私の存在理由ってなんだろう。
ただ生きてるだけで、ただアニメとかゲームとかにお金を使い果たしてるだけで、夢も希望も何もない。
アルバイトはしてるけど、社会貢献とはいえないだろうな。その給料も娯楽に消えてるワケだし。
私はなんでここにいるの? 私には生きてる価値ってあるの? 私は一体、何がしたいの?
わからない。
わからない。
わからない。
わからない。
私はなんで生きてるの?
いつからだろうな、こんなに黒くなっちゃったの。
今までは、普通にオタクを楽しんでたはずなのに。なんだか、疲れちゃった。
私はこんな言葉を言えるような歳じゃないけどさ。
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「え……人間の存在理由、ですか?」
とりあえず物知りなみゆきさんに、根本的なことから聞いてみることにした。
人間の存在理由がわかれば、自分がなんでここにいるか、わかるかもしれない。
「それは……難しいですね。『例え人間が絶滅したとしても、自然にはなんの悪影響もない』と言われてるくらいですから」
そっか。じゃあ人間って必要ないんじゃん。
だったら……死んじゃおうかな。生きてる意味もないだろうし。
「確かに、今の人間は自分の欲に呑まれがちです。そのため、自然には悪影響しか及ぼさない……しかしですね、私はそうは思いません」
窓の外を見つめながら言うみゆきさんの瞳は、とてもキレイに見えた。
私の心が荒んでるからかな。余計にキレイに見える。
「人間は、本当は『今の状況を良くするために存在するんじゃないか』……そう思うんです」
今の状況を……良くするため……?
「動物の世界で言えば、自然に大規模に手を加えられるのは今のところ人間だけです。
ですから、何か悪い事態が起こってしまった際に打開策を見つけだす……そのための人間だと、私は思っています」
う~ん、さすがみゆきさんだぁ。考え方がまず違うもん。
「じゃあ、さ……」
なぜだか、聞かずにはいられなかった。
それを聞くことで、私が何を考えているか、わかっちゃうっていうのに。
「私って、何のためにいるのかなぁ?」
「え……」
みゆきさんの表情が曇る。私の心の内を読み取ったんだろーな。
みゆきさんの目を見たくなくなって、私は視線を逸らした。
多分、ずっと私を見てる。どんな表情をしてるかは……わからないけど。
「……そうですね。泉さんは今、『自分の夢を決めるために生きている』のだと思います」
まるで見当違いな答えが帰ってきて、驚いた。
みゆきさんの顔を見てみると、微笑みながら私の目を見つめていた。
「人間は、生まれた瞬間に死に向かって歩き始めるんです。それまでに、人の存在理由はコロコロと変わっていくんですよ?」
「あ……」
「泉さんは、まだ夢がないんですよね。ですから、今の泉さんの存在理由は夢を見つけること。それを自ら断ってしまうのは……人間、失格ですよ?」
……やっぱり、みゆきさんは凄いな。私の心の中を、完全に見透かしてる。
見透かしたうえで、こんな私に進むべき道を与えてくれた。
私には……絶対に真似できない。
「死ぬことはいつでもできます。でも」
「死んだらそこで終わり。もう何もできなくなる。でしょ?」
「うふふ……わかってるじゃないですか」
そう、本当はわかってた。『わからないと思い込んでいた』。
私が今、やるべきことは……進むべきルートを探すことから始めなきゃいけない。
それが決まったら、今度は『夢に向けて努力すること』。それが私の存在理由になる。
「みゆきさん、ありがとう。私、たまにものっすごいネガティブ思考になっちゃうんだよ」
「いえ、お役にたてて光栄です。例えどんなにネガティブになったとしても、自らの命を棄てるような行為はやめてくださいね」
存在理由。そんなものは最初からない。
生きていることそのものが、人間の存在理由なんだ。
私の目の前には……そりゃあ限界はあるだろうけど、無限にルートが広がってる。
私はそのルートを歩いていく。どこに繋がるかはわからないけど、それが、私の選んだ道なのだから。
最終更新:2008年05月19日 00:37