2011年某日…東北自動車道、岩槻インターチェンジ。
その一角にある埼玉県警高速隊・岩槻分駐所で電話を受けている女が一人。
成実ゆい、30歳。その運転技術を買われいまやこの高速隊のキャップ(隊長)を努めるまでになった。
本人もまさかここまでになるとは思っていなかっただろう。
ゆい「お姉さんビックリだ!」
ゆい姉さん、リアクションあじゅじゅしたー、と。
この日、ゆいはある『奇妙な通報』を受けていた。
「高速道路上を無人の車両が暴走している」
ただの暴走ならまだしも、無人…つまり運転者がいないときたもんだ。
最初は何かの冗談かと思って当人も聞き流していたらしいのだが、それは突然に起こった。
「キャップ!大変です!『奴』が…奴が現れましたぁ!!」
ドアを勢いよく開けてきたのはまだまだ新米の高速隊員。
名前はパトリック・コーラs…もとい、浜田けんじである。
ゆい「また?…もう何度目よ、あんた疲れてるんじゃない?」
浜田「違いますよ!ホントに出てきたんですって!」
ゆい「ホントのホントかな…」
と思い、気だるそうに分駐から外へと踏み出すゆい姉さんと浜田。
その僅か2秒後、彼等は衝撃の光景を目にすることになる…。
ゆい・浜田「なんじゃそりゃあぁぁぁぁぁあぁぁああああ!!!!」
ただならぬ事態だった。
それは自動車のようであり…航空機のようでもあった。
ただ、明らかにそのどちらでもないような動きをしている。
なにやら手足のようなものがついた『奴』は、周りの車両を次々と横倒しにしながら大暴走。
浜田「一体どんな凶悪犯が…」
ゆい「とにかく出動するよ!総員配置!!」
……かくして、岩槻分駐の誇る精鋭部隊…通称『成実軍団』が出動したのだった。
一方その頃。
泉こなたが運転するスバル・インプレッサが、柊かがみ・柊つかさ・小早川ゆたかを乗せ、
東北自動車道を北上していた。
かがみ「へぇ~。あんた、免許なんて取ってたのね。ちょっとビックリしちゃったわよ」
こなた「これからは取材がらみであちこち行く機会も増えるだろうからね、何かと便利かなと思って」
つかさ「それにしてもこなちゃん、運転上手いね」
こなた「いやいや、まだ私なんか経験薄いよ~。これでもちょっとドキドキしてるんだよ」
ゆたか「お姉ちゃん?あんまりスピード出しちゃだめだよ?」
こなた「わかってるってぇ~。ゆい姉さんにつかまるような運転だけはしないつもりだよ」
と、和やかムードで話に花が咲く車内。
しかし、こなたたちは次の瞬間信じられない出来事に遭遇する!
こなた「うわっ!?」
いきなり何かに驚き急ブレーキをかけるこなた。
かがみ「ちょ、ちょっとこなた、なにいきなりブレーキ踏んで…」
と、こなたに突っ込みを入れようとしたかがみだったが、目の前の状況を見て言葉が出なくなった。
次から次へと周りの車両をなぎ倒す謎の影。そしてそれは、驚くべきスピードでこちらへ向かっていた…。
こなた「ありゃ~…逃げなきゃまずいけど周りの車が邪魔で動けないよ!まいったな…ねぇかがみ…」
しかし、後ろを振り向いた時には車内に柊姉妹の姿はなかった。
こなた「ぇ~…どうすりゃいいのさぁ…」
なすすべもなく唖然としているこなた。迫り来る影。
しかし、対向車線から一条の閃光が謎の影にぶつかったのだ。
こなた「ゆい姉さん!!」
こなたは一発でそれとわかった。通報を受けたゆい率いる成実軍団が駆けつけていたのだ。
先頭に立つ日産スカイライン・350GT-8…いや、それをスカイラインと言うべきか否か。
その車両はスーパーコンピューターをはじめとしたハイテク機器を搭載したカスタム車両、
さながら「西部警察」の「マシンX」といったところか。人はそれを…「マシンY」と呼ぶ…。
ゆい「まったく、とんだ化け物が現れたね…こなた!大丈夫!?」
こなた「ゆい姉さん!こいつなんか変だよ!」
ゆい「心配ない!私ら成実軍団が来たからにはもう安心…」
しかし次の瞬間、『奴』は後続のパトカーを一瞬で吹き飛ばした。
こなた「……」
ゆい「えぇぃ、連邦のモビルスーツはバケモノか!」
こなた「いいえ、アレはどう見てもモビルアーマーです」
などとネタをかましている場合ではない。
そんなときだった。いつの間にやら車内から消えていた柊姉妹が『奴』を狙い撃ったのは。
つかさ「命中、命中」
かがみ「…いや、まだよ…陰陽弾がまるで効いてないわ」
つかさ「えぇぇっ!?ど、どうして!?」
かがみ「当たり前よ。あれは妖怪や霊にしか効果がないんだから…これで相手の正体は分かったわね」
つかさ「それじゃぁ相手は…」
かがみ「…人間が作った…メカってとこかしら。つかさ!撤収するわよ」
つかさ「うにょ~ん…orz」
ゆい「っておーい!何しに出てきたんだー!!」
悪霊以外ではまったく無力な柊姉妹なのでした。
そうこうしているうちにも、『奴』は周りの車両を破壊していく。
こなた「あぁっ!マズいよゆい姉さん!」
ゆい「…タンクローリー!?」
『奴』が目をつけたのはガソリンを満載にしたタンクローリーだった。
もしあんなものがここで爆発したら、大勢の人が巻き込まれる。
こなた「万事休すか~…どうしよぅゆーちゃん…あれ?ゆーちゃん?」
つかさ「どっか行っちゃっ…あぁっ!?」
つかさが驚いたのも無理はない、ゆたかは『奴』にがっしりと引っ付いていたのだ。
ゆたか「これ以上好きにはさせない!!」
ゆたかは咄嗟にビームサーベルを取り出し、『奴』に突き立てる。
『奴』はサーベルを突きたてられた部分から火花を散らし、やがて完全に沈黙した。
ゆい「…これがバケモノの正体…」
かがみ「…どっかで見たことあるわ、このデザイン…」
つかさ「こなちゃん、これって…」
こなた「…パワーローダー?…みゆきさんのものとは違うし…」
すると中から誰かが出てきた…。
あやの「痛たたた…みさちゃん、どういう操縦してるのよぉ…」
みさお「仕方ねぇだろ、筑波大製のローダー動かすのは初めてなんだから…」
かがみ「……」
みさお「お、おーっす…ひぃら…ぎ?」
かがみ「…あ~ん~た~らぁ~ねぇ~っ……」
みさお・あやの「あわわわわわわわわ…」
みさお「ち、ちびっ子!助けてくれってヴぁ!」
こなた「やだ」
みさお「へ?」
つかさ「この状況って…どんだけ…?」
あやの「え…?」
浜田「知らねぇとは言わせねぇぞ!ええ?オイ!!」
ゆい「あんた等…いっぺん再教育が必要みたいだね…」
ゆたか「チェンジ、エレキハンド…」
みさお「まさか…」
あやの「これって…」
一同「極刑に処す!!」
みさお・あやの「ごめんなさーーーーい!!!!」
一件落着?