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「いらっしゃ……あ、かがみ先輩!」
「こんにちは、田村さん」
「来る途中で会ったので、連れてきちゃいました」

とある休日。ゆたかとみなみはひよりの家に招待されていた
ゆたかの言葉にある通り、暇を持て余していたかがみと出会い、連れてきたのだ

「ごめんね、いきなり押し掛けちゃって」
「いえいえ! どうぞ、上がってください!」

いきなりのかがみの来訪にも動じず、ひよりは三人を招き入れる


・・・


「部屋でくつろいでてください。すぐにお菓子か何か持ってくるっスから」

そう言って、部屋の主は出ていった
残された三人は部屋の中をキョロキョロと見回した

「うわ~、ノートがいっぱい……」
「そういえば田村さん、同人サークルでマンガを書いてるって言ってたわね。練習用のノートかしら」

ゆたかの目に留まったのは、たくさんのノートが入ったラックだった
その中にあるノートの一つを抜き『勝手に』見るかがみ
パラパラとページめくり、途中で手を止めたページには少女の笑顔が書かれていた

「あ、この子可愛いじゃない!」
「すごい……とても上手です……」
「ホント……」

咎める者はおらず、それどころかみんなでノートを覗いていた

(こなたがいたら……やっぱり、『萌え』とか言ったのかしら……)

そこまで考え、かがみは首を横に振った
こなたはもうこの世にはいないのだ。亡き人を想っても、何も変わりはしない
かつて、心に誓ったはずなのだ。過去に――亡き友、亡き妹との思い出には縛られないと
かがみは手に持っていたノートをラックに戻し、別のノートを取り出した

「あれ? これって……」
表紙には、仲良く歩いている二人の少女が描かれていた

「この二人、ゆたかちゃんと岩崎さんじゃない? 髪型とか目付きが似てる」
「あ、確かに……」
「田村さん、私達をよく見ていたと思ったらそういうことだったんだ」

その本のちょうど真ん中を開いたかがみの顔が一瞬で真っ赤になった

「な、ななな、何よコレ!」

横からそれを覗いた二人も顔を真っ赤にした。絶叫しなかったのが不思議なくらいだ
その本の内容は、ゆたかとみなみがえっちなことをし合う――いわゆる『百合本』である

「田村さん……友達をこんな風に描いて良いと思ってんの……!?」
「田村さんのところへ行きましょう……今すぐ!!」

二人が激昂し、部屋を飛び出そうとした時、

「待って!!」

ゆたかの大きな声が響き、二人は足を止めてゆたかに振り返った

「せっかく遊びに来てるのに、険悪なムードになるなんてイヤです。だから、今日は楽しみましょうよ。ね?」

この言葉に、かがみは心底驚嘆した
その本に書かれている人物のモデルは自分たちだというのに、ゆたかは怒る素振りすら見せなかった

「本のことはまた明日、私から話しておきます。書いてくれるのは嬉しいけど、あんなのは恥ずかしいですし……
 田村さんも、あんなものを書いてきっと後悔してるでしょうし」
「……そうね」
「優しいんだね、ゆたかは」

二人は微笑み、自分が先ほどまで座っていた場所に腰を落とした
とその時、部屋のドアノブが下りた

「Hi! コンニチワデ~ス!」
「パトリシアさんも来たっスよ~」

入ってきたのはお菓子やジュースの乗ったお盆を持ったひよりとパティだった

「呼ばれてナイけど遊びに来ました! 人は多イ方が楽しいデ~ス!」
「その通りね。みんなで楽しみましょう!」
『イエ~イ!!』

五人は、帰る時間になるまでひよりの部屋で目一杯楽しんだ
それが、最初で最後の団らんだとも知らずに――

 

 

翌日、お昼休み

「小早川と田村がいない?」

三年生教室に、みなみが訪ねてきていた

「はい。パトリシアさんは、トイレに行ったと言ってましたが……」
「何かあったのかしら……手分けして探しましょう!」

かがみがそう言ったのが十分前、しかしゆたかとひよりは一向に見つからない

「くっそ……もうすぐ授業始まっちまうじゃねぇか……」

みさおは一階廊下を歩きながら呟いた
メルアドは全員分交換した。教室に戻っていたら、誰かからメールが入るはずなのに

「ん、電話か……」

みさおの着メロが鳴り響く
ケータイを開いてみると『柊かがみ』の文字
みさおは直ぐ様電話に出た

「柊、どうした?」
『田村さんは見つかったわ。裏庭で花壇の手入れをしてたの』
「小早川の情報は?」
『トイレから出た後、花壇の手入れを忘れたからって別れてそれきりよ』
「そうか……もうすぐ授業始まっちまうから、早く見つけてやらなくちゃな」
『ええ、どこかで体調を崩してるかもしれないし。今、そっちに岩崎さんが行ったわ』
「ああ、わか……」

言い掛けて、みさおはケータイを落とした
彼女の目の前には『資料室』のプレートが掲げられた扉
その扉に付けられた窓の向こうにある、あまりにも凄惨な光景を目の当たりにしたからだ

「小早川!!」
『え!? な、何!? どうしたのよ、日下部!』

扉を勢いよく開け、中に踏み込んだ瞬間に血の匂いが鼻をつんざいた
そこで彼女が見たものは、頭から大量の血を流したうつぶせの少女……小早川ゆたか『だったモノ』の姿だった

「嘘、だろ……? こんな……こんな事って……」

あの時の、こなたの死に様がフラッシュバックしてくる
また……あの時のような惨劇が、起きてしまった

「ゆ……たか……?」
「!!」

驚いて振り返ったその視線の先には、顔面蒼白の岩崎みなみの姿だった

「ゆたかが……ゆたか、が……あは……あはははは……!!」
「し、しっかりしろ! 岩崎!!」

肩をつかんで頭をガクガクとシェイクするが、みなみは正気に戻らないまま気を失ってしまった
地面に力なく崩れ落ちるみなみの姿を見てみさおは歯を食い縛り、拳を壁に叩きつけ、怒りで身体を震わせた

「チクショウ……!」

 

 

 

「はあ……はあ……ち、違う……私のせいじゃない……私の、せいじゃ……」

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