「俺とこなたの誕生日」ID:GB3ybTQo氏

 諸君。

 俺は特に取り得があるわけでもない、ごくごく一般的な小市民だ。ケーンだ。いや俺の名前はケンじゃないが。
 アニメや漫画、ゲームに対し人並み以上の興味があると思っているし、趣味は? と聞かれて最初に挙げるのは某TCGだ。
 個人的に5D'sはギャグアニメだと思っている。俺のターーーーーン!!
 つまり俺は世間一般で言う「オタク」だ。大体のオタクがそうであるように運動は得意ではない。
 そう、どこにでもいる人間なのだ。
 ちなみにいつも気が付くとジョジョ立ちしている。


 日付は5月26日。俺はいつものように白石ほか数名と昼飯後の雑談を楽しんでいた。
 本日のメインディッシュは白石のノロケである。
 この男、なんとスーパーアイドル小神あきら様と一緒にらっきー☆ちゃんねるというラジオをやっているのだが、
 2月に思い切ってアタックしたところOKをもらってしまったのだ。
 俺もそれに協力したといえばしたわけだが、相手は天下のあきら様だ。
 うらめし……じゃない、うらやま……いや両方だってばよこンの野郎!

白石「いてっ! 何すんだよ」
俺「前にあったこと思い出したらなんか無性に叩きたくなった」

 この俺と白石のひねくれた友情そして武勇でんでんででんでん! はまあ、そのうち語ることにしようじゃないか。
 ネタが古いって? いちいちうるさいな。

白石「そういやお前、あさって暇?」
俺「ん?」

 突然話の矛先が俺に向く。
 あさって5月28日は俺の誕生日。みんなでどっか遊びに行こうぜ! ってな流れだろう。

俺「いつものように暇」
友A「んじゃ学校終わったら誕生日祝いも兼ねてカラオケな」
俺「拒否権は」
友B「あるわけねーよ。暇なんだろ」

 もちろん深い理由なんてあるわけがない。ノリだ。仮面ノリダー。いくつだよ俺。

友A「まさかちゃっかり彼女作ってたのか!?」
友B「くおぁーっ! みのるに続いてお前もか! 相手は誰だ、このクラスか!」
俺「OK落ち着けお前ら。それは誤解だ話せばわかる」
友A「なんだ違うのかよつまんねーな」

 それは肩をがっしり掴んで言うセリフか?
 いてぇよ力入れすぎだよ離せよそろそろよ。

白石「で、大丈夫なんだろ?」
俺「あいにく大丈夫だよ。お前こそあきら様との約束入ってドタキャンとかもう勘弁してくれよ」
白石「し、心配いらねーって!」
友B「お前の心配いらないほど心配なものはねえよこの前科二犯め」
俺「あ、ちょいトイレ行ってくるわ」
友A「いってらー」

 体育の後にジュース飲みすぎたせいで急に催してきちまったよちきしょーめ。
 俺はさっと席を立って教室後方のドアをメザシ。やべえ間違えて無変換押しちゃった。
 改めてドアを目指し歩き始めた時、その声は聞こえてきた。

?「そういえばあさって、あんたの誕生日よね」

 俺に話しかけてきた女の子はどこの誰さんですか?
 と思ったら違った。二年の時同じクラスだった柊が友達と話をしていた。
 ん? ちょっと待て、もしかして誕生日ってその友達のか?

こなた「そーだよー」

 あれは泉か。へぇ、泉って誕生日俺と同じなのか……。
 おっといかん、トイレトイレ。


 スッキリして教室に戻ると、相変わらず柊たちは泉の誕生日のことで盛り上がっていた。
 俺はそ知らぬ顔で自分の席に戻り、彼女たちに聞こえない程度の小声で尋ねた。

俺「なあ、泉もあさって誕生日なのか」
友B「そうなのか? 珍しいこともあるもんだな」
友A「なんだぁ、惚れたか?」
俺「何をおっしゃる」
友A「あの4人なら高良だろ!」
友B「俺だったら柊かな」
俺「柊2人いんぞ」
友B「あーっと、髪短い方。妹だっけ」
白石「俺は断然――」
俺・友AB「黙っとれ」
白石「すいません……」

 なんてバカをやってるうちにチャイムが鳴る。
 次の授業は世界史か。寝ちまいそうだな……寝たら殴られるんだよなあ。
 割と俺は体罰常習犯だから困る。
 泉もほぼ毎回殴られてんな。黒井先生と仲いいよな。


 泉と話す機会はそれなりにある。オタク同士話題が共通してるからだ。
 まあ俺の知識なんて泉と比べりゃ足元にも及ばない程度のものなわけだが。
 話の展開も俺が泉に「このアニメがオススメ」「このゲームやってみなよ」と薦められるばかりだ。
 あいつの場合は小さい頃から父親にオタク知識を仕込まれてたらしいしな。
 中学2年でようやくこっちの世界に目覚めた俺なんてとてもとても。

 そういや泉ってそんなに顔悪くないよな。むしろどっちかっつーとかわいい方か?
 オタクや腐女子にかわいい子なんていないよ(笑)には例外なんて存在しないもんだと思ってたのになあ。
 あぁでも泉ってちっこいからな。目立たないのか。
 ん? オタク目線で行くと逆にちっこい方が需要がある?

 おおっと、俺ちょっと泉を意識しすぎじゃないですかね。単に誕生日が同じってだけじゃん。
 そりゃまあ白石みたく恋に友情に奔走ってのもやってみたくはあるけどもね。

ななこ「おらぁッ! 人の話聞かんかいッ!!」
俺「あどっ! あああああいてええええええええ」

 みみみみ眉間に突然何かが物凄い勢いでかっ飛んできてクリーンヒット!?
 敵襲か!? 曲者め出あえ出あえーッ!

 と、我に返って机を見るとそこにあったのは寿命の残り少ない青チョーク。
 弾丸はこいつか! ……って待て待て、てことはこれを投げたのはズバリ――

ななこ「もう一発いったろか」
俺「廊下に立ってます」
ななこ「殊勝やな」

 眉間をさすりながら俺は教室を出る。
 こんな感じでいっつもみんなの笑い者な俺です。
 ……あーいてぇ。くっそぉ青はナシだぜ黒井先生。わざわざ硬いの選ばないでくれよ。


友A「おつかれさん」
白石「ホント進歩しないよなお前」
俺「もういいんだ……俺はこの生き方でいいんだ」

 授業が終わり、我が心の友たちがいつものように俺の席に集まる。

友B「んで? 今日は何考えてて自分の世界入ったんだ?」
俺「ん……いや、なんでもねえよ」
友A「泉じゃねーの? その気になってたんだろ」

 ブフーッ

友A「ちょwwwwwwきたねえwwwwwwwwww」

 爽健美茶を盛大に吹いてしまった。だって図星だったんですもの。

白石「泉ねぇ」
友B「泉かぁ」
友A「泉なぁ」
俺「その気になってたことは否定しねえ。なんだお前ら揃ってその顔は」
白石「いやいいじゃん。お前泉と結構仲いいし」
友A「お前ってイロモノ好きなのな」
俺「ほっとけ。大体な」
友B「別に好きってわけじゃないってんだろ」

 なんということでしょう。さすが付き合い2年ともなるとツーカーっぷりがやばい。

俺「わかってんならいいだろもう」
友B「へいへい。次って何だっけ」
白石「生物だな」
友A「やっべ宿題やってねえ! 見せてくれ!」
ひかる「そういうのはせめて1時間前にやれな。減点10」
友A「/(^o^)\」

 桜庭先生来るの早すぎワロタ


 そんなこんなで放課後となりまして。
 白石はらっきー☆ちゃんねるの収録、他2名は部活。俺? もちろん帰宅部ですよ?
 掃除も済ませてあとは帰るだけとなったわけでした。

こなた「ねえ、帰りにメイト寄ってかない?」

 同じく掃除当番だった泉が、掃除が終わるのを待ってたらしい柊姉妹に声をかける。
 いつも思うけど大宮は寄り道ってレベルじゃねーぞ。お前幸手だろ。

かがみ「今日はパス。神社の仕事あるのよ」
つかさ「ごめんねこなちゃん」
こなた「んまあ用事あるなら仕方ないよ。じゃーね2人とも」

 手を振って廊下に消える柊たち。後に残る泉。高良は委員会。
 あれ? これってチャンスなんじゃね? 何のチャンス?

俺「なあ泉」
こなた「ん? どしたの?」
俺「アニメイト行くなら付き合わせてくんね? 欲しい本あるんだ」
こなた「おぉ! やっぱ持つべきものはオタク友達だねぇ!」

 いやだから俺あんたの足元にも及ばねえっスから!
 にしてもどうしたもんやら俺。
 これはあれか。マジで恋する5秒前っつーかとっくに5秒過ぎてますよ的なあれなのか。
 もはや軽くデートだし(笑)ありえん(笑)


 そして俺たちは電車に乗って大宮へ。相変わらずオタクな会話を繰り広げながら大宮へ。
 でもってアニメイトへ。俺が買ったのは読んでる漫画の最新刊3冊とラノベを1冊。
 泉が買ったのは漫画5冊にCD2枚にDVD1枚……って多すぎだろさすがに。

こなた「いやー、なんか今週は発売日が集中しててね。しょーがないじゃん♪」

 しょーがないじゃん♪っておま。
 ……やべ、ちょっとかわいいかもしれねえ。俺ロリコン乙。

 次に俺たちが向かうはゲーマーズ。
 ってハァ? メイトで終わりと違うんかい。
 とか思ってたら同じ漫画さらに1冊ずつ買ってるし。マジありえん(笑)
 保存用とか布教用とかってやつか。よもや目の前でそれを見ることになるなんてなあ。

 これで今度こそ本日のお買い物終了であります。
 鞄に入りきらない大サイズの袋を2つ提げ、泉はホクホク顔で道を歩く。
 あぁ、なんか悪くないなこういうの。

 さて。
 帰りの電車の中で俺は今日の本題を切り出した。

俺「そういや昼に話してるの聞いたけど、お前って誕生日28日なのな」
こなた「そーだよ。どうかした?」
俺「実は俺もなんだよ。誕生日5月28日」
こなた「ほっほぅ! こんな偶然もあるもんだねぇ」
俺「この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ」
こなた「侑子さんこんなとこで何やってんですかー」

 とまあ時たま漫画のネタを織り込みながら話を繋げるわけだ。パーフェクトなわけだ。

こなた「じゃあ私から何かプレゼントあげようか!」
俺「へ? いやお前も誕生日じゃん……」
こなた「もちろん私も君からもらうのだよ!」

 それは俗に言うプレゼント交換ってやつですかね。
 高校でそれはどうなんだ。幼稚園と小学校でしかやった記憶ねーぞ俺。

俺「まあいいけど……期待すんなよ。何か作れるほど器用じゃねーからな」
こなた「逃げ道用意しようったってそうはいかないよ。対価は常に等価じゃないとね」

 同じネタで切り返すとかマジぱねぇwwwwwwww

俺「わかった。なんか考えとく」


俺「というわけで頼む。協力してくれ」

 翌日、俺は白石に開口一番そう言った。

白石「そ……それはいいけどよ、俺だけじゃなくて――」
俺「あ い つ ら は ア テ に な ら ね え」
白石「……わかった。お前には2月の借りもあるしな」

 昨夜いろいろ考えた。
 だがしかし妙案が思いつかない。
 当たり前っちゃ当たり前さ。俺ほんと手先不器用だもの。
 DVDやゲームはどうよ? とも思ったさ。でもダメだろ買ったもので済ますなんて。
 下手したらっつーか下手しなくても既に持ってそうだしな。
 つうか泉は手作りする気まんまんだったもんな。
 何作るんだろうな。キャラもののキーホルダーとか自作すんのか?
 いや、あれで案外料理上手かったりするのかも。お菓子なんか作られたら素で惚れるわ。

俺「ありがとう白石、マジ恩に着る」
白石「いいって。それよりどうする、28日って明日だぞ」

 そうなんですよねー。28日って目と鼻の先なんですよねー。
 時間の制約ってやばい。「不器用な俺が」「1日で作れて」「泉にとって需要があるもの」を作るわけだぜ?
 せめて時間に余裕があればマシな物も作れるかもしれないのに。
 ……なんて文句言ってる時間すら惜しいわい。まだ泉は登校してきてない。行動を起こすなら今のうちだ。

俺「どうすればいい。今この時間にできることってあるか」
白石「そうだな。リサーチなんてのは?」
俺「なるほど」

 泉の友達でもう学校に来てるのは――ああ、高良も柊もいるな。ってことはC組に柊姉もいる。

俺「2人に聞いてみてくれ。リサーチの理由言ってもいい。俺はC組に行ってくる」
白石「了解」

 この場を白石に任せ、俺はC組へ急いだ。
 泉と特に仲が良い柊なら……柊ならきっとなんとかしてくれる。


かがみ「こなたが最近欲しいって言ってたもの、ね……」

 柊は思いのほか協力的だった。茶化されるのも覚悟の上だったのだが。
 この手の話題は女の糧ってわけかね。

かがみ「んー。峰岸はどう? 彼氏持ちの目線から見て」
あやの「え? ええっと」

 峰岸って彼氏いんのか。まあ言われると納得って感じだけどな。美人でおっとり系だし。
 つーか今さらだけどこの学校かわいい子多くね? 生徒の総数多いからか?

あやの「そうね。相手が欲しがってる物をあげるのもいいけど、自分がもらって嬉しい物っていうのもありだと思う」
俺「俺がもらって嬉しい物」
あやの「泉ちゃんと話題合うんでしょ? 彼女が喜びそうな物、考え付けると思うけど」

 それ昨夜じっくり考えたっすよ。んで泉の方が造詣が深いからこの路線はダメ←結論。
 どうでもいいけどゾウケイなんだな、ずっとゾウシだと思ってたわ。
 ゾウシで一発変換できなくて「造」と「旨」わざわざ個別に打ってた。
 つうか「旨」じゃなくて「詣」だしwwwwしっかりしろ漢検2級wwwwww

 いや、でもそうか。共通する趣味で攻めるのはやっぱ基本かつ常套。
 もう一度考え直してみるのもいいかもな。

俺「サンキュー。考えてみるわ」

 手を振ってB組に戻ろうとする俺を柊が引き止める。

かがみ「あぁ待って、思い出した」
俺「何を?」
かがみ「こなた、昨日『そろそろ新しいマウスパッドが欲しくなってきた』って言ってたわよ」
俺「そ  れ  だ」

 さすがだぜ柊もう最高! お前が選挙出たら俺絶対に清き一票を捧げてやんよ!
 マウスパッド。確かに俺ももらったら地味にだけど嬉しいわ。
 あれだな、最近のだと腕への負担を軽くするクッション付きのとかあるよな。これはいけるぞ!

俺「2人ともマジ助かる! 今度なんか奢るわ!」
かがみ「別に奢ってくれなくていいから。私たちにもちゃんと結果報告しなさいよね」
俺「モチのロンロン」
あやの「がんばってね」
俺「全力でがんばります! あ、どこから漏れるかわかんねーからあんま誰かに話すなよ」
かがみ「わかってるけど、それより自分の声のデカさを直せよ」
俺「地です。そういや泉の好きな色とかわかるか?」
かがみ「赤とか黒が好きだって聞いたことあるわね」

 ああもう組織票あげちゃいたいぜ!


 それから5分ほど経って泉が教室に現れた。
 俺の肩をポンと叩いて「期待してるよん」。フッ、目にもの見せてやるぜ。
 廊下に避難して俺たちは作戦会議を再開する。

俺「成果はどうだね白石隊員」
白石「はっ。有力と思われる情報を2つ入手いたしました」
俺「報告せよ」
白石「第一に、昨日話をしていた中で泉こなたはマウスパッドを欲しがっていたと高良隊員から」
俺「いつの間に高良も隊員になったんだよ。それは俺も向こうで柊から聞いた。して2つ目は」
白石「2つ目は柊つかさ隊員からの情報です」
俺「柊も隊員なのかよ」
白石「昨日の夜、メールでケーキ作りについて相談をされたとのことです」

 ワァーオ!!

  _   ∩
( ゚∀゚)彡 ケーキ!ケーキ!
 ⊂彡

 間違いなく俺のため! 間違いなく泉のプレゼントは手作りケーキ!
 俺は萌え死んだ。スイーツ(笑)

俺「俺はケーキが大好きだ」
友A「種類で言えば?」
俺「何でも食える。ケーキバイキングとかマジ行ってみてえ」
友B「ねーって。俺二切れ食ったら胃が痛くなる」

 わかってねーなお前ら。ケーキこそまさに至高のデザートじゃないか。
 他のお菓子にはないあの高級感。あれぞ女王。
 マリー・アントワネットを師と仰ぐこの気持ち、お前らにはわからんのだろうな。俺にもわからん。
 ちなみにパンがなければ云々の発言は本当はアントワネットのものではないらしいな。

俺「ってドゥーッ! お前らいるならいると言えええええ」
友B「ドゥーッ(笑)」


 時は進み放課後。
 友ABはいつものように部活だ。白石は今日は仕事もCoCo[ピーーー]のバイトもないらしい。

俺「付き合え。プレゼント選びだ」
白石「おう」

 さて、どこに行ったもんか。

俺「実用性重視にするか泉の趣味を汲んでキャラものにするか。どっちがベターだと思う」
白石「そりゃ……実用性じゃないか?」

 だよな。泉のことだからキャラものを買っても「保存」されそうだ。
 それにキャラものが必要なら昨日メイトとゲマズに行った時に買うはずだからな。
 買わなかったってことはマウスパッドには実用性を求めてるってこった。

白石「マウスパッドか。俺んちパソコンないから詳しくないけど」
俺「まあとりあえずヤマダ電機行くぞ」

 そうして俺たちはチャリンコを飛ばしてヤマダ電機岩槻店へ向かった。こういう店が近いっていいな。

 ん? 手作りの話はどこに行ったかって? やっぱ俺には無理だと思うんだよ。
 ならば必要なのは態度だ。たとえ手作りじゃなくても一生懸命吟味した物には心がこもると思わないか?
 大体マウスパッド自作って聞いたことねーし。

 ……さあ着いた。
 駐輪場にチャリンコを停めて店内に突入だ。おっと買い物前にポイント入れないとな。
 これ買い物前10ポイント買い物後90ポイント以外出ないようになってるだろ絶対。
 白石ポケットティッシュもらってんじゃねえ。どんだけ溜め込んでんだ。

俺「えーっとパソコンパソコン……あっちか」

 ゲームやら携帯の売り場を横目にずんずんと歩く。
 ヤマダってゲーム高いよな。電化製品は良心的なのにな。やっぱゲームはGEOだよな。

白石「あったあった、ここだ」

 様々なマウスパッドが並ぶその光景は圧巻だった。ごめん嘘ついたわ。全然圧巻でもなんでもない。
 それでも「こんなに種類必要なのか」ってぐらいにピンキリだ。
 まず手に取るのはごくごくオーソドックスなパッド。フェルトだかコットンだか知らないけど表面がモフッとしてるやつな。
 けどこれが基本とは言え……今回の基準にはできないな。

俺「しっかし本当にスゲェな」

 やたらコンパクトな超薄型パッド。据え置きって言うより持ち歩く用なのか?
 それの派生っぽいのはメモや写真なんかを挟めるタイプ。機能性重視だな。
 薄型君の左にあるのが高精細タイプだ。ポインタが飛ばなくなるアレ。
 その下には「環境に優しい」が売り文句の品。肝心の質は? って聞きたくなる。
 吸水・放水性に富んだいつでもヒンヤリな物もある。ヒンヤリ……悪くない。
 このラインナップの中でも異彩を放つ、ひたすら見栄えに特化した一品まであった。
 逆の意味で目立つ、やたらでかくてスカスカなのとかも。180円ってマウスパッドの値段じゃねえだろ。超薄型より軽いぞ。

 あれ? クッション付きのは置いてないのか? そんなわけないよな。

白石「おーい、こっちにもいくつかあるぞ」
俺「どれどれ」

 あったあった。目当ての品は陳列棚の裏側だった。

俺「このクッション、リストレストって名前なのか」

 正式名称があるってことすら知らなかったぜ。パソコンに詳しいわけじゃないしな俺。リストレスト。噛みそう。
 で、そのリストレストも結構種類があるわけ。
 何の変哲もない(と言ってもクッション付いてるだけでも充分変哲あるんだけど)やつはもちろん、
 マウスパッド部分とクッション部分が分離可能なセパレートタイプ。
 中にジェルが入っててなんかふにょっとするのもある。
 リストレスト単品なんてのもあったけど、泉は『マウスパッドが欲しい』んだからこれはスルーだ。

俺「好みの色は赤と黒らしいんだよな」

 色をメインに据えて選ぶとすれば……全部合わせて10種類もない。
 リストレストタイプだけで考えるとわずか2種類、しかも両方黒ときたもんだ。

俺「まぁ、赤いマウスパッドなんて使ってて落ち着かないしな……」
白石「かもな。このリストレストってやつ以外は眼中にないのか?」

 峰岸の言葉を使わせてもらうならリストレストしかあるまい。ぶっちゃけ俺これ欲しいもん。
 その中で特に目に付いたのがこれ、マウスパッド部分が斜め30度くらいに傾いてるやつだ。色はシルバー。

俺「最適な角度、か。これいいな」

 わかる、すごくよくわかるぞこの角度。マウス握ってると右斜めに傾くよなあ! やべえこれ気に入った。
 
白石「それにすんのか? 右利き専用って書いてあるけど」

 ん? あぁ、そういやそうだな。左利きは左手でマウス動かすからこれ使えないな。

俺「泉って利き手どっちだっけ?」
白石「わからん」
俺「……こっちも買おう」

 そう呟いて俺が次に手に取ったのは超ブラックなマウスパッド。あれだな、例えるなら弁慶って感じだ。
 なんつっても長方形。他のリストレスト付きはパッド部分が丸く広がってたり、それこそ長方形が傾いてたり。
 そんな中でこいつはまさにドンと構えた質実剛健。
 他のタイプを一瞥して「ふん……どいつもこいつもチャラつきおって」とか言い出しそうな作りだ。

白石「なんて言うか……すごい存在感だな」
俺「どっちかっつーと重いぐらいだからな」
白石「女の子にプレゼントするようなブツじゃないぞこれ。大体2つも買ってどうするんだよ」
俺「泉が選ばなかった方は俺が使う」

 今俺が使ってるのはここに来て最初に手に取ったスタンダードなやつだ。
 うちでは猫を1匹飼ってるわけだが、そいつはマウスパッドの上が大好きなんだよな。モフッとしてるから。
 当然毛だらけになる。2日手入れしないともはや使う気すら起きないほどになる。
 その点このマウスパッドはいい。素材が違うおかげで毛が付かないからな。

白石「大変だな猫いると」
俺「まあな。でも下僕が猫様にあれをするなこれをするなと強要するのはお門違いだ。変わるべきは下僕なんだよ」
白石「よくわからん」
俺「猫飼えばよくわかるぜ」

 ところでこれいくらだ?

俺「せん……にひゃくえん……だと……」
白石「おい、コレこの中で一番高いぞ」
俺「……これも泉のためだッ! 対価は常に等価でなくては!」
白石「ちょっ、こういう場所で大声出すなよ」
俺「地です」

 ちなみに傾いてるやつは1000円だった。
 会計を終えて少しゲーム売り場を見て回ってから俺たちは入り口へ戻る。

俺「付き合ってくれてありがとうな。助かったわ」
白石「俺別に何もしてないぞ」
俺「んなことねえって。俺優柔不断だから1人だと決められなかったと思うし」

 だが待て。
 これだけで充分か?

俺「何かもう一押しいるかもな……」
白石「まあ、これだけじゃ誕生日のプレゼントにしては地味だしな」
俺「もうちょい何かないか考えてみるわ」
白石「おう。がんばれな」
俺「っと、ポイント入れてかないと」

 そういやこれ買う前と買った後で合計100ポイント入るけどさ。
 つまり100円の物買えば永久機関っつーか1ポイントずつ増えてくってヤツじゃね? 俺天才杉!

 100円の物なんて売ってねえよ。そもそも店来た時点で10ポイントなんだから9ポイント損じゃねえか俺のバカ。

俺「って1000ポイント入ってるしwwwwww何コレwwwwwwwwww」
白石「すっげこんなの初めて見た」

 なんだこの狙い澄ましたような運の良さは!
 しかも帰りに寄ったカードショップにて邪神イレイザーを500円でゲット。
 俺なまらツイてるwwwwwwwwwwやべえ地元の方言出ちゃった。明日いいことあるぜこりゃあ。


 そして運命の日がやってきた。

 俺はいつもより15分も早く教室に足を踏み入れる。いや別に下準備があるわけじゃない。精神統一がしたいんだ。
 しっかしこれだけ早いとガラガラだな。まだ5人しかいねえ。
 自分の席に着き、鞄の中身を確認。よし、ちゃんと2種類のマウスパッド+αがある。
 +αって何だよって? 今にわかるさ。

みゆき「おはようございます。今日はがんばってくださいね」

 現れた高良がそう声をかけてきた。さすがにこの展開は予想外だわ。

俺「あぁ……白石から聞いたのか」
みゆき「ええ。私やつかささんも応援していますよ」
俺「ベストは尽くす。……緊張ほぐす方法とかないか?」

 実はものすごく緊張してます。あばばば

みゆき「そうですね。気の置けない方とお話したり、軽く運動するのが効果的です。甘いものを摂るのもいいですね」
俺「なるほど。まだ時間あるし購買で何か買ってくるか」
みゆき「気負う必要はないと思いますよ。普段どおりでいいんです」
俺「そうだよな。そんじゃ」

 席を立ち教室を後にする。そして1階まで降りてきたところで気付いた。

俺「購買まだ開いてねえ!」


 戻ってくると、既に白石が登校してきていた。

白石「おは。朝飯食ってないのか?」
俺「たらふく食った」

 呆れ顔の白石を尻目に俺は近くのコンビニで買ってきたあんパンをかじる。
 甘いもの食ってるし友達と話すし、あとは運動か。今日は体育あるな。

白石「で? あれからどうなんだよ」
俺「ばっちり」

 うむ。早くも緊張が解けてきた。さすがは高良だな。
 でもこれタイミングはいつになるんだ? 放課後か?
 カラオケ直行だろうから放課後はまずいよな。昼休みに呼び出すか。
 どこに呼び出す? そりゃお前こういうイベントは屋上って相場が決まってるだろ。
 よし決まったな。あとは行動起こすだけだ。

俺「そんなわけで呼び出す。机の中にメモ入れりゃ気付くよな」
白石「多分大丈夫だろ」
かがみ「入れるスペースあるのか? こなた置き勉してるから入らないんじゃない?」
俺「いやいくらなんでも紙切れ1枚入れるスペースぐらいあるだろ」
かがみ「気付かれない可能性だってあるかもしれないでしょ。念には念を入れるべきよ」
俺「ってドゥーッ! いつからいたんだよ柊!」
かがみ・白石「ドゥーッ(笑)」
俺「で、絶対に気付いてもらえる方法ってなんぞや」
かがみ「決まってるでしょ。靴箱よ」
白石「また古風だな」
かがみ「ほらほら、さっさと書きなさいよ。こなた来ちゃうわよ」
俺「わかったって」

 柊って絶対この状況楽しんでるよな。
 メモを書き終えて俺たちは颯爽と玄関へ向かう。泉の靴箱ってどれだ。

かがみ「ここ」

 柊が心強すぎる。まるで精霊サムシンだな。
 上靴にメモを乗せて任務完了。フタがあるっていいね!
 これで準備は全て完了……だよな?

かがみ「ていうかあいつのメルアド知らないの?」
俺「知ってたらこんなめんどくさいことしないって」
かがみ「そりゃそうだけどさ」
友A「お前らこんなとこで何やってんだよ」
俺「よう。まあ話は教室でな」

 その後泉が来るまで友ABに散々茶化されまくったのは言うまでもない。
 女より男の方がくどいとかどんだけだし。


 5月28日、12時40分。
 ついに決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。

 昼休みが始まってすぐに俺は屋上へ急ぐ。
 もちろん右手には例のブツが入った紙袋がある。ビニール袋は見た目がよろしくないので却下した。
 さて屋上には……誰もいないな。
 人気スポットだと思うんだけど基本人いないんだよな。不思議だ。
 柊の策で泉は数分引き止められているはずだ。春日部じゅうがお前に味方するよ本当に。
 袋の中身の確認に移る。……OK、WAWAWA忘れ物はなしっと。

 ベンチに腰かけ、再びふつふつと湧き上がってきた緊張を抑える。
 この数分がなんとも長い。俺みたいなノミの心臓の持ち主にとっては生き地獄。
 まだ引き止めてるのか柊、こっちはいつでもばっちこいだぜ!

こなた「ごめん、かがみがやけにしつこくてさ。待った?」

 キタ――――(゚∀゚)――――!!

俺「いや全然待ってねえよ。気にすんな」

 泉が俺の隣に座る。まあ少しだけ距離を開けられてるのは仕方あるまい。
 ん? 泉何も持ってなくね?

こなた「とりあえず誕生日おめでとー」
俺「お、おう。お前もな」

 これは……思いのほか気まずいもんだな!
 とにかく話題を提示せねば。リードするのは男の役目っと。

俺「泉お前何も持ってねえけど」
こなた「ふっふっふ……まあお先にどうぞ」
俺「いやいやここはレディファーストで」
こなた「レディファーストだから私が先にもらうのだよっ!」

 ですよねー。そうなりますよねー。

俺「しょうがねえなあ。ほら、これ」

 取り出しましたるは右利き専用のマウスパッド!

こなた「ほほう、マウスパッドかね……欲しがってるって誰かから聞いたでしょー?」

 ここではぐらかしても仕方あるめえ。男は正直が一番だろ。

俺「高良と柊からな。実際に使える物の方が喜ぶかなと思ったし」
こなた「ふむふむ、その選択肢は間違ってないよ。私もその方が嬉しいから」
俺「だ、だろー?」
こなた「でもこれ右利き専用だねぇ」

 え゙。

俺「っちょ……まさか左利き?」

 白石よありがとう、お前のおかげで最悪の事態から逃れられるよ。

こなた「ううん両利き。マウスは右手で動かすから大丈夫だよ」

 おう……びっくりさせないでくれ、俺ホントにノミの心臓なんだってばさ。
 てか両利きって地味にすげえ。

こなた「これ結構前から欲しかったんだけどさー、漫画とか色々買ってるせいでこっちまでお金回せないんだよね」
俺「わかるな。欲しい物あってもなぜか金残せない」
こなた「うんそうそうこの角度! いいねコレ、ポイント高いよ!」

 値段も高かったよ。いやまあ袋の中に眠ってる弁慶様の方が高かったけど。
 ともあれ喜んでもらえて何よりだ。

俺「それで、泉からは何くれるんだ?」

 泉の表情が少し陰る。まずい、がっつきすぎだったか。

こなた「ごめん! 学校に持ってこれなかった!」
俺「はい?」
こなた「がんばってケーキ作ったんだけどさ、置いとく場所思いつかなくて!」

 あぁそうかケーキ。こんな気温じゃ持ってきても昼までに悪くなっちまうな。

俺「そりゃ仕方ないよな……でもそれじゃどうすんだ?」

 予報じゃ明日もあさっても晴れ。持ってこれるチャンスなんてないぞ。
 しかもケーキって日持ちしないし。

こなた「それで提案なんだけどさ」
俺「おう」
こなた「今日ヒマならうち来ない? ケーキもったいないし」

 それなんてエロゲ?


 というわけで俺は今、泉と並んで幸手の街並みを歩いている。
 我が心の友たちよすまない、俺も白石と同類だ。この埋め合わせはいつか必ずする。

俺「しかし田舎だなこの町は」
こなた「ホントだよ、メイトとゲマズも遠いしさ。学校から行ってるから普段はそんなに気になんないけど」
俺「もう大宮までの定期買っちゃえばよくね?」
こなた「そうしよっかなぁ」

 なんて他愛のない話をしているうちに泉の家に着いたらしい。

こなた「ここだよー。上がって上がって」
俺「そ、そんじゃお邪魔……なんだこの家でけえ」

 この広さの敷地で……2階建て+αだと……?

俺「……実は金持ち?」
こなた「お父さん結構売れっ子の作家だからねー」

 転勤リーマン一家の俺には想像もつかねえ。周りと見比べても明らかにでかいぞこの家。

こなた「ただいまー」
俺「じゃ、じゃあ改めてお邪魔します」

 俺は居間へと案内される。ソファには泉の親父さんらしき人が座っていた。
 無精髭を生やして作務衣の上にちゃんちゃんこを羽織ってる。作家という仕事を体現化したような人だな。

そうじろう「おう、おかえ――」

 親父さんが俺の顔を見るなり顔をしかめる。すいません、なんかすいません。

そうじろう「こなた。友達か?」
こなた「彼氏だよー」
そうじろう「んなッ!?」


         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|   あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|    『おれはケーキにつられて泉の家に行ったと
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ     思ったらいつのまにか彼氏になっていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人      な… 何を言っているのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ     おれも何が起きたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ     頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r ー---ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    告白だとか願ってもない展開だとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ   そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ     もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


 呆然とする親父さん。いや俺も。
 男2人の表情など気にも留めない様子で泉は「鞄置いてくるねー」と廊下へ消える。
 あのう、これは一体全体どういうことなんでしょう。

そうじろう「君っ!」
俺「ひいぃ!?」

 おおお親父さんが俺の肩を掴んで揺するる前後にがくがくがくがく

そうじろう「彼氏! こなたの彼氏なのかっ!!」
俺「すさせすしそそういうことになりますです」

 うおっ泣いてるよこの人。むしろ泣きたいのは俺だよ。
 つうかなんだこの流れは着々と既成事実が出来上がってる気がするぞオイいや俺的にはすごく嬉しいですけどでもね!
 親父さんはいきなり俺から離れたと思うとぼとぼと居間を出て行ってしまった。そして入れ違いに戻ってくる泉。

俺「親父さん泣いてたんだが……」
こなた「いーの気にしなくて。いつもあんな感じだから」

 いつもなのかよ。
 泉は冷蔵庫を開け、いかにも中身がケーキなでかい箱を取り出す。っておいおいまさかこのサイズのホール作ったのか。
 そして彼女はフォークや皿を用意しながら俺に尋ねる。

こなた「ケーキってどれぐらい食べれる?」
俺「一応人並み以上には」
こなた「なら大丈夫だね。さ、二階で食べよー」

 後について階段を上り、通されたのは泉の部屋。
 フィギュアやポスターが飾ってあったりするあたり、さすが泉って感じだ。

こなた「さあさあ、早速食べていただこうではないか」

 そう言ってテーブルに一式を置き、箱を開ける。そこから出てきたのは……。

俺「うおぉ……よりどりみどり」

 予想は大ハズレ。ショートにチョコレートにチーズにモンブランに、どんどん出るわ出るわの大騒ぎ。
 しかもどれもがマフィンサイズ。すげえ食べやすそうだ。
 ってレシピ本にこんなサイズのケーキなんて載ってないだろ普通。料理できるできないどころのレベルじゃないぜ。
 ああやばい、よだれが止まらん。

こなた「さあ好きなのをお食べ!」
俺「ほ、本当に食っていいのかこれ」
こなた「もちろん。タバスコも裁縫針も入ってないから安心したまへ」

 おはぎじゃないんだからそんなもん入らん。

俺「じゃあ……まずはショートケーキで」

 では一口……いただきます。ぱくっ。

こなた「どお?」
俺「……これは」

 続けて二口目。

こなた「あのぉ、できれば感想を」

 感想? 俺の口から出る感想なんてこの一言しかねえ。

俺「う ま す ぎ る」

 何だこの味は! プロい、プロすぎるぞ泉!

こなた「ちょっ!? そんながっついたら喉に詰まるって!」
俺「むぐっ!」

 早速詰まった! やばい苦しい死ぬ死ぬ死んでしまう!

こなた「これ飲んで!」

 差し出されたペットボトル入りの烏龍茶を流し込み、なんとか九死に一生を得る……。

俺「……あ゙ー危ねえ、うますぎて死ぬかと思った」
こなた「いやそれ窒息だから」
俺「とにかくうまいんだよ! 才能あるんじゃないかお前」
こなた「そう? まあ料理は昔からやってるからね」

 正直甘く見てたぜ。俺も含めオタクは料理できないってイメージがあったが……先入観は良くないな。

俺「ところでこの烏龍茶どっから湧いてきたんだ?」
こなた「へ? ――あ」

 言葉に詰まる泉を見て、俺もはっと気付く。泉の鞄のフタが開いている。
 どう考えても飲み残しだ。つまりあれだ。間接キスだ。

こなた「こ、これしか手元になかったからさ! うちで死なれたら困るし!」

 やべえ焦る泉がかわいすぎる。
 高校生にもなって間接キスごときで騒ぐとか(笑)なんて言いたくなったけど赤面する泉がレアすぎるから黙っておこう。
 その代わりと言っちゃなんだがこの路線で攻めてみるとしようか。

俺「なあ、泉」
こなた「なっ、何?」
俺「さっき親父さんに言ったあれって?」

 おおっとますます赤くなってまいりました。そうだよなあ、改めて思い出すと恥ずかしいよなこういうの。
 しかしギャルゲーにまで精通してるヤツの反応とは思えん。リアルでは抵抗ないってわけだ。

こなた「……ダメ、かな」

 おまwwwwwwうるうる上目遣いとか直球ド真ん中wwwwwwwwwwww


 萌え☆死に


 頭にやかんを乗せたら一瞬で沸騰しそうな泉を心行くまで堪能してから俺は切り出す。

俺「実はもう1つプレゼントあるんだよ」
こなた「え?」
俺「こんなうまいケーキ(と超かわいい泉)ご馳走になって、その対価がマウスパッド1つじゃそれこそ釣り合わないってもんだ」
こなた「そ、そういうつもりで言ったわけじゃ」

 もちろんそんなことわかってるよ^^
 俺が鞄の中の紙袋から取り出したのは2つ目のマウスパッド……ではなくプラスチック製のケース。

 そこに入っているのはトップにシルバーの指輪が付いたペンダントだ。
 昨日ヤマダ電機に行った帰り、立ち寄ったデパートでこれを見つけたわけ。12000円。
 ケースから出して見せた瞬間に泉の表情が変わった。そして次にお前はこう言うんだよな。

こなた「あ……わ、私こんなの似合わない――」
俺「そんなことねえって」

 言葉を制して俺は泉の首にそれを付けてやる。
 イメトレの時より顔と顔が近くて自分でもかなりドキッと……あーやべ下が。
 
俺「ほら全然似合ってるじゃん」

 耳まで真っ赤にしてうつむく泉。俺クール装ってるけどちょっとでも気緩めたらニヤニヤが顔に出そうwwwwwwww
 おっといかん、ここが正念場だ。キッと顔を見据えて俺はトドメの一言を投げかける。

俺「泉」
こなた「あ……ぅ」

俺「俺、お前の彼氏になりたいな」


 数分後、部屋にはベッドに横になる泉の姿があった。変な意味じゃねえぞ誤解すんな。

俺「いやー、まさか倒れるとは思わなかったわ」
こなた「はは……頭の中真っ白になっちゃって」

 そう、トドメの一言がまさにトドメになったわけなのだった。
 抱き上げてベッドに寝かせたのはもちろん俺です。お姫様抱っこなんて初めての経験だ。

こなた「リアルであんなこと言われるなんて想像したこともなかったからさ」

 俺もあんなの想像したこともなかったです。昨日までは。

俺「それで、返事はどういうのがもらえるのかな?」
こなた「うぅ、サドいよこの人」
俺「違うよ、全然違うよ。泉がMだから俺もSにならざるを得ないわけだ」
こなた「こなた」
俺「ん?」

 それは間接的なOKサイン。これからよろしくという意味でのセリフ。


こなた「……泉じゃなくて、こなたって呼んでよ」


俺「こなた。よろしくな」





俺「という夢を見た」
友A「ないわー。らきすたは俺も好きだけどそれはないわー」
友B「引くわー。さすがにそこまで行くと引くわー」
俺「夢なんだから仕方ねーだろ」
友A「ないわー」
友B「引くわー」



 諸君。

 俺は特に取り得があるわけでもない、ごくごく一般的な小市民だ。
 世間一般で言う「オタク」だ。そう、どこにでもいる人間なのだ。

 だが俺にはひとつ、諸君らに胸を張って自慢できることがある。


 俺の誕生日は5月28日。
 泉こなたと同じ日に生まれたのさ。


 ちなみにいつも気が付くとジョジョ立ちしている。



 完
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