? 女の子に銃を突き付けられて、ドンッて音がして……。



 すとんっと力が抜けた。臀部が冷たい床に着く。

「大樹ちゃんッ!!」

 聞き覚えのある高い声で、彼女がホームに入ってきた。
 長い一本のおさげ髪がちょっと垢抜けない感じがする、童顔の少女。
 おさげのさきっちょにはピンク色のリボンが結んである。
 服装は茶色いミンクのコートに、手には硝煙の登るショットガンを握っていた。


 葵だ。──さっきまでメールの応酬をしていた大樹の友達だ。


「大丈夫!? 危ないところだったよっ!!」
「お前っ! ここでなにしてんのよっ!!」
 相手が葵という安心感からか、大樹はやっといつもの調子を取り戻した。



「大樹ちゃんが心配でずっと後ろから追ってたんだよ!
 危機一髪だったね!!」
「いやいやいや、さらっと聞き逃せないこと言ってんじゃないわよ!
 じゃあなにか、あんたさっきのメールもすぐそこで打ってたの!?
 てかちげぇ!
 それよりつっこむところはショットガンだ!
 どーすんのよっ!
 あの子撃ち殺しちゃったわよ!!」



「む……ぅ」



 そんな問答の最中、皮ジャンの少女が、なんと息を吹き返して立ち上がったではないか。



「うっそっ!? 生きてる!?」
「細かい話はあとだよ!」


 葵はショットガンを構え、ズドォン!
 ……耳をつんざく衝撃をもう一撃見舞うと、大樹の手を掴んで立ち上がらせた。


「死にたくなかったらついてきてッ!!」


「おいおい、どっかで聞いたことあるぞそのフレーズ」
 ともかく、ここは葵に従ったほうがよさそうだ。
 葵と大樹は、改札方面への階段を駆け降りた。
 パンパンパンッ!! っと背後から銃声が連射される。


「ひぃーッ!」


 わけもわからず、泣きそうになりながら大樹は走る。
 改札に切符を通す余裕などない。
 ハードル走の要領でとび越え、太閤口という西側の出口から名古屋駅を飛び出す。


 音に驚いた人々で駅内外はにわかに騒がしくなっていた。
 タクシーが群れをなすロータリーで、葵は白い乗用車に飛びつく。
 そして運転席に踊りこんで、

「乗って!」
「乗れって、あんた免許あんの!?」
「いいから早くっ!」


 言われるまま助手席に乗る。
 葵がエンジンキーを捻ったその時、


 どんっ!


 ボンネットに皮ジャン少女が着地した。
 新幹線ホームから飛び降りてきたらしい。

「ギャーッ!!」

 大樹の悲鳴をよそに、彼女は無言で拳を振り上げる。
 そしてフロントの強化ガラスをパンチ一発で突き破った。
 その手で大樹の襟首を掴み、小さな体躯からは想像できない怪力で引き寄せる。



「ターミネーターかよお前はッ!!」
「大樹ちゃん、何かにつかまってて!」
「馬鹿よく見ろ! つかまれてんのはこっちだわ!」
 葵がアクセルを踏み込み、乱暴にハンドルを捻った。
 車は円を描くように踊り狂い、遠心力で少女は振り回される。
 続けて葵は停車していたタクシーに容赦なく車体をぶつける。
 ごちん、ごちんと数発やったところで、敵は耐え切れず手を放した。


 すかさず、車は一気に発進した。


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