「正月だな、かなた」
「正月だね、そう君」
二人はこたつでお雑煮を食べながらテレビを見る
テレビでは男性が火の輪くぐりをして拍手を受けていた
「はっきり言ってここまで生きられるとは思ってなかったわ」
「そう暗い話するなよ。今、ここにいられるんだからいいじゃないか」
「それもそうね」
二人の間で離乳食を食べていた赤ん坊がぐずる
「ほら、かなたがそんな暗い話するから、こなたまで泣きだしたじゃないか」
「あらあら。ゴメンね、こなた」
こなたと呼ばれた赤ん坊は母親の顔を見て安心したのか、すぐさま笑顔に変わった
「うふふ、この子の笑顔を見てたら、そんなこと忘れちゃいそうね」
「そうだな、こなたは幸せを運ぶエンジェルだな」
赤ん坊の父親は立ち上がり、戸棚からポラロイドカメラを持ってきた
「せっかくだから、俺たちのエンジェルと一緒に写真を撮ろうか」
「そうね。ほら、こなたも笑ってー♪」
ぱしゃりという音とともに、ポラロイドカメラから写真が出てきた
「ほら、よく撮れてるよ」
「そうね。こなた、すっごい笑顔よ」
二人は……否、三人は、写真を見ながら笑いあっていた
それから18年後、赤ん坊――泉こなたは、高校3年になっていた
「ねぇ、お父さん」
「どうした? こなた」
「この写真……」
「ああ。俺とこなたとかなた、三人で撮った……最後の写真だよ」
こなたは写真をしげしげと眺める
なぜだろう、その横顔は、どこか寂しげだった
「……ま、いいじゃないか!」
「わわっ!!」
父親は――そうじろうは、こなたの身体を抱き寄せる
「かなたはもういないけどさ、俺にはまだこなたがいるから大丈夫だ!」
「……うん! 私も、お父さんがいるから大丈夫!」
たちまち、こなたが笑顔になる。あの時の――写真の中のこなたみたいに
「ふ~、お部屋のお掃除、やっと終わった~」
その時、こなたの従妹――小早川ゆたかが部屋に入ってきた
「お、ちょうどいい。せっかくこの写真が出てきたんだ。これと同じように三人で写真撮ろうか」
そうじろうはあの時と同じように、戸棚からポラロイドカメラを持ってきた
「いいね、撮ろう撮ろう!」
「うん!」
「んじゃ、撮るよー」
ぱしゃりという音とともに、ポラロイドカメラから写真が出てきた
「さーて、撮れてるかな……?」
三人は写真を覗き込む
「!」
「え!?」
「こ、これって……!」
三人は笑顔で一斉に振り返る。そこには何もなかったが……
「……来てたんだな、かなた」
写真の中の『四人』は、これ以上ないくらいの笑顔をこちらに向けていた
最終更新:2008年01月02日 00:24