ID:umHNDhojO氏:いざ、忘年会へ!

陵桜学園を卒業してから、もう五年が経過した。皆、それぞれの世界を歩いている。
あの頃の一年生も、もう二十歳を越え、立派な社会人となった。

「先生も来てくださいね、と……」

メールを打ち終わった泉こなたはノートパソコンを閉じ、立ち上がった。
原稿はすでに編集部に届いている。今日からはしばらく休みだ。

「久しぶりに皆と会うな。変わってないといいな……」

彼女は車に乗り込むと、夜の街へ消えていった。






「かがみちゃん、どこ行くの?」
「ん、今日は高校時代の友人と忘年会があるの。一緒に来る?」
「ゴメン、今日は彼氏とデートなの」
「わかったわ。頑張ってね」

六年制大学に通う柊かがみは講義終了後、友人と別れてタクシーを待った。
学歴は学内でも優秀、弁護士になるのは確実とまで言われているほどだ。

「かがみさん」
「あ、みゆき!」

タクシーを待つ間、旧友の高良みゆきと出会った。学部が違うだけで、まったく同じ大学に入ったのだ。

「皆さんと会うの、久しぶりですね」
「そうねー、あれからもう五年が経ったもんね」

二人で会話をしているうち、一台のタクシーがやってきた。

「あ、タクシーが来ましたよ」
「そうね。……あ、人が乗ってるみたい……」

次のタクシーを待つか、と思ったその時、二人の前でタクシーが止まった。

「二人とも、乗ってよ!」
「つかさ!」
「つかささん!」

中から顔を覗かせたのはかがみの妹、つかさだった。二人がタクシーに乗り込むと同時に、目的地へ向けて発車した。

「つかさ、また大きくなったわね」
「えへへ、もう少しで生まれるんだよ」

つかさは笑顔を二人に向けたまま、大きくなったお腹を擦る。

「あまり羽目を外しすぎないようにしないといけませんね。妊娠中の飲酒は、お腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼしますから」
「さすがお医者さん志望のゆきちゃん、ちゃんと勉強してるんだね」
「卒業してすぐ結婚したつかさと違ってね」
「はうーっ!!」

三人を乗せたタクシーは、夜の街を走り抜ける。




「あやのー! 急げってヴァ!」
「でも、まだ時間はたっぷりあるよ?」
「バッカヤロー! 久しぶりにあいつらと会うんだゼ? 落ち着いていられねーってヴァ!」
「ふふ、わかるけどね」

峰岸あやのと日下部みさおは、自転車で爆走していた。

「でも、せめて着替えさせてくれてもいいじゃないっ! 私、まだステージ衣装のままなのに!」
「着いたら着替えればいーじゃん! グダグタ言ってたら置いてくぞ!」
「トライアスロン選手のみさちゃんに叶うわけないじゃないのーっ!!」

二人は夜の街を爆走していく。




「いやー、悪いっスねー、乗せてもらって」
「いえいえ、目的地が同じナラ、一緒に行った方が効率いいデスヨ」

〆切ギリギリでマンガ原稿を編集部に送り付けた田村ひよりは、近くに住むパトリシア=マーティンの車に乗せてもらっていた。

「パトリシアさん、結局メイド喫茶に就職しちゃうんですもん。ビックリしましたよ」
「私に一番合う仕事だったのデス!」

ハンドルを握ったまま、後部座席に振り向くパトリシア。

「わー! 前! 前見て運転してくださいッスー!」

二人の乗る車は、慌ただしく目的地に向かって走りだす。






「すみません、私まで送っていただいて……」
「いやいや、妹の親友だもんね。乗せてくのは当たり前だよー」
「お、お姉ちゃん! 恥ずかしいよ……」

パトカーの後部座席には、絵本作家の小早川ゆたかとピアニストの岩崎みなみ。運転しているのは、ゆたかの姉の成実ゆいだ。
首都高を法定速度ギリギリのスピードで走っている。

「今日は良かったの? きよたかさんと妊娠記念パーティーする予定だったんじゃ……」
「まあ、後できよたかさんも呼ぶつもりだしね。皆と会えて一石二鳥だよ!」
「あ、黒井先生の車……」
「……って、パッシング?」
「上下消下上下……黒井さんの暗号『最高速で行け』か……」
「……まさか……」
「二人とも、しっかり捕まんなよ!!」
「「ひゃああああああ!!」」

二台の車は『よくそれで捕まんないな』というようなスピードで首都高を走り抜けて行く。




「早くしなさいよね白石!」
「これが以上スピード出したら捕まるッス!」
「もう……」

後部座席で運転手に怒鳴り付けるのはアイドルの小神あきら。運転手はアシスタントの白石みのるだ。

「あの人達に会うのも久しぶりですね」
「そうね。みんな、元気にしてるかな」

中学を卒業したあきらは陵桜学園に入学し、ゆたか達と知り合った。その時同時に、こなたやかがみとも知り合ったのだ。

「あの人達なら大丈夫ッスよ。……お、見えてきたッスよ!」
「あそこが待ち合わせの……」

二人は車を路肩に停め、中へと入って行った。




「いっちばんのり~!」
「おっす! 久しぶりね、こなた!」
「こなちゃん、久しぶり~」
「お久しぶりです、泉さん」
「柊ー! ちびっこー! 久しぶりだなー!」
「妹ちゃん、高良ちゃん、久しぶり」
「みんな、久しぶりッス!!」
「グッドイブニ~ング! お久しぶりデ~ス!」
「やふー! ゆい姉さんが来たよー!!」
「ウチも来たでー!」
「……し……死ぬかと思った……」
「……き……気持ち悪い……」
「こんばんはー! あきらも来ちゃったぞー☆」
「皆さん、お久しぶりです!」

上の言葉は皆が店に入ってから初めて発した言葉だ。
全員がビール(つかさ、ゆたか、あきらはウーロン茶)を持ち、こなたが立ち上がる。

「さあ! 今日はみんな集まっての忘年会だよ! 思いっきり楽しもう!!」
『お~~~~!!』


みんな揃っての忘年会が、今、始まる――



Fin    
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