ID:uhxwM2DO氏:愛に惑う紅き姫君

「あ……ああ……」

え、えと、今起きてる状況を整理するっス……
私はいつも通り登校してきて、私の靴箱を開けた……。う、うん、間違いなく私のっス……
そ、そこには見慣れない手紙が入ってて……って、ことは……

「ま、まじめにラブレターっスか!?」




~愛に惑う紅き姫君~




―田村ひよりさんへ―

入学式の日に、学校の前で初めて貴女を目にしました。その瞬間、ボクの心が大きく揺れ動いたんです。
貴女の長くて綺麗な黒髪、ぱっちりとした赤紫の瞳、そのどれもが、ボクが理想としていた女性像にぴったり当てはまっていました。
貴女の知り合いで、同級生の泉さんに聞いたところ、貴女もオタクなようで……ボクもオタクなので、ますます理想の女性なんです。
聞けば同人誌も書かれているとか……。お手伝いとかできたらな、と思っています。
今日のお昼休み、屋上に来てください。会って話がしたいんです。
顔も見たことのない男と話すのは嫌かもしれませんが……お願いします。




「……//」

あうう……し、心臓の鼓動が……すごい……
ま、まさかラブレターもらうなんて思ってもみなかった……//
で、でも、こんな私でも、好きになってくれる人がいるってことだよね……
えへへ……そう思ったら、にやけが止まらないや……
しかも明日は私の誕生日だし……偶然だとしても、嬉しいな……

「あれ、田村さん嬉しそう。何かあったの?」
「へへ……これ、貰っちゃったんだ……」

後頭部を掻きながら、尋ねてきた小早川さんにラブレターを渡したっス。

「はわわっ! らっラブレター!?」

あは、自分のことじゃないなのに顔を真っ赤にしちゃって。やっぱり小早川さんは純粋だなぁ……

……ん、小早川さん!?

し、しまったぁあ! 有頂天になってて今の今まで気付かなかったっス!!

「え……田村さん、ラブレターもらったの?」
「What!? ヒヨリ、イツの間にそんなフラグ立てたのデスか!?」

あうう……岩崎さんとパトリシアさんまで……

「田村さんすご~い!」
「ラブレター……こんなの、初めて見る……」
「良かったデスネ、ヒヨリ。念願のBoy Friendデスよ」

念願……ってわけでもないけどなあ。
でも、私にも遂に春が……!

「田村さん、行くんでしょ?」
「モチロンだよ! 私を好きになってくれる人なんてそうそういないだろうし、オッケーするつもりっ!」
「そう……なんだ」

ふっふ~! 今から昼休みが待ち遠しい!
相手はどんな人かな~。優しい人だといいな~……

「…………」





「明日はひよりんの誕生日なんだよね」
「ひよりん……って、あのメガネをかけた黒髪の?」
「わあ、こなちゃんと誕生日近いね」
「そうそう。あたしの4日前だから余計に親近感が湧いちゃってね」

しかもあたしと同じオタクと来たもんだ。他人の気がしないや。
でもなぁ、逆にプレゼントに困るんだよね。あたしが思い付くものはだいたい持ってそうだし……

「あ、あの、泉さん……」
「お、和田クンじゃん。どったの?」

今話し掛けてきたのは3―Aにいるオタク仲間の和田クン。
仲間といっても、あたしのオタクレベルに比べたら足元にも及ばないけどネ。


「こ、告白の言葉ってどんなのがいいのかな……泉さん、ギャルゲやってるからそういうのに詳しいよね……」
「んぅ? ということは好きな人でもできた?」
「くっ、靴箱にラブレター入れてきました……//」
「ええ!?」
「うっそ……」
「また古典的な……」

そうか~、和田クンにもようやく春が訪れようとしてるのか~。
ま、受け入れられたらの話だけど。

「ラブレターって、誰に?」
「さ、さっき皆さんが話してた田村ひよりさんです……」

おぉう。あたしに聞きまくってたのはそういうことだったのか……
確かにひよりんは(自分じゃ気付いてないけど)かなり可愛いし、話も合うからオタクにとっちゃ最高だよね。

「じゃあ、必勝法を「ダメよ、こなた」

ちょ、かがみ。セリフ被せないでよ。
てか、なんでだめ?

「いい? そういう大事なことは自分で考えなきゃダメよ。しどろもどろになってもちゃんと想いは伝わるから、頑張りなさい」
「わ~、お姉ちゃんかっこいい……」

むう、かがみんの言うことにも一理あるな……

「そう……ですよね。自分でなんとかします」
「そうそう。で、呼び出しはいつ?」
「昼休みです。屋上に……」

わお、これまたベタな場所を……
って、二人っきりになれる場所ってそこか校舎裏しかないよネ。

「じゃあ頑張ってね。応援してるから」
「はいっ」

意気揚々と……ではないか。元気よく返事はしたけど、背中から『不安たっぷり~』なオーラを発してるよ……

「大丈夫かな? 和田クン、気弱だし……」
「いざっていう時に真の強さを発揮するタイプじゃない? ベタだけどさ」

そうだといいんだけど……





「遂に昼休みだね、田村さん」
「そ、そうだね……」

ううう……身体の震えが止まらないっス……いわゆる『ガクブル』っスよ……

「そんなキンチョーしなくても大丈夫デス! ヒヨリは告白される側なんデスから!」
「あ、そっか……」

確かに、焦らなくても大丈夫っスよね……
と、とりあえず深呼吸……スー……ハー……
……うん、だいぶ落ち着いた。

「それじゃあ田村さん……頑張ってきてね」
「うん! 応援してるよ!」
「ありがとう、みんな! 行ってくるね!」

意気揚々と教室を出て、屋上へと向かったっス。
どんな人かな~。期待半分、不安半分ってところかな。
とりあえず、今から想像しても意味がないっスよね。屋上で本人を見なきゃ……

「……あ」

そうだ。恋人同士になった瞬間に屋上で一緒にご飯を食べるってのもなかなか乙なモンっスね。
よし、教室に戻ってお弁当を取ってくるかな。
そして、教室のドアに手を掛けた時だった。

「ヒヨリ、告白をOKするって言ってましたヨネ……」
「うん、確かにそう言ってた……」

ぱ、パトリシアさん……なんでそんな悲しそうな顔をしてるっスか……?

「そうなったラ……ワタシタチとヒヨリ……離ればなれになっちゃうんデスね……」
「「え……」」
「Because……Boy Friendと一緒にLunchしたり……登下校モきっとBoy Friendとするデス……」

……!!

「ぱ、パトリシアさん!?」
「ワタシ……えぐ……ヒヨリがいたカラ……ニホンでも頑張って来れたんデス……! Homesickになった時だって……ひっく……ヒヨリがComfort(慰め)してくれたから……克服できたんデス……! そのヒヨリが……ヒヨリが……!!」

パトリシアさん……
……ふふ、私は大きな間違いを犯そうとしてたんスね……
その場から離れ、私は屋上へ向かった。お弁当は……もういいや。





「パトリシアさん、大丈夫……私達がいるから……」
「それに、田村さんだって何回か戻ってきてくれるよ。だから……元気だして、ね?」
「ウウ……Thank youデース……持つべきモノはやっぱり友デスね……」
「たっだいま~!」

パトリシアさんの涙が止まったところを見計らって、私は教室に上機嫌で突入したっス。

「た、田村さん……?」
「Oh……ヒヨリ……どうっ、でしたカ……?」

まだ嗚咽が止まってなかったっスね……。まあいいや。

「ん? 断った」



ん~、良いねぇ。この沈黙。私だけがいたってノーマルという優越感。



「「「え゛え゛ぇぇぇ!?」」」

うん。みんな、反応がベタすぎるっスよ。

「な、なんでデスか……!?」
「そうだよ! 田村さん、オッケーするんじゃなかったの!?」
「確かにそう言ったけど」
「なのに……なんで……?」

ふふ、戸惑ってる戸惑ってる。
廊下で会話を盗み聞きしてたのはバレてないみたい。


「正確に言うと、延期してもらったの」
「エンキ……デスか?」
「うん」

私はみんなを見渡しながら、

「小早川さん」
「え?」
「岩崎さん」
「は、はい」
「そして、パトリシアさん」
「……」

胸に手を当てて、すっと目を閉じて……私の本心を、打ち明けたっス。

「みんなと一緒に過ごせるのって、今しかないからさ。だから、私が卒業するまでは『友達』ってことにしてもらったの」

う~ん、我ながら良いこと言った。てゆーかくさいかな?

「……ヒヨリ、ありがとデス……」
「どういたしまして」

やっぱり、私の居場所はまだここなんだね。

「そういえば田村さん、明日はお誕生日だったよね」
「じゃあ……誕生日パーティーを開こう。みんなで……」
「いいデスね! やりまショウ!」

ふふふ……やっぱり、友達っていいな……

「彼氏さんも呼ぶの?」
「人は多いホウが楽しいデス! 一緒にヤッちゃいまショウ!」
「ちょっと……ちゃんと了承を取らないと……」
「それじゃあ今から連絡してみる! ちょっと待ってね……!」

ケータイを取り出して、さっき入れたばかりの電話番号に掛けるっス。
えへへ、明日は今までの人生の中で最高の誕生日になりそうっス!!
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