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199 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/04/20(日) 21:43:08 0 >>188 いいなぁ 自分のペースで書いていってください、ゆっくり待ってます。 いつか、勇者ニートも帰ってきてくれないかな・・・ 楽しい休日も、もう終わり ↓つづき 「おまえ、よろしく」 なんだ、この男は・・・? 何を言っているのかどうにも理解しにくいが・・・ひとまずおかしらに取り次ぐ。 「このつつ使う、まもの出てくる。このぼう、シタイあやつる。コレヤルー」 奇妙な小筒をいくつかと、小枝とを差し出す。 「おぉ、これがサマンオサ王の援軍か! ありがてぇ、王様によろしく言ってくれ」 筋骨隆々の肉体を躍らせて身を乗り出し、相手の手を取る覆面の男。 唯一俺の居るべき場所、唯一俺の拠るべき王。 サマンオサ王からの贈りもの。 向こうの地方に棲む、強力な魔物たちを封じ込め、使役できるようにした魔法の品らしい。 ・・・数日中に、あのロマリアの軟弱者共がまたぞろ攻め寄せてくるという情報が入っていた。 先日からフリッツの一団が行方知れずになって、人が足りないという時に・・・ そんな厳しい状況を打破する運の強さが、おかしらにはあるのかもしれない。 しかし、なぜ人間の王がそのような代物を? かの遠国の情報を掴むのには、俺たちでも苦労させられる。 この近辺のことなら、造作もなく知れるのだが。 今回の討伐隊の件も、日時から大まかな人数、そして作戦の概要にいたるまで全て俺たちの知るところだ。 王の助けを得られ、戦力も十分だ。恐れることはない。 「おかしら、ロマリアの件ですが・・・」 奴らの、筒抜けの作戦を逆用させてもらうとしよう。 まず魔物たちを正面で戦わせる。 おかしらはじめ主力を予め塔の外に伏せておいて、機を見て正面の奴らを挟み撃つ。 そうすれば、主力を叩きつつ塔内の別働隊に肩透かしを食わせられる。 主力を潰してから、別働隊とゆっくり遊んでやろうじゃないか。 「ほぉ、名案だな! よし、おめぇに任せる」 手下を潜り込ませておいた甲斐があったというものだ。 的確な情報と、適切に対処できる組織力があれば怖いものはない。 ロマリアには、そんなものはなかった。 無骨な料理と酒で、客人をもてなしている。 「そういえば、支城の件はどうなってる?」 「ケニーとジャンに行ってもらってます、そろそろ根拠地とできるだけの物資が用意できているはずですが」 「そうか、ジャンならしっかりやってくれるだろ」 気に入らないな、あの若造は。 いくら可愛いとはいえ、あんな若造をこうまで贔屓にされてはいい気分にはなれない。 だが・・・失敗を繰り返させれば、少しは見る目も変わってくるだろう。 放っておけば、気が済むまで女の尻を追っかけている連中だ。 物資の調達など、奴らだけでは予定通りに進められないだろう・・・ 200 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/04/20(日) 21:55:33 0 「おれ、帰る。カンダタ、ありがとう」 塔の外、奇怪な姿の救世主を見送る。 「おれ、おまえのことうらなう。おれい。」 救世主はそう言って、両手に赤と青の珠を乗せた。 男が何かを念じると、両の珠はゆるやかに浮上していく。 珠を浮かせたままにして、男は懐から透明な、丸いもの・・・髑髏のようなものを取り出した。 それをふわりと上に投げると、それは中空で鉛色に色を変えて鈍く輝いた。輝きながらそれは赤と青の珠に向かって速度を 上げていく。両の珠にかなり接近したあたりで鉛色の球体が分裂し、それぞれが赤と青の珠に衝突した。 赤の珠と、それにぶつかった鉛の球が空中で砕け散る。注視していると、砕けた赤と鉛のかけらが地に墜ちて、それは 自然と眼の貌をなしていた。もう一つの珠の存在を思い出して目をやると、衝突したはずの鉛色の球体は跡形もなく消え失せている。 対して青の珠は、その輝きを一層強めて昇天していった。 この場に居合わせたシャーマン以外の全ての者が、この不可思議な術に見入っていた。そんな雰囲気を気に留めず、 シャーマンは眼を貌づくる赤と鉛のかけらに歩み寄る。彼は、眼の貌をしたかけらの数と、色の配列を確かめているようだった。 しばらくして、彼はこちらに近づいてきた。どうやら、彼の占いは完了したらしかった。 「カンダタ・・・なん日かのうちに、おまえ百のめをもつものに会うかもしれない。  もし会ってしまったら、おまえタイヘン。会わなかったら、おまえ、シヌまでだいじょうぶ」 「百の眼? 聞いたこともねぇな・・・本当に百の足を持つ火吹きムカデなら知ってるが」 なるほど、ありもしないものに遭遇しなければ大吉・・・それはつまり、強運そのものだという意味か。 「百の眼って、そんなバケモノと出くわしたら誰だって危ねぇよなww」 「そんな奴おらへんやろ-」 見送りに出てきていた皆が、同じ解釈に行き着いたようだった。 「うらないは、うらない。カンダタ、みんな、ありがとう。  ゲンキでな」 帰り支度を終えて背を向けた奇妙な男・・・だったが、突然何かを感じたかのように振り返り 「カンダタ、こまったとき、これつかえ」 と、先刻の小筒とは色違いの、二回りほど大きな筒を手渡す。 そして、男は去って行った。 また、いつものカンダタ一味の空気が俺を心地良く包み込んでいく。 201 名前:('A`)[] 投稿日:2008/04/21(月) 05:54:18 O うほ、久々の更新キタ! どう繋がっていくのか異常にwktk感がある 208 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/04/27(日) 15:49:33 0 以前の書き込みを見る限り、携帯からでも存外うまく改行できてるんですね・・・安心しました ↓続きです それは、随分歪なものであったかもしれないが、少年の許には仲間が集っていた。 偉大なる勇者・オルテガの風あり・・・とまではいかずとも、ひとかどのリーダーとしては見做されていたのだろうか? 俺たちは明日、ロマリアを発たねばならなかった。先だって塔の近くに移動して、身を潜めていなければいけないためだ。 討伐隊の会合が一時解散した後、ロマリアに残っていた冒険者たちから情報を聞き出そうとしてみたが・・・まるで手がかりはなかった。 もはや、掴もうと手を伸ばすべき雲さえ見つからない。 俺は、どうすればいい? 俺は、どこに行けばいい? 爺ちゃん・・・ 次に気が付いた時には、安酒を片手に地下へ降りていた。 モンスターに賭けるあぶく銭も無く、無為に闘技場の空気だけを吸っている。 濁った空気を肴に呑んで、気を紛らわせているのかもしれなかった。 「こんなトコで何やってんのー」 この聞き覚えのある声にはいささか、不似合いな調子。 そんな声に、答える気もなかったが。 「おーい」 続く声とどちらが早いか、肩の辺りを引っ叩かれる。 少しひり付く肌の感触を捨て置いて、声の主に応えた。 「・・・そういうお前こそ」 「とーぎじょーでこづかい稼ぎ~w なんか文句あんのぉ?」 片手に高価そうな酒ビンを持ったまま、酩酊を疑いようのない口調でレンは答える。 「そんな酔ってて予想できるのかよ」 「まーだ酔ってないよw 次はスライムが勝つよ~」 俺たちの声の届く辺りから、苦笑の音の漏れるのが感じられた。 「お、おい、さすがにそれは」 「きっちりスライムに賭けますぅ」 ご機嫌な彼女には、もう誰の声も聞こえないのかもしれない。 「お酒買ってくるから、ちょっと見てて~」 スライムの投票券を押し付けて、彼女はフラフラと階段を登っていった。 また独りになった俺には、爺ちゃんのことを頭から切り離すことができなかった。 同時に、そう強く想いながら何もできない無力な自分に苛立ちを感じずにもいられなかった。 自分で自分の心を苛みながら無言で佇んでいる俺の周りは、ざわめいている。 「あの嬢ちゃんは、何者なんだ」 「次はあの子に乗ってみましょうか」 「はい、おかわりあげる」 買って来てくれた酒を受け取り、二人して端のテーブルについてゆっくり飲んでいる。 「なんか、簡単すぎて飽きてきちゃった」 「そんな台詞、一度言ってみたいよw」 「にしても、一人ってのも珍しいよな」 「相方、可愛い寝顔して寝ちゃってるからねー・・・アレンから見ても、やっぱり可愛いよね?」 「ん、ああ・・・可愛いと思うよ」 「・・・だよねー、私じゃいい引き立て役だからねー」 普段の彼女とはできそうもない、力の抜けた会話。 ・・・・・・ 「前より、たくましくなったよね。アリアハンにいた頃よりずっと」 「そろそろ、違う服も着てみたいなぁ」 何気ない、他愛も無い談笑のなか、少しは気が紛れたような心地がしていた。 無論それは、気休め以上の何物にもなりえないと解ってはいるが。 210 名前:('A`)[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 14:12:51 O なぜか勃起した 211 名前:('A`)[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 00:55:39 0 いいじゃないか 212 名前:('A`)[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 01:18:56 O ハードボイルドというかストイックというか へへ、オルテガの息子さんよ、アンタ・・・ロクな死に方しませんぜ 218 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 18:30:21 0 未完のまま、そして伝説へ・・・ いやそれは悲しい ↓続きですよ 「随分盛り上がってるな、お二人さん」 この男は、酒を携えていなかった。 「そー見えるぅ? だったら邪魔しないでよ~w」 やはり、平生の彼女とは違っている。 「楽しげなところすまないが、そろそろ休んだほうがいい」 「たしかに」 3人連れ立って宿に戻り、各部屋に別れる。 「あの子、お前に似ているな」 気持ちよく意識を失いかけていた俺の脳裏に響いた一言。 「・・・いや、こう表現すべきかな。お前もあの子も、どこかp―――」 ちょうど意識が切れていた。 目覚めは最高だったが、結局のところ意義に乏しい出発の朝。 いつ雨が降り出すか、といった感じの雲模様と同様の険しい表情を見せるレン。 「朝からどうかしたのか? まだ眠い、とか」 「頭痛い・・・べっ、別に心配は要らないから」 「そうそう」 いつもの調子に戻っているようだ。 そう感じた時には既に、相槌を打っていたマリエが呪文をかけ、親友の不調を取り去っていた。 「ね、心配しなくても大丈夫でしょ?」 こちらもいつもの調子。 俺たちとは少し離れた場所の男は、少し嬉しそうに雲を仰いでいる。 この天気の、何が嬉しいのだ。脇に抱えている、その絨毯は何だ。 ・・・言ってしまえば、彼もまたいつも通りなのだが。 危険な魔物に出くわすこともなく、雨に降られることもなく、俺たちは塔の近くまで歩き続けた。 塔の北西に伸びる海岸で適当な空き地を見つけ、そこで一夜を明かすことにした。 「別に寒くもないし、ここでいいだろ」 「多分ね。誰か、毛布持ってきた?」 「・・・」「・・・」「必要ないな」 「・・・ま、焚き火でいいか」 「レンちゃん、枯れ木は?」 「・・・」 「アレン、アンタ少しは準備してないの!?」 おいおい。俺に振るのかよ。 219 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 18:31:10 0 「まあいいじゃないか、ここなら酒の肴には困らない」 「はぁ??」 可愛らしいマリエの面に、濁った感情が表れる。 「さっきから・・・あなたには緊張感ってものがないんですか!?」 「過度の緊張は心身を固くするだけだな」 「口だけは随分ご達者なんですね」 3人の間に険悪な空気が流れ出した。やれやれ、まったく面倒な連中だ。 「まぁまぁ・・・この人の腕は俺が保障する、揉め事はよそう」 「腕とかどうでもいいの、兎に角こいつはムカつくの」 「・・・雛が五月蝿いな・・・そもそも雛は喚くものか」 「なっ・・・」 何がそこまで腹に据えかねたのか、いつの間にかマリエは足元の杖を掴み、男に向けている。 「さっきからウザいってば!・・・このぉっ!!」 値打ち物らしき杖に暗い祈りを込めて、振りかざした。 杖の先に狂風が巻き起こり、それはうねりながらバヤンに向かっていく。 しかし、標的の男は一顧だにせず、迫る風の刃を微風に触れるかのように受け流した。 「いつものこととは判っているが・・・あまり調子に乗るんじゃない、小娘」 そう溜息混じりに吐き捨てた男の眼に、並みの言葉では言い表せない濃密な殺気が滲む。 殺気に覆われた眼は、目の前でまなこを震わせる少女を冷たく射抜いている。 「待った待った待った!!」 すぐにでも止めないと、カンダタにも会わないうちに死人が出る・・・女の死体が一つ転がる。 「十分わかっただろ!? この人の力が・・・頼む、あんたもここは抑えてくれないか」 男は無言で10歩ほど離れて、酒ビンを取り出して座った。 女はその場で力なく座り込み、昏く定まらない視線で男を追っている。 何はともあれ、最悪の事態は避けられた・・・ パーティを組み、纏め上げるのがこうまで大変なことだったとは。 まったく煩わしい限りだ。こんな仕事は、さっさと終わりにして自由になりたいものだ。 「投げ出そうと思わない辺り、立派な心がけだな」 「え、あ・・・」 「これでも飲んで、ゆっくり寝るといい」 近づいてきた男が酒を手渡す。 「俺のほうは気にするな、もう慣れてる。もし心配なら、向こうを見て来い」 「え、慣れてるって・・・」 「たいていの物事には、理由がある」 その言葉に何故か納得してしまった俺は一言礼を言って、女二人のもとへ足を向けた。 226 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/05/10(土) 15:22:48 0 >>222 健全な妄想だなぁw 何か自分が暗すぎる気がしてくるwww ↓続きです 特に心配というわけではなかったが,二人の許に向かってみた。 一人は上着を被って蹲っている。 もう一人は,上着を貸した所為か少し寒そうに焚き火に寄っている。 「どうかした? もう寝かせたけど・・・心配?」 「ん,あぁ・・・」 「ヤな事があったときは,さっさと寝るのが一番」 「そう思ってこれ持って来たけど,ムダ足だったな」 踵を返して立ち去ろうとする俺を呼び止める声。 「訊きたい事もあるし,ちょっと座りなさいよ」 隣の地面を叩きながらレンは言う。 「で,早速だけど・・・あの人は何者なの? 確かに凄い力の持ち主みたいだけど,何か・・・  マリエも言ってたけど,嫌な感じがするのよ。あの人は。言葉では,上手く説明できないんだけど」 確かにあの男には妙なものを感じるが,俺にとってはそう不快なものではないが。 「そもそも,あれだけの力を持ってて,なんでこんな所にいるの?  あれなら,バラモスとだって十分戦えるでしょうに」 「それは・・・気になるんなら,直に訊いてみろよ。酒でもたらふく飲ませて」 そう,俺はあの男のことをあまり知らない。 確かに知らない。だが,俺にわざわいなすものではない。それだけは信じている。 「あの人は俺の命の恩人だし・・・危険ではないはず。確かに怪しいかもしれないけど」 「そう・・・じゃ,アンタに任せるからね。あの人は信じられないけど,アンタの事は信じてるから」 そう云い切って,レンは手土産の酒を呷った。 彼女の甘い溜息と,その一瞬の表情が酒の滋味のほどを雄弁に語りかけてきている。 次の瞬間の表情は,少しまずい顔。 「ん・・・あ~,何言ってんだろ,私」 なにがだ? 「酒は置いていくよ,今日は早めに休もう」 「お,おやすみ・・・」 苦い顔のまま,手を振っている。 227 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/05/10(土) 15:29:59 0 「戻ってくるのも一苦労スよ,マジ何とかしねーと」 疎ましい若造の声。 塔南部の森で息を潜めている俺たちに合流した若者の話には,いささか困った内容が含まれていた。 「前まで抜け道に使ってた東のトンネルに,変な親父が居着いてて通してくれないんスよ」 「殺っちまえばいいじゃねぇか」 「それが・・・いつの間にか変な仕掛けを作ったみたいで,抜け道自体が無くなってるんスよ・・・  仕方ないんで,筏を組んで北の川を渡ってきました」 向こうでも面倒なことが起こっているらしい。 討伐隊の件が片付いたら,ひとつ探りを入れてみる必要がありそうだ。 「ま・・・よく帰ってきたよ,お疲れ」 おかしら自ら酒を注いで,二人で杯を交わした。 物資の調達が遅れていることは不問らしい。全く,甘いものだ。 「そういえば,さっきの連中は何だったんですかね」 「あぁ・・・見かけ倒しって感じだったがな」 「俺たちが強いってことスよw」 「マリウスさんはどう思うよ?」 先刻,ジャンと落ち合う前・・・ 「しっかし,面倒臭ぇなあ」 「宝探しでもねぇのに,こんなところで野宿か・・・」 「また虫に食われてるよ」 「なぁ,酒飲んでもいいかー?」 下っ端たちは不満げな様子で歩いている。 だが勝敗は兵家の常,確実な勝利を狙うためにはこのくらいの苦労はやむを得ないものだ。 ・・・不満を言いながらでも従ってくれる,こいつらは盗賊でありながら誇り高き戦士たちだ。 ロマリアにいた頃に,こいつらのような兵士たちに出会っていれば・・・俺はここに居なかったのかもな。 「・・・」 先頭を往く『梟』ノガレが振り返って両手を広げる。 奴の夜目が,何かを捉えた合図。 そうして俺たちを制しておいて,寡黙な猛禽類は身を屈めてにじり寄る。 森の深い闇の中,動きを止めて梟を待つ俺たちの許に戻ってくる。 239 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/05/21(水) 00:39:33 0 仕事だりー ↓続きです 「冒険者,手練と見える。戦士系3人,魔法使い系1人」 簡潔な報告。彼らしい,一切無駄の無い文言。 「どうします?」 「う~む,下手に手出すのも危ねぇかもな」 手練の冒険者には,この辺りは用の無い地域だと思うが・・・ さらに修練を積みたいのなら東へ行くべきだし,財宝探しにしても他を当たるべきだ。 ・・・ 「ノガレよ,そいつらは辺りを警戒していたか?」 「いや,油断しきり」 「そうか・・・」 「念のため,殺っておきましょう,おかしら」 「念のため,だぁ?」 覆面の奥の眼が,俺を真っ直ぐに包み込んでいる。 おかしらは時々,こう・・・好奇の眼というか,純真な子供のような眼を向ける・・・ 「はい,今日この場所で野営する手練ども・・・どうにも臭います。  誰も来ないと油断しきっているのなら,この機に虚を衝いて殺しておくのが良策かと」 「むぅ・・・まぁ,取り越し苦労ならそれはそれで,色々と頂いておけばいいか」 俺は無言で頷き,翻って下っ端たちに指示を与える。 「俺はこいつらを連れて反対側に回り込みます。あの月が隠れた頃に奇襲をかけ,  相手が身構え終えたら一旦様子を伺ってください。奴らがおかしら達に神経を向けたその頃に,  後ろから俺たちが挟みにかかりましょう」 「よしわかった,そっちは任せる。死ぬんじゃねぇぞ」 「互いに」 「かしらは死なぬ,俺がいる」 数人の手下を引き連れて,おおよそおかしら達と対称の方角に回り込む。 奴らに気取られぬ距離,しかし迅速に襲いかかることのできる距離まで忍び寄る。 月はまだ出ている。 奴らは酒を飲んでいるのか,ゆったりした調子で雑談をしているようだ。 三人は酒を酌み交わし,あとの一人は浅い眠りに引きずり込まれている。 しばらくは様子見か。 月は位置を変えていた。 息遣いを殺して,時を待つ。 その中ふと思い起こされたのは,先日の占いだった。 占いの結果は別にして,俺はあのシャーマンの術そのものに魅せられていた。 奇妙で面妖で,それでいて有用な魔術。 俺たちの中に,あのような呪文の使い手はいない。 この先,俺たちが今以上に勢威を上げんとするならば,彼のような呪術に長けた存在が 必要なのではないだろうか・・・ 俺たちのために,俺たちの王のために。 そして,俺のために。 月はその輝く裸体を,薄雲に包み隠した。 250 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/06/01(日) 17:16:54 0 静かにミハルたんを待ちつつ投下 ↓続きですがな 「そういえば、最近イシスにも帰ってないな」 「たまには帰ってやれよ、浮気されても知らねーぞw」 「そこのイケメン、お酒取ってよ」 無防備な宴がきこえる、淡く火照った月の夜。 爽やかな冒険者たちの安らぐ夜は終わる。 宴の安穏を踏み砕く、斧の一撃を待つ者たちの夜が始まる。 そう、俺たちの夜。 談笑する冒険者たちの影に、歪な笑みを浮かべるものたちが滲み込むように影を重ねる。 もはや、冒険者たちの命には猶予はない。 肉の集った両腕に巨大な斧を掲げ、今なお己が終末に気付かぬ戦士の肩口に斧を降ろす賊の頭目。 幅広の刃は、戦士の胴の中ほどにまで割り込んだ。 裂けた臓物を染めて舞い散る血飛沫と、激痛に染まる五体から搾り出される悲鳴が冒険者たちに急を告げる。 「なっ、何だよ!?」 「起きてっ、起きてよアリオン!」 不可解な敵意を向けて襲いかかる賊徒たちに狼狽しながらも身構えようとする冒険者たち。 戦士の一人が、手元の斧を掴む。 慌てて得物を手に取った戦士の豪腕から、それを剥ぎ取る猛禽の足の爪。 「今だ」 丸腰の戦士に、三方から迫る短剣。 三本の剣は狂い無く肉に突き刺さる。 「ぐぅっ…このザマとは、馬鹿げた話…だ」 悔悟の沁みた呟きを残しながら崩れ落ち、その不本意な結末を受け容れる戦士がいた。 「なんで、なんで人同士で殺しあわなきゃいけないのっ!?」 突然に仲間を喪った悲しみか、それとも分別無き賊徒たちに向かった怒りか。 震えた声で怒鳴りながら、女僧侶が魔力を練る仕種を始める。 …この女、どれほど悲痛な表情をしているのだろうか。 ふとそう思いながら、かすかに愉悦に似たものを感じている俺がいる。 いつ頃だろうか、そういうものを愛おしく感じるようになったのは。 この女の望みなき嗚咽を、諦念の混じった苦痛の呻きを、一筋の光も発さない表情を。 女の心を少しずつ剥ぎ取り、削り、生まれるそれらを愛でてやりたくなったが、 今は一個人の欲を膨らませているべき頃合でもない。 ここでもう一度虚を衝き、完全で安全な勝を為そう。 俺たちのために,俺たちの王のために。 そして,俺のために。 257 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/06/09(月) 01:25:02 O 読んでくれた上でキモいと言うのなら、悪くはない ↓続き行きます 「お~怖い怖い、何大声上げてんの、カリーナちゃん?」 ゆっくりと体を起こす、酔いどれ戦士。 皮肉屋っぽい台詞を吐きながら僧侶に近づくその振る舞いに、まるで隙は感じられない。 「アリオン…」 僧侶の安堵を思わせる声に呼応するかのように、月は薄雲の着衣を解く。 木々の隙間から滲む裸の月の輝きが、互いの姿を晒させる。 「え…こんなに」 「さてと、まぁやるしかないかな」 相対する手下たちがうまく位置取り、戦士に得物を取らせない。 だが、戦士は表情を変えず 「俺をそこいらの戦士どもと一緒くたにしてくれちゃ困るねぇ、  この『百式』アリオン、素手での闘いもお手のものさぁ」 と宣う。 その横では、僧侶が呪文を唱えようと魔力を練り上げる。 「…さよなら、アリオン」 小声でそう呟いて、魔力のこもった掌を戦士に向けた。 「ん? ほがっっ」 戦士の体が力強く持ち上げられる。 子供に抱きかかえられた仔犬のように、戦士は何処へか連れ去られた。 「…勝手なことして、ごめん。でも…  私には判るから、こうするしかないの」 僧侶は誰に断ることもなく、誰に語りかけるでもなく独り言を続ける。 「大好きなアリオンにだけは、絶対に死んで欲しくないの。  元気でね…今までありがとう」 俺には関係のないことだ。 関係のないことなのに、不愉快な何かが胸に棲み着く。 その感覚が薄れるのを待たずに、冷静でないまま前進する。 頭では理解できているはずだ。極力冷静でいろと。 だが、俺の体は頭が命ずるより疾く不愉快な胸の住人を排除せんと動き出していた。 …俺の体が剣を振るおうと近づいた時には既に、俺の目が倒れた僧侶の姿を認めていた。 その横に転がる、少し朱の染まった白い槍。 291 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/07/13(日) 17:26:25 0 待っていた方がもしいたら、ごめんなさい(´・ω・`) ◆OW4jDecrBQです。 まあ言い訳は省略しますw ↓続きです 不運な戦士たちと、穢されることを厭んだ僧侶の死体。 それらに群がる賊たちの姿は、遠目に見れば死肉を貪る餓鬼達のように見えたことだろう。 獣の世に光を呼び込む勇者の姿は、まだ誰にも見えない。 血腥ささえ忘れてしまいそうな、ほのかな月明かりの下で冒険者たちの死体と野営の跡を漁ると・・・ 大したものは持ってはいなかった。だが、金だけは随分貯めこんでいたようだ。 死体に金など、必要ない。 結局、ここで得られたものは1万ゴールドにやや満たないくらいの金のみだった。 「ま、これだけの金になったのなら悪かねぇな」 「連中、弱かったなぁ。楽な仕事だぜ、まったくw」 「何が『百式』だよww」 「逃げ方が百通り、てことスよ多分ww」 ・・・ ・・・百? あのシャーマンが、確か・・・まさかな。 「マリウスさん?」 「ん、あぁ・・・気に留めるほどの連中じゃないだろ」 無駄口を叩きつつ、森のもう少し奥へと足を進める。 「おやぶ~ん、そろそろ休みましょうや」 「もうそんな時間か? ・・・そうだな、この辺で寝るとするか」 荷物持ちの当番が各人に毛布を配ってまわる。 「そういえば、塔には誰が残ってますか?」 「ん? 知らん」 「・・・チルクと、サングン」 『梟』、こういうときでも頼りになる奴だ。しかし、塔にいるのがあの二人というのは不安すぎる。 「・・・おかしら、俺が行ったほうが良さそうですね」 「いいのか? 今からじゃ寝る時間もなくなるぞ」 俺は黙って頷く。一日くらい、どうということはない。 俺たちの今後を考えるに、この一戦は重要な意味を持つ。 そんな時に、少しの無理も出来ませんなんて言ってられるものか。 「寝酒は程々にしろよ、明日は忙しいんだ」 「へーい」「うぃーす」 俺から下っ端たちに釘を刺す必要はなさそうだ。 「では、俺は塔に戻って万事整えておきます」 「おう、頼りにしてるぜ、マリウス」 296 名前: &color(blue){◆OW4jDecrBQ} [sage] 投稿日:2008/07/17(木) 23:09:55 0 おまいら今日はDS版ドラクエ5の発売日ですよ 俺は某アケゲーのうpデートがツボ過ぎて堪らないが DS版5発売記念ということで、中途半端だけど続き↓ 変な夢を見ている。 俺の目前には、ただならぬ何かを感じさせる金髪の女が立ちはだかっている。 どうやら俺は、この美しい女を打ち負かさねばならないらしい。 理由などは分かるはずもない、とにかく俺を殺そうとするこの女を退けなければ。 と、まずは得物を確認するか。 そう考えるうちに、無意識に視線が右手へと向く・・・ 自分の手を見ているはずの俺が見ている手は、金色に輝いている。 指先には鈍い色の爪が鋭く生えている。 慌てて他へ目をやると、右手の金色は全身に伸びていることに気が付いた。 この姿は・・・子供の頃御伽噺に聞いてた竜、という奴だろうか? 俺は誰に教えられるでもなく、目の前の女に向けて器用にブレスを吐く。 視界の先が、全て光になる。 「そろそろ起きたら?」 瞼の向こうは、全て光になっている。 すべての生きものの眼を明るく刺す光に。 「ごはん食べようか」 少し眩しく感じる強い日差しの下、レンとマリエは弁当を拡げる。 ・・・ 「あれ? 食べないの?」 「あ、いや・・・」 「どうせ忘れてたんでしょ? まったく何やってんのよ」 「じゃあ私のを半分あげるよ」 マリエがにっこりと笑う。 「いいのか?」「うん♪」 にこやかな表情のまま頷いたマリエが、落ち着きなく何度かレンに目配せしているように見えた。 「・・・わかったわよ・・・   えっと・・・わっ私のでもよければ半分くらい持っていっていいから! そうすれば一人分でしょ! 足りないの!?」 すこし乱暴に、自分の弁当を差し出す。 「あ、二人とも・・・ありがとう」 「れ、礼はマリエに言ってよっ」 「いいから、食べようよ^^ ロマリア城首席料理人直伝のレシピで作ったそうだから、きっと美味しいよ」 3人で、おいしくいただいた。 ・・・なぜ、3人なんだろうか? それを考え出すと、至極自然な時間だったようにも、あからさまに不自然だったようにも思えてくる。 「・・・1匹の蝶になった夢を俺が見たのか、俺になった夢を1匹の蝶が見続けているのか」 このひとときは、自然な時間。 今日の昼には、カンダタ一味との決戦・・・こんなときでも、至極自然に振舞える3人が少し羨ましい。 ・・・いや、俺も同じなのだろう。 俺の目的は、カンダタの討伐なんかじゃない。あくまでも、爺ちゃんの笑顔が見たいだけ。 そのことを、少しも忘れていないのだから。 この作品の感想を投稿 #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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