らき☆すた バトルロワイヤル

黒井「今からバトルロワイヤルをしてもらうで」

朝、いつものように学校に行ったとこまでは覚えている。
しかし、いつの間にか寝てしまったようで、起きたとき、私たちは別の校舎内にいた。

そして、その言葉はついさっき私たちに告げられた言葉だった。

見たこともない校舎内で、違う学校のようだ。
そして、自衛隊っぽい兵が数人先生の後ろにいて、銃を持っていた。

こなた「先生・・今何て・・」

誰もつっこまないので、私がつっこんだ。

黒井「せやから、バトルロワイヤルやって。」

当たり前のことを話しているかんじに明るく言う先生。

みんなは信じられないという表情だった。

ざわざわ・・・

黒井「こら、うるさいで。まだ話の途中やろ」

バンッ

兵の銃口から煙が上がっていた。

天井に穴が開いている。


教室内は静まり返った。

黒井「殺し合いやから武器を支給するで。入ってるもんはランダムやさかい、文句いわんでなー」

つかさ「はうぅ・・・」

隣でつかさが半泣き状態で((((;゚Д゚)))ガクガクブルブルしていた。

黒井「あと、ここは無人島や。周り全部海やからな」

黒井「まぁ、以上で大まかなルール説明は終了や。あー、ちなみに期間は無制限やから、最後の1人になるまでまたーり
やっといてくれればおkやで。まあ、食料は限られてるさかい、あまりまたーりもしてられへんけどな」

つかさ「こなちゃん・・・・・」

つかさの視線がこちらにとんできた。

こなた「き、きっと大丈夫だよ」

落ち着かせようとちょっと明るく言った。

黒井「そうや、今回はクラス単位やなくて一部シャッフルしたわ。その方が面白そうやしな」

確かに教室を見渡すと見たことない人も数人いる。

黒井「まぁぼちぼち始めるでー準備はええかー?」

黒井「泉ー」

こなた「は、はい・・・」
黒井「健闘を祈るでー」


リュックを受け取り、こなたは教室を出た。


こなた「・・・とりあえずどうしよう」

校庭に出て、キョロキョロ辺りを見回す。



こなた「そうだ。まず武器とか確認しなきゃ」


校庭の草の陰にかくれれもらったリュックを開けた。

入っていたのはパン2個、ペットボトルの水、地図、鉛筆、コンパス、そして拳銃に、
詰め替え用の弾だった。

こなた「拳銃かあ・・・ハズレじゃないけど、当たりってワケでもないなあ。
・・・まあ使う気はさらさらないけど・・・」


拳銃をリュックに入れて草の陰から顔を少し出す。

こなた「ここから出た方がいいのかな?でも、出てもどこに行けばいいのか・・・」

数分がたった。

その間にいろいろ人が出てきていた。

幸いこなたは気づかれることなく、まだ草のかげにいた。



こなた「ぁっあれは・・・おーい!!つかさー、かがみー!」

2人を見かけて草のかげからとびだし、呼びかけた。

かがみ「ふわっ!?びっくりしたあ、こなたかあ・・・」
こなた「えへへ、ごめんごめん」
かがみ「にしても警戒心ないわねえっ!一応私たち、殺し合いに参加させられてるのよ?」
こなた「うぐう・・・」
つかさ「こなちゃん、ずっとあそこに隠れてたの?」
こなた「うん。だって何したらいいか分からなかったし・・・」

バンッ

銃声が聞こえた。

3人はビクッとして顔を見合わせる。

つかさ「ふぇえっ、今の音・・・・」

かがみ「・・・とりあえず、どっか隠れるところを探しましょ。ここにいたら危険だし・・・」
こなた「うんっ、わかった」

3人はいったん校舎から離れて森に入った。

するとバンガローのような建物が見えてきた。

かがみ「こんなところにバンガロー?」
こなた「入る?」
つかさ「入っちゃっていいの?」
こなた「いいんじゃん?だってカギかかってないし」

ギィとドアを開けてこなたが行った。

かがみ「ばっ!・・あんた、誰かいるかもしれないのに無用心に開けるな!」
こなた「あ、ごめんっ・・・」
かがみ「もう、あんたは・・・」
つかさ「でも、見たところ誰もいなそうだね」

3人はバンガローに入ることにした。

こなた「そーいえばつかさとかがみの武器は何だった?」
つかさ「あ、そういえばまだ見てないやー」

かがみの武器は日本刀、つかさの武器はライフルだった。

こなた「・・・いいなー。」
かがみ「何が「いいなー。」よ。あんたのは?」
こなた「私のなんてただの拳銃だよ・・・」
かがみ「十分じゃないの!」
こなた「まあ・・・ねえ」
つかさ「ところで、これからどうするの?」
かがみ「んー・・・どうしよっか。ずっと隠れているわけにも行かないしね・・」
こなた「殺し合いのゲームを中断させることってできないのかな」
かがみ「逃げるってこと?」
こなた「違うよ。根元から、こう、ぶっつんと」
つかさ「ど、どゆこと?」
こなた「つまり、みんなで協力してゲームを止めるんだよ」


続く・・・(多分



バババババババババババババババンッ
響き渡る銃声。

みゆき「あははははははははははは♪」
生徒が倒れた。
みゆき「うふふ♪とっても楽しいですね~。クセになります」

「た、高良ちゃ・・」
振り向くとあやのが立っていた。

みゆき「あら、峰岸さんじゃないですか。」
あやの「な、何で高良ちゃんが人殺しを・・・・」
みゆき「何故って楽しいからに決まってるじゃないですか♪あなたも死にますか?」

持っていた大きな銃をあやのに向ける。
あやの「!!」
急いでみゆきから背を向けて走り出す。

みゆき「うふ♪無駄ですよ~」

カチッ

みゆき「あれ?」
引き金を押しても弾が出ない。
みゆき「あら、私としたことが、もう弾切れとは・・・ちゃんと節約しなといけませんね♪」

リュックから予備の弾を引っ張り出し、銃に込めた。
その間にあやのはどうにかみゆきから逃げ切った。

みゆき「あら、峰岸さんったら運のいい・・・まあ、今度あったらやればいいだけのことですね」

みゆきが不適に笑った。

ひよりとパティは森を歩いていた。

ひより「これから私たちどうなるのかなー」
パティ「ソウデスネー」

・・・何で私たちこんな殺し合いに巻き込まれてるんだ??
ジョーダンじゃない。

ひより「そうだ、武器何だった?」

何気なく聞いてみる。

パティ「アー、マダ見てないデスー」

そういうとパティはしゃがみこんでリュックを開けてみた。

パティ「オーゥ、ドウヤラ大きな刃物のようデスねー」
ひより「わー、それ斧じゃん。」
パティ「オノ?」

ひよりの武器は包丁だった。
自分よりいい武器というのででちょっとビビった。

殺し合いっていうのはやるかやられるか・・・2つに1つ。
生き残るためには他の人を殺さなきゃいけない。
他に生き残る方法がない。

ひより「パティ」
パティ「ハィ?」

ひより「悪いけど、死んでもらうよ」
パティ「へ?・・・」

スッと包丁を取り出し、ブスッと背中に突き刺した。

パティ「ゥ・・ア・・ナ、ナンデ・・デスカ!?」

包丁を引き抜くと血がどくどくと出てきた。

ひより「私はまだ死にたくないんだ。生き残るためにはこうするしかないんだよ、ごめんね。」
ちょっと辛そうな顔をしてパティを見た。

パティ「自分のタメに・・・他人を殺スん・・・デスか?」

最後にひよりを睨みつけてドサッとパティは倒れた。

ひより「そうだよ。やっぱ人っていうのはそういうもんなんだよ。1番かわいいのは自分なんだよ」
倒れたパティの悲しそうな目を見て、少し残る後悔の気持ち───
けどもう、後戻りはできない。

ひよりはパティの斧を掴んで、また歩き出した。

絶対・・・生き残る。



<パティ死亡 残り24人>

こなた「うーん・・・なんかすごく銃声が聞こえるね・・・」
つかさ「みんな、本当に殺し合いをしてるのかなあ?」
かがみ「わかんない・・・」

一応、ゲームを止めると決めたけど、銃声がなったりしているせいか、まだバンガローにいた。

かがみ「てかさあ、ゲームはじめたときから気になってたんだけど、この首についてるのって何?」
こなた「へ?・・・わっ、私にもついてる」
かがみ「今気づいたのかよ」
つかさ「なんかの機械みたいだね」
かがみ「黒井先生、この首輪について何も言ってなかったわよね」
こなた「うん・・・」


その時、大きな音が聞こえた。

黒井「えー、オホン、みんな聞こえとるかー?お昼の放送やでー。いやーみんなようやっとるやないか。
まだ数時間やっちゅーのにいっぱい死んどるなー」

こなた「え、いっぱい・・・って・・」

黒井「えっとなあ、5,6・・6人死んどるやないか」

つかさ「っ・・・!!!??」
かがみ「6人!?」

黒井「ほな、禁止エリアの発表やでー。禁止エリアに入ったら首輪が爆発して死ぬから注意しいやー
えー、禁止エリアは・・・(ry」

時間は今、午後1時ごろというところだ。
このゲームが開始されてから4時間弱。
こなた「まさか・・・こんな高ペースで死人が出てるなんて・・・」
みゆきさんやゆーちゃんの顔が頭の中をかすめる。

それに・・・

こなた「この首輪・・・」
かがみ「さっき爆発って言ってたわよね・・・」
つかさ「ど、どうしよぅっ」
かがみ「お、落ち着いて。禁止エリアに入らなければいいだけよ」
こなた「うん、そ、そだね。」

かがみ「後は死人の数の多さ・・誰か、ゲームに乗ってる人たちがいるってことよね・・・?」
こなた「うん・・・」
かがみ「ど、どうしよう・・・?」
こなた「決めたじゃん。ゲームを止めるって・・・。」
かがみ「けど・・・。」
こなた「まずは、協力してくれる人たちを探そうよ。みんなで協力すればゲームは止められるよ」
かがみ「そうね・・・。みゆきや日下部たちならきっと・・・。」
こなた「こんなに死人が出てるなんて・・・犠牲者が少しでも出る前にはやく止めよう!行こう、かがみ!」

リュックをしょいなおしてこなたが立ち上がった。

かがみ「あっ、ちょっ・・!ほら、つかさ行くわよっ」
つかさ「ええ!?い、行くのぉ!?」
かがみ「ほら、はやくっ」
その後にかがみとつかさも走り出す。

そしてゲームを止めるためにこなたたちはバンガローを出て戦場へと踏み入った。



その頃、岩崎みなみは海の近くに来ていた。
・・・・やっぱり海に囲まれているんだ・・・
バーン・・・・
先ほどから銃声がそこらじゅうから聞こえていた。

支給された武器は救急箱だった。
・・・もはや武器とは呼べないけれど。

さっきの放送によると死人は6人も出ているらしい。
・・・・ゆたかは大丈夫かな
これだけが気がかりだった。

砂浜に下りて、潮風に当たった。
殺し合いなんかが行われていなければどんなに気持ちいい風だっただろう。
その時、そばの岩陰から声が聞こえた。

「そ、そこにいんの、だ、誰だっ!?」

その声はかなり怯えているような声だった。
振り返ると、岩陰からみさおが銃をこちらに向けているところだった。
ガタガタ震えているところから見ると殺意はないようだった。

みなみ「日下部先輩・・・?」
みさお「ふぁっ・・・なんだ・・岩崎さんかあ・・・」
安堵したように銃を下ろした。

両者、一時見つめあう。

みさお「まさか・・・ゲームに乗ってるとか言わないよなぁ??」
みなみ「できるわけないです・・・。」
みさお「良かったぁ・・・。」
みさお「こんなの・・・バカげてるよな?」
みなみ「・・・・はい。」

ゲームに乗っていない人がいて、いくらかみさおは安心した。

みさお「一緒に行かねぇか?柊たちを探そうぜ。」

みなみはゆっくり頷いた。

一方、ゆたかは・・・・

ゆたか「はぅ・・・怖いよ・・・みなみちゃん、お姉ちゃん、どこぉ~?」

銃声があちこちから聞こえ、途方にくれているゆたかが泣きながら歩いていた。

ザッザッザッ・・・

!!!・・・誰かこっちに来る!!か、隠れなk・・はぅっ!!

焦って、ひっくり返った。

「あ、あなたは・・・」
ゆたか「は・・はれ?あっ・・・あなたは・・・峰岸先輩っ」

見知った先輩で、少しゆたかは落ち着いた。

あやの「ゆたかちゃん・・・っ」
ゆたか「よ、良かったです・・・。とても怖かったんで・・・。」
あやの「・・・。」
ゆたか「・・・何かあったんですか?」

意味ありげな表情を見てゆたかが聞いた。

あやの「高良ちゃんが・・・高良ちゃんが・・・」
ゆたか「高良先輩?」
あやの「そう・・・高良ちゃんが・・・人殺しを・・・」
ゆたか「・・・・う、うそでしょ?あ、あの高良先輩が?」
あやの「でも、私、見たの・・・。で、急いでここまで逃げてきて・・・」
ゆたか「そ、そんな・・・・」
あやの「でも・・ゆたかちゃんは大丈夫よね?このゲーム乗ってないわよね?」
ゆたか「はいっ、こんなの無理です・・・人なんか・・・殺せるわけ・・・」
あやの「私もよ・・・みんな狂ってるわ」
ゆたか「あの・・・これからどうします?」
あやの「他の人たちと合流した方がいいかもね」
ゆたか「そうですね。じゃあ、一緒に探しましょう」
あやの「そうね。」

こなた「誰も・・・いないね・・・。」

かれこれ2時間歩いているが、不気味なほどに誰にも会わない。

かがみ「でも・・・もしゲームに乗ってる人と出くわしたら・・・。」
つかさ「お、お姉ちゃんっ・・・そんな怖いこと言わないでよぅ・・・」
こなた「うわっ・・・・」
かがみ「え、何・・・・うっ」

男子の血まみれの死体。散弾銃でやられているようだった。

つかさ「キャーーーーーーーーッ!!!!」
かがみ「─────ッ!!つかさ、落ち着いて!誰かに気がつかれるわよっ」
こなた「ひどい・・・。」
かがみ「誰が・・・やったのかしら。」
こなた「わかんない。・・・。」



ゆたか「いませんね・・・。」
あやの「この島、けっこう広いのね・・・。」

─────ガサガサガサ

ゆたか「──!?誰か来るっ」

逃げる間もなく2人の影が現れた。

あやの「み、みさちゃん?」
みさお「あ、あやのっ!!」

みなみ「・・・ゆたか!」
ゆたか「みなみちゃん!」

みさお「おお~っ、良かったぁー。何時間も歩いて誰にも逢わなくてさ」
あやの「そうなの?私たちも誰にも逢わなくて・・・」
みさお「放送聞いたけど、ホントに始まってんだな」
あやの「うん、そうみたいだけど・・・」
ゆたか「私たち、どうしたらいいんでしょう・・・」

みんな「・・・・・・・。」

みさお「人を殺すなんて、とてもじゃないけどできねーよな」
ゆたか「私たちもいずれ誰かに殺され・・・」
みなみ「・・・そんなことさせない」
みさお「そ、そーだぜ。きっと、何か方法があるはずだ。みんなが助かる方法が・・・」
あやの「でも、その方法って?周りは海で逃げることもできないのに」
ゆたか「そうですよね・・・」
みさお「・・・うーん、やっぱ柊と合流した方がいいかもな」
あやの「柊ちゃんと?」
みさお「あいつならきっと、方法くらい考えついてるんじゃないかな」

4人の方針は決まった。



つかさ「暗くなってきたねぇ───。」

ふいにつかさがつぶやいた。

かがみ「そうね。今何時かしら?」
こなた「午後6時ごろじゃない?」
かがみ「もうそんなに?」
こなた「いや、細かくはわかんないけどさ・・・。」
かがみ「結局誰にも逢わなかったわね。」
こなた「うん・・・また明日にしよっか。今日は疲れたし・・・休める場所を探そか。」



一方、また4人は・・・

大きな茂みの塊の中で寝ることにした。

みさお「ここならだいぶ見つかりにくいと思うぜ。」
あやの「そうね。」
みさお「そういえば、さっきあやの、何か言いかけてなかったか?」
あやの「ああ・・・実は・・・高良ちゃんが・・・人殺しを・・・」
みさお「ッ!?嘘だろっ?あの高良さんが?」
みなみ「そんなのありえない・・・。」
ゆたか「でも、峰岸先輩が見たって・・・。」
みさお「にわかには信じられねぇけど。」
あやの「私も目を疑ったわよ・・・でも、殺されかけたのよ?」
みさお「まあ、それはまず置いとこうぜ・・・本人に逢わないとなんとも」
ゆたか「そうですね。・・・そういえば、お腹すきましたね・・・。」
みさお「あ、確かバッグん中に少し食料なかったっけ。」

ロールパン2個と500mlの水が入っていた。

みなみ「でも・・・これを食べたら後はどうしたら・・・」
みさお「なんか木の実でも拾って食うしかねぇんじゃね?」
あやの「ええ。」
みさお「明日は絶対誰かをみつけよーぜ。」

みんな「うん。」



黒井「朝の放送始めるで~。今は朝の6時や~。みんな起きとるか~?
さて、死人やけど、昨日にプラス3人で死人総合数は9人や。
ほな、みんな頑張ってなぁ~。」

かがみ「あれから3人も・・・・」

大きな木の下でロールパンをかじりながらかがみがつぶやく。

こなた「今日こそ、みんなを見つけないとね。」
つかさ「うんっ」



ゆたか「3人も・・・田村さんやお姉ちゃんは大丈夫かなぁ。」
みなみ「・・・きっと、大丈夫。」
みさお「よし!今日は柊たちを見つけようぜえ!」
あやの「・・・そうね。でも4人もいるんだし・・・」
みさお「ん?」
あやの「2人ずつで手分けして探して、後で合流したらよくないかしら?」
みさお「おお!グッドアイディアだな!」
ゆたか「はい、分かりました。」
あやの「じゃあ、お昼ごろ、またここに集合ってことで。」



森の中を3人は歩いていた。
つかさ「もう・・・誰も残ってないのかなぁ」
こなた「朝の放送によると、まだ3分の2は残ってるハズなんだけどねえ・・・」

──ガサッ

フイに茂みが動いて、一斉に3人は目を見張る。
リュックの中の拳銃を上から手を入れグッと握る。

出てきたのは・・・白石みのるだった。

3人にとって学校を出てから初めて逢った生きた人間。

こなた「あっ・・!!!ウチのクラスの男子じゃんっ」

しかし、次の瞬間 驚愕した。
制服に血がべっとりついていたからだ。

かがみ「こなた、あの人ちょっと様子が変よ」
つかさ「まさか・・・ゲームに乗って・・・」

つかさがガクガクブルブルした。

こなた「まさかぁ・・・よりによってウチのクラスの男子が・・・」
かがみ「てか、あの人の名前は?」
こなた「忘れた」
かがみ「・・・・」


向こうもこっちに気づいたようだ。

白石「泉?泉じゃないか・・・」
こなた「え?あ、うんそうだけど・・・」

一歩一歩変な歩調でこなた達に近づいて来る。
それにあわせてこちらも一歩一歩後退する。
まだ右手はリュックの中の拳銃を握っている。

こなた「で、その血は何?まさか・・・誰か殺したとかじゃないよね・・・?」
白石「た・・助けてくれぇ・・・」
こなた「へ?」
つかさ「ど、どうしたのぉ?」
白石「撃たれたんだ・・・助けてくれ・・・なぁ・・・泉・・・」
かがみ「こなた、油断しないで。罠かもしんない。」
こなた「えっ・・・」

かがみはそー言うけど、その男子生徒は本当に苦しんでいるように見えた。

パンッパンパンッ

一同「!!??」

いきなり音がしてみんながビクッとした。
銃声だ。しかもすごく近い。


かがみ「誰か近くにいるみたいね・・・。」
つかさ「に、逃げようっ・・すごく近いよぅ、誰かが撃ったんじゃあ・・・」
こなた「待って。」
かがみ「こなた?」

こなた「行こう。」

かがみ「へ?ど、どこに?」
こなた「助けなきゃ。誰か撃たれてる人がいるかもしんないよ。」
つかさ「えっ!?でも・・・」
かがみ「そうよ。自殺行為じゃないっ!」
こなた「でも・・まだ間にあうかもしんないよっ」
白石「泉・・・」

こなた「もし、ゆーちゃんやみゆきさんだったらどうする?見捨てるの?」

ハッとした。
みんな、本当なこんなゲームなんかやりたくない。
強制的にやらされてるんだ。
死にたくないのはみんななんだ。
でも、やっぱり自分の命の方を優先している。
みんな同じなのに・・・。

自分だけが助かろうとしている行為を恥じた。

かがみ「うん、分かったわ。」

力強く頷く。


つかさ「えっ・・・い、行くのぉ!?・・・」
つかさ、半泣き。

こなた「つかさはココに居て。あとキミも。」
白石を指差して。

こなた「もし、私たちに何かあったら・・・そのときはつかさ、このゲームを止めてね。」
つかさ「ええっ!?そんなあっ・・私・・・無理だよぅっ・・」
こなた「頼んだよ。」
つかさ「ダメだよッ!!こなちゃん、お姉ちゃん・・・絶対・・死んじゃダメッ!!!」

涙が目の淵に溜まっている。


かがみ「つかさ・・・。」
つかさ「やだよぉ・・・死んじゃ・・・いや・・いやだよぉ・・・」
こなた「分かったよ。じゃあ、絶対、死なないよ。また、生きて逢おうね。」

こなたはつかさにニコッと一瞥して、走り出す。

こなた「かがみ、行こう」
かがみ「うん、じゃあ、つかさは待っててね」


銃声の方に2人は消えて行く。

取り残された2人は黙って見送っていたが、やがて白石が口を開いた。

白石「おい、柊」
つかさ「はっ・・はいっ!?」
白石「オレも行くわ」
つかさ「えっ!?何言うんですっ」
白石「オレはさっき撃たれたんだ。もう、長くはない。だから・・・」
つかさ「ダメですよっ!!そんなっ・・・」
白石「いいんだよ・・・。オレはもう・・・。」

午前9時。
別れてから3時間が経過した。

ゆたか「誰もいないね・・・。」
みなみ「・・・・うん。」
ゆたか「峰岸先輩たち・・大丈夫かなあ?」
みなみ「・・・きっと、大丈夫」
ゆたか「うんっ、そうだよねっ」

ガサガサ・・・

ゆたか「!・・・誰かいるんですか?」

茂みから1人が姿を現した。

ゆたか「た・・・田村さん?・・・田村さんっっ!」

予想外だが、待ち望んでいた友達が出てきて、歓喜するが・・・

ひより「・・・・・・・・」
みなみ「・・・様子が変」

つんと鼻をつく血の匂い。

ゆたか「田村さん・・・その血は・・・」

制服が真っ赤に染まっている。

ひより「・・・ゆーちゃんに、岩崎さんか・・・」
ゆたか「田村さん・・・?」

ひより「悪いけど、死んでもらうね。」

耳を疑った。
え?今なんて・・・・

ゆたか「ど、どういうこと・・・?」
ひより「何言ってんの?このゲームは殺し合いでしょ?自分のために他人を殺すの。」
ゆたか「そんな・・・まさか田村さん・・ゲームに乗って・・!?」
ひより「・・・だってしょうがないじゃん。他人を殺さないと、生きていけないんだもん。
    生きるために殺す。それだけよ。」

もはや、正気を失っているように見えた。

ゆたか「田村さん、聞いて!きっと他人を殺さなくても生き残れる方法があるから・・」
ひより「そんな方法・・・あるわけ・・・・」
ゆたか「あるよ!きっと!だからその方法を一緒に考えようよ!ねっ?」
ひより「ないよ。そんなの。そんなことしてる暇なんてないよ。」
ゆたか「・・・そんな・・」
みなみ「ゆたか、もう逃げよう・・・」

ゆたか「嫌だっ!!・・だって・・だって・・田村さんは友達でしょ!?」
ひより「・・・・・・・。」

斧を構えるひよりが一瞬ピクンと動いたような気がした。

ゆたか「ほっとけないよ・・・こんな状態ならなおさら」
みなみ「・・・・ゆたか」

ひより「うるさい」

ゆたか「へ・・・」

ひより「みんなを殺す。そして生き残る。」
ひよりが斧を握りなおす。

ゆたか「た・・田村さん・・・っ、ま、待って!!!」


こなた「あっ、あそこだ!!!」

逃げる影と追う影が見てとれる。

かがみ「どうする?」
こなた「うーん・・・」

逃げる影の前方に目を走らせる。
森のひらけた部分。

こなた「あそこに行こう」
かがみ「OK」

ダダダダダッ

────ッ!!!
追われている影の正体を見て、驚愕。

かがみ「く・・・日下部ッ!?それに、峰岸までっ」

追われているのはかがみのクラスメイト日下部みさおと峰岸あやのだった。

みさお「ひ・・柊っ?ってええ、んなこと言ってる場合じゃねえ!逃げろ!」

みさおはあやのの手を引いて必死に走って来る。

「そろそろ限界じゃないですか?日下部さん?」

2人を追っていたらしき人が口を開いた。

こなた「み・・みゆきさん・・・?」
かがみ「なっ・・何でみゆきが!?」

唖然とする2人。

みさお「知らねぇのかよ、2人とも!高良はゲームに乗ってんだぜ!?だからはやく逃げろ!」

ようやくこなたとかがみの近場まで走ってきた。

こなた「へ・・・?」

何がなんだか分かんない。
みゆきさんが・・・ゲームに乗ってるだって?
そんなバカなこと・・・・

みさお「ヴァカッ!はやく逃げろって言ってんだろ!!何ボーッとしてんだよっ!!」

2人に追いついたみさおが焦ったように叫んだ。

ここでかがみはあやのの異変に気づいた。

かがみ「峰岸、撃たれたの!?」

あやの「うん・・・ちょっとね・・・」

足に数発食らっているようだ。
血が流れているが、頑張ってココまで逃げてきたのだろう。

かがみ「ちょっと、大丈夫なの!?」
あやの「・・・うん、多分」

みゆき「もう逃がしませんよ♪」

すぐそこまでみゆきが迫っていた。

みさお「うぁっ・・やべえ、柊、あやのを頼む!はやく行け!」
かがみ「えっ、何で・・・」
みさお「はやくいいから行け!!私より体力余ってるだろっ・・・」
かがみ「わ、分かった・・・。こなた、とりあえず逃げるわよ。」
こなた「え・・・でもみゆきさんが・・・」
かがみ「いいからっ!!!」

そう言いながら4人は引き返した。

しかし、運動ができるみゆきはどんどんと差を縮めて行く。

こなたとかがみだけならまだしも、怪我人がいるとなるとスピードはガタ落ちだった。

あやの「柊ちゃん・・・私はいいから、あなただけでも逃げて・・・」
かがみ「!? 何言ってんのよ、峰岸」
あやの「このままじゃ私のせいで高良ちゃんに捕まっちゃうわ。みさちゃんだってもう体力が
    限界だし・・・」

確かに、いくらみさおといえど、体力が残り少ない。

そんな会話を横目に見ていたこなたは急停止した。
そして、くるりと回れ右。

こなた「みゆきさん、ストーップ!!!」

みゆき「あら、逃げないんですか?」
こなた「みゆきさんが本当にゲームに乗ってるなんて信じてないもん」
みゆき「そうなんですか?」

みゆきは走る足を止めない。

こなた「人殺しなんて、してないよね?」
祈る思いで問いかける。

みゆき「しましたよ♪いっぱい♪」
そんな思いも虚しく、軽々しく返ってきた言葉。
そしてニターと悪い笑みを浮かべた。

みゆき「撃たれたときの痛みにもがく顔を見るの、楽しいですよ♪」

そのみゆきにこなたは戦慄した。
でもなんとか恐怖を振り払い叫んだ。

こなた「待ってよ!!!」

こなたの叫びにみゆきがピタと止まる。
こなたとの距離は7、8mくらい。

こなた「それ、本当なの?」
もう1度確認のように聞き返す。

みゆき「ええ」
即答。

こなたの頭の中を思い出が駆け巡る。

こなた「私の知ってるみゆきさんは、そんな人じゃないよ・・・今まで・・いっぱい一緒に
      いろんなことやってきたじゃん?覚えてないの?」

みゆき「あんなくだらない日常より・・・私はこっちのがよっぽど楽しいです♪」

裏切られたカンジがした。
今までの思い出が全て嘘だったような、言い方だった。

みゆき「じゃあ泉さん、そろそろさよならですね♪」

みゆきがダッシュした。
左手には銃。・・・そして

パンッ

乾いた銃声。
飛び散る鮮血。

こなた「ぅぁあっ」

右肩に走る激痛。
足から力が抜け、しゃがみこむ。
思わず目を瞑る。


みゆき「ちっ、走りながら撃つと、どうも狙いがそれますね。今度は外しませんよ。」

カチャリ という音がする。

おそるおそる目を開けてみる。
自分を狙った弾は直撃はせず、右肩をかすっただけだったが、血が出ていた。
制服が朱に染まっていく。

そしてみゆきを見上げると銃が真っ直ぐに自分の心臓を狙っていた。

みゆき「さよなら、泉さん♪」

パンッ

どっちが速かっただろう?
多分、銃声より先に私の体が何かに突き飛ばされた。

服の上から伝わる体温。
目を開けるとかがみの顔が目に入ってきた。

かがみ「まったく・・・何してんのよ、アンタは・・・」
こなた「か、かがみ?な、何で・・・」

どうやら、かがみが押し倒して(?)くれたから弾は当たらなかったらしい。

みゆき「かがみさん・・・邪魔しないでくれますか?」
かがみ「な、何言ってんのよ、アンタは!!気が狂ったの!?」
みゆき「私は狂ってないですよ♪常に普通です♪」
かがみ「嘘だっ、じゃあ何でこなたを撃つのよ」
みゆき「はぃ?撃っちゃダメなんですか?」
かがみ「アンタ・・・それ本気で・・・」

かがみの握り拳が震える。

みゆき「だってこれは殺し合いのゲームですよ?ルールに乗っ取って何が悪いんですか?」

今度はかがみめがけて銃を構える。
思わずかがみは口をつぐんだ。

沈黙。

私だけならまだしも、私のセイでかがみまで撃たれたら・・・。
だけど気力がもう限界に近かった。
みゆきさんに、みゆきさんに撃たれた・・なんの躊躇もなく。

かがみはじっとみゆきを睨んでいるだけだが、みゆきはこの状況を楽しんでいるように見えた。

みゆきがニターッと笑い、手に力を入れたときだった。

「待てぇーーーーーーーっ!!!」

何者かがみゆきに突っ込んで、そのまま倒れこんだ。

かがみ「!?」

突っ込んできたのは、つかさと一緒にいるハズの白石みのるだった。

みゆきは2人に注目していて、白石が近づいてきていることに気がつかなかったのだ。

みゆき「あ、あなたはさっき私が仕留めた・・・な、何で生きてるんですか!?」
驚愕の顔。

白石「生きてちゃ悪いか?死んだか確認してなかっただけだろ・・・それっ!」

白石がみゆきの銃を奪って、遠くに投げ捨てた。

みゆき「死にぞこないのクセに、ナマイキですね♪」

また微笑む。
バッグから別の銃を取り出した。
殺してきた人たちから武器を奪ってきたのだろう。

白石「泉、柊、逃げろ!!」

白石がこっちを振り向いて叫んだ。

みゆきは銃を撃つ準備をしている。

かがみ「な、何であんたがココに・・・」
白石「そんなことはどうでもいい!!はやく!!!」
かがみ「でもっ・・・」

白石「オレのことはいいんだ。どうせこの出血じゃあ助からん。だからせめて、潔く死ぬぜ。
   泉、このゲームを止められるのはおまえたちしかいない・・・だから」

みゆき「ちっ、死にぞこないのクセに・・・手を離してくださる?」
白石「はやく!!!」

かがみは何かを必死にこらえるように俯いて、

かがみ「分かった・・・。行くわよ、こなた」

と言ってグイッと私の手を引いた。

かがみに手を引かれるまま私は走った。

辛かった。
自分勝手な行動で勝手に撃たれて、その上助けられ、自分は何もできなかった。
遠ざかっていく白石とみゆきを、ただボーゼンと見ているしかなかった。

パンッ

やがて音がする。
私は目を瞑った。
嫌だよ。こんなの。
出そうになる涙を必死にこらえた。


撃たれたとはいえ、だいぶ浅い傷のようで、もう出血は止まっていた。
しばらく走ったところで、茂みの中からみさおがひょっこり顔を出して手招きした。

みさお「とりあえず、ここから離れようぜ。」
かがみ「そうね。」

せっかく白石が逃がしてくれたのに、またみゆきに出会ってしまったら二の舞だ。
少し離れた木の影のところで休むことにした。

みさお「あやの、大丈夫か?」
あやの「・・・うん」

傷はこなたより深くて、まだ血が止まらないようだ。
このままでは危ないような気がした。

かがみ「誰か、包帯とか持ってない?」
みさお「そんなん持ち歩くヤツいるかよ・・・あ!!」
かがみ「ん?」
みさお「確か、岩崎さんの支給品、救急箱だったぞ」
かがみ「みなみちゃんに逢ったの?」
みさお「うん。今別行動中だけどな。待ち合わせしてるから、行ってくる。柊はちびっ子とあやの
    を頼むぞ~」

そう言うとみさおは走って行った。

ひより「うわぁああああああああああっ!!!!」

狂っていた。もう、以前の面影はどこにもない。
斧を高く振り上げた。

ズドッ

みなみがゆたかとひよりの間に割って入っていた。

ゆたか「─────ッ!?」

左肩から深く刃が刺さっていて、おびただしい量の血が噴出した。
自分の鮮血にみるみる真っ赤に染まっていく。
そしてひよりも返り血をどっぷり食らう。

ゆたか「み、みなみちゃ──・・」

絶句。

な、なんで、こんなことに・・・。

ゆたか「みなみちゃんっ!!!」

親友の名前を叫んだのと同時に、みなみが前のめりに倒れた。

ひよりはそのままささりっぱなしの斧の柄を離し、あとずさりした。

ゆたか「みなみちゃんっ、イヤだ・・イヤだああっ・・何でこんな・・何で・・っ」

とどめなく流れる涙に目もくれず、ひざまづいて叫び続ける。
ゆっくりみなみが顔だけゆたかに向ける。
その顔は、何故か満足気な笑みを伴っていた。


みなみ「ゆたかは・・・友達だから。」


ゆたか「───・・・!!」

そう、言うと目からスゥっと光が消える。

親友の最期の言葉を聞いて、さらに涙が溢れた。

それだけ。
友達だから。
たったそれだけの理由で命を捨てたのだ。

そんなみなみを見て、ひよりはさらにあとずさり、体を震わせた。

ひより「私は・・・私は・・違う・・。岩崎さんが悪いんだ・・・目の前に入って来るから・・・
    それに・・私は・・と、トモ・・友ダ・・チを・・うわああああああああああああ!!!」

焦点の合わない目。

そしてダッと全力疾走で森の奥へ消えた。

ゆたか「・・・・・・・。」

止まらない涙を流し続け、冷たい手に手を重ねる。
どうすればいいのか分からなかった。

自分が何をしたいのかも。何を考えているのかも、分からない。

<岩崎みなみ死亡 残り16人>


こなた「とりあえず、つかさのところに行って来るよ。」
かがみ「私が行くわよ。あんたは怪我してんだからじっとしてなさい。」
こなた「ぶー。もう平気だってばー。かがみは峰岸さんとここに居てよ。」

さっきからあやのは寝ていた。
血が多く出ていて、体力を消耗したのだろう。

かがみ「まあ、そんなに言うなら・・・。でも、気をつけなさいよ?」
こなた「分かってるよ~。つかさをつれてくるだけだもん。ムチャはしないってば。」

そう言うとこなたはタッと軽快な足取りで去っていった。
なんでか知らないけど、ちょっと心細い。

みさお「あんれー?」

キョロキョロ見回す。
ゆたか達と合流するために一旦こなたたちと別れたが、待ち合わせ場所に居ない。

みさお「まだこっちに向かってんのかなー?まあいいや。ちょっと待ってみるか。」


ガサガサッ


みさお「!?」

勢い良く茂みから飛び出して来たのはひよりだった。

みさお「田村さん・・・?って、ちょっ、おまっ・・」

鮮血に染まった制服を見て、驚愕。

みさお「ちょ、待てよ!どこ行くんだよ!」

みさおには目もくれず、横を勢いよく通り過ぎて行ったひよりに呼びかけた。

ひより「殺せば?殺したければ殺せばいいじゃない。」
みさお「はあ?何言ってんの?そんなことできるわけ・・・」

ひより「うるさい!黙れ!!」

みさお「!? え!? 田村さん、大丈夫かよ?」
いきなり大声を出されて、呆気にとられるみさお。

そう言うなり、もう二度と止まることなくひよりはそのまま通り過ぎて行った。

みさお「どうしちまったんだぁ?・・・まさか、ゆたか達と何かあったんじゃ・・・」
心配になって、ひよりが現れた茂みの中から奥へと踏み込んだ。

つかさ「こなちゃんとお姉ちゃん・・・大丈夫かなぁ・・・」

白石も行ってしまい、1人ぼっちになったつかさはしょんぼりと岩陰に隠れていた。
時々脳内をよぎる、嫌な予感。気のセイであってほしい。
はやく帰ってこないかなぁ。と、気持ちが募るばかりであった。

ザッザッ

人の足音が聞こえる。

もしかして、お姉ちゃんたちかな!!

あまりにも待ちわびていたからか、ゲームに乗っている人かも・・・なんというところまで
考えが回っていなかった。
躊躇も何もなく、つかさは岩陰からひょっこり顔を出し、

つかさ「お姉ちゃ~ん!!」
大声で呼んだ。

1人の影が振り返り、つかさを目で捉える。

つかさ「!!!!」

はうっ!? お姉ちゃんじゃない・・・?

予想外のことに、半ばパニック状態で、目の淵に涙が浮かぶ。
今はバトルロワイヤル中。ゲームに乗った人に見つかってはいっかんの終わりだ。

「あら?あなたは・・・つかささんじゃないですか?」

つかさ「は・・れ?ゆ、ゆきちゃん・・・?」

突然声をかけられ、顔を上げる。
そこには親友───高良みゆきが優しく微笑んでいた。

みゆき「どうしたんですか?こんなところで。」
つかさ「いやー、ちょっと事情があって・・・でも、ゆきちゃんに逢えるなんて奇遇だよ!」
みゆき「そうですね♪ では、1人ということですか?」
つかさ「うん。今はね。もう少ししたらお姉ちゃんたちと合流すると思うよ。
    あ!そうだ!ゆきちゃんも私たちと一緒に行こうよ!」
みゆき「いいんですか?」
つかさ「もちろん!ゆきちゃんは友達だもん。一緒に協力してゲームを止めようよ。」

みゆき「え?ゲームを止める?」

背筋がゾクッとした。

つかさ「ゆきちゃん・・・?」

見えない威圧感に気おされてつかさは友達の名を呼ぶ。

みゆき「あ、すいません。私としたことが・・・で、ゲームを止めるというのは?」
つかさ「いや、だから、こんな殺し合いするゲームなんて嫌だから・・・」
みゆき「なるほど・・・」
つかさ「だから、こなちゃんたちと一緒に今仲間を集めてるんだよ。」
みゆき「そうなんですか・・。」

「オーイッ!つかさーっ!!」

会話中にもう1つの声が入り込んできた。

つかさ「!? この声は・・・」

ガサガサと音がして、こなたが姿を現した。

つかさ「こなちゃん!!」
こなた「おお、つかさ。無事だった?」
つかさ「こなちゃんこそ、無事で良かったよぉ。そうそう、ゆきちゃんを見つけたよ~」

こなた「─────ッ!? みゆきさん・・・」

みゆきは微動だにせず、こなたを見つめた。

つかさ「って!!こなちゃん、怪我したの?血がついてるよ・・・」

こなたの右肩を見て、つかさが慌ててこなたに駆け寄る。

こなた「あ、うん。ちょっとね。大丈夫だよ。もう血は止まってるから。」

そう言いながら、目はみゆきを見つめている。

こなた「つかさに何かしたりしてないよね?」

いつもと同じ、でもちょっと力強い声でみゆきに聞く。

みゆき「別に。何も。」
短く返す。

ピリピリとした空気が張り詰める。

つかさ「?? こなちゃんに、ゆきちゃんどうしたの?」
こなた「え?ああ、ううん。何でもない。じゃあ、行ってつかさ。かがみが待ってるよ。」
つかさ「?  う、うん。」

つかさの背を押して、前へやる。
このときもこなたはみゆきを見据え、警戒した。

つかさ「ゆきちゃんも、行こ。」

つかさが振り向きながらみゆきに言った。
しかし、2人ともつかさがそこにいないような感じに見つめ合って沈黙している。

つかさ「?? ねえ、こなちゃんにゆきちゃんどうしたの?本当に変だよ?」
こなた「はやく行って、つかさ。私は後から行くから──・・。」

突然出たこなたからの予想外の言葉にどうしていいか分からなくなった。

つかさ「────へ?」

みゆき「そうですか。では、1人で私と戦ろうと言うのですね?」

沈黙。

つかさ「????」
もう何がなんだかワケワカメってカンジで、疑問符が頭の上を旋回している。

みゆき「私がみすみす逃がすと思いますか?」
ニヤッとして、リュックの中に手を突っ込み、銃を出した。

フイに銃を見て白石のことを思い出した。
こなたの握っていた拳に力が入る。
リュックの中に手をいれ、拳銃を握り、みゆきに突きつけた。

つかさ「な、何やってんの。2人ともっ!やめてよっ!何でこんなことしてんのっ!?」

つかさが半ば半泣きであわあわしている。

こなた「あの男子の・・・仇だっ」
みゆきを睨みつけながら、冷や汗が垂れた。

みゆき「ほぉ。」
ニヤッと余裕の表情。

つかさ「ねえってば!!こなちゃん!ダメだよっ!撃っちゃだめだよっ!!!」

つかさが横で喚いている。

こなた「つかさ・・・みゆきさんは・・・みゆきさんは・・・」

つかさ「ゆきちゃんは友達だよっ!!!でしょ!?友達を撃つなんて、間違ってるよ!!!」
必死にこなたに訴え続けるつかさ。

─────友達。

この言葉にこなたの眉が上がる。
拳銃を握っていた手から力が抜け、ストッと軽快な音をたて、地面に落ちた。

こなた「友・・だち・・・・・」
こなたはつかさから言われた言葉を繰り返す。

走馬灯のように、今までのみゆきとの思い出がこなたの頭の中を巡る。
楽しかった。笑いあった。あの頃・・・。
もう・・・戻ることはできないのか?
あの頃に・・・。

つかさ「こなちゃん・・・?」

涙腺が緩んで、こなたは俯く。

こなた「無理だよ・・・友達を撃つなんて・・・私には、できない。」
震えた声で、しかしはっきりと言った。
そのまましゃがみこんで、涙を地面に垂らした。

その様子を見ていたみゆきは微動だにせず、ただ

みゆき「そうですか。つまりませんね。泉さんとなら楽しく遊べると思ったのですけど・・・」
と言って、カチャと弾を込める音。
みゆき「残念です・・・。けど、そんな甘い方はココでは生きていけませんよ♪」
ニコッと一瞥して、銃に力が入る。

つかさ「やめてぇっ!!!やめてよっ!!!」

つかさがドンッとみゆきを押した。
みゆきはフイをつかれて転倒した。

つかさ「そんなの間違ってるよ!!ゆきちゃん、どうしちゃったの!?」
涙をぼろぼろこぼしながら必死にみゆきに呼びかけるつかさ。

しかしみゆきはそんなの気にもせず、起き上がり、つかさを蹴り飛ばした。

つかさ「はぅうっ───ッ・・・」
蹴られた腹部をおさえて、地面を転がってのたうった。

こなた「つかさ!!」

ガバッと顔を上げて、立ち上がった。

みゆき「よくも、やりましたね。つかささん。」

するどい眼光にのたうっていたつかさの動きが止まった。
ヘビに睨まれたカエルのように。

みゆき「うるさいです。さっきから。はやく死んでください。」

ドンッ

銃口から煙が上がった。

こなた「つかさーっっ!!!!」
こなたが叫んだのとほぼ同時だった。

自分の数メートル先でつかさがどんどん真っ赤に染まって行く。

みゆき「ふん」
みゆきはそう言うなり、背を向け、歩き出した。

そんなみゆきには目もくれず、つかさの元に膝まづく。
こなた「つかさっ・・・!」

おびただしい量の血。
静かに呼吸しているつかさ。

つかさ「こな・・ちゃ・・・」
ふるふる震える顔をわずかにこっちに向けた。
涙が頬を伝っていた。

つかさ「私・・死・・ぬの・・?」

こなた「つかさ・・・こんな時に何言って・・・」
つかさ「私・・死にた・・く・・ない・・よぅ・・」

胸がうずいた。
殺し合いなんかが始まらなかったら・・・つかさはこれから自分の夢に向かって
歩んでいくハズだったのに・・・。
明るい未来があったのに・・・それが一瞬にして壊された。

悔しい。悔しいよ・・・。
拳を握りしめて震わせる。

何を言ってあげればいいんだろう。
親友が助けを求めている。
けど、何もできない。
何もしてあげられない。

私は・・・あのときの男子を救えなかったように・・・
また・・また・・・助けてあげられないの?
友達なのに・・・友達なのにっ・・!!

つかさ「最期の・・お願いが・・あるの・・・。」
この間にも血はとどめなく流れる。

つかさ「もう・・私みたいな・・・犠牲者を・・もう・・出さない・・で・・・、ゲームを・・・
    絶対に・・・止めて・・ね、こなちゃ・・・」
震える唇で必死に言葉を紡ぐ。

こなた「・・・・つかさ」
必死に涙をこらえて、呼びかける。

つかさ「大丈夫だよ・・・。こなちゃん・・なら・・きっとできるから・・・ね?
    お願い・・だよ?・・・私と・・の、最期の・・約束・・・ゲームを必ず・・・」
つかさの声が途切れ、吐血した。

こなた「つかさ!!!」

つかさ「約束・・・だから・・ねぇ・・。ぅ・・ゴホッ・・お・・お姉ちゃ・・・ゴホッ」
吐血が繰り返され、たちまち顔も血まみれになる。

つかさ「お姉ちゃ・・・ん・・・今まで・・ありが・・と・・私の・・分まで・・生き・・て」
血がどんどん流れる。

つかさ「こなちゃ・・・寒・・い・・・」

潤んだキレイな瞳が自分を求めていた。
そっとつかさの手に自分の手を重ねる。

つかさ「こなちゃんの手・・・あったか・・・。」

言いかけたところで、つかさが弱弱しく笑った。

そして、そのまま─────つかさの動きが止まった。

こなた「つかさ!? つかさっ!!」
こなたは動かないつかさに必死に呼びかけるが、つかさはそのまま動かない。

こなた「つかさぁっ!!!つかさぁあ!!!起きてよ!!ねえっ!!!」

分かっている。
けどそんなこと認めたくない。
他にどうしていいか分からなかった。

私が・・いたのに・・・つかさを守ってやれなかった。

フイにつかさの言葉な脳内で響いた。



─────約束・・・だから・・ねえ。



ゲームを止めるまで死ねない。

もう、誰も殺させない。

絶対に。

<柊つかさ死亡 残り15人>  

ザッザッ・・・

聞こえる足音。

かがみ「ん?誰かくる」

あやのはまだ寝ている。

ツンッと変な匂いが漂ってきた。
これは───・・・

かがみ「血・・・の匂い?」

おそるおそる木の影から頭だけを突き出す。


そこにはこなたの姿があった。
だけどこなたは何かを抱えている。
自分よりも大きい───そう、人を。

恐怖。



かがみ「つ・・か・・さ・・・?」
フラフラとした足取りでこなたの元へ歩き出すかがみ。

かがみ「つか・・さ・・・」
目の前の信じられない光景に絶句する。



自分の双子の妹───。


生まれたときから一緒で───


いつも一緒に過ごしてきた───


自分にとっては家族の中でも特別な存在だった───


そのつかさの信じられない姿が今、自分の前でさらされている。

こなた「・・めん・・ね・・・」

とても小さな声で俯いたまま言った。

かがみ「・・・ぇ」

こなた「ごめんね・・・っかがみ・・・私が・・私が悪いんだっ」

顔をガバッと上げ、涙に潤んだ目でかがみを見据えた。

かがみ「ど、どういうこと・・・?」

混乱していた。

こなた「私が・・私がついていながら・・つかさを守ってあげれなかった・・・」
罪の意識からか、涙がブワッと溢れた。

かがみ「こなた・・・・」

こなた「撃ったのは・・・みゆきさんなんだ・・ちょうどつかさと出くわしてて・・
私がちゃんと・・ちゃんとしてなかったから・・・・」

かがみ「み、みゆきが・・・・?」

信じられない気持ちととてつもない怒りがまじりあう。

いくらゲームに乗っているとはいえ、今まで一緒に過ごしてきた友達を
こうもカンタンに殺せるのか───

何の躊躇もなく───



こらえていた涙がいっきに溢れた。

かがみ「こなたは・・・悪くない・・・」
体を怒りに小刻みに震わせながらかがみが言う。

かがみ「みゆきが───・・みゆきがやったんでしょ?」

こなた「ぅん・・・それでね、つかさがかがみに言ったんだ・・・。」

かがみ「え?・・・」

こなた「今までありがとう。私の分まで生きて。って・・・」

涙が無意識に流れる。

あの子は・・・あの子って子は・・・・

最期の最期まで───・・・

こなた「だから、私約束したんだ。このゲームを絶対止めるって。もうこれ以上犠牲者を
    出さないって。」

かがみ「───こなた・・・ぅん・・・そ、そうね。つかさの分も・・・・・
    うぅっ・・・ひぐっ・・・・・・・」

こなた「かがみ・・・・・・」

かがみ「・・・・ぅう・・つ・・つかさのバカァッ・・・自分だけ・・先に逝っちゃって・・
    こんなの・・・・アアアアアアアアアアアアッ!!!」

つかさのそばにひざまづいて気持ちをぶつけた。

また湧いてくる怒り。

かがみ「許さない───・・・絶対に・・・」

つかさ───あなたの仇は・・・絶対に・・私がうつからね。

だから、待ってて───つかさ。

かがみ「こなた、」

かがみが立ち上がってリュックの中に手を突っ込んだ。

かがみ「みゆきは・・・どっちに行った?」

支給品の日本刀を出し、刃をキラメかせながらこなたに聞いた。

こなた「ちょ・・・かがみ、何する気!?」

かがみ「つかさの仇を討つのよ・・・」

こなた「みゆきさんを許せない気持ちは分かるけど・・・でも・・・」

かがみ「何よ? あんた、みゆきの肩を持つって言うの?」

こなた「違うよっ・・・確かにみゆきさんは酷いことをした・・・けど
    かがみがみゆきさんを殺しても何にもならないよ。」

かがみ「何にもなんなくない!私は・・つかさの・・つかさの仇を・・・」

こなた「かがみがみゆきさんを殺すなんて・・・絶対つかさはそんなの望んでないよ・・・。
    つかさは最期まで・・・説得しようとしてたよ・・・・。」

かがみ「でも、ダメだったんでしょ・・?」

こなた「うん。・・・・。」

かがみ「だから・・・私は・・・・つかさのために・・・・」

こなた「ええいっ!!分からず屋っ!!!!」

かがみの目の前に顔面を突き出して叫んだ。

かがみ「なっ・・!!!1人っこのあんたに妹が殺された痛みが分かるわけないわ!!!」

負けじとかがみも顔を突き出す。

こなた「かがみっ・・いい加減、目を覚ましてよ!!!」

かがみ「私はいつもどおりよ!!」

お互いが睨みあう。

こなた「かがみのバカァッッ!!!」

かがみに飛び掛かって押し倒した。

かがみ「痛っ・・・な、何すんのよっ!!!」

上に乗っていたこなたを突き飛ばす。

かがみ「あんたは甘すぎんのよ!!本当に殺し合いが始まってるっていうのに!」

こなた「───ッ!!」

かがみ「私は私のやりたいことをする。あんたもそうすればいいじゃない」

かがみはそのまま座り込んでいるこなたを放ってそのまま歩いて行く。

こなた「だ、だめっ!」

かがみの前に飛び出して叫ぶ。

かがみ「何?・・・邪魔するの?」

こなた「殺しに行くんだったら行かせない」

かがみ「あんたは・・まだ言ってんの?あんまり私を怒らすと・・・」

左手の日本刀がキランと光を反射して光る。
それを見てこなたが一瞬ビクンとする。

こなた「かがみ・・・や、やめてよ・・・元に戻ってよ!」

こなたの言葉にかがみが少し震える。

こなた「人を殺すなんてゲームに乗るってことだよ・・?みゆきさんと同じだよそんなの」

かがみ「う・・うるさいっ!!!!」

かがみが日本刀をこなたの頭上に振り下ろす。
しかし途中でそのこなたのその強い目と目があい、刀が途中でピタと止まる。

かがみ「ぅ・・・・・」
ガクガク震えて日本刀を取り落とす。

こなた「人殺しはダメだよ・・・たとえどんな理由があったとしても・・・
     人を殺すなんて間違ってるよ」

こなたの言葉にさっきのことがフラッシュバックした。

───お姉ちゃん、今までありがとう。私の分も生きて。


───だから、私約束したんだ。このゲームを絶対止めるって。もうこれ以上犠牲者を
   出さないって。


かがみ「こなた・・・私・・・」

こなた「・・かがみに人殺しになんかなってほしくないよ・・・。
    だからもし人を殺しに行くんだったら全力で止める。」

かがみ「・・・私・・・」

───・・・ごめんね。    



つんと鼻をつく血の匂い。
こみ上げてくる恐怖心。

武者震いを1つして、さらに奥へと踏み込む。

みさお「・・・ゆたか?」

血の池と化していた地面に座っていたゆたかがゆっくりと顔を上げた。
無表情な顔に、涙だけがつーと流れ、血にまみれていた。
そしてその横に倒れ、目から光が失われているみなみ。

その惨状に絶句して、ただ冷や汗だけが滝のように流れてくる。

ゆたか「日下部・・先輩・・・」

沈黙を破ったのはゆたかの沈んだ声。

みさおはハッと我に返った。

みさお「ど・・どうゆう・・ことだよ・・・?」

おそるおそる聞いてみる。

ゆたか「わからないです。・・・何もわからないです。」

ただ、そうつぶやいた。

ゆたか「・・・日下部先輩」

フイに呼ばれて、ビクッとする。

みさお「ん?」

ゆたか「私・・・どうしたらいいんでしょうか」

いきなりの問いにちょっと驚く。
あきらかに前と違う。そんなオーラがあった。

みさお「急にどうしたらいいかなんて・・・私に聞かれてもなあ・・」

ゆたか「そう・・・ですか・・・」

ゆたかがよろよろと立ち上がる。
今までのいきいきとした瞳はなく、暗く沈んだドス黒い目をしている。

よろよろとリュックの中をまさぐり、小型ナイフを取り出した。

みさお「ちょ・・何する気だよ?」

いきなり凶器を出したゆたかに、後ずさりする。


ゆたか「私、死にます」


予想外の、でもけして冗談に聞こえない真面目な声でゆたかがつぶやいた。

みさお「ちょっ・・何言ってんだよ・・いきなり」

ゆたか「もう、どうでもいいんです。何もかもがどうでもいいんです。」

涙がまた目に浮かんでいた。

ゆたか「みなみちゃんは、もう・・いないんです。私は・・・もう、このゲームも・・・
    世界も・・・どうなってもいいんです。だってもう・・・・・」

みさお「待てよっ!!本気で、そう思ってんのかよっ」

ゆたか「もう、きっとこのゲームを止めても、今までのような生活が戻ることはないんです。
    だから・・・もう、死んでもいいんですよ。」

───ッ!!!

確かに・・・今までのような生活には戻ることはできない。

でも───・・・

でもだからってソレでいいのかよ?・・・

ゆたか「さようなら、日下部先輩。今までの日々は、とても楽しかったです。
    あの世で、みなみちゃんと一緒に───・・・」

みさお「ダメだぁっ!!!」
ガバッとゆたかの肩を掴む。

ゆたか「日下部先輩・・?」
ビクッとして、ゆたかが口をぽかんと開ける。

みさお「死んじゃダメ!!」

大声を張り上げてゆたかを直視する。
その力強い、けど透き通った目を見て、ゆたかの肩から力を抜ける。

みさお「どうしてこんなことになったが分からねえ。けどな・・・
    岩崎さんがソレを望むと思うか?」

ゆたか「へ・・・」

みさお「だからぁっ、岩崎さんは・・おまえが死ぬことを望んでんのかって!!」

ゆたか「・・・それは・・・」

みさお「きっと、オマエには生きてほしいと思ってる・・・だろ?」

ゆたか「・・・・・・・・。」

みさお「だから、生きろ。 それが、親友に対する・・礼じゃないのかよ?」

ゆたかの足から力が抜け、膝が地面にあたる。

みさお「今までには・・・戻れない。だけど・・・今はそんなこと言ってる場合じゃない
    だろ? 今は・・今は、前に進むんだ。」

ゆたか「前・・・に・・・」

みさおの言葉を繰り返す。



───そう。

幸せってのは、自分で掴みとるモノなんだ───。

ひよりは1人、茂みの中でうずくまっていた。
偶然、みゆきがつかさを殺した現場を見てしまったのだ。

こなたは友達だからという理由でみゆきを撃つことをためらった。
そしてつかさは結局殺されてしまったけどみゆきを必死に説得しようとした。

・・・・泉先輩も、柊先輩も・・・・一体・・何故・・・・

脳裏にゆたかが必死に説得しようとした姿が浮かび、
みなみを殺してしまったときの感覚がよみがえってくる。

あの2人を見ていたら・・・・私は・・・・間違ったことをしたような気がする。


・・・・友達って・・・友達って何なんスかねえ。

ゆたか「そんなことが・・・・」
みさお「ああ、だからはやく戻らないと・・・」

みなみの屍を超えて、2人はこなたたちの元へ戻りだす。

みさお「あ、そうだ」
ゆたか「? どうかしました?」

みさお「田村さん───・・・どうしたんだ?」

ザワッ

顔が強張る。

みさお「・・・?」

ゆたか「あっ、いやっ・・何でも・・ないですっ・・・」

フイッと頭を俯ける。

不審に思いながらも、これ以上追求するのはヤメタ。


しばらく歩いて、ようやく元の場所へと戻ってきた。


みさお「おぅ~い、柊ぃ~、私だけど、どこだぁ~?」

周辺に聞こえるぐらいの声で呼んでみる。

木の陰からかがみがひょこっと顔を出す。

かがみ「こっちよ、日下部」
みさお「お~、いたいた」

木の陰にみさおとゆたかが入る。

みさお「お、妹も来たの───・・・えッ!?」

かがみがぎゅっと抱きしめているつかさの目を見て絶句。


───し、死んでる・・・?


フイにちびっ子が目配せしてきたので、もう何も言わなかった。

それにしても・・・こんなに死人が出てるなんて・・・。



空気を読まずに放送が入った。

黒井「は~い、お昼の放送始めるでー。朝からみんな殺しまくっとるやないかあ。
朝から、6人も死んどるでー。今は全部で15人・・・お?もう半分やん。
じゃあ、引き続き頑張ってなー。で、禁止エリアの発表やけど・・・(ry」

2日。


たった2日でゲーム参加者の半分が死んでいる。


信じられない事実に、みんなが驚愕し、固まる。

今、ここにいるのは
こなた、かがみ、ゆたか、みさお、あやの の5人。

つまり、この人数だけで、生き残りの3分の1ということになる。


こなた「こうしちゃいられない・・ね。」

沈黙を破り、立ち上がったのはこなただった。

みんながこなたを見上げる。

こなた「もう、今すぐにでもゲームを止めなきゃ。」
かがみ「そうね。」
みさお「でも、どうやって止めんだよ?」
かがみ「そうね・・・そこまで決めてなかったわ。」
みさお「えっ、柊たちならすでに方法を思いついてるかと思ったのに・・・」
こなた「そりゃ・・・本部に行って・・主催者側を降伏させるとか」
ゆたか「・・・う、うまくいくかなあ」
こなた「うまくとか関係ないよっ!もう死人は出したくない・・・
    すぐに止めなきゃ・・これ以上・・もう・・・・」

言葉が途切れた。

みさお「焦るな、ちびっ子。止めたい気持ちは分かるけど、焦ってもしょうがない。」
こなた「焦ってなんかないよ!」
かがみ「まぁ、まぁ・・落ち着きなさいよ。とりあえず、手当てが先でしょ」

みさおたちが持ってきた救急箱を開けて、消毒液を取り出す。

かがみ「・・・あれ?みなみちゃんは・・・?」
救急箱を見て、思い出したかがみがみさおに聞いた。

みさお「・・・いや・・そのう・・・」
言いづらそうにみさおが下を向く。

かがみ「ストップ!!・・・言わなくていい・・」
辛くなって叫んだ。
もう、これ以上・・誰かが死んだだなんて・・聞きたくない・・・。
目を潤ませながら、あやのの手当てをちゃくちゃくと進めるかがみ。
その間もこなたは立ったまま、遠くの方を見ている目をして、佇んでいた。

かがみ「ほら、今度はあんたの番よ」
かがみが立ち上がってこなたの前に立つ。

こなた「いや、いいよ。ダイジョブだから・・・」
かがみ「もう・・アンタは・・」

かがみがこなたの右肩をつんと触ると、こなたが体をよじった。

かがみ「ほら、痛いんでしょ」
こなた「・・・・うぐぅ」

こなた「よし、じゃあ行こうか」

手当てが終わると、こなたはみんなを見て言った。

みさお「っつっても・・・あやのはまだ寝てるし・・・」
かがみ「みんなで行動した方が安全だけど・・・どうする?」

こなた「じゃあ、私1人で行ってくる」

かがみ「───ッちょっ・・ダメよ、危険でしょ・・・」

こなた「でもっ・・・私は早くこのゲームを止めたいんだっ!もう・・・犠牲者を・・
     出したくないから・・・・」

かがみ「校舎・・・・」

こなた「ん?」

フイにかがみが声を漏らした。

かがみ「本部って校舎の中よね?校舎って確か・・・禁止エリアじゃ・・・?」

禁止エリア。
その地に踏み込むと、ゲーム参加者のつけている首輪が爆発する。
つまり、死ぬということだ。
こなたは昨日先生が言ったことを思い出した。

「禁止エリアに入ったら首輪が爆発して死ぬから注意しいやー」

そうだ。
今までずっと忘れていた気がする。
首輪の存在を・・・・。
校舎内に入れば・・というか学校内の敷地に入ったとたんに爆発・・・。
自分の首に手をあてる。
ひんやりとした、機械の首輪に触れた。

ということは・・・校舎内に入れない。

本部に入ることさえもできない。

───ゲームを止めることはできない?

──────殺し合いで、最後に1人になるまで、止められない?


ゆたか「ということはゲームを止めることができないってことですか?」
こなた「・・・首輪がついてる限りは・・・」

重い空気が立ち込める。

みさお「ああっ!やめだやめ!!もうこんな空気やめよーぜ!!」
みさおが立ち上がった。

みさお「やっぱネガティブはだめだっ、こんな時に暗い雰囲気になっちゃだめだよな」
かがみ「日下部・・・、そ、そうよね。まだ諦めるにははやいわよ何か方法があるかも
しれないでしょ。ほらっ、こなた」
こなた「方法・・・?」
かがみ「それを考えるのよ」

そうだ・・・今こんな状況だからこそ、塞ぎこんじゃいけない。

確かに、私1人じゃどうにもならない問題かもしれない。

けど、5人の仲間がいる。 きっとどうにかなる。

何でか知らないけど、希望が出てきた。

みさお「てか方法っつってもさ・・」
フイにみさおが声を出した。

かがみ「ん?」
みさお「そんな難しく考えなくて良くね?」
かがみ「どうゆうことよ」

みさお「首輪とっちまえばいいんだよ」

確かに、それはいたって単純。

───でも・・・

かがみ「どうやってとるの?」

みさお「う・・・それは・・・」

こなた「とりあえず、ここで考えるより、もっと安全なとこで考えよっか。ここだと
誰かに見つかりそうだし・・・」

かがみ「そうね。」

5人は最初にこなたたちが行ったバンガローに行くことにした。

バンガローにて。

みさお「ってか、無理矢理ハズせねえの、コレ?」
あやの「えー、止めといたほうが・・ねえ、柊ちゃん?」

もうあやのは起きて話し合いに加わっていた。

かがみ「うん。確か、無理にハズそうとしても爆発するって言ってなかった?」
みさお「このツナギ目あんじゃん?ココ狙って発砲とかはどうよ?」
ゆたか「や、止めた方が・・・危険ですよ?」
みさお「うーん・・・そっかぁ。」


───ガタッ

扉が開く音がし、みんなの会話が中断された。

こなた「だ・・誰か入ってきた・・・」
かがみ「静かにっ・・・みんな、そこに隠れてっ」

小声でかがみがベッドの下を指した。

まだ入って来た人は玄関の方にいるらしく、音がまだしていた。
今こなたたちがいるのは1番玄関に近い部屋だ。

こなた「うぅ・・キツい・・みんないる?」
みさお「おぅっ・・・」
あやの「うんっ」
ゆたか「はい」
こなた「かがみは?」
みさお「もう、入れないんじゃね?これでもう限界だよ」

かがみ「しっ───・・静かにして」

外側からかがみの声が聞こえる。

まさか───・・・・

ザッ・・・

「あ、居た~。1人ですか~?」

その、ちょっとブリっこな声は・・・

こなた「この声・・・小神あきら?」
みさお「え、あきらってあの・・アイドルの?」
こなた「うん。いちを私ファンだし・・・」
みさお「な、何で他校の人が参加してんだっ?」
こなた「そんなのなんでか知らないよぅ」


かがみ「はい。1人ですけど」

かがみの声が返す。

あきら「ふーん」

かがみ「あなたは何で制服じゃないんですか・・?」
あきら「あは☆だってここの生徒じゃないもーん☆」
かがみ「え?じゃあ何で・・・」
あきら「しょーがないじゃあん、国からの依頼だったんだもん・・・」
かがみ「!?」

カチャッ

音しか聞こえない。
どうなってるんだ?
でも、顔を出しては、みんなも巻き込むことになる・・・っ

ああでも・・・でも・・・このままじゃ・・・

あきら「じゃあ死んでもらいますよー?」
かがみ「───ッ!まさかゲームに乗って・・」
あきら「あはは☆あったりまえじゃないですかー。国からの依頼だって言ったじゃないですか☆」


ダメだ・・・っ!!

みさお「ぉ、おいちびっ子・・・!」

耐え切れずにこなたがベッドの中から這い出る。

かがみ「こなたっ・・・何で」

焦りの色を顔に浮かべてかがみが言った。

あきら「ふーん、そこに隠れていたのか。」

こなた「やめろおっ!!」

あきらに飛び掛り、押し倒した。

あきら「ぐっ、何しやがる、このガキ!!!」

もがいて、鉄砲を私に向けようとするが、この近距離じゃ私のが有利だった。

こなた「何しやがる、はこっちだ!その凶器を捨てろ!」

手首を抑えつけて、怒鳴った。

あきら「うっ・・・てんめぇ・・・」

ジタバタと強い力で抵抗してくる。
相手の空いてる左手の拳が激しく頭部に当たった。

こなた「ぅっ・・・」

あまりの痛さに手の力が緩み、手から相手の手首が離れた。
ズドッと押されて相手は私から抜け出して立ち上がった。

しかしあきらがこなたに銃口を向ける前にかがみが体当たりをくらわした。


ドシンッ

あきら「うぁっ!」

かがみの体当たりに弾かれあきらが鉄砲を落とした。

かがみ「こなたっ、はやく!」
あきらともみあっているかがみがとっさに叫んだ。

こなた「ぅ、うんっ」
かがみに言われてようやく体が動いてあきらの鉄砲をとる。

こなた「ハズす方法・・・知ってるでしょ?」

バンガローにあったロープであきらを縛り付けて、こなたが問い詰めた。
国からの依頼・・・ということは知っているかもしれないと思い、聞いたのだった。

あきら「知ってたとしてもアンタらに教えると思ってるの?」

こなたを睨みつける。

こなた「じゃあ、知ってるんだね?」
あきら「まーね」
こなた「どうやったらハズれる?」
あきら「だから、誰が教えるかっつーの」

かがみ「ムダよ。ちょっと痛めつけないと」

かがみが口を挟んだ。

みさお「そーだな。おい、早く言えば痛い思いはしねーぜ?自分のために言っちゃえよ」

もうベッド下から出てきたみさおも言った。

こなた「うん、本当は私だって・・こんなことしたくないんだよ・・だから・・・」
あきら「あたしだって・・・」
こなた「へ・・・?」

予想外の言葉に呆気にとられる。

あきら「別に言ったってあたしはいいのよ・・・」

こなた「どういう・・こと?」

あきら「約束よ。このこと言っちゃだめっていうね。国との。
私は人を殺したくてうずうずしてただけ。首輪とか興味ないのよ、ぶっちゃっけ。」


───約束・・・。

・・・私と・・の、最期の・・約束・・・ゲームを必ず・・・

つかさの言葉を思い出す。


こなたの握った拳に力がこもる。

こなた「私も・・あるんだ。親友との約束が・・」

あきらはちょっと眉を動かした。

こなた「だから・・・・」

あきら「分かったわよ」

こなた「・・・へ?」

あきら「約束っつっても、私は同意してないからこんなの約束じゃないしね。
    ただ、1つ条件」

こなた「条件・・・?」

あきら「誰か1人殺させて」

こなた「なっ・・・!?」

あきら「私、飢えてんのよ。あああああああっ、むしゃくしゃする・・・・」

戦慄。

本当にそう思っているようだ。

こなた「そんなことっ・・・」
みんなと目が合う。
気まずい雰囲気。

こなた「できるわけ・・・」

あきら「ふうん?いいの?」

沈黙が流れる。

ゲームを止めたい。
首輪を外せば止めに行ける。

でも・・・どうしたらいい?
誰かを犠牲にするなんて・・・む、無理だよ・・・

ん?いや、1つ方法がある───。
みんなも助けられて、首輪も外せる方法。

それは───

こなたが1歩前に出る。

こなた「・・・私で、いい?」

私が死ぬしかない・・・。

かがみ「ちょ・・こなたっ・・!?」

こなた「私がココで死ねば、みんながゲームを止められる。
     そうすればつかさも───・・」


自分のせいであの男子は死んでしまった・・・
そしてつかさも・・・

今度は私がみんなの役に立たないと。

ゆたか「お姉ちゃんっだめえっ!!」
後ろでゆーちゃんの声がして、振り返る。
こなた「ゆ、ゆーちゃん・・・?」

ゆたか「私・・・もう、嫌だよ。誰かが死ぬのはもう嫌なのっ」

こなた「・・・・。」

かがみ「そ、そうよバカッ!何考えてんのよ!」

かがみ「首輪のハズし方なんてどうでもいいっ・・。
     私は・・・その・・・アンタのが大事・・だから」

みさお「そーだぜっ!みんなで一緒に・・・帰るんだろ?」

あやの「うん、他に方法あるかもしれないし・・探してみましょ?」

口々にみんががこなたに呼びかける。

こなた「・・・みんな」
こみ上げる思いに涙腺が緩む。

私はなんて幸せ者なんだろう───。

こなたたちはバンガローを後にした。

1人縛られたまま、あきらはこなたたちを呆然と見送る。


ガタッ

こなたたちが去ってすぐ、ドアが開いた。
そしてしばらくして1つの影があきらの前に立つ。

あきら「あんたは・・・」

そこに立っていたのは・・・

ひより「こんにちは」

返り血に制服を真っ赤に染め、斧をかついだひよりだった。

あきら「やる気?」
ひよりを見据える。

ひより「私を殺して」

予想外の言葉にあきらは数秒固まった。

ひより「そのかわり、さっきの人たちに首輪のハズし方を教えて。」

あきら「あんたは・・さっきのヤツらの仲間?」

ひより「違う。けど・・何でかな。何でか分からないけど、あの人たちの行動はきっと正しいから・・・
それに私は友達を殺したんだもん。生きてる資格はないよ。」

その強い意志を持った表情に・・・

あきら「いい覚悟じゃない。じゃあいいわ。その覚悟に免じて引き受けてあげる。」

ひより「ありがとう。」

あきら「でも、いいの?」

ひより「へ?」

あきら「あの子たちに何も言わずに死んじゃって。」

ひよりの目に宿る、覚悟の決意を見て、あきらはフイにそう言っていた。
自然に何故か情が湧く。

ひより「いいの。あの人たちをつけてて分かったの。自分だけ生き残ろうとして友達を殺すことがどんなに
ヒドイことか・・・私、どうかしてた。」

俯いていたが、キッと顔を上げた。

ひより「だから・・・もう、いい。お願いします。」

あきら「そう。そう言うなら・・・」

ひより「ちょっと動かないで。」

あきら「へ?」


ヒュオッ!

ズドッ・・・

ひより「あ、ごめん。驚かしちゃって。ロープを切っただけだから」

あきら「いや、別に・・・」

自由になった体を持ち上げて、リュックの中から拳銃をスッと取り出す。

あきら「じゃあ、」

ひより「約束だからね?絶対、首輪のハズし方を・・・」

あきら「私がそんなヒドい人に見える?あんたの覚悟は見えているわよ。
     大丈夫。あの子たちにはむやみに手は出さないから」

ひより「良かった・・・」

カチャッ・・・

あきら「!?・・・」

指が重い。
こんな感覚は初めてだった。


パンッ

やがて、あきらは精一杯引き金を引いた。

乾いた銃声がしたと思うと、目の前の少女がズドッと倒れた。

心臓を直撃していて、そのまま動かなかった。


人を殺したい。


そう思ってこの仕事を引き受けたのに、何故こんなに虚しい気持ちになるのだろう。

バンガローを立ち去るあきらにはそれが分からなかった。

<田村ひより死亡 残り13人>



かがみ「でも、別の方法って言ったって何かあるかしら」

森の中を歩きながらかがみがつぶやいた。

こなた「あるよ。きっと・・・てかあ、ないと困る!」
かがみ「あんた・・少しは考えなさいよね・・・」


こなたたちは気づかない。
近くの茂みの影に人が1人いることに。

「ふぅーん・・首輪を外す方法ですか・・ちょっと後をつけてて正解でした♪」



ゆたか「あっ」
こなた「ゆーちゃん?どしたの?」
ゆたか「あれ。」

ゆたかが指し示す方向には青く、どこまでも伸びている海が見えた。

こなた「海だあ!」

こなたは子供のように目をきらきらさせながら、走り出した。

かがみ「ちょっ、こなた!」

追う様にかがみも駆け出す。

そして、やれやれと続く3人。


かがみ「こなたってば!・・・うひゃぁっ!?」

いきなり顔に水がかかって顔を背けた。

こなた「あはははwww」
かがみ「何すんのよっ」

いつものように怒り顔でこなたに向き直る。

こなた「アハwいつものかがみんだー」
かがみ「かがみん言うなってえの!」

こなたがニコッと笑ってから、ちょっと寂しそうな顔をした。

こなた「懐かしい・・ね。」

かがみ「へ?」

急にこなたがかがみに背を向け、空を仰いだ。

こなた「覚えてる?去年の夏・・・みんなで海で遊んだよね」

かがみ「・・・そう・・ね」

こなた「もう、あの頃には戻れないんだよね」

かがみ「・・・・・・・・・・・・・。」

こなた「もう、何が何だか分かんないよね」

かがみ「・・・・・・・・・・・・・。」

こなた「かがみ・・・?」

こなたが振り返ってかがみを見た。

かがみ「何言ってんのよ。」

こなた「ふぇ?」

かがみ「きっと、戻れるわよ。あの頃に。あの時とさっぱり同じは無理でも・・・
    あの頃の楽しさぐらいは、取り戻せるでしょ。
    そのために私たちはゲームを止めようとしてるんだから」

こなた「・・・・・・・・・・・・・・。」

かがみ「元気出しなさいよ。アンタらしくないわよっ」

こなたのほっぺたをつんと指でつつく。

こなた「ふぁう」

こなたがまぬけな声を漏らす。

かがみ「じゃあ、このゲーム終わらせたら、またみんなで海来ようよ。
今みたいな状況じゃなくてちゃんとしたときに。」

こなた「かがみ・・・。」

ニコッと笑うかがみに、こなたもつられて笑顔になる。



「お~っい!」


突然の呼びかけ声に、2人が振り返る。

みさおたち3人の後ろから、小神あきらが駆けてくる。


かがみ「あ、あんたはっ」


かがみが驚愕のまなざしであきらを見つめた。

5人があきらに向き合う。


あきら「あの、実はあんたたちに用事が・・・」


息を多少荒げて、急停止したあきらがこちらを見た。


こなた「わたしたちに?」

こなたはきょとんとした様子であきらに問う。

みさお「何の用だよ、殺しに来たのか?」

きっとした表情で、一歩前へ出た。
そんなみさおを、手でこなたが制した。

こなた「どんな用なの?」

なんとなくだけど、分かる。
あきらさんはわたしたちを殺す気はない。

あきら「首輪をハズす方法、教えるから」

こなた「えっ!?」

かがみ「急にどういうつもりよ?」

あきら「いや・・その・・・・」

かがみ「何よ」

あきら「ある人から、頼まれたの。私が殺される代わりに、あんたたちに首輪をハズす方法を教えてあげてって。」

こなた「えっ・・・ある人って・・・」

かがみ「あんた、殺したの?」

かがみが一歩前へ出た。

あきら「え・・ぁ・・ぅ」

かがみ「ここにいるってことは殺したのよね?」

かがみがもう一歩詰め寄って問いただした。

あきら「・・・ぅん」

かがみ「こんのっ・・・」

かがみの手が上に上がった。

バシッ

あきらを精一杯ひっぱたいた。

しかしあきらが微動だにせず、そのまま突っ立っていた。



あきら「・・・ごめん」


あきらの予想外の言葉に、かがみがボーゼンとなった。

かがみ「あんた・・・今なんて・・・」

あきら「・・・・分からなかった。あれほど人を殺したかったのに、
あの時何故か、嫌な気持ちになった。分からない。分からないよ・・・。」

こなた「分かるよ。」

フイにこなたが口を挟んだ。

あきら「へ・・・?」

こなた「それが、フツウの気持ちだから。今まであきらさんは・・・そう、悪魔に取り付かれていて、
正気を失ってたんだよ。」

あきら「あたし・・・が?」

こなた「うん。悪魔が逃げていって、今、あきらさんは正気に戻ったんだ。」

自分に対する憎しみなど一切ないような笑顔を向けられて、
あきらは動揺する。

こなた「ほら、今までのこと、水に流そうよ。」

あきら「・・・うんっ」



カチッ

軽快な音がして、5人分の首輪が外れた。

こなた「やたーwハズれた。ありがとね」

あきら「うーうん。」

あきらが首を横に振った。


カチッ


その直後、こなたの背後から同じ音が聞こえた。

「後をつけて正解でしたわ。首輪がハズれました」


こなたは急いで振り返る。


茂みからでてきたのは、高らかに笑っているのは


───高良みゆきだった。



こなた「み・・みゆき・・・さん?」


6人がピタッと固まった。

みゆきの威圧感で圧倒されてしまっていた。

みゆき「一度に6人も・・・オホホ、私ったら運が良いですね」

リュックから銃を取り出して笑う。


恐怖。

足が動かない。


あきら「あんたら、逃げろ!」

静寂を破ったのはあきらの叫び声。


その一声でみんながはッと我に返る。


こなた「みんな散って!」

こなたの声が合図となり、みんなが八方に散った。


みゆき「ふっ、ムダです」


銃をぐいっと持ち上げた。

その場から動かなかったあきらに銃口を向ける。


こなた「危ないっ!!」
逃げかけたこなたが、動かないあきらを見てとびついた。

パンッ

あきらを上にのしかかるようにして倒した。
おかげで弾はそれたようだった。

あきら「な、何で・・・」

こなた「何やってんの、はやく逃げて!」

あきら「ぇっ・・・」

何だ?何なんだよこいつ・・・
何で私のこと助けんだよ

こなた「はやくーっ!!」

あきら「何バカやってんだよ、あんたが逃げろ」
こなたをドンッと押して立ち上がる。

そしてみゆきに銃を向ける。

対するみゆきもまた銃を向ける。

こなた「えっ・・・?」
呆けた顔であきらを見上げる。

あきら「はやく行け!」

こなた「嫌だッ!だめだよそんなのっ!私はもう人を見捨てたりしたくない」

あきら「うるさいっ!はやく行けっつってんだろ!!」

あきらがこなたに体当たりし、こなたが吹っ飛んだ。

あきら「はやく!あんたのために死んでった人のためにも、あんたはあんたの
    やるべきことをやれっつーの!」

あきらのその強い瞳に見つめられ、少し動揺した。

「・・・私と・・の、最期の・・約束・・・ゲームを必ず・・・」
「泉、このゲームを止められるのはおまえたちしかいない・・・」

やるべきこと・・・ゲームを止める!

あきら「私は大丈夫。絶対大丈夫だから。気にすんな!」
こなた「・・・うん。・・絶対死んじゃだめだよっ?」

あきらの強い言葉に背をおされ、こなたは立ち上がって走り出した。
そして、こなたが森の奥に消えたとき後ろから声がした。

みゆき「敵前で長々とおしゃべりしているなんて・・・」
あきら「!?」

みゆきがいつの間にか背後に回っていた。

みゆき「隙だらけじゃないですか。」

パンッ

───みんな散って!

その言葉を聞いた直後、反射的に私は真正面に逃げていた。
しばらく走った後、ようやく頭が動くようになった。
無我夢中で走ってしたから全然周りが見えてなかった。
みゆきに恐怖していた。

かがみ「私ったら・・・何怖がってんのよ・・・」

頭を振った。


あやの「柊ちゃん?」

突然あやのに話しかけられた。

かがみ「み、峰岸・・・」
あやの「良かったぁ、柊ちゃんもこっちに逃げてきてたんだ~」
かがみ「う、うん・・・」
あやの「でも突然だったからみんなとはぐれちゃったわね・・・どうする?」
かがみ「どうって・・・・」
あやの「柊ちゃん?どうしたの・・・」
かがみ「う、ううん。何でもないっ。みんなを探そっか・・・こなたとか、
    1人だと何するか分からないんだから・・・」
あやの「そ、そうね。」

・・・・?1人だと何するか分からない・・・?
かがみが回想を巡らす。
確かつかさが殺されたとき・・・あいつは・・・

こなた「じゃあ、私1人で行ってくる」

かがみ「───ッちょっ・・ダメよ、危険でしょ・・・」

あいつ・・・もしかして・・・・!?

かがみ「峰岸!あ、あいつ・・・!」
あやの「えっ?」
かがみ「はやく行かなきゃ!あいつ・・・絶対1人で行っちゃうんだから!」
あやの「ひ、柊ちゃん!?」

かがみはあやのを手をぐんっと引いて全力疾走でもと来た道を戻り始めた。

ハァッ・・ハァッ・・・・・・

息がきれて、ガクンと膝をおとす。
すぐ体力が切れる自分をちょっと恨んだ。

みんなとっさに逃げたから、きっとバラバラなんだろうな。
私はどうしたら・・・

ゆたか「!!!」

フト顔を上げると、目の前に立ちそびれる建物。

ゆたか「これって・・・私たちが出発した・・校舎?」

キョロキョロ辺りを見渡す。
誰もいなそうだ。
それもそのはず。中は禁止エリアだ。
とりあえず、息を整えて立ち上がる。

入るべきか?校舎に・・・・

もう1度キョロキョロ見渡す。
シーンとしている。

確か・・お姉ちゃんが言ってたなあ・・・。
この校舎が本部だって。
つまり、この本部を潰せば、ゲームが止まる・・・

深呼吸1つ。

決意を固めて、ゆたかは校舎に近づく。

そのとき!


───ザッザッ


誰かが猛スピードで近づく足音。

とっさにゆたかは音の方を注視する。

ゆたか「・・・お、お姉ちゃん?」

目を細めて、人物を特定する。

こなた「ゆーちゃん!」

ゆたかを見つけて、急停止した。

ゆたか「お姉ちゃん!良かったぁ、無事だったんだあ」
こなた「うん・・・でも・・・」
ゆたか「?」

こなたの憂いをひめた目を見据えてゆたかがきょとんとする。

こなた「ううん、何でもないっ!え・・で、ゆーちゃん1人?」
ゆたか「へ?・・う、うん」
こなた「じゃあ、ゆーちゃんは今からみんなを探しに行って」

突然の言葉に驚愕するゆたか。

ゆたか「わ、私も行くよっ。お姉ちゃん、校舎内に入るんでしょ?」
こなた「だーめ。ゆーちゃんは、かがみたちを探して、海に向かって」
ゆたか「えっ・・・?」
こなた「私が本部からヘリコプター呼ぶから」
ゆたか「え、でも・・・お姉ちゃんは・・・」
こなた「大丈夫!大丈夫!いいから、早く行って。」

こなたはいつものように陽気な声で言ってるけど、ゆたかは感じていた。

私たちのために、1人で本部に行こうとしていること。
そして、いざとなれば命を捨てる覚悟もあるということ。

ゆたか「やだっ!私も一緒に行く!」

強い視線でこなたを見上げる。
こなたはキッとした表情になった。

こなた「ダメだって言ってるでしょ!ゆうこと聞いて!」

ちょっとキツイ声でゆたかに言う。
でも、ゆたかは動じなかった。

ゆたか「お姉ちゃん、死ぬつもりでしょ?私たちのために・・そんなことさせないから!死ぬときは一緒だよ!!」

ゆたかもまけじと強い声で返す。

こなたは一瞬驚いたような顔をして、俯いた。

こなた「ダメ・・・だってば・・・」

ちょっと声が震えていた。

こなた「何度も言ってるけど、ダメッ!絶対ダメだから!はやく、行ってよ!!!」

怒鳴って、ゆたかをどんっと両手で突き飛ばした。
ゆたかはしりもちをついて、こなたを見上げた。
まだ俯いたままのその顔から一滴何かが落ちたような気がした。

お姉ちゃん・・・・・・。


2人は全速力で走っていた。

こなた・・・どうか、無事でいてね!

そう思い続けながら、かがみは走った。
しばらく走り、やっと元の位置に戻った。
しかし、戻るやいなやツンと鼻をつく嫌な匂い。

鉄のような・・・そう、血の匂いだ。
嫌な予感がかがみの胸を突く。

足を止め、おそるおそる先に歩を進ませる。

やがてかがみは1つの血だまりに目が止まった。

───人が倒れている。

かがみ「あん・・たは・・・」

震える足をどうにか動かして、血だまりの前で止まった。
全身を真っ赤にした小神あきらがこちらを見た。

かがみ「な、何やってんのよ!!」

膝まづいて、あきらを見る。

あきら「へへ・・ごめん・・。やられ・・た」

弱弱しい口調で言葉を発した。

あきら「気をつけ・・て。アイツ、・・容赦ない・・から」

あやの「高良ちゃん・・・が・・?」

かがみの後ろにいたあやのが聞いた。

あきら「ぅん・・それと・・はやく逃げたほうが・・いい。まだ・・近くにいるかも・・しれな・・いから・・・・。」

かがみ「うん!じゃあ、あんたも逃げるわよ」

あきらを抱き起こした。

あきら「いっつ!・・だめ・・私は・・もう・・ダメだ・・から・・」

痛さに顔を歪めながらかがみを見上げた。

かがみ「ダメだなんて言わないでよ!」

目を潤ませながら、かがみが言った。


「あら、まだ残りがいましたか」


フイに後ろから声がした。

かがみ「・・・み、みゆき」

そう、そこにはメガネを光らせて銃を構えたみゆきがいた。

あきら「に、逃げ・・ろっ」

必死に声を絞り出す。

みゆき「まだ、生きてるんですか?しぶといですね」

あきらを睨みつける。

かがみ「峰岸、先行って!」

みゆきを見て固まっていたあやのに声をかけた。

あやの「でも、柊ちゃんはっ・・・」
かがみ「大丈夫!私もこいつと後から行くから・・」

血まみれのあきらの腕をひっぱった。

あやの「わ、分かった」
コクンと頷いてあやのは森の奥へ走って行く。

あきら「バヵ・・やめろって・・言ってんでしょ・・離せっ・・」
かがみ「何言ってんのよ・・・友達を見捨てたらこなたに逢わす顔がないわ」

あきら「とも・・だち・・・?」

かがみ「そう!友達!」


かがみのその真っ直ぐな瞳を見て、あきらは驚愕した。
そして、そのあとちょっと微笑み、瞳は少し揺れていた。
こなたの顔が脳裏にうつる。

・・・あんたらはホントにいい友達をお互い持ったんだな。

あきら「さん・・きゆ・・・嬉しい・・よ・・そんn」


パンッ


あきらの言葉が途切れた。

心臓から鮮血がほとばしった。

飛び散った血を顔面にあびる。

かがみは何が起きたか理解できなかった。


みゆき「ふう。やっと死にましたか」


冷たいその声にかがみはみゆきを見た。

今、理解した。

みゆきが撃ったのだ。

今、かがみの腕の中にいたあきらを。

その、あまりの残酷さに頭がからっぽになった。

目の前でたった今まで微笑んでいたのに・・・

もう、その目は・・・二度と光を宿すことはない。


暗い、沈んだ目にまだ、涙は溜まったまま──────・・・



<小神あきら死亡 残り12人>




───怒りが・・・

───とてつもない怒りが体中を駆け巡る。

脳裏を、つかさが素早く通り抜けた。

かがみ「うああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

狂ったように絶叫した。

みゆき「あら♪やるんですの?」

殺意が湧き上がってくる。
日本刀を出そうとリュックに手をかけたとき・・・
脳内でそれを阻止しようとするもう一方の意識が手を止めた。

「人殺しはダメだよ・・・たとえどんな理由があったとしても・・・人を殺すなんて間違ってるよ」

こなたの声が脳内で反響する。
しかし、殺意もどんどん膨らんでいく。
かがみの中で2つの意識が激戦を起こしていた。

かがみ「だめ・・だめ・・・だめええっ!!」

大きく頭を振る。

みゆき「ああ、ツマラナイですね。あなたも遊んでくれないんですか・・・。
    しょうがないです。死んでもらいますか」

銃をガチャンとかまえる。
かがみを狙う。

みゆき「では、さようなら♪つかささんとお幸せに♪」

やっとなんとか自制して殺意を静めかけていたとき
「つかさ」という言葉にかがみの中の何かがフッ切れた。
瞳孔がカッと開いてみゆきをギラと睨みつけた。

かがみ「こんのっ・・外道がぁっ!!」



パンッ



鮮血が飛び散った。

それとともに左腕の根元に激痛が走る。

薄れゆく意識の中、見開かれた瞳孔が最後にとらえたもの───

高良みゆきが高らかに笑いながら自分を見下している姿だった。

そして───ゆっくり瞳を閉じながらかがみの意識はそこで途切れた。

ザッザッザッ

みさおは小走りで元来た道を走っていた。

きっと、みんなも元いたところに戻ると思ったからだ。

みさお「この辺・・・だよなあ?」

足を止め、辺りを見渡す。

無我夢中で逃げてきたからよく覚えていない・・・。


───ッ!!!


みさお「血の・・・匂い?」

ビクンと顔を上げる。

みさお「こっちからだ・・・」

おそるおそる近づいてみる。

ちょっと開けた場所に出た。

そして見たモノは──────・・・・


2人の倒れた人間。


そのおぞましい血の量にみさおは絶句し、戦慄し、固まる。
しかし、そんな自分を奮いたたせ、首をぶんぶん振った。
そして改めて目からの情報を脳みそで吟味した。

みさお「ひ・・らぎ・・?」

震える声で言葉を紡ぐ。

自分の親友が、倒れている。

何故・・・?
何で、こんなことになってんだよ?

頭が混乱してきた。
でも、今は思考を停止させた。

みさお「ひいらぎっ!!!」

叫んで、かがみの元にひざまずく。

かがみは反応するどころかピクリともしない。

そして、制服が血で染まっている。

みさお「おいっ!起きろ!!」

自分の目に涙が溜まっていると気づいた。

みさお「起きろってヴぁ!!そんなとこで寝るんじゃねぇっ!!おいっ!ひいらぎ!」

涙が下の草で生い茂る地面に落ちた。

視界がゆがむ。

みさお「・・・おい・・」

嘘・・だろ?
おい、嘘だよなぁ・・・?
こんなことって・・・・・・・・・・・・・

みさお「ぐぅっ・・ヴぅ・・・・」

我慢しても嗚咽が漏れる。

みさお「ぉいっ・・・起きてくれよ・・っ・・なあ・・・」

かがみの体を揺さぶる。

しかし、反応はない。

「日下部先輩っ!!」


突然後ろから自分を呼ぶ声。

振り返る。

みさお「ゆ、ゆたか?」

ゆたかがこちらに駆けて来る。

ゆたか「良かった・・・無事だったんd・・・」

多少息を荒げながらみさおの近くまでやって来たが、途中で言葉が途切れる。

その目線の先はかがみである。

ゆたか「!!?? ぅ・・・え!?ひ、柊・・先輩!?」

何が起こったか分からずパニック状態に陥った。

ゆたか「ど、どうゆう・・ことですか・・!?」

みさおは無反応で、かがみを見つめなおした。
目からはとどめなく涙が溢れ、虚しく草地に落ち続けた。

みさお「んでだよお・・・・」

体が小刻みに震える。

みさお「何で・・柊がこんな目にあわなきゃいけねぇんだよ・・・アイツが何したって言うんだよ?・・・」

目をぎゅっと瞑り、感情を必死にこらえている。

みさお「ううっ・・・うううっ・・ぁあああっ・・・」

更に勢い良く涙が溢れる。

そんなみさおを見て、ゆたかもひざまずいた。

そして、かがみにフッと触れる。

ゆたか「・・あたたかい。まだそんなに経ってないですよ」

そう言うなり、リュックから救急箱を取り出した。

みさお「!? た、助かるのか!?」

今のゆたかの発言を聞いて、驚いたようにゆたかに詰め寄る。

ゆたか「わ、分かりません・・・」

そう言うと、かがみのセーラー服をまくしあげた。

ゆたか「あっ・・・」

みさお「どした!?」

ゆたか「傷は深いですけど、急所じゃないです。今から止血すれば・・・」

みさお「助かるのか!?」

みさおが心を弾ませてゆたかに聞いた。

ゆたか「いゃ・・・それは・・・・」

自信なげにゆたかが答えた。

みさお「おいっ!!柊っ!!聞こえるか!?私だ!みさおだよ!!」

先ほどより強く体をゆする。

ゆたか「あっ!!先輩・・・あんま強くゆすると出血が・・・」

ゆたかが言い終わらないうちに・・・



かがみ「・・ぅっ・・」



かがみの口が開いた。

みさお「───ッ!!!!」

かがみ「うっ・・・ぁ・・」

目を半開きにして、みさおの顔を捕らえる。

かがみ「く・・さかべ・・?」

みさお「ひ、柊いっ・・!!柊ぃーっ!!!」

また目から涙を流しながらかがみに抱きついた。

かがみ「ちょっ、あんたどこ触ってんのよっ・・・痛っ・・・!」

かがみから力が抜け、痛みに顔を歪めた。

みさお「あっ・・ごめんっ・・・」

みさおはパッとかがみから素早く離れた。

ゆたかはそんなやりとりに苦笑しながらも、かがみの治療を始めた。

みさお「にしても良かったぜ、死んでると思ったぁ・・。」

安堵してため息を漏らす。

かがみ「勝手に殺すなよ。・・・でも、不覚だった・・・」

ゆたか「何があったんですか?」

かがみ「いや、みゆきが・・・・」

言いかけたとき、かがみがガバッと勢いよく起き上がった。

かがみ「そういえばみゆきはどこ!?」

ゆたか「あっ、先輩落ち着いて・・・今はいませんよ。ほら、横になって・・・血がまだ止まってません。」

慌てたように、ゆたかがかがみに言い聞かせる。
かがみは少し落ち着いたが、横にはならなかった。

みさお「・・・あ、そういえばあの人は・・・」

かがみから視線をはずし、あきらを見る。
かがみもみさおの視線の先を見る。

かがみ「あぁ・・・あっ・・・」

震えとともに目頭があつくなった。

みさおは立ち上がってあきらの方に寄った。
その、暗く沈んだ目を見て、思わず目が見開く。
その目を見た途端、死んでいるとすぐ解釈した。

みさお「誰が・・・誰が・・・・やったんだよ・・・これ・・・」

震えが来る。

おぞましいほどの血の量、そしてその悲しい目───・・・

かがみ「みゆきが───・・・やったのよ」

言いづらそうにかがみが言う。

かがみ「しかも・・・話している途中で・・嬉しそうに微笑んでいる途中で───」

あの笑顔を思い出してまた涙が流れる。
ゆたかとみさおも顔を俯かせる。

かがみ「私が・・ちゃんと気を配ってれば・・うぅっ・・うわああああああああっ」

頭をぶんぶん振った。

かがみ「それで・・私・・もう、わけわかんなくなって・・・」

溢れる涙が草地に音もなく落ちる。

かがみ「気づいたら・・・撃たれてた。そんときのことは何も覚えてない・・・」

体が震えていた。

みさお「目の前で友達が撃たれたら誰だって冷静でいられるハズがねえよ」

フイにみさおが言った。

みさお「冷静でいられるやつがいたら、そいつは心がねえってことだ」

かがみ「日下部・・・・」

みさお「柊・・・」

一瞬見つめあう2人。

ゆたか「あ、あのぅ・・・」

ゆたかが口を挟んだ。

ゆたか「峰岸先輩とは逢ってませんか?」

かがみ「ぁ、峰岸なら・・・さっき私と居たんだけど、私が逃げろって言って・・・」

ゆたか「どちらに行きました?」

かがみ「あっちよ。───・・でも、何で?」

かがみが一箇所を指指し、疑問を浮かべた顔でゆたかを見る。

ゆたか「お姉ちゃんと約束したんです・・・みんなを海に集めてくれって」

みさお「海?」

ゆたか「ヘリコプターを呼ぶって言ってました」

かがみ「ふうん、アイツにしてはいい考えじゃない。あれ?でもどうやって呼ぶのよ」

ゆたか「・・・・・えっと」

言葉に詰まるゆたかに、かがみが青ざめる。

かがみ「やっぱりあいつ・・・・1人で、ゲームを止めに・・・?」

呼ぶ方法は1つ。

本部から本州に連絡することだ。

ケイタイは繋がらない。

つまり、ゲームを止めるということだ。

それしか方法はない。

こなたは・・・1人でそれをするつもり?

昨日の朝、ゲームが始まる前のことを思い出す。

先生の後ろにいた兵。

あんな奴らと1人で戦うつもり?

かがみ「そんなっ・・・ダメよ!そんなの!殺されちゃうじゃない、相手は複数なのよ!?」

ゆたかに叫ぶ。

ゆたか「わ、分かってますよ・・」

俯いたまま、震える声。

ゆたか「お姉ちゃんはきっと・・・私たちに迷惑をかけたくないんですよ・・・だから・・・」

目に涙を浮かべてかがみを見る。



確かに。

アイツはそういう奴だ───。

いつもアニメやゲームのことばかり考えているけど

ああ見えて、友情を重んじて、気遣いがうまい奴だ。

私が元気がないときとかはからかって元気づけようとしてくれる。

でも、相手の弱い部分は絶対に茶化さない。

そんな優しいやつなのだ。

みさお「私・・・行く」

みさおが突如声を出した。

みさお「ここまで来て死ぬなんて、絶対ダメだ」

その力強い瞳にかがみも頷く。
怖い だとか 痛いだなんて言ってる場合じゃない。
アイツだけは・・・アイツだけは助けたい。
あきらに目を少しやって決意する。

こなただけは・・・私が絶対守る・・・
こんなことは絶対・・・繰り返しちゃいけない!!

かがみ「ゆたかちゃんは、峰岸を探して海に行って」

ゆたか「───エッ」

いきなり言われてぽかんとする。

ゆたか「えっ、みんなが行くんなら私も行きますよ!」

かがみ「でも・・・」

ゆたか「ゲームをとめたいって気持ちは同じです!」

真剣な眼差しにとまどうかがみ。

みさお「ダメだ。ゆたか、おまえはあやのを探すんだ」

ゆたか「何で?何でいつも私はダメなんですかっ!?」

みさお「・・・・・。」

ゆたか「私だって先輩たちと一緒ですよ!ゲームを止めたいんです!!」

必死に訴えるゆたかを見てみさおも真剣になる。

みさお「だから、止めるんだよ。あやのを探して海に行くこと。それもゲームを止めることを手伝うことだろ?」

ゆたか「手伝い・・・?」

みさお「そ!ゲームは、みんなで協力しないと止まらないんだ。私たちが何がなんでもヘリコプターを呼ぶ。
そしたらおまえはみんなを連れてヘリに乗ればいい。今、まだ生きてる人はいるはずだ。
1人でも多く見つけて、1人でも多くの命を救う。それがおまえの使命だ!」

かがみ「そうね。本部の連中は何するか分からないから・・・」

ゆたか「・・・は、はい。分かりました」

みさおの言葉にゆたかはこっくりと頷いて、立ち上がった。

続いてかがみも立ち上がった。

みさお「柊、大丈夫か?」

かがみ「うん、今んとこは・・・ちょっとクラクラくるけど・・・」

みさお「大丈夫じゃねーじゃん」

かがみ「大丈夫だって。それにこんな一大事にそんな弱気でいちゃだめでしょ」

ゆたか「それじゃ・・・先輩」

1人と2人が向き合う。

その目に宿るは覚悟の光。

ゆたか「絶対、また生きて逢いましょう」

そんなゆたかの言葉に2人は笑顔で頷く。

かがみ「うん、絶対ね!」

その言葉を聞いてゆたかもつられて笑顔になる。

そしてあやのが行った方へと歩を進めた。

それを一時見て、ゆたかを見送ったあと、2人は顔を見合わせる。

かがみ「大丈夫?心の準備は」

みさお「おぅ!」

そして2人は最終決戦の場へ───・・・


こなたは裏口から校舎内へ入った。
なんとなく、正面からだとダメな気がしたからだ。
とは言ってもこなたにとって知らない校舎だ。
結局少し入っただけで迷ってしまった。

うう~・・・ここじゃあ引き返すこともできないよ・・もっと考えて行動すべきだったぁっ

廊下の突き当たりでキョロキョロ見渡す。
人気はないようだ。

本部・・・はどこだろう?

ゆっくり歩を進めながら細心の注意を払って辺りを観察する。
こなたの脳裏をあの兵たちがかすめる。
流石に1人でよく分からない広い校舎を歩いているとムショウに不安になってくる。
そんな不安な心が拳銃を握らせる。

───ッ!!!

ピタッと動きを止める。

確かに・・今・・・何かが聞こえた・・・

神経をフルに稼動させて、聞き耳を立てた。呼吸を止める。
こんな廊下のど真ん中で見つかっては、成すすべがない。

そして、ゆっくりとまた歩き出す。
右手にはしっかり拳銃を構えて・・・

・・・また聞こえた。
やはり、近くに誰かいる。

その音は一箇所から聞こえてきていた。
こなたは音の発信源の前で立ち止まった。
その発信源へとつながる扉の表面にはこう書かれていた


───「職員室」


こ、ここが本部───?

いや、そうとしか考えられない。
他のところからは気配なんて感じられなかった。

兵のことがまた頭の中に浮かぶ。
しかし、恐怖に浸っていたのもホンのつかの間だった。

ゲームを止めるんだ───

約束したんだ───

その思いを胸に、耳の神経を集中させる。
もしかしたら、聞き取れるかもしれない───。

「黒井さん、もうすぐ5時半になります」
「そか。もーすぐやな。あ、ところで今何人?」
「レーダーによると・・あと・・・6人ですけど」
「!?───もうそんなに減ったんか?」
「はい、監視員によりますと・・・いっきに数人死んでいったと言っていましたけど」
「・・・ふーん」
「もしかすると・・・」
「まあ、可能性ならあるわな。泉たちならやりかねないやろし」

───???

今・・・私の名前が呼ばれなかった?

ダメだ・・・やっぱよく聞き取れない。


ブーッ!!ブーッ!!


いきなりの大きな音に私は心臓が止まるかと思った。

な、何だ!?

ドアの中から人の声がする。

「緊急連絡!?」
「どうしたんだ!」

<こちら見張り、正門から生徒2人が侵入した模様>

機械を通した声が聞こえた。



生徒2人?

少なくとも、私のことではないようだけど・・・

まもなくして、足音がドアの方へ近づいて来た。


うっ!誰か来るっ・・・

そこでこなたの思考は一旦中断された。


全速力で廊下のハジに逃げ込んだ。


「ええか?逃がしちゃアカンで!」

後ろから聞こえたのは黒井先生の叫ぶ声だった。





ゆたかはあやのの影を求めて彷徨った。

しかし、未だあやのを発見できていない。

ゆたか「───ぁ」

背の高い木の影から微妙にちょこんと出ている屋根が目に入った。

ゆたか「ここは・・・バンガローだ」

そう、そこは・・・こなたたちが最初に訪れ、次にあきらと一戦交えた場所でもある。

ゆたか「ここなら・・・誰かいるかも」

期待を胸にバンガローの戸口へ。

その時

「あ、ゆたかちゃん」
ゆたか「!?・・・ぁっ」

木の影から顔を出して手招きしている、その人物は───

ゆたか「峰岸先輩!」

たったっとあやのに駆け寄る。

あやの「ここなら、誰か来るんじゃないかと思ってずっと見てたのよ」
ゆたか「そうなんですかあ。でも、良かったです」

お互いににこっと笑い合う。

ゆたか「そうだ。私、みんなを探さないといけないんです」
あやの「え?みんなって・・・?」
ゆたか「このゲームの参加者をみつけて、首輪をはずして、海に行くんです。」
あやの「海?何で?」
ゆたか「先輩たちに言われました。とにかく、みんなを探さないと・・・」
あやの「分かったわ。それなら私も一緒に探すから」
ゆたか「あ、ありがとうございます!」
あやの「とりあえず、この島は広いし、どうする?」
ゆたか「バンガローで待つっていうのはどうでしょう?きっとみんな入って来ると思うんですけど・・・」
あやの「分かったわ。そうしましょ」

2人の意見が合致し、バンガロー内に入って待つことに。

ガチャッ

バンガローのドアを開ける。

ゆたか「ぅわっ」

開けた瞬間に広がる血の臭い。
前来たときはこんな臭いしなかったよね・・・

あやの「誰かいるのかしら」
ゆたか「わ、わかりません」

不安な顔を見合わせて、また前を向く。

そして一歩、また一歩と踏み出す。

1つ目の部屋───

こなたたちとあきらが戦った場所である。


───ッ!?

入った瞬間、さらに強くなった血の臭い。
それとともに目に入ってきた物───

ゆたか「た、田村さん・・・?」

驚きと恐怖の入り混じった気持ち。


───そう

そこに倒れていたのは田村ひより。


ゆたか「な、何でここにっ・・・」


足から力が抜けてしゃがみこむ。

あやの「た、確かここは・・あきらちゃんを縛っておいた部屋よね・・・」

ゆたか「あきら・・・?」

その人物名にある一言を思い出した。


───「ある人から、頼まれたの。私が殺される代わりに、あんたたちに首輪をハズす
    方法を教えてあげてって。」

ま、まさか・・・ある人って・・・・

・・・

そ、そんなハズない!!

田村さんはみなみちゃんを殺した・・・

そんな・・・ハズ・・・・

あやの「もしかして、首輪をハズす方法を教えてあげてって頼んだ人って田村さんだったのかしら」

あやのと目があう。
けど、すぐに俯く。

ゆたか「そんな・・・ハズ・・ありませんよ・・・。だって・・田村さんは・・・」

あのときのことを思い出して涙が出る。

ゆたか「みなみちゃんを・・みなみちゃんをっ・・!!」

あやの「ゆ、ゆたかちゃん、落ち着いて」

ゆたか「ぁっ・・ご、ごめんなさい」

あやのに言われて、少し心を落ち着かせる。



───じゃあ、何で田村さんがここで死んでいるんだ?


あやの「田村さんはきっと───」
ゆたか「ぇ?」

あやの「きっと、罪の償いがしたかったんじゃないかしら」

ゆたか「罪の償い───?」

あやの「友達を殺してしまったことに後悔して、きっと・・・」

ゆたか「!!!」

もし、それが本当なら・・・



───田村さん。



また涙が溢れた。


ガチャッ


ゆたか「!───誰か来ました」

いそいで袖で涙を拭く。

あやの「誰かしら?」


その人物とは───


みゆき「あら♪やっと見つけました」

あやの「高良・・ちゃん・・・・」
みゆき「きっとこのバンガローなら人が寄って来ると思ってました♪」


───!!

みゆき「あら?」

倒れているひよりに目を向ける。

みゆき「おー、あきらさんに命を売ったお馬鹿さんじゃないですか」

───やっぱり・・田村さんだったんだ。

みゆき「ホント、バカですよね。世の中なんでこうバカが多いんでしょう」

───ぇ。

みゆき「他人のために死ぬなんてねぇ。何考えているんでしょう」

───・・・・・。

みゆき「ホント、考えてることがまったく分かりかねます」
ゆたか「やめてくださいっ!」
みゆき「!?」
ゆたか「それ以上言わないでっ!友達を救いたいという気持ちの何が悪いの!?」
みゆき「そのために死ぬなんて、ただのバカだと言っているんです。世の中自分が全てですよ?」
ゆたか「田村さんをバカにするなあっ!!」

リュックからナイフを引き抜いてみゆきに突進した。

あやの「ゆたかちゃんっ」

あやのがガシッとゆたかの肩を掴んでおさえる。

あやの「ま、待って・・・!」
ゆたか「せ、先輩・・・は、離してくださいっ」
あやの「挑発にのっちゃったら高良ちゃんの思うツボよ?」
ゆたか「で、でもっ・・」
あやの「私たちの目的を忘れたの?」
ゆたか「ぁっ・・・」

ゆたかがハッと我にかえる。
そうだ・・・私は今生きてる人たちを1人でも多く助けなきゃいけないんだ・・・

みゆき「じれったいですね・・・さっさと終わらせますか」

───!!

あやの「ゆたかちゃんっ危なっ・・・!!」

ドンッ


みゆきの銃が火を吹いた。



───ッッ


ゆたか「先輩っ!!」

ゆたかの目の前であやのがバタッと倒れる。

あやの「ゆたかちゃ・・に、逃げ・・・」

最後の力を振り絞ってゆたかに言う。
ゆたか「先輩っ・・・で、でも・・・」

みゆき「逃がしませんよ♪」
ゆたか「はぅっ・・・」

背を向けて全力疾走。

みゆき「ムダです♪」
チャッと銃をゆたかに向ける。

あやの「高良ちゃ・・・やめっ・・・」

みゆきの足に体をひきずってすがる。

みゆき「しつこい方ですね。」


バンッ

追いうちをかけるように再び発砲した。

・・・・・・。
みんな・・・ごめんね。
もう、限界みたい。

ゆたかちゃん───
あなただけでもどうか逃げきって───

意識が薄くなる。

みさちゃん───
先に逝っちゃうけど───
許してね・・・

後は・・・任せたわよ。
絶対・・ゲームを・・・・


みゆきはあやのを撃った後にゆたかを追って全力で走った。
多少時間はくったものの、ゆたかなどに足の速さは負けない。

みゆき「見つけましたよ、ゆたかさん♪」

ゆたかがチラッとみゆきを振り返る。
体力はほとんど限界───

ドンッ

音とともに
体全体に衝撃が走った。

全てから力が抜けるのが分かる。

ああ、倒れる。

だめ・・やだ・・

まだ・・・・


ドシャッ


みゆき「ふう・・・逃がしませんよ。仲良く死んでくださいね♪」


待ってよ・・・


みゆき「さて、あと何人殺せば終わりでしょうかね」


止めなきゃ・・・

高良先輩を止め・・・な・・


みゆき「あら?まだ生きてるんですか?」

声が至近距離から聞こえる。

みゆき「そうでしたあ。白石さんやあきらさんのときのように死んだが確認しないで
    行っては後々面倒になるんでしたね。私ったらドジですね・・・
    念には念をっと♪」


ドンッ


また聞こえた。

また・・撃たれたみたいだ。

・・・・意識が───

もう、死ぬのかな───

お姉ちゃ───

先輩───

ごめんなさい───

「絶対、また生きて逢いましょう」
「うん、絶対ね!」

約束・・・守れそうもないです───


そして、ゆたかは意識を失った。
そしてその意識は、もう戻ることはないだろう。

───みなみちゃん、今からそっちに・・・・



<小早川ゆたか、峰岸あやの死亡 残り10人>




廊下を曲がって急ブレーキ。

振り返って覗いてみる。

・・・私と反対方向に兵は向かって行った。

兵の姿が見えなくなると、すぐさま後を追いかけた。
音を立てないように気を配りながら・・・。

それにしても生徒2人って誰だろう?

そんな疑問がフとよぎる。
かがみとみさおは正門からダッシュし、昇降口のところにいた。

みさお「ぉい、柊ぃ、だいじょぶか?」

かがみ「大丈夫よ、これくらい・・・」

それでもかがみの顔色はあまりよくない。

みさお「やっぱ、柊は休んでからのがいいんじゃねえ?まだ血も止まったばっかりだしい」

───「いたぞおおっ!!!」

みさお「!?」
かがみ「!!!」

左右の廊下を見渡すと、兵が6人ほど迫ってくる。

みさお「も、もう気づかれたのかよ!?」

予想外の展開に驚くしかない。

かがみ「だから、裏口からにしようって言ったのに!」

だが、兵は何故か銃を持っていない。

兵「おい、殺さないからおとなしくついて来い」
みさお「だ、誰がついて行くかっ!はやくゲームを止めろ!」
兵「しょうがないな・・・無理矢理にでも連れて行く」

みさお「柊、逃げるぞ。」
みさおは拳銃を握り締めながらかがみを一瞥する。

かがみ「うん、わかった。」

そう言って日本刀を取り出そうとしたとき、左腕に激痛が走る。

かがみ「ぅあっ!?・・・」
グラッと意識が少し薄れる。

・・・こ、こんなときに・・・・

ガシッ

気づくと兵に右腕が捕まれている。

みさお「柊っ!」
兵におもいきり体当たりをし、腕から手が離れる。

かがみ「く、日下部っ・・・」
みさお「ふわっ!!」

かがみを庇ったせいで周りにいた兵たちに両腕をつかまれる。

かがみ「日下部!」
左腕を動かそうとするがまた激痛が走る。
かがみ「グゥ・・・ッ」

みさお「くそぉっ!!離せってヴぁあ!!」
思い切り抵抗するが大人の男の力にかなうはずもなく、ずるずると引きづられて行く。
そしてかがみの視界からみさおが消える。

かがみ「あんたたち・・・日下部をどうするつもりよ!」
兵「黙れ!はやくおまえもおとなしく捕まれ!」

───ッ!!

今捕まったら・・・こなたを助けに来た意味もない・・・。
ましてや私のせいで日下部まで・・・

逃げきらないと・・・

しかし、左腕が動かない。

かがみ「ぅ・・・」

腕をガシッと捕まれた。

かがみ「!!・・・は、離しなさいよっ!!」

兵「ムダだ。諦めろ。」

そのままズルズルと引き込まれる。

───ヤダッ!!ダメッ・・こなたを探さないといけないのに・・・

───こなたっ・・・!!

頭の中をこなたの顔がよぎる。


───「かがみを離せーっ!!」

突如、声が聞こえた。

ものすごいスピードで影がジャンプしたかと思うと、兵の頭におもいっきし回し蹴りをかました。

兵「痛っ・・・」

そして腕を掴んでいた力が弱まって、急いで脱出した。

兵「何しやがる!」

助けに入ってくれたのは───



かがみ「こなた・・・?」

小さな背に青い髪をなびかして立っているこなたがそこにいた。

こなた「かがみ、怪我はない?」

かがみ「ぁ、ぅんっ」

こなた「じゃあ───」

今度はこなたが私の腕を掴んだ。

こなた「ひとまず逃げよう」

そう言うなり、私をひっぱってものすごいスピードで走りだした。
当然私はそのスピードに着いて行けるハズもなく、半ば引きづられるカンジになった。


兵は途中まで追って来たが、もちろんこなたのスピードに勝てるわけがなく、途中で見えなくなった。

こなた「ふう、とりあえず休憩っと」

しばらく走った後、私の腕を離した。

かがみ「はあ、ひい・・アンタ速すぎ・・私のことも考えなさいよね」

ザッと座り込んでこなたを見る。

こなた「ごめん、ごめん。・・・でも、何でかがみこんなとこに?」

かがみ「バカ、アンタを探しに来たのよ」

こなた「ほーぅ、それで捕まりそうになってたのか・・・兵を追って正解だったネ」

かがみ「うるさいっ!」

こなた「あはは、顔真っ赤なかがみん萌えー」

かがみ「もう、アンタはっ!ホントに心配してたんだからね!」

こなた「そっか、じゃあ心配かけて悪かったかなあ」

ちょっとすまなそうな顔をかがみに向ける。

こなた「ん?あ・・・かがみ、その怪我・・・」
かがみ「え?ああ・・・ちょっとね・・・・」
こなた「大丈夫なの?けっこう深そうだけど」
かがみ「全然平気よ・・・それに、ようやく本部まで来たってのに、痛いとか
      言ってる場合じゃないでしょ」

ちょっと間をおいてこなたが思いついたように目を見開いた。

こなた「そういえばさ、かがみ、2人って言ってたけど、もう1人はいないの?」

かがみ「あ・・・く、日下部は・・・・」

こなた「私が介入したときにはかがみしかいなかったけど・・・」

かがみ「私のせいで・・・兵に・・・つれてかれて・・・」

こなた「え!?」

かがみ「こなた!た、助けに行かなきゃ・・・」

こなた「うん!兵につれてかれたってことは・・・きっと本部にいるハズだよ。
    私、さっき本部見つけたから・・・行こ」

かがみ「うん・・・・」

こなた「げ、元気出して、かがみ!アノ人たち武器持ってなかったんだから・・・
    少なくとも今は殺す気がなかったってことだよ。急げば助けられる!」

かがみ「そ、そうよね。ありがとう、こなた」

そのとき・・・


ズドオオオオォオオォォオォォオォォォン!!!!・・・


こなた「!?」
かがみ「!!!」

ものすごい爆発音と、崩れる音。

揺れと振動がこなたとかがみのところまで届いた。

かがみ「な、何が起こってんの!?」

こなた「わ、わかんない・・・昇降口の方だったけど・・・」

かがみ「誰か爆弾でも使ったのかしら・・」

こなた「何が起こったか知らないけど・・・今はみさきちを助けないと」

かがみ「そうね。こなた、本部案内して」

かがみが立ち上がった。

こなた「うん、行こう」

そう言って、2人は職員室に向かった。

みさお「くそーっ!離せっ、離せよーっ!!」

兵におさえこまれながら職員室に来たみさお。
一見したところふつーの職員室だ。
黒井先生だけが1人、ぽつんと座っていた。

みさお「あんたは・・黒井先生・・?まさか全部あんたが・・・?」
黒井「そーやで。」
みさお「くそおっ・・私をどーする気だよ!?」
黒井「せやなあ。まあゲームに背いた罰を受けてもらうことになるなあ。」
みさお「・・・ッなんだよそれ」
黒井「さあなwwwwおい、そいつ縛っとき」

兵におさえつけられ、手首を縛られる。

黒井「まあしばし待てや。もうすぐあいつらが来るはずやからな。そしたら
   おまえらまとめて・・・ニヤッ」
みさお「なっ・・・や、やめろ!あいつらは巻き込むなっ」
黒井「せやけど、あいつらのことやからきっとあんたを助けにくるやろ」
みさお「・・・ぐっ・・くそぉっ」

ズドオオオオォオオォォオォォオォォォン!!!!・・・


黒井「!?」
みさお「ふわっ、何だ!?」
黒井「何や?おい、様子見てきいや」

黒井が命令すると兵がドアからドッと出ていった。
部屋は2人きりになる。

爆発が起こるちょっと前の昇降口───

兵「はあ、見失っちまった」
兵「オレも見失った。逃げ足がはやいぜまったく」

「あら♪人がたーくさんいますね。楽しそうです♪」

昇降口からピンクの髪を揺らしながら1人の女が入って来た。

兵「んだ?おまえは」

「私は・・・ウフフ♪ゲームの参加者ですけど」

兵「参加者はここ立ち入り禁止だぞ?出てけ」

「フフ・・・だって人が少ないんですもの♪殺す人が♪」

そう言うなり、リュックから手榴弾を取り出し、ホイッと投げた。

「死んでください」

兵「なっ、やめっ・・・」


ズドオオオオォオオォォオォォオォォォン!!!!・・・



職員室。

そう書かれた扉の前に2人は立っていた。
2人は1回お互いの顔を見合わして、頷いた。
ごくっとつばを飲み込んで、こなたが一歩前に出る。
扉をスライドさせた。

その時・・・

みさお「来るなっ!ちびっ子!柊!罠だってヴぁ!!!」

かがみ「・・・・!?」
こなた「・・・・ぇ」

みさおの叫びも虚しく、こなたは既に一歩職員室内に踏み込んでいた。

「よう、待ってたで。泉」

そう声が聞こえたのと同時に、こなたの額にひんやりとした何かに触れた。
ピストルの銃口が当てられている。
聞き覚えのある声。そう、いつも放送で流れていた声。
バトルロワイヤル開始を告げた声。

こなた「黒井・・先生?」

ドアの側面に隠れていたのか、目の前にいる。

かがみ「こなっ」

黒井「動くな。動くと撃つで」

かがみがピタと止まった。

黒井「よう来たやないか。」

あざ笑うように先生がこなたを見下ろした。

みさお「くそっ・・・やめろっ・・このーっ」

黒井「うるさいな。おまえも黙れ。撃つで?」
その一声でみさおもおし黙る。

こなた「先生」

ピストルを当てられているのにもかかわらず、冷静かつ真面目な声。

黒井「何や?」

こなた「今すぐ、ゲームを止めてください。」

黒井「ははっ。泉やったら絶対そう言うと思うとったでえ。」

ケラケラ笑いながらこなたを見る。
こなたも真剣な眼差しで先生を見返す。

こなた「こんなゲーム、はやく止めてください。先生ならできるでしょう?今生きてる人たちを解放してください」

黒井「ほお~う、そんなに言うんやったらええで?」

こなた「───ぇ?」

予想外の先生の答えに声が漏れる。

こんなにあっさりと・・・?

黒井「こっち来いや」

先生がこなたの額にピストルを当てたまま移動させた。

一台のパソコンの前で止まり、かがみも移動した。

こなた「先生・・・これは?」

黒井「この白い点はな今生きとるヤツらを示しとる」

・・・ここで監視してたんだ。

黒井「つまり、今6人いるわけや。ほら白い点が6つ見えるやろ」

6人・・・だいぶ減ってしまったけど、これだけでも尊い命を救える。
もしかしたらゆーちゃんたちと誰か合流してるかもしれない。

黒井「泉、おまえさっき言ったよなあ?ゲームを止めろと」

こなた「は、はい」

黒井「ホンマに止めてほしいか?」

こなた「そりゃ、もちろ───」

違和感を感じた。

黒井先生の表情の奥にある違和感。

・・・嫌な感じ。

言いかけたところで、

こなた「あ、やめ───っ」

黒井「くたばれや」

一瞬だった。

言葉を全部言い終わらない間に。

ホンの一瞬。

黒井先生がパソコンのキーをワンタッチした。

その瞬間───



───画面上の白い点が全部消えた。



───ッ・・・



黒井「どうや?止めてやったでえ。アイツらの鼓動をなwwwアハハハハハハハハハwwwwww」

こなた「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

黒井「首輪を爆発させたんやwこれでゲームは止まったでえ?満足かあ?」

こなた「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

黒井「どうしたぁ、泉?怖くて声も出んか?はあっはあはっはwwwww」

こなたが再び口を開く前に後ろで声が上がった。

かがみ「あ、アンタねええっ!!!!」

かがみの怒号が響いた。

黒井「おっと、立場が分かってへんようやな」

ニヤニヤ笑いながらこなたの額の上でピストルをくるくる回す。

みさお「てんめぇっ!!!調子にのりやがってぇえっ」

みさおも我慢できずに叫んだ。



こなた「撃てば?」


フイにこなたが先生に向けていい放った。



こなた「撃てるモンなら撃ってみろ」

こなたが振り返って黒井先生を睨んだ。
その目は・・・とても冷たい目だった。

黒井「・・・・ッ!」
その突き刺さるような視線に黒井先生の動きが止まった。

ビリビリビリ・・・・

体中がビリビリする・・・こなたの威圧感にかがみまでもが戦慄した。



もしかして───

こなた・・・怒ってる?



今までこなたが本気で怒ったところなんか見たことがない。



けどこなたは依然として冷たい突き刺さるような目で黒井先生を見据えているだけで、
右手に握っている拳銃は先生に向けようともしなかった。


そんな中、いきなりガラッと扉が開いて、こなた以外のみんなが扉の方を注目した。


みゆき「あらあ♪やっと発見しましたー♪♪」

みさお「高良!?」

みゆき「兵さんたちは全員死んじゃいましたよ♪残っているのは私たちくらいですね」

かがみ「兵を・・・全員・・・?」

みゆき「ええ、とても弱くて・・・もの足りませんでした♪・・・あら?」

みゆきがかがみを見て不思議そうな顔をした。

みゆき「何故かがみさんがココにいるんですか?あなた死んだでしょ?」

かがみ「うるさいっ!勝手に殺すな」

みゆき「また殺したか確認するのを忘れたんですね・・私ったらwでもゆたかさんたちは本当に殺して来ましたよ♪」

かがみ「ぇ・・・?」

みさお「!?」


そのとき、初めてこなたがみゆきの方に顔を向けた。


こなた「今───・・・なんて?」


みゆき「先ほど、ゆたかさんとあやのさんを殺しましたよ♪ホントに無様でしたねw」

かがみ「あ・・アンタ・・・・」

信じられないというような顔で3人はみゆきを見た。

みゆき「あれはオモシロかったですねwふっふ・・失礼、思い出し笑いですwwうふふw」




目の前が真っ白になった。
あのときと同じ感覚。

殺す。絶対殺す。こいつだけは許せない。絶対に・・・。
感情に全てが支配されそうになったその時、

こなた「かがみ、待って!」

かがみ「───ッ」

私の怒りを感じたのか、こなたの声が私を制止した。


こなた「ダメ・・ぅあっ!?」

こなたが何かいいかけた・・・が、

次の瞬間、黒井先生がこなたの腕を掴んで、そのまま職員室の後ろにあったドアの方へダッシュした。

みさお「あっ!!こらぁっ!!ちびっ子をどこに連れてく気だ!?」

みさおが叫ぶが、手の自由がきかず、転倒した。

私も後を追おうとしたが、足が動かなかった。

みゆきに対する怒りがまだ残っていて、心の中では猛烈に自制しようと頑張っているが、なかなか自制できないでいた。


───ハヤク コロセ

───ヤツ ハ ミンナ ヲ コロシタ

───ツカサ ヲ コロシタ


目が見開いた。

かがみ「ぅるさいわよ・・・」

ポツリと呟いた。

かがみ「私は・・・こなたを守りたい。アイツを殺させちゃいけない。」

いろんな思いが心の中で交錯した。

そうだ───。

私は・・・こなたを・・・守りたいんだ。



まだいかれたように笑っているみゆきに目もくれず、みさおの元にダッシュした。

みさお「柊!?ばかっ、私じゃなくてちびっ子を追え!」
かがみ「うん、追う。あんたはこっから本州と連絡とって」

みさおの手首を縛っていた縄をほどくと、すぐ立ち上がり、

かがみ「頼んだわよ。こなたは私が絶対助けるから。」

そう言い残しものすごい速さでかがみはこなたの後を追った。

みゆき「あっ?ちょっとみなさん・・・私を置いて行かないでくださいよっ」
みゆきもこなた、そしてかがみの後を追って出て行った。

みさお「柊・・・絶対・・ちびっこと生きて戻って来いよ・・・」

こなた「先生っ、一体何を・・・っ」

廊下を引きづられながら必死に抵抗するが、未だに逃げ出せずにいた。

黒井「高良がいると面倒やしな」

しばらく来たところで先生が止まった。

黒井「アイツはだれかれかまわず攻撃してくるしなwww」

振り返ってまたこなたの額にピストルを突きつける。

こなた「どうして・・・こんなことするんですか」

黒井「面白いからや。悪いか?殺し合いってワクワクせーへん?それもダチ同士やと格段になwww」

こなた「先生・・・それ本気で・・・」

黒井「おまえらはその殺し合いを・・・ゲームを台無しにした。」

こなた「人の命を軽く見るなっ・・・ゲーム、ゲームって・・・」

黒井「? 何や?泣いとんのか?そんなに怖いかいな?」

こなた「つかさも・・ゆーちゃんも・・・何も悪いことしてないのに・・・ずっと、友達でいられたのに・・・・
もう・・・・逢えないんですよ?二度と・・・」

黒井「せやなあ。死んだらそりゃ逢えないやろなw」


カチャッ


ピストルに力がこもった。

黒井「じゃあ、逢いに行くか?死んだみんなのところへ」


───逢える?

───また、逢えるんですか・・?

───逢いたい。

───また逢えるなら・・・・



───もう、死んじゃおうかな?



───私はよく頑張ったよ・・・うん

───もう、みんな死んでしまった。

───参加者なんてもう一握りしかいないのに

───今更ゲーム止めても何の意味もないよネ

そんな思考が脳内を巡った。
こなたがフッとため息をついて、微笑んだ。

こなた「はい・・・・」



───「ダメエエエエエエッ!!!!!」


こなた「ぅあっ!?」

後ろから誰かに抱きしめられた感覚。

何だか、とても・・・あったかい。


かがみ「ダメだよ、そんなの」



後ろ、すぐ至近距離からかがみの声が聞こえた。

こなた「・・・かが」

かがみ「アンタらしくないよ、こんなとこで諦めるの?」

こなた「諦める・・?違うよ。私はみんなに逢いに行くんだ───」

かがみ「私のことはどうでもいいの!?」

こなた「───ぇ?」

かがみ「アンタが死んだら私はどうしたらいいのよ」

こなた「・・・かがみ。何で泣いて・・」

かがみ「バカッ!!!」

ギュッ

かがみ「アンタのことは・・・私が守ってあげるから・・・」

こなた「・・・・・・・・・・・。」

かがみ「だから・・・死なないで。お願い・・・」




やがてこなたがゆっくり頷いた。

こなた「ぁりがと・・・、私、どうかしてたね・・・」

かがみ「・・・こなたっ」

ギュウッ

さらに力が強くなった。

こなた「う、かがみ、強すぎぃ~」

かがみ「あ、ごめん;」




バンッ



急に銃声が響いて、2人はフッと離れた。

みゆき「うふふーwやっとみつけましたよ♪」

そんな声とともに、こなたの後ろにいた黒井先生が倒れた。

こなた「く、黒井先生!?」

急いで先生を見ると、額から煙が上がっている。

どうやらみゆきの弾が額に当たったらしい。

こなた「先生っ!先生ーっ!!」

しかし先生は何も反応しなかった。

かがみ「嘘・・・」

ボーゼンと黒井先生を見つめるかがみ。



本部側の人間全滅。


みゆき「さーて、邪魔者は排除完了♪さあ、これで正規のゲーム参加者だけになりましたね♪」


4人。

最初は31人もいたのに、今はたったの4人しかいない。


こなたはスッと音もなく立ち上がった。


こなた「みゆきさん・・・・」

みゆき「ふふ♪2:1でもいいですよ?」

かがみ「・・・あんた」


次の瞬間、かがみがみゆきに向かって猛突進した。

銃はみゆきの手に握られていたが、構える時間もなく、かがみがドッシンと押し倒した。

至近距離でならまだかがみにも分があり、なんとか銃を押さえ込む。


こなた「かがみっ・・!」

みゆき「か、かがみさん・・・は、離してくださいっ!」

みゆきがもがくも、かがみも必死に対抗して銃を奪って遠くに投げ捨てた。
軽快な音をたて、銃が廊下を転がる。

しかしその後左腕にまた激痛が走った。

かがみ「ぅっ・・・」
みゆき「・・ッ!よ、よくもっ!!」

ひるんだかがみをみゆきが押しのけて立ち上がった。

かがみ「ふわっ・・・」

こなた「かがみっ!!」

みゆき「このっ!」
みゆきがかがみの頭部を殴りつける。

かがみ「グッ・・・い、いい加減目ェ覚ましなさいよっ!!」

かがみも負けじと殴り返した。
そして2人はフツウの女の子なら絶対しないような激しい殴り合いを始めた。

こなたはポカンと突っ立ってその状況を見ていた。

ついこの間まで仲良く笑いあっていたのに。


───・・・何で?


───・・・何でなの?


こなた「やめてえええええええ!!!!」

我慢できなくなって2人の間に割って入る。

かがみ「こな・・・た・・」
みゆき「泉さん・・・?」

両者が一瞬静止する。

こなた「やめてよ・・・・」

かがみ「・・・こなた。・・で、でも・・・」

こなた「何で・・・何で友達同士が殴りあわなきゃいけないの・・・?」
目に涙を浮かべてかがみを見つめる。

こなた「やめようよ・・・こんなの・・・・」

かがみ「・・・・こなた」

ドガッ

次の瞬間、かがみの方を向いて無防備だったこなたのわき腹に鈍い痛みが走る。
小柄だからか、吹っ飛んで壁にドシンと打ち付けられる。

こなた「グゥ・・アッ」

みゆき「うるさいです。邪魔しないでくれますか、泉さん」
かがみ「み、みゆきっ・・あんた何てことをっ・・・!!」

こなた「み、みゆきさ・・・」
こなたはヨロヨロと立ち上がった。

かがみ「やっぱりダメよ・・・こいつ、もう友達なんかじゃない」
かがみがみゆきをにらみつけた。

こなた「嘘・・だっ・・・」
こなたの手がかがみの腕をつかむ。
こなた「みゆきさんは・・・友達だもん・・きっと・・説得すれば・・・絶対・・・」

かがみ「こなた・・・何言ってんのよ・・・」

こなた「友達だもん・・・友達だもん・・・・」
涙目ですがり付いてくる。
体が少し震えているようだ、

こなた「信じてるんだよ・・・みゆきさんのこと・・」

かがみ「───ぇ」
呆気にとられた。

今・・・こいつ何て───

みゆきを・・・信じてる?

あんた───・・・

その目でつかさが殺されたところを見て───

そしてたった今蹴られたばっかりだっていうのに───

何で・・・あんたは・・・・・・

何であんたはそんなに健気に・・・・・

私なんかとは全然違う・・・

こなた「友達だから・・・きっと・・元の優しいみゆきさんに戻るって───」



あんたは───・・・



こなた「───信じてる」



そう、あんたは───優しいんだ。


こなたの言葉が終わるか終わらないうちにみゆきが叫んだ。

みゆき「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

急いでみゆきを見ると狂ったように走りだし、銃を拾いあげこちらに向けた。
こちらに向いてる銃口がわずかに震えている。
その開いた瞳孔は以前のみゆきからは考えられないような狂った目をしていた。

みゆき「うあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

かがみ「───ッ!!こなた危ないっ!!!」

私は急いでこなたを地面に押し倒し、覆いかぶさった。
もう何が何だかわかんないけどとにかく必死だった───


ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!


連射だった。


体温が伝わってくる。

私はボーゼンとそのまま動けないでいた。

血しぶきがとび散り、顔につく。



こなた「・・・か・・かが・・・・」

やっと声を出せたと思ったらひどく震えた声だった。


みゆき「ああああああああああああああああ・・私・・私・・・」

もう一度叫んだかと思うと、苦し紛れに

みゆき「ご、ごめんな・・・さ・・・」

そう、言ったように聞こえた。

そして・・間もなく

ドンッ

そしてかがみの腕の隙間からみゆきさんが倒れるのが見えた。

自分にも発砲したらしい。

こなた「み・・みゆきさ・・・みゆきさん!!!」

まだ自分に覆いかぶさっているかがみをぐいと押し上げて、みゆきのもとに走った。

こなた「みゆきさん!!!」

みゆき「泉さ・・・わ、私・・・」

こなた「何で?・・・何で・・・・・」

みゆき「私・・・嬉し・・かっ・・たです・・よ?・・」

こなた「・・・・ぇ」

みゆき「私を・・正気に・・戻してくれて・・ありがと・・ございま・・す」
そう一言残してみゆきはこときれた。

こなた「み、みゆきさん・・・・みゆきさん!!!!」

涙がブワッと出た。

やっぱり、みゆきさんは悪い人なんかじゃない・・・

ありがとう・・・みゆきさん。

あなたは・・・私の最高の友達だよ・・・・いつまでも

<高良みゆき死亡 残り3人>



涙を拭いているとき、後ろで声が上がった。

かがみ「・・こ、こな・・」

そして振り返った私は驚愕した。

こなた「か・・かがみ・・・?」

かがみ「・・・こな・・た・・・」
苦しそうに私を呼ぶ声。

そうだ。

かがみが私を庇ってくれたんだ・・・。

うつぶせになったままのかがみのもとに力なく膝を落とす。

こなた「かが・・・」

弾丸を受けた背中は真っ赤だった。

こなた「かがみっ!!!!」


私はぐいっとかがみの肩を掴んで私の方に向けた。
目は半開きで、私と目があった。

こなた「何で・・・あんなこと・・・・」

かがみ「・・・アンタを・・・死なせるワケには・・・いかないから。
    言ったでしょ・・・あんたを・・守るって・・・」
弱弱しい声が口から紡ぎだされる。

こなた「ごめん!!私が甘いから・・・?つかさを殺したのにみゆきさんを信じるとか・・・
    言ったせい・・・?」

かがみ「あんた・・何言ってんのよ・・・アンタはいいの。
    そのままで・・・そのままでね・・・その優しいアンタのままで・・・・
     みゆきが最後、本当のみゆきに戻ったのは・・・あんたの優しさに自分を取り戻した
     からだもの・・・」

苦しそうにニコッと笑った。

かがみ「本当の武器は・・・凶器とか銃器なんかじゃない・・・本当の武器になるのは・・・
    優しさ・・・その友達を信じてあげる優しさ・・・なのね・・・」

こなた「本当の・・・武器・・・・」

かがみ「私の方こそごめんね・・・もっと生きたかったし・・」

こなた「何言ってんの、かがみ・・・・」

かがみ「ごめん───・・・約束・・・守れ・・」

こなた「えっ!?」

かがみ「海に行こうって───約束・・・ごめん・・ね?」

首がかくんと力なく落ちた。
涙はとどめなく溢れる。

かがみ「・・・泣かない・・で?」

そう呟きながらかがみは私の涙を拭おうと手を伸ばす。
しかし、その手は私の目元に届くことはなく───

途中で力なく落ちた。


こなた「ダメ・・ダメエエッ!!!ダメエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!」


叫んだ。

何が何だか分からなかった。

気づいたら私は次の瞬間、私はかがみを抱きかかえてダッシュした。

全速力で走り、校舎を抜け、森の中をひたすら走った。



そして、とうとうたどり着いた海。

もう夕方で、太陽が沈んでいる真っ只中で、あたり一面がオレンジ色だった。

私はそっとかがみを浜辺におろした。



こなた「かがみ───海だよ」

目を瞑ったままのかがみに私は呼びかけた。

こなた「私たち、来たんだよ。かがみ。ほら、波の音、聞こえる?」



こなた「───ねえ」


こなた「───返事してよ」


こなた「───ねえってば・・・」


涙がかがみの頬に垂れた。


こなた「───起きてよ」


こなた「───起きてよ・・・・」


こなた「───かがみ・・・・・・・・」

虚しくこなたの声だけが響いた。

かがみはずっと目を瞑ったままで、眠っているようにも見える。



ゲームが始まったときからいつも私のそばにいて───

けんかもしたけど───優しくてはげましてくれて───

もしかがみがいなかったらここまで来れなかったよ───

でも───もう・・・・



涙がどんどん溢れてきて視界が歪む。




ゴォッ!!!



その時一陣の風が吹いた。

あまりの強風にこなたは目を瞑った。

しかしその風は───

どことなくとてもあたたかく───


こなたの目の淵にたまってた涙を吹き飛ばした。


こなた「ぅあっ?」


そう、まるで誰かが───私に「泣かないで」と言っているような───


・・・。


───そして、風は消えた。


こなた「待って・・・」

一歩踏み出して───

こなた「行かないで・・・」

出そうになる涙を、今度はこらえて───

こなた「かがみっ!!!」


海に向かって叫んだけど、声が虚しく反響しただけだった。

そして、ふいに───波の音に混じって他の音が聞こえてくる。

バラバラバラバラ・・・


自分の頭上を見る。

プロペラが音をたてながらヘリコプターが宙を舞っていた。

<柊かがみ死亡 残り2人>

私はオレンジ色の空を仰いだ。



───ああ、終わったんだなあ。

長かったようで短かった2日間が。

みんな・・・やったよ?

ゲームは終わったよ?

みんな・・・



「おーい!」

フイに後ろから声がし、振り向く。

こなた「みさきち・・・」

こちらに走ってきたと思ったらいきなり抱きついてきた。

こなた「ぅわっ、な、何!?」
突然のことでしりもちをついてしまう。

みさお「ううう、無事で、良かったぜ、ほんと、もう・・・」

涙ぐんだ声が少しずつ聞こえる。

みさお「ああ、なんか、何て言ったらいいかわかんねーけど・・・」

こなた「・・・ぅん・・・、でも・・・」
みさお「いい、覚悟はしてたから・・・」

言い終わらないうちにみさおが強く言った。

こなたから離れ、かがみを見下ろす。

みさお「うぅ・・・柊ぃ~っ!!!」

今度はかがみを抱きしめる。
涙をぼろぼろこぼして、でも、無理矢理笑って一言呟いた。

みさお「・・・ぁりがと、な」

もう、この言葉しかかける言葉が見当たらねぇよ・・・。

そしてこなたと目を合わせる。

みさお「終わったんだよな・・・?」
こなた「うん、だね・・・、ヘリコプター呼んでくれてありがと」
みさお「おう・・・て、あれ?」
こなた「どしたの?」
みさお「あのヘリコプター?」
こなた「が、どうかしたの?」

みさおが指差すヘリコプター。
先ほどからこちらに向かって飛んできているヘリコプター。

みさお「来るのはえーな、って思ってさ・・・」

こなた「───え?」

なんか、嫌な予感がする。
ムショウにこの場から逃げ去りたい、そんな感じ。

それはみさおも同じらしい。
お互い顔を見合わせる。

ヘリコプターが近づいてきて、着陸態勢に入った。

どちらからともなく、声を発した。

「逃げよう」

そして2人は同時に駆け出した。
浜を後にし、森の中に駆け込む。

後ろから声がする。

「逃げたぞ!追え!!」

思わず走りながら振り返る。

こなた「───!!!」

そして見た。
それは本部に居た兵たちだった。
みゆきさんに全滅させられたハズの。
まさか・・・
みゆきさんの快進撃に慌てて、本部のヘリで一旦退いた兵たちが戻ってきた?

銃をこちらに向けながら数人が私たちを追ってくる。

私は慌てて前を向き、逃げることに集中した。

少し前をみさおが走っている。

チューン!!チューン!!

銃声が後ろから聞こえてきた。
私たちの周りの木々に当たった。
でも、銃声は止むことはなく、容赦なく撃ち続けられた。

みさお「───ッ!!?」

ドサッ

前方を走っていたみさおが急に倒れた。
慌ててこなたは急停止して振り向く。

こなた「みさきち!!!」

みさおの足を見ると、血が流れていた。

まずい、撃たれた・・・!?

激痛に耐えるようにみさおは呻いて、こなたに一言呟いた。

みさお「はやく、逃げろ・・っ」

私の胸中には2つの選択肢。
しかし、そのうち1つはすぐに消えた。

私はみさきちに手を差し出した。

こなた「そんなことできるわけないでしょっ」

みさおは目を見開いてこなたを見上げた。

こなた「立って!諦めちゃだめだよ」

その真っ直ぐな眼に見つめられて、みさおの中で何かが溢れた。
それと同時にまるでその気持ちが実態化したように涙が目に浮かんだ。

みさお「ばかっ、くせぇこと言いやがって・・・」

言葉にせかされるように、みさおは死力を振り絞って立ち上がった。

しかし───

周りを見ると、既に私たちは兵に囲まれていた。
ざっと6人くらい。その全員が銃をこちらに構えている。

兵「詰みだな」

みさお「あんたらは・・・本部の連中・・・」

兵「そーだよ。まだ本部は全滅してない」
兵「首輪をとったぐらいで自惚れるなよ」
兵「ゲームを続けようとする奴が居る限り、ゲームは終わらねぇんだよ」

そして1人の兵がにやりとほくそ笑んだ。

兵「ゲームはまだ、続いている」

───ッ!!!

兵「まさかゲームのルールを忘れたワケじゃあるまい?最後の1人になるまで殺しあう、だろ?」

また顔を見合わせる。
つまり、私かみさきちか、どちらかしか生きられない・・・と?

兵「お前たちに逃げ場はない。ゲームのルールに従え。さもなくば、2人とも死ぬか?」

選択を迫られた。
急なことだったけど脳みそをフル稼働させて考える。

2人一緒に生き残ることはできない。
生き残るには、もう1方を殺さなければいけない。
殺さなければ死。即ち、残された選択肢は、「殺す」か「殺される」か。

その現実を知って私は絶望する。
みさおの方を見ると、同じような顔をしている。

どうしたらいい?
どうしたら・・・誰か教えてっ
こういうとき、みんなならどうする!?
かがみ、つかさ、みゆきさん・・・

思い浮かぶのはいつもの面子。
しかし、すぐにそう考えるのは間違いだと気づく。

答えは私の中にあった。

私はこうした。いや、する──!!

ゲームを止める。

本部に抵抗するんだ。
それが私の意志だから。
ルールに乗る必要なんかない。
それは私の望むものと反するから。

そして・・・

空を仰ぐ。
暗くなりかけた空に一点。
ヘリコプター・・・・。
これがみさきちの呼んだ方だ。
そう、確信した。
やれる。
きっと。
いや、絶対。
2人で・・・一緒に、帰るんだ。
どちらもかけずに、帰るんだ。

みさおに視線を戻す。
動揺しきった目に強い視線を送る。
その視線を受けて、みさおがきょとんとする。

私はリュックに右手を突っ込んで拳銃を取り出す。
その行為を見て、何かひらめいたようにみさおもリュックから拳銃を取り出した。

兵は事の行方を見守るようにニヤニヤしながら見入っている。

しかし、その2丁の拳銃は、お互いに銃口を交えず、
それどころか、兵たちに向けられた。

バン!!バン!!

銃声が響いた。
こなたとみさおが兵たちの足元に撃ち込んだ。

予想外の出来事に兵は驚き、そして固まった。
その隙に、私たちは駆け出した。

こなた「みさきち、走れる!?」
みさお「ばか、こんな時に痛いとか言ってられねぇよ」

しかし、明らかにこなたより速度が遅い。

私は手を伸ばした。

こなた「手!」
みさお「ふぇ?」

私の手をまじまじと見つめながらみさおが声を漏らした。

こなた「掴んで!」

促されるままみさおがこなたの手を掴む。

グンッと引っ張られるようにみさおの体が前に進む。
その手から伝わる体温がみさおの気持ちを落ち着けた。

こなた「もうすぐだよ!浜に出たら、すぐ───!!」

声が前方から聞こえる。
そして後方からは別の声が聞こえた。

「追え!殺せ!2人ともすぐ射殺して構わん!」

そして、また銃声───!

あと少し!
あと少しなんだ!!

お願い、間に合って・・・っ!!

こなた「頑張って!絶対後ろは見ちゃダメ!」
みさお「おうっ!!」

2人は懸命に走る。
お互いがすぐ近くにいる。
それだけでものすごい勇気が湧いてくる。

浜が木々の隙間から覗いている。
ヘリコプターがたった今着地を終えた。

後はあそこまで無事に辿りつけばいいだけだ。

けれども、銃声の音はだんだんと迫る。

もうちょっ───!!

背中に激痛が走った。
血が飛び散った。
一瞬意識が飛んで、力なくその場に倒れこむ。

そんな・・・
もうちょっとなんだよ?
何で?何でこんなとこで・・・

みさお「ちびっ子・・・!?おい!!!・・・」

みさきちの慌てる声が聞こえてくる。

激痛に意識が揺らぐ。
ダメだ・・・。はやく、行って!
もう浜は目の前だから。
ヘリコプターはすぐ来てるから。
私に構ってたらみさきちまで・・・

───!?

体が持ち上がった。

みさお「死なせねぇよ・・・」

ゼェゼェと喘ぐ音。
私の目はみさきちの背中を見ていた。

───な、何で・・・

みさお「諦めんなよ・・・諦めるなっつったのはおまえだろ」

───ぇ

フラフラと不安定に体が前進する。

みさお「それに、あん時嬉しかったんだぜ?・・・手、出してくれたとき・・・」

みさおは歯を食いしばって、足の激痛に耐えながら1歩1歩進む。

こなた「───・・・!!」

知らないうちに目に涙が溜まっていた。

みさお「みんなで・・・帰るんだろ?」

───そうだ・・・。

───みんなで・・・みんなで・・・

こなた「・・・ぅん」

精一杯声を絞り出した。

そして

そこで私の意識は途切れた。

・・・。

・・・・。

・・・・・。

・・・ぅ・・ん。
どれくらい時間が過ぎたんだろう。
私は、生きているみたいだ。
体を誰かにゆすらされている。
声も聞こえる。

「ぉいっ、おいっ」

この声は・・・ああ、みさきちか。
どうやら、私に声をかけているみたいだ。

目を開ける。

こなた「みさ・・きち・・・?」
みさお「ちびっ子ぉー!!!」

あの時みたいにまた抱きついてきた。
どうやら私は仰向けに寝かされていたらしい。
そして、この轟音。ヘリコプターの中・・・?

こなた「ど、どうなったの・・・?」
みさお「私たち、助かったんだ!!」

やけに嬉しそうな顔が言う。
その目には涙が浮かんでいる。

こなた「あの兵たちは?」
みさお「大丈夫、みんな捕まったから。安心しろ」
こなた「そ・・・っか」

私は安堵して、表情を緩める。
そして自然と涙が出てくる。

みさお「今度こそ・・・本当に終わったんだよな」
こなた「そだね・・・」

ちゃんと帰ってこれたんだ。
2人で。

そして帰ってこれたのは、みんなのおかげだ。

あの時かけてくれた言葉、してくれた行動・・・
その全てが欠けていなかったからこそなんだ。

みさお「あいつらもきっと、喜んでるよな」

「友情」がお互いを支えていたから。

こなた「うん、きっと・・・ね」

私はみさきちと抱き合いながら微笑んだ。


みんな、ありがとう・・・


───そう、こうして私たちのバトルロワイヤルは終わった。



数日が経つ。

泉こなたは1人、学校の屋上で空を見上げていた。

「よお」

屋上のドアが開き、日下部みさおが弁当を持ってやって来た。

みさお「こんなところにいたのかよ。探したぜ?どーしたんだよ、最近元気ねーじゃん」
こなた「うーうん・・・、何でも・・・」
みさお「そっか、なら、いいけど・・・お昼、一緒に食っていいか?」
こなた「うん、いいよ」
みさお「さんきゅ」

みさおは座って弁当を食べ始める。

みさお「どしたんだよ、食わないの?」
こなた「ぅん・・・」

そのままずっと空を見つめていたこなたに声をかけるみさお。
こなたはこっくんと頷いて、チョココロネに手を出す。
けれど、口の前でチョココロネを止める。

みさお「おまえ、あの無人島でのこと・・・まだ、引きずってんのか?」

こなた「・・・っ」

みさおのちょっと低い声に顔をあげると、真剣な顔が視界に入ってくる。

こなた「だって・・・、じゃ、じゃあ、みさきちは平気なわけ?」
みさお「平気なわけねぇだろ・・・」
こなた「でしょ?・・・」

こなたが顔を俯ける。

こなた「ねえ、みさきち?」
みさお「んー?」
こなた「何でみんなは・・・死ぬことができるのかぁ」
みさお「・・・ぇっ?」

こなた「できる、というか・・・死ぬ、のかなぁ」

みさお「おま・・・何言って・・・」
こなた「私のせいだけど・・・さぁ」
みさお「ち、違ぇよ・・・おまえのせいなんかじゃねえ」
こなた「・・・何で?みさきちもだよね?」
みさお「私は死んでないだろ」
こなた「あの時、私を置いていけば良かったのに、死んでたかもしれない。なのに、何で?」

みさお「ばぁかっ!死ぬためじゃねえ!生きるためだ」

こなた「・・・ぇ?」

みさお「嬉しかったんだよ・・・あのとき」

差し出される手。
何故か心が安堵するような強い目。

───優しさ。

みさお「おまえが精一杯生きてるから、私も生きたくなっただけだ」
こなた「精一杯生きるって?私・・・が?」
みさお「そっ」

みさおがニコッと笑って真上を、真っ青な空を指差した。

みさお「”あいつら”もきっと同じだぜ」


───・・・?

───・・・どうゆうこと?

───みんなも生きてるってこと?

───いや、違う。みんなは死んでる。

───みさきちは生きてる。

───そして「生きるため」って・・・?

顔をしかめる私。
その様子を見て苦笑するみさお。

みさお「見てみろよ。・・・きれいだぜ」

みさおの指差す方を見上げる。

そこには、どこまでも大きく、ただ青い空があった。


───・・・・・あ


私の中の何かがプッツンと切れ何かが流れ込んでくる。

記憶だ。

蘇る海の情景。
隣には笑顔。

───「きっと、戻れるわよ。あの頃に。あの時とさっぱり同じは無理でも・・・
    あの頃の楽しさぐらいは、取り戻せるでしょ。
    そのために私たちはゲームを止めようとしてるんだから」

───・・・。

───生きる、か。


顔を下げ、みさおの方を向く。

隣には、笑顔。

私も、笑顔。

そして、ゲームは続いていく。

人生と言う名のバトルロワイヤルは。

昨日も、今日も、明日も、きっと。

その中で生きる。

「優しさ」という武器を、持ったまま。

”生き延びる”ではない。

”生きる”んだ。



笑いあう2人に、笑いかけるように、また風が1つ吹いた。




<生存者 こなた、みさお 2人>
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