The Legend of the Lucky Star 第四話

第四話


「大半の妖魔は、霊感のない普通の人間には見えない。存在もわからないまま、運や精力を吸い取られて亡くなっていく」
「それを阻止するためにアタシ達がいるんだ。『魔を狩る一族』がな」

闇に包まれた公園に、二人の少女の声が響く。
辺りに人影はなく、その公園にいる人間は二人だけだった。
少女の一人が死んだ街灯に手を当てるといきなり光が灯り、闇に包まれていた公園を照らす。

「『型』については思い出したか?」
「うん。魔を狩る一族には戦い方のスタイルがあって、大まかなスタイルは『呪術型』『武器・武術型』『バランス型』の三つ。
 それぞれ特化したものに分類されて、型に関わらず呪術は使える。この他にも特別な型があるんだよね」
「ああ。ちなみにアタシは呪術師型最強の部類に入る『万世呪術師』なんだ。一応、普通に戦うことも一応できるけどな」

暗闇の中から姿を現したのは、少女二人の姿だけではなかった。
二人の目の前にはここにいるはずもない狼の群れ。グルルと唸りながら二人を見つめている。
もちろん、普通の狼ではない。氷の力を持つ妖魔“氷狼”の群れだ。

「私自身の型については、まだ思い出してないんだよね」
「アタシの戦いを見たら思い出すかもな。今は足手まといになるだけだから、どっか行っててくれ」

前を行く日下部みさおの忠告を受け、斜め後ろにいた泉こなたは天高く跳躍した。人間とは思えないほどに高く。

「!?」

これに驚いたのは、跳躍したこなた本人だった。
昨日まで普通の人間だったというのに、この身体能力の上昇は異常だ!

「ちょっ! こんなんで普通の生活なんて出来な……ふぎゃ!」

樹の幹に背中からぶつかり、こなたは地面に落ちる。
顔から落ちていったため、こなたはアスファルトにキスをする羽目になった。

「まだ完全に覚醒してないから、力が不安定なんだ。あれだったら後で封印しといてやるよ」

鼻の頭をさすりながらまたも跳躍し、公園に植えられた樹木のてっぺんにとどまった。

「さて、やってみるか」

昨夜と同じように、ポケットから筆を取り出した。
筆の動きに合わせて光が空中を踊り、みさおの周りを取り巻いていく。
そのみさおに向かって無数の氷狼が飛び掛かる!

「開け、『護壁(まもりへき)』!」

みさおの周囲に、半透明で若草色の障壁が展開、飛び掛かった氷狼達が悲鳴をあげる間もなく一瞬で浄化されていく!

「こんだけの量だと、ちんたらやってる暇はねぇな」

氷狼達はみさおの周りを取り囲み、障壁が消えるのをひたすらに待っている。
みさおはその障壁の中で更に筆を動かし始めた。
宙に浮かび、地面へと吸い込まれていく文字列は先ほどよりも長く、そして彼女の呟く声がこなたの耳にまで届いた。詠唱が必要だということは、強力な呪術を使う証なのだ。
呪術の全てを使いこなせると言われている『万世呪術師』の力が、今、こなたの目の前で発揮されようとしていた。

「偉大なる大海よ……地を這う邪悪なる者に裁きを与え、その魂を大地に還すことを……」

効力が切れたのだろう、みさおの周囲を覆っていた若草色の障壁が崩れ去っていく。
だが完全に崩れ去る前に文字列はぷっつりと途切れ、みさおを中心とした地面に魔方陣が出現した。

「えーい、めんどくせぇ! 『激流葬(げきりゅうそう)』!!」

……撃墜された戦闘ヘリよろしく、こなたは地面に墜落した。


魔方陣を中心にして、何処からか海水がにじみ出て渦を巻き、巨大な津波となって殺到した。
みさお、及び落ちてきたこなたの身体はすり抜けていく。呪術は、使用者が敵と見なした者のみに影響を及ぼすのだ。
巨大な津波は氷狼の群れの身体を押し潰し、すり潰し、絶え間ない悲鳴を上げさせた。
そして、津波が引いた時には、残っている氷狼はほんの一握りにまで減っていた。

「みさきち~! 詠唱をケチるってどういうことさ~!!」

後頭部を擦りながら、こなたが怒声を響かせた。
詠唱をケチるとは、すなわち呪術の効果を下げることになる。
実際に呪術が発動した範囲は数mほど。最後まで詠唱していたなら、この場にいる氷狼を一掃させることはできただろう。

「う、うっせーな! 護壁の効力が切れかかってたんだから仕方ねーだろ!!」

まさにその通りだった。あのまま詠唱を続けていれば氷狼の群れが殺到し、みさおはすでに亡き者となっていただろう。
威力だけにこだわるのではなく、タイミングも重要になってくる。それはこなたにもわかっていた。
だが、最初に叫んだ『めんどくせぇ!』という言葉を聞くかぎり、それを気にしていたように見えなかった。

(……でも……)

こなたはさっきまで自分がいた木を見上げる。
相当な高さから落ちたはずなのに、『ちょっと痛い』程度で済んでいる。
そして……日本語ではない『何か』が、頭の中に次々と浮かんでくる。呪術に必要な隠語と呼ばれるものであろう。
まだ弱々しいものの、自分の中にある『力』を実感し、強く拳を握った。

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