鬼語り

 むかしむかしのものがたり。

 
 
大地は肥えて野山は実り、
鉄(くろがね)多く生む土地は、
鬼が住まいて人寄(よ)らず、
彼の地治める人居(お)らず。
 
猫を伴い若者が、
知恵持ち意図持ち住処へ向かう。
鬼を封せし若者は、
彼の地治める人となり。
 
糸繰伴い若鬼が、
肝持ち腕持ち住処へ向かう。
石成り鬼と語らうは、
彼の地操る猫が所為。
 
彼の地治める若者は、
生涯伴侶に聖女を求む。
野心は芽吹き力持ち、
戦の準備を整えん。
 
彼の地住まいしその猫は、
英雄伝記に勇者を求む。
望みの種を植え付けて、
筋書通りの絵図とせん。
 
猫を伴う英雄に、
鬼気持ち嬉々持ち若鬼は、
語らい鬼との契りにて、
啖呵を切りて敵となる。
 
四面八方敵囲み、
それでも鬼は「きき」として
命を懸けた契りが為に
刀握りて飛沫(しぶき)と踊る。
 
四面八方切り伏せて、
勇者は鬼に倒されて
猫の思惑潰(つい)消えて
聖女の祈りが辺りに響く。
 
石鬼還りて若鬼と
盟約果たすその為に
力比べを望み出ん。
懸けたる代償(もの)は己が命(めい)。
 
大地は緋く河川も赤く
鬼が同士が力を比べ
鬼が同士は命を捧げ
勝者のみが其処に立つ。
 
大地は肥えて野山は実り、
鉄(くろがね)多く生む土地は、
聖女が治めて人寄らせ
彼の地治める人探し。
 
敵(かたき)を演じし若鬼は
程なく彼の地離れたる。
次なる強敵(あいて)を求めんがため。
次なる死合を望まんがため。
 
今も何処かで嬉々として。
 
甘露甘露とわらいつつ。
 
 
むかしむかしのものがたり。
(昔々の物語)
ひとよひとよのおにがたり
(人世、一夜の鬼語)
 
最終更新:2013年08月12日 19:54
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