381 名前:勇者ニート ◆.u3RuvgSYY 投稿日:2007/04/16(月) 21:31:31 0
コレットはグリズリーを撫でながら
「あのね、明日バラモス城に行って、作戦会議に出席するんだよね?
じゃあさー、じゃあさー、今日あたしの家に泊まんない? ポルトガの中にある民家だけどね。
お母さんの作る料理すっごく美味しいんだ」
「ギャギャギャギャギャ」
「是非行ってみたい、そうだ」
笑顔で羽をはばたくごくらくちょうの言葉を落ち着いた声で通訳するスノードラゴン。
僧侶のカミーユは青い玉がはめられたステッキを振り回して
「いってみたーい!」と子供のようにはしゃいだ。
「やれやれ」
世界が危ういというのに無邪気に振舞うメンバーを見て、ルガールは苦笑いをした。
しかしその明るさがルガールの切羽詰まった心を癒してくれている有難さも感謝に思った。
「なら、今日はコレット宅にお邪魔するか」
「おー!」
久しぶりに帰省出来て嬉しいコレットがはしゃいで巨体なスノードラゴンの頭の上に乗っかり
変な触角を弄りだした。
「びょ~~~ん」
「やめろ」
怒られ、しぶしぶ降りる。
途端にしょげ返ったコレットの表情を見て、皆で大笑いした。

384 名前:勇者ニート ◆.u3RuvgSYY 投稿日:2007/04/16(月) 22:14:57 0
辺りは薄暗くなり、夜になろうとしていた。
ポルトガ城下町の南西にあるコレット宅にルガールたちが到着した。
コレットがしーっ、と人差し指を口に当て、
「スノーが先に入って」
と悪戯顔全開でスノードラゴンに頼んだ。
「怖がったりしないか?」
「大丈夫だよ、きっと」
不本意ながらも承諾し、顔から大分離れたドラゴンの手で器用に玄関を開けた。
テーブルでコレット両親が夕食を取っていたが、スノードラゴンの巨大な体を見るや否や
スプーンとフォークの動きが止まった。
「邪魔するぞ」
ズカズカと入っていく。ブッ! と食べていた食べ物をコレットの父が吐き出す。
続いてコレットも身動きの出来ない両親の顔を見て含み笑いしながらついてきた。
「あっ、あんた・・・このモンスターは一体・・・」
娘の顔を見て、コレットの母はようやく口を開いた。
「しっしっし、ただいまあ!」
きゃははは、とお腹を抱えて笑った。
「お邪魔します」
誠実そうな戦士と熊、鳥、初対面なのに意味もなくヘラヘラ笑ってVサインをしてくる
間抜けそうな僧侶も家に入ってきた。

両親が食事を終えてから皆テーブルにかけ、談笑していた。
「ルガールさん、お酒はいる?」
父がポルトガ産の赤ワインを持ってきた。
「あ、では…」
「ガオ!」
グリズリーが先にグラスを突き出した。
「おぉ、熊も飲むのか」
ガハハハ、と笑いながらワインを熊に注いでやる。
珍しいのか、綺麗な赤で満たされたグラスを365度眺め回し、暫くしてから
グリズリーは一気に飲んだ。
「一気だ! すごーい」
お酒を殆ど飲めないコレットはパチパチパチ、と拍手した。
げふ、とゲップを出す。
奥から母が両手にご馳走を持ってきた。
「さー、出来たわよ」
大皿にたくさん盛られた肉料理、精がつくように、と作ったガーリックライス。
その他ポルトガ産の野菜、デスフラッターに貰ったたまごのスープ、豪華な
食卓となった。
修行をしてペコペコのみんなは待ちきれないという感じで、頂きますと早口にいい
がっつくようにして食べ始めた。

388 名前:勇者ニート ◆.u3RuvgSYY 投稿日:2007/04/16(月) 22:42:32 0
山のような量の料理を、ルガール達は10分ほどで殆どを平らげた。
みんなお腹いっぱいで、満足な顔を浮かべている。
「見事な食いっぷりだなこりゃ」
椅子に座りながらテーブルの隅で頬杖をついて眺めていた父が呆れた。
「もっ、もうお腹いっぱいだよ…」
「そりゃあれだけ食べればね」
小柄ながらも凄い勢いで食べていたコレットにカミーユが笑う。
酒豪のルガールはワインを片手に、一人何か考えている。
そのままゆっくり時間を過ごした。
2時間後。
調子に乗ってワインを馬鹿みたいに飲んだごくらくちょうとグリズリーが女の子達のところへ行き、何か訴え始めた。
「ぐおぐおぐおぐおがおがおがおがおがお」
「ギャオギャオギャオギャオ」
「もー、何いってるのかわかんないよー」
コレットも飲んで酔っ払ったらしく、グリズリーに抱きついて一緒に床に転げ落ちた。
「そうなんですか?」
「何がだ」
スノードラゴンに何も聞いてないのに疑問を投げかけたカミーユも同様、酔っ払っていた。
暴れて散らかったリビングに母がやってきて風呂が沸いたことを告げた。
「ルガールさん、先にお風呂どうぞ」
「すみません」
頭を下げ、酒を飲んでも冷静なルガールはいつも通りの行動で風呂に行った。
「コレットも入るぅ~」
グリズリーの爪を触って遊んでいたコレットが子供みたいに言った。
こういうネタに敏感なカミーユはすかさず「コレットえろーい!」とグリズリーに抱きつきながら叫んだ。
そこへギャアギャア叫ぶごくらくちょうもやってきて、くんずほぐれつの状態になった。

391 名前:勇者ニート ◆.u3RuvgSYY 投稿日:2007/04/16(月) 23:21:57 0
千鳥足になりながらも全員入浴を終え、2階で布団に入った。
ルガールとスノードラゴンが一緒の部屋で、残りは全員一緒。
全員足や手を絡ませあいながら仲良く寝た。以前は敵対していたモンスターと人間。
しかしそこには人間同士以上の温かみが感じられた。
コレット以外寝ている中、コレットは抱きしめていたグリズリーの体を一回ぎゅっと
強く抱きしめ、微笑みながら眠りに落ちた。
「グリグリ大好き…」

*    *


コレットの家を出て、ルガール、カミーユ、グリズリーが飛行できるスノードラゴンの背中に乗り、ごくらくちょうは
羽で空をはばたき、コレットは空飛ぶ箒に乗ってバラモス城に向かった。
「いつ見ても空からの眺めは格別だね!」
「わーすごーい」
コレットは空中でひゅんひゅん身軽に一回転して気分良さそうだ。
小さく見える地上のピラミッドを指差して色々話していると、前方から不吉な感じのする物体が見えた。
「ギャアギャア!」
ごくらくちょうは危険を察知したらしい。
空で一旦ストップした。
「なんだあれは」
スノードラゴンも気になった。
巨大なパワーを身に纏った邪悪な物質。
一同に緊張が走る。
その者は凄い速さでルガールたちの前まで一瞬でやって来て、
「よお! その女二人を貰おうか」
と体から迸る黄金の闘気を放出させながら言った。
鎧を脱いだニート城に住むカンダタ子分だった。


406 名前:勇者ニート ◆.u3RuvgSYY 投稿日:2007/04/17(火) 21:33:02 0
「お前は…」
ルガールはスノードラゴンの背中で立ち上がり、剣を抜く。
「もう俺の正体はわかるだろ?ニート城の人間だ。力ずくで女は頂くぞ」
カンダタ子分は剣も鎧も盾も身に着けていない。襤褸一枚を纏った無防備さが逆に
己の強さへの自信とも見れて、その闘気から発せられる計り知れない強さを考えると少し不安になった。
全員身構える。
「その箒の女! テメェは調教のし甲斐がありそうだ」
カンダタ子分が舌をチロチロ出して品性の欠片も無い挑発をした。
「やめてよ気持ち悪い」
体を震わして本気で嫌がるコレット。
カンダタ子分は慣れた感じで空を自由自在に動き、何を考えてるのかわからない
含み笑いをした後、いきなりフッと姿を消した。
「あれっ?」
キョロキョロ見渡すコレット。
後ろを見渡した瞬間、ルガールが「前だ!」と訴えた。
振り返るとニヤついたおぞましい表情をしたカンダタ子分の拳が、コレットの鳩尾にめり込む。
ズン、と響く五臓六腑がバラバラになるような衝撃。
「……ぐえぇっ!?」
目が飛び出しそうになるぐらい見開き、舌を突き出して箒の上で体をぴくぴく痙攣させている。
「むん!」
連続攻撃。カンダタ子分の組んだ両手でコレットを地に叩き落した。
乗っていた箒がブチ折れ、目にも留まらぬ速さで落下する。下にあったピラミッドに激突した!
外壁を壊して内部までめり込んだ。
破壊されたピラミッドの砂塵が宙に舞う。
「ごえへぇえっ!!」
腹を抑えてのた打ち回った。
棺おけに入っていたミイラ男達が驚いて一斉に出てきた。

412 名前:勇者ニート ◆.u3RuvgSYY 投稿日:2007/04/17(火) 22:16:06 0
「くそっ!」
不意に現れた阿修羅は、デタラメな強さだった。
ルガールはカミーユに飛行能力を与えて貰い、闘気を込めた剣で斬りかかる!
「だああーっ!」
ルガールの乱れ斬り。瞬間移動みたいな速さですいすい避けるカンダタ子分。
「甘いな、そんな腕じゃ」
ちっちっち、と指を振って余裕を見せていたが、途中、カンダタ子分のボディに運良く剣が触れた。
腹からダラダラとたれ落ちる赤い血。
「うおりゃー!!」
カンダタ子分が突如鬼のような表情になってキレまくった。全力の回し蹴り。
もろに食らったルガールは一気にポルトガの灯台付近の海上までぶっ飛び、
後を追ってきたカンダタ子分が素早くルガールの後ろに回りこんで手から閃光を発するオーラキャノンで痛恨の追撃。
「雑魚が傷つけやがって」
ルガールを中心に起きた大爆発が大気を震動させる。小波が起き、海中で遊んでいたマーマン達が海上に顔を覗かせた。
ルガールの体から焦げ付いた煙がぷすぷすと上がる。無残な姿でそのまま海に真っ逆さまに落ちた。
マーマンがズタボロになったルガールを見ると、「おいっ、こいつあルガールの旦那じゃねぇか」と
顔見知りらしく急いで救助に当たった。

スノードラゴンの上でグリズリーが本能的に脅える。敵わない相手だ、思い込んでしまったのだ。
頭を手で抑えてくうんくうん鳴いている。僧侶のカミーユは隣で密かに術を唱えている。
ほどなくしてカンダタ子分はカミーユの前に現れた。
「残りはお前らだけか。くっくっく」
腕組みをして余裕を見せる。
カミーユはステッキを前に出して目を閉じ、術に集中した。
「…我が全魔力よ、一点に集結せよ!」
「何しても無駄だ無駄! 1時間後には立派な精液便所に成り下がってる雌ブタだ!」
げへへへ、と卑しい目つきでカミーユの体に視線を這わせる。
特殊なステッキの力も借りて、驚異的な魔力が一点に集まった。カミーユは勝利を確信したような笑みを浮かべた。
「全てを切り裂け、極限の嵐よ!」
ぶわっ、とカミーユの周りに風が舞い上がった。カミーユの青いロングヘアーが上昇する。
油断しているカンダタ子分の周りに激しい竜巻が発生した。
「終わりよ! バギクロスストーム!」
竜巻の中で超スピードで回り狂うカンダタ子分は、体を無数に切り刻まれながら天に昇る勢いで
遥か上空に消えていってしまった。

418 名前:勇者ニート ◆.u3RuvgSYY 投稿日:2007/04/17(火) 22:47:07 0
「倒したのかな?」
髪をかきあげて空を見上げ、スノードラゴンに聞く。
「いや、まだ生きてるだろう。…ほら」
カンダタ子分がしぶとく、上空から降りてくる。
服が竜巻によって全て剥ぎ取られ、バギクロスの痕を無数に残していた。
「すげえことするじゃねえか?」
スノードラゴンの背中に乗り、カミーユの顎をくいっと手で持った。
もう全ての魔力を使い果たしてしまったカミーユは、お手上げの状態だ。
だが最後の最後まで抵抗する姿勢のカミーユは、ステッキでカンダタ子分の頭に振り下ろした。
「やーっ!」
雑魚モンスターも殺せるかどうかの痛々しい攻撃。
カンダタ子分は機敏な動きでステッキを掴み、握り締めて粉砕した。
「お前は、我がニート城に来た時、罰としてコレットと同様『レベルS』の部屋に入れる必要があるな」
「レベルS?」
「これまで耐えれた奴はいない、俺らの中でも一目置くとんでもねぇ部屋だ」
カンダタ子分はブツブツ意味不明な言葉を吐いた。
何故か剥き出しになったペニスがそそり立っていた。

421 名前:勇者ニート ◆.u3RuvgSYY 投稿日:2007/04/17(火) 23:13:25 0
訂正です。 
「罰としてコレットと同様」の部分を「罰として箒の女と同様」に変えて読んでください。 
カンダタ子分はコレットのことを知らないはずです。 

調子が悪いので今日はここまでです。


Part5



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最終更新:2007年05月29日 23:56