The Legend of the Lucky Star 第六話

第六話


(……原理はラムダ・○ライバと同じ……強く、その形をイメージすること……)

三日月が空に浮かび夜道を照らす中、こなたは昨日みさおとした会話を思い出していた。
『幻想召喚師』――頭の中のイメージを現実に出すことができる、『魔を狩る一族最強』とまで謡われた力である。
父の影響により、小さい頃からヒーローに憧れてきたこなた。
夢のまた夢だと思っていた世界に、自分が入ることができたなんて……!!

「来い! ○ンダァァァァァァム!!!」

……高らかに叫んだものの、何もやってこなかった。

「……あっれぇ~? おかしいなぁ……容量オーバー?」

いくらイメージを現実に出すことができると言っても、制限というものがある。
こなたは力を取り戻したばかりであるため、極端に大きいものはだせないのである。

「ま、いっか。じゃあこれで」

こなたの左手に出てきたのは剣の『柄』の部分。
だが次の瞬間、白銀に輝く刀身が現れた。

「正義の心にて、悪しき空間を断つ! 名付けて……断・○・光牙剣!!!」

人間業とは思えないほどに高く跳躍し、人間の形をした妖魔の群れの中心に着地。

「やぁぁぁぁぁぁってやるぜぇ!!」

剣をメチャクチャに振り回しながら、妖魔の群れに突っ込んでいく。
メチャクチャとは言っても、一体一体を確実に浄化させてはいるのだ。
反撃させる間もなく、妖魔達を一刀両断……これはクセになりそうなくらい気持ち良かった。

「……ふぅ、あと少しだね」

群れから少し離れて振り向き、妖魔の残りを見る。
すでに数は数えられるほどに減り、その全てがこなたの圧倒的な力に怯んでいた。

「……あれ……」

一部、浄化されていない妖魔がいるようだった。
浄化されないで、切られたままの状態で地面に転がっている。
それらに共通していることは、頭がそのままの状態で残っているところだった。

(……ま、何もできないだろうし、後でいっか)

こなたは剣を消して、胸の前で祈るように手を合わせる。
その瞬間、こなたの背中に合計十六枚の紫色に輝く光の羽が出現した。
ふわふわと空中に浮かび、そして『魔を狩る一族には必要のないはずの呪文』を紡ぎ出す。
それは、こなたがお気に入りのゲームにある呪文だった。

「聖なる翼よ……ここに集いて神の御心を示さん――エンジェル○ェザー!!」

こなたの背中の羽が数枚抜け、それが回転しながら不規則な軌道を描き、妖魔達へ襲い掛かる。
妖魔の体を切り裂き、焼き尽くす!
悲鳴をあげることもなく妖魔は浄化され、その周囲に光の羽毛がはらりと舞い落ち……はかなく消えた。

「ふー、終了っと。この『力』いいなー」

左の指先を立て、そこから炎を出してみる。
常日頃からゲームをしまくってきたこなただけに、頭の中に作り上げるイメージは実物そのもの。
想像力がものを言う『幻想召喚師』。故にその力を使いこなすのも早かった。
ある意味、彼女にぴったり合った力である。

「――ッ!!」

突然、右腕に激しい痛みを感じて見てみると、先ほどまで地面に転がっていたはずの妖魔の頭がこなたの右腕に噛み付いていた。

「ひっ!!」

頭だけなのに、動いている。周りを見てみると、同じように頭だけの妖魔がふわふわと浮いていた。

(なんで!? 倒したはずじゃないの!? なんで動いてるの!?)

こなたは完全にパニックに陥った。
必死に腕を振り回して頭を離そうとするが、がっちりと噛み付いているため離れる気配すら見えない。
更に二つ目、三つ目の頭がこなたの脇腹に、左腕に噛み付いてくる。
このままでは体力を消耗するばかり。妖魔を倒すために刀をイメージするが……

「う、嘘!? なんで!?」

一向に出てくる気配がない。こなたはさらに混乱した。

「なんで……なんでなんで!?」
「落ち着けっつーの!」
「へぎゃ!!」

誰かの飛び蹴りを喰らったこなたは空中で二、三回きりもみして地面に叩きつけられた。
その衝撃で妖魔の頭はこなたの身体から離れ、地面を転がっていく。

「その力は正常な思考じゃねぇと使えねぇんだ! ちったぁ落ち着け!!」
「み、みさ……ゲホッゲホッ……」

あまりの威力にむせ返り、声を出すことすらままならない。

「とりあえず黙って見てろ! 切り裂け、『飛燕(ひえん)』!!」

空中の文字が集約し、黄緑色のツバメに変化、高速で飛び回って残りの妖魔を切り裂き浄化させていく。
妖魔の全てを浄化させると、黄緑色のツバメは姿を消した。

「み、みさきち……蹴る力、強すぎ……」
「『痛みで目が覚める』ってあるだろ。それと同じだと思って我慢しろ」

背中を抑え、よろめきながら立ち上がるこなたに、みさおは冷たい言葉を送る。
そして頭をがしがしと掻きながら、小さく舌打ちをした。

「ったく、『一人で頑張ってみる』っつったから行かせてやったのに、様子を見に来たらこれだよ」
「ご、ごめん……」
「ごめんで命が助かったらアタシ達はいらねぇんだ! わかるだろ!?」

こなたの肩を強く掴み、なぜかものすごい剣幕で怒鳴るみさおにたじろぐ。

「み、みさきち……?」
「……悪い……つい熱くなっちまった……」

こなたから手を離して、みさおは空を見上げる。
その瞳には、涙が浮かんでいるように見えた。

「……アタシの大好きだった婆ちゃんがな……妖魔に殺されてんだ……」
「え……?」
「大好きだった人を奪われる悲しみってのは……相当、辛いんだゼ……。チビッ子も……柊とかにそういう思いをさせたくねぇだろ……? だから……」

地面を見つめ、ゆっくりと目を閉じて……こなたは言った。

「私もわかる……と思う。みさきちの悲しみ」
「へ?」
「私も……小さい頃にお母さんが死んじゃってるんだ。みさきちのとは違うだろうけど……いるべき人がいない悲しみなら知ってる。なのに、なんで忘れてたんだろ……」

こなたの瞳から流れ出た涙が地面に落ちていくところを、みさおは目撃した。
そして、こなたにゆっくり近づいて、震える背中をポンと叩いた。

「強くなろうゼ? アタシ達だけじゃなくて、家族や友達のためにも……」
「……うん……」

三日月が町を見守る真夜中。二人の少女が強くなった瞬間だった。

 

 

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