2―3

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「……う……」

ボンヤリとした意識の中、彼女は目を覚ました
だが、まるで自分の身体ではないかのように、指一本すら動かすことができない

(……あれ……私達……何してたんだっけ……)

はっきりしない頭で、とにかく何があったのか必死で思い出そうとする

(あ、そうだ……高良さんの家にお邪魔して……それから……どうしたんだっけ……? 確か、紅茶をいただいて……)

そうだ、それまでは確かに覚えている。だが、それ以降の記憶がまったくないのだ
あの紅茶を飲んだあと、急に視界がグラリと揺れて……

「!!!」

頭のボンヤリ感は一瞬で吹き飛び、かがみは飛び起きた
目の前には鉄格子、隣には眠りこける妹の姿、四方は壁に囲まれている
間違いなく……そこは『牢屋』だった

「な……何よこれ!!」

鉄格子に飛び付き、思わず叫んだ
確かに自分たちは応接室にいたはずだ。それがなぜ檻の中!?

「みゆきさんに捕まったんだよ、私達」

突然聞こえた声に振り返り、壁にもたれかかっているこなたの姿を見つけた
腕にはめていたはずのラミア印のグローブはなくなっている
そして、自分の腰に差してあるはずの剣も、つかさが持っていたバッグもいつの間にかなくなっていることに気付いた


「こなた……捕まったって、どういうこと?」
「……ゴメン、全部私が悪いんだ」

それからつかさを起こして、こなたはあの後に起きたこと全てを話した。
みゆきの母親がラミア軍に連れ去られたこと、自分たちがラミア軍の人間だと思われていること、みゆきと戦ってこなたが負けたこと

「殺しはイヤだからって理由だけで牢屋に入れられてるんだよ。相手がみゆきさんで良かったね」
「で、これからどうするわけ?」

鉄格子を握りながら、かがみがこなたに聞いた

「とりあえず、ここを抜け出そう。そうしないことには始まらないよ」
「けど、どうやって?」
「それが問題なんだよね……武器は没収されてるし、私は魔力を使い果たしちゃったし、つかさの魔術は鉄格子に効かないだろうし……」

右手の甲にあった白晶石は光を失い、ただの灰色の石と化していた。白晶石の魔力が尽きたのだ
魔力は時間の経過により少しずつ復活するが、完全に復活するにはおそらく数週間はかかるだろう。そんな長い時間、待ってられるはずもない

「あら、皆さん。もう起きてらっしゃったんですね」

かがみが顔を鉄格子に向けると、みゆきが優しく微笑んできた
その顔に怒りは微塵もないようで、こなたは胸を撫で下ろす
両手でプレートを持っているが、角度的に何が乗っているか見えない

「皆さん、丸一日眠っていたんですよ? お腹も空いていることでしょうから、食事をお持ちしました」

鉄格子の鍵を開け、みゆきがプレートを持って中へと入ってくる
地面に置いた時、その上に何が乗っていたのか判明した。大量のサンドイッチだった

「……敵のはずの私達に食事を振る舞うなんて、どういう風の吹き回しよ?」
「いえいえ。餓死されても困りますので」
「そんなこと言って、本当は毒とか入ってるんじゃないの?」

互いに目を見つめたまま、二人は微動だにしない
かがみ達にとって、これは生死を分ける重要な戦い。本当に毒が入っている可能性も捨てきれないのだ
だが……その睨み合いは、横から聞こえてきたムシャムシャという擬音で終結した

「はむ……むぐむぐ……」
「お姉ちゃんも食べなよ。すっごく美味しいよ?」

サンドイッチを口の中に詰め込むこなたと、何の疑念もなくサンドイッチを差し出してくるつかさに、かがみは『がたーんっ!』と音がするくらい激しく倒れた

「あんたらねぇ!! 少しは疑うとかしなさいよ!?」
「はっへぇ~……」
「お腹空いてたから……我慢できなくて……あ、はい」
「あ~も~……」

頭をくしゃくしゃ掻きながら、かがみはつかさからサンドイッチを受け取る

「っふふ、仲が良いんですね」
「こんな調子だからね、こいつら。私がしっかり面倒見なきゃならないのよ」

サンドイッチに群がる二人を横目に、かがみは先ほどつかさから受け取ったサンドイッチを頬張る
毒の類は入っていなかった。と、思われる

「夜が空けたら解放します。それまではここで我慢してくださいね」

そう言ってみゆきは牢屋を出ていった
薄暗い牢屋――おそらく地下なのだろう――だったためにわからなかったが、今は夜らしい
夜中は砂漠の気温はマイナス五十度を超えてしまうらしい。今、外に放り出されなくて本当によかった

「さて、私も二つ目を――」

と、二人の方を見てみると、お腹をパンパンにして仰向けに横たわる二人の姿が

「うぅ……食べ過ぎたぁ……」
「お腹痛い……」
「……あんたらは……」

 

 

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